超重族が支配する火星に潜入しレティクロン打倒の機を窺い苦闘するＵＳＯ大佐の活躍を描く大長編ＳＦスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第354巻。本巻の執筆者は、大人気の実力者エーヴェルスと長老格の功労者ダールトンです。ＵＳＯ大佐ロナルド・テケナーは超重族が支配する火星で奴隷に身をやつし、レティクロンの排除の好機を窺っていた。本書ではアトラン・シリーズで人気者だった大物テケナーの魅力が炸裂していますので期待してお読み下さい。
『アリーナの戦士』H.G.エーヴェルス著：テケナーは火星で超重族ヴァマロンに奴隷として仕えていたが、アリーナで催される賭け試合の予想を外した為に罰として自分が戦士となり戦わなければならない羽目になる。一方、アトランの命を受け旧ミュータントの意識を宿した３人のマルティ・サイボーグのムサイがテケナーを援助しようと火星に到着する。本編では最強の戦士・双子のグリフィス兄弟とテケナーの死闘が緊迫の読み所です。今回ユーモアは抑え気味ですが弾む様な読み心地にエーヴェルスの絶好調を確信しました。『土星の幕間劇』クラーク・ダールトン著：テケナーは何とか生き残ったが超重族に怪しい行動を見破られ土星へと移送されてしまう。超重族に変装した３人のムサイも観光客を装って後を追う。本編では極寒の過酷な環境で海綿取りの奴隷にされたテケナーが仲間になったテラナー達と必死の逃走劇を企てるのですが・・・。良くも悪くも物語を悲劇にはしないのが如何にも人情家のダールトンらしいなと感心します。
本巻の翻訳者を代表する増田久美子氏のあとがきは未来の「土星ツアー」を夢見る超短文です。本書を読んで最近のエーヴェルスの充実振りに感銘を受けましたが、逆に最近先輩ダールトンの切れ味が少し鈍っているような印象で心配ですので、次回はお得意のローダンとグッキーが活躍する物語で華々しく復活して欲しいと願っています。
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