前作『老人と宇宙』は、ロバート・ハインラインの『宇宙の戦士』のフォーマットをなぞる新兵物語の側面があったが、二作目はオリジナル路線。前作の主人公ジョン・ペリーはコロニー防衛軍を退役し、今作では出番なし。代わって前作のヒロイン、ジェーン・セーガンとジェレド・ディラックなる生まれたての兵士が活躍する。
二人とも、死亡した人間のDNAから作られた強化肉体に人工的な意識の種を植え付けられた、いわば人造人間で構成された特殊部隊、通称ゴースト部隊に所属する。ジェーンはジョン・ペリーの妻キャサリンのクローンであり、前作ではそれ故に二人の間に一悶着があった。ジェレドの場合は裏切り者ブーティンのクローン。ブーティンがなぜ人類を裏切ったのかを知るために作られた。
ジェレドはブーティンの記憶を注入されて生まれたのに、それを思い出せない。軍上層部は落胆し、ジェレドをただの兵士として扱うことにする。当人も自分の経験を元に自分の意識を育み、独自の人生を生き始める。ところが、たまたまリコリスのジェリー・ビーンズを食べたところ、それが「娘の好物」であることを思い出す。やがて幾つかの経験を経てブーティンの記憶を殆ど取り戻すに至るのだが…
ついでに、ジェレドが思い出したブーティンの娘ゾーイは、次作以降で大活躍することになるが、それは後のお楽しみ。
さて、ゴースト部隊の設定は、前作でも中々えげつないと感じたが、今作では内情をつぶさに描いていて、人が人を作るなど倫理的に許されざる一線を超えた所業ではないかと思えてくる。彼らは自分たちが「フランケンシュタインの怪物」であることを自覚しており、生まれた意味や生きる目的に疑問を感じざるを得ない状況で、懸命に人類のために闘っている。えげつないのは異星人に対する謀略でも同様で、ジェーンは卑劣な作戦命令を淡々と遂行する。こうした鬼畜の行いは、読者に人類を正義、エイリアン達を悪と決めつけさせないための布石であり、後続の作品群でさらに意味を持ってくる。
このように、読みようによってはかなり哲学的考察を読者に突きつけてくる小説ではある。人は何を備えていれば人なのか、人格と記憶の関係は、知的生命体に対する倫理はどうあるべきか、などなど。しかしながら『老人と宇宙』シリーズは、要すればスペースオペラであり、ジョン・スコルジーの文体が良い意味で質量が軽いので、深刻に読む必要はないと感じる。それよりも、ジェレドをジョークで励ます陽気な操縦士のクラウド中尉や、ジェーン等と友情を育むララエィ族の学者カイネンなどの名脇役にホロリとしたり、今時のSF的ガジェット群にニヤリとしたりしながら、目眩く冒険の数々に身を委ねる方が楽しい。
でも、最後は泣ける。ジェレド、おまえは本当にいいやつだよ。
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遠すぎた星 老人と宇宙2 (ハヤカワ文庫 SF ス 17-2) 文庫 – 2008/6/25
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コロニー防衛軍のなかでも勇猛果敢で知られるゴースト部隊の隊員は、防衛軍に志願したものの、軍務につくまえに死んだ地球人のクローンで構成されている。だが、新たに部隊員となったジェレド・ディラックは、天才科学者ブーティンの遺伝子から作られたクローンだった。恐るべきエイリアン種族と手をくんだ裏切り者ブーティンの情報を得るべく誕生させられたディラックの熾烈な戦いと数奇な運命を迫真の筆致で描く話題作。
- 本の長さ473ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2008/6/25
- ISBN-104150116687
- ISBN-13978-4150116682
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2008/6/25)
- 発売日 : 2008/6/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 473ページ
- ISBN-10 : 4150116687
- ISBN-13 : 978-4150116682
- Amazon 売れ筋ランキング: - 129,207位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2021年6月27日に日本でレビュー済み
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ガチ老人が戦う1巻とは逆に主人公がすっごく若いので「え、こんなに違って大丈夫?」と不安になったが、しっかり面白かった
2011年3月15日に日本でレビュー済み
一作目【老人と宇宙】を読み、あまりの面白さに一気読み、その後、すぐにこの二作目【遠すぎた星】を購入し読みました。
この作者はもしかしたら日本のアニメが好きな方なのでしょうか…登場人物の意識を記録した機械だか何だか…
映画の『アキラ』のワンシーンを思い出しました…確か『アキラ』でも意識を記録したキラキラしたのが出てきたよーな…
一作目を夢中になって読まれた方は間違いなく、間もおかずに、素早くこの二作目を読まれる事を推奨します。
自分はこれから、間もおかず、素早く三作目を開きます。
この作者はもしかしたら日本のアニメが好きな方なのでしょうか…登場人物の意識を記録した機械だか何だか…
映画の『アキラ』のワンシーンを思い出しました…確か『アキラ』でも意識を記録したキラキラしたのが出てきたよーな…
一作目を夢中になって読まれた方は間違いなく、間もおかずに、素早くこの二作目を読まれる事を推奨します。
自分はこれから、間もおかず、素早く三作目を開きます。
2021年6月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ミリタリーSFと云うと艦隊での戦闘が思い浮かぶが、戦術やらのアレコレに紛れて船の破壊による大量の犠牲者は見過ごされがちだ。それに比べて地上での戦闘は倒れていく戦士たちの各々の個性が描写されるせいかリアリティーを感じてしまう。ここに描かれた戦争に正義はない!ある理由で同じ人物が敵味方に別れて自身の理念のもとに、そして使命感に駆られて行動していく様に、そのことは明白だ。その過程で物語は意識とは、アイデンティティーとは何かと問いかけてくる。
2010年9月5日に日本でレビュー済み
この巻は前巻と比較してどことなくシリアスな雰囲気、主人公の軸が入れ替わるなど
また変わった色を持っていますが、テンポの良さや気の利いた会話などは紛れもなく前作を踏襲しています。
展開されるテーマもまた味わい深いもので、全巻を気に行った方ならばこの続編は読む価値アリです。
ラストシーンが非常に印象深い。
また変わった色を持っていますが、テンポの良さや気の利いた会話などは紛れもなく前作を踏襲しています。
展開されるテーマもまた味わい深いもので、全巻を気に行った方ならばこの続編は読む価値アリです。
ラストシーンが非常に印象深い。
2018年6月15日に日本でレビュー済み
人間を裏切ってエイリアンと手を組んだ科学者。何故人類を裏切ったのか?そして、その謎を追うべく作られたクローン。
さてどうなるのか…、と読み進めて行きましたが、前作以上にエイリアン達の描写が細かいです。そして明かされる宇宙戦争の実態。世界観がより深くなったので、次巻も楽しみです。
★は3.5くらいの気持ちで。
さてどうなるのか…、と読み進めて行きましたが、前作以上にエイリアン達の描写が細かいです。そして明かされる宇宙戦争の実態。世界観がより深くなったので、次巻も楽しみです。
★は3.5くらいの気持ちで。