ギブスンのサイバーパンクは乾いていた。血や汗は流れても、いつのまにか乾いてる。
こちらは湿った熱気が強烈に匂う。血と汗、屋台の油臭や生ゴミや尿がベットリにじむ。
3Dどころか嗅覚と肌感覚まで追体験できる迫力は、確かに、傑作の名にふさわしい。
突然変異を繰り返すウィルスに冒された世界、食糧戦争に疲弊した近未来の東南アジア。
複雑に絡んでもつれる政争、取り締まりという名の暴力、悪夢めいた暴動や市街戦。
陰で蠢く欧米の巨大資本、ほとんど日替わりする勝者、命がけの勝負を張る難民。
まるで社会派告発系ドキュメンタリーのような舞台に、数人の運命が転がる、転がる。
うー、リアル。重。どうなるんだという興味は尽きない展開と筆力だけど、
あまりのリアルな混沌と猥雑さ、割り切れなさに、なんだかどんどん疲れてくる。
これをケロリと楽しむには、若さか、暴力への秘めた憧れが必要じゃなかろうか。
きわめてリアルな混沌がなんとか収まるのは、市民が去った後の破壊された街。
3.11後の瓦礫に覆われ、沈下して上げ潮に沈む海辺をほうふつとさせる光景。
理性はこの才能を知った喜びに満たされ、感性では…ほとほと疲れました。
夢の日本女性なタイトルロールは「男の夢」に過ぎません。フッ。(鼻で笑う音)
お利口な日本男児ならとっくに醒めた夢だね、フフッ(宝塚男役風に微笑)
それより日本人と日本企業がこの事態にスマートに対処すると思われてるのが不思議。
金持ちケンカせず? 高齢化でエネルギーなし? それもなあ…
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ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 – 2011/5/20
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聖なる都市バンコクは、環境省の白シャツ隊隊長ジェイディーの失脚後、一触即発の状態にあった。カロリー企業に対する王国最後の砦〈種子バンク〉を管理する環境省と、カロリー企業との協調路線をとる通産省の利害は激しく対立していた。そして、新人類の都へと旅立つことを夢見るエミコが、その想いのあまり取った行動により、首都は未曾有の危機に陥っていった。新たな世界観を提示し、絶賛を浴びた新鋭によるエコSF。
- 本の長さ384ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2011/5/20
- ISBN-104150118108
- ISBN-13978-4150118105
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著者について
1973年コロラド生まれ。オバーリン大学で、東アジア学と中国語を専攻した。在学中から中国に渡航し、教師などをしながら数年間を中国で暮らす。帰国後はウェブ開発者や環境専門誌の編集者をしながら小説を書き、1999年に〈F&SF〉誌に掲載された中篇“Pocketful of Dharma"でデビューを果たした。2005年に発表された「カロリーマン」は、シオドア・スタージョン記念賞を受賞。2008年に発表の「第六ポンプ」では、ローカス賞ノヴェレット部門を受賞している。本書『ねじまき少女』は、2009年に刊行され、ヒューゴー賞とネビュラ賞の長篇部門、ローカス賞第一長篇部門、ジョン・W・キャンベル記念賞、コンプトン・クルック賞など、SF界の賞を総なめにするという快挙をなしとげ、タイム誌の〈今年の十冊〉に選ばれた。
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2011/5/20)
- 発売日 : 2011/5/20
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 384ページ
- ISBN-10 : 4150118108
- ISBN-13 : 978-4150118105
- Amazon 売れ筋ランキング: - 269,516位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 396位ハヤカワ文庫 SF
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2015年11月24日に日本でレビュー済み
現在地球上で懸念されている事態が、ことごとく実現した世界。
タイトルの「ねじまき少女」とは遺伝子操作を駆使して人の手で作られた新人類である。
石油が使えないこの世界では、ゼンマイを人力や動物の力によって巻き上げ、それを解放することによって起きるエネルギーを利用して生活している。このイメージから「ねじまき」は現在の感覚で言うロボットという風に受け取れるが、実際はロボットのような特徴を遺伝子的に持たされた人造生命体である。
上巻では『ねじまき少女』の仮想世界設定が400ページかけて徐々に明かされてきた。ばら撒かれた歴史や設定を読み込むこの作業に一苦労したのだが、全体像の見えないなにかを少ない手がかりで解読していく作業は、小説読みにとって快感そのものの作業でもあった。
さて下巻では、タイの心臓ともいえる「種子バンク」への侵入を狙うファランと、タイの実権を握ろうと画策する通産省(外務省・経済産業省的な役割)の動きが引き金となって、怒涛の変革が首都を襲う。
上巻の後半で活躍した環境省(検疫を司り実行部隊も抱えている)のカリスマ的存在“バンコクの虎”と称されるジェイディー・ロジャナスクチャイ隊長の死に激昂する環境省が、首都バンコクを震撼させる。
下巻からはカニヤ(ジェイディーの部下の女性)の視点が物語の背骨を作ってゆく。非服従の誇りか、寄らば大樹の安寧か。天秤をふいに手渡された彼女の心も大きく揺れ動く。
“ねじまき少女”エミコは人間の所有物である現在の境遇と習性から脱するために跳躍する。その衝撃波が世界に揺さぶりをかけ、時代が大きく動くことになってゆく。
章ごとに語り手が変わり、どちら寄りに立つわけでなく語られてきた物語が、最後の最後にグワッと読者の心を鷲掴みにする瞬間がやってくる。感極まり、まるっきり他人事だと思えなくなる。それまで気づかないふりでそらしていた目を、顎をつかんで振り向かせられた感じ。
終わってみると、エミコの生き様とカニヤの生き様は、相反するようで似通っている。
自然か反自然か、そんな二元論では語りきれないのが我々の未来なのだと、悪魔的な神がつぶやいて終幕をむかえる。これがまさに「『ニューロマンサー』的と言えるところかもしれない。
本作が書かれる前に発表された作者の短編集『第六ポンプ』には『ねじまき少女』と共通の仮想世界に属する物語「カロリーマン」と「イエローカードマン」が収録されている。
それを読むついでに他の作品も拾い読みしたのだが、少女や若い女性が物語の鍵を握っているのが印象に残った。彼女たちの決断がカタルシスへ至る最後の一石を投じた形となる、破壊と再生の女神といった趣であったのだ。
本書における“彼女たち”、エミコ・カニヤ・マイもそれぞれ働きは違えど上記のようなバチガルピ・ガールの性質を備えていた。
一見ディストピアを描いた暗い話のように思えるが、バチガルピの物語はどれも結末が妙に清々しい。多くの者がはらわたをぶちまけて死んでいく傍で、死者と等しくとるに足りない存在である語り手が、殻を破り生気をみなぎらせてどこかへ出発してゆく。そんな印象の作品であった。
タイトルの「ねじまき少女」とは遺伝子操作を駆使して人の手で作られた新人類である。
石油が使えないこの世界では、ゼンマイを人力や動物の力によって巻き上げ、それを解放することによって起きるエネルギーを利用して生活している。このイメージから「ねじまき」は現在の感覚で言うロボットという風に受け取れるが、実際はロボットのような特徴を遺伝子的に持たされた人造生命体である。
上巻では『ねじまき少女』の仮想世界設定が400ページかけて徐々に明かされてきた。ばら撒かれた歴史や設定を読み込むこの作業に一苦労したのだが、全体像の見えないなにかを少ない手がかりで解読していく作業は、小説読みにとって快感そのものの作業でもあった。
さて下巻では、タイの心臓ともいえる「種子バンク」への侵入を狙うファランと、タイの実権を握ろうと画策する通産省(外務省・経済産業省的な役割)の動きが引き金となって、怒涛の変革が首都を襲う。
上巻の後半で活躍した環境省(検疫を司り実行部隊も抱えている)のカリスマ的存在“バンコクの虎”と称されるジェイディー・ロジャナスクチャイ隊長の死に激昂する環境省が、首都バンコクを震撼させる。
下巻からはカニヤ(ジェイディーの部下の女性)の視点が物語の背骨を作ってゆく。非服従の誇りか、寄らば大樹の安寧か。天秤をふいに手渡された彼女の心も大きく揺れ動く。
“ねじまき少女”エミコは人間の所有物である現在の境遇と習性から脱するために跳躍する。その衝撃波が世界に揺さぶりをかけ、時代が大きく動くことになってゆく。
章ごとに語り手が変わり、どちら寄りに立つわけでなく語られてきた物語が、最後の最後にグワッと読者の心を鷲掴みにする瞬間がやってくる。感極まり、まるっきり他人事だと思えなくなる。それまで気づかないふりでそらしていた目を、顎をつかんで振り向かせられた感じ。
終わってみると、エミコの生き様とカニヤの生き様は、相反するようで似通っている。
自然か反自然か、そんな二元論では語りきれないのが我々の未来なのだと、悪魔的な神がつぶやいて終幕をむかえる。これがまさに「『ニューロマンサー』的と言えるところかもしれない。
本作が書かれる前に発表された作者の短編集『第六ポンプ』には『ねじまき少女』と共通の仮想世界に属する物語「カロリーマン」と「イエローカードマン」が収録されている。
それを読むついでに他の作品も拾い読みしたのだが、少女や若い女性が物語の鍵を握っているのが印象に残った。彼女たちの決断がカタルシスへ至る最後の一石を投じた形となる、破壊と再生の女神といった趣であったのだ。
本書における“彼女たち”、エミコ・カニヤ・マイもそれぞれ働きは違えど上記のようなバチガルピ・ガールの性質を備えていた。
一見ディストピアを描いた暗い話のように思えるが、バチガルピの物語はどれも結末が妙に清々しい。多くの者がはらわたをぶちまけて死んでいく傍で、死者と等しくとるに足りない存在である語り手が、殻を破り生気をみなぎらせてどこかへ出発してゆく。そんな印象の作品であった。
2012年5月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大変面白いがイーガンやチャンのようなSFではなく、それをいえばパラニュークの「サバイバー」(世界ではじめてのアイデアのお話)の足元にも及ばないが、ディックとバラードとギブスンからその弱点を取り去って合成したような面白さがある。まずストーリィに破綻がない。下巻で話が単調になるが、内乱だから致し方ない。ついでストーリィに厭きが来ない、およびストーリィが先まで読めるということがない(特に前半)。「アンドロ羊」というよりは「ブレラン」のレプリカントにも似たエミコというガイノイド(by コールター)のピュア振りが物語の清涼剤にもなっているが、やはり支配女子は殺人を起こさなければ定められた運命からは自由になれないようだ。「燃える世界」の暑さと「ニューロマンサー」の喧騒がある。また後半は幽霊が登場人物(処理的には妄想だが……)となって最後にストーリィを牽引するところが素晴らしい。カロリー企業のアンダーソンの予想とは異なって実現のこととなるエピローグの水の描写が涼しげだ。遺伝子学者で不具の神ギブセンは伝説上のアベンゼンが住むとされた高い城のような屋敷に住んでいる。彼の諧謔さはディック自身を見るようだ。ディック経由でリチャード・コールターも入っているのかもしれない。同じデッド・ガール(ガイノイド)が主人公でもあるのだから…… 一方、ワトスンの後に日本で刊行された処女作(こちらもデッド・ガールが主役で「どろろ」の百鬼丸初登場の目玉のシーンまである)とはまったく似ていないところはイーガンやチャンではないのと同じ理由。訳が悪いと言う意見もあるが、筆者は特に気にならなかった。単純な視点の話に慣れた人にはきついかも…… さらにラノベのようだという意見もあるようだが、いまの面白い話は皆ラノベらしいから、褒めているのだろう。重力さんの表紙が素敵! 最も良い読み方は上巻を読んで下巻を脳内補完することかもしれない。だが、エピソードは読もう!
2018年7月27日に日本でレビュー済み
ネタバレしたくないので内容には触れませんが、
登場人物たちに十分感情移入させるストーリー展開になっていないため
後半にはもう誰がどうなってもいいようにしか思えませんでした。
SFとしてのアイデアがストーリーに絡んでいれば楽しめたのですが、
むしろSF世界を背景にしたアクション小説、といった程度のものでした。
短編は非常に面白かったので残念。
登場人物たちに十分感情移入させるストーリー展開になっていないため
後半にはもう誰がどうなってもいいようにしか思えませんでした。
SFとしてのアイデアがストーリーに絡んでいれば楽しめたのですが、
むしろSF世界を背景にしたアクション小説、といった程度のものでした。
短編は非常に面白かったので残念。
2011年5月29日に日本でレビュー済み
エコSFという疑問だらけのキャッチフレーズや、喧伝される「新たな世界観」などよりも、これはまず何より、全編に溢れる猥雑なエネルギーが素晴らしい、滅法楽しいエンターテイメント小説であると思う。
ハッタリと活劇に溢れた手に汗握る群像劇なのだけど、個性的な登場人物たちはしかし、あらゆる要素が過剰に溢れかえり、汗や廃棄物や食物や充満し交錯する欲の臭いに溢れた未来都市・バンコクの一要素。
小説の主役は都市そのものであり、それが何よりの魅力。
石油枯渇後の社会で、遺伝子操作された象もどきがやはり遺伝子改変のゼンマイを回し「カロリーをジュールに」してエネルギー供給というハッタリはなんとも楽し過ぎる。
遺伝子操作を軸に食物流通(を基礎にエネルギーその他も)を支配し平然と国家も覆す国際企業の人員が「カロリーマン」と呼ばれているセンスも光る。
なお、題名になっている日本産の遺伝子改変新人類の一員であるトンデモ奉仕奴隷「ねじまき少女」が「日本人より日本人らしい」とか何とか言われているような、各所に見られる歪んだジャポニズムは笑って流そう。
一昔前のサイバーパンクでも読んでいれば、十分以上に耐性はついている筈。
それと、上下巻合わせて一枚絵になる表紙は鮮烈である一方、最大の魅力であるところの都市の猥雑なエネルギーがいまいち感じられないようにも思えるけど、それも「あえて」の表現なのかもしれない。
なお、ねじまき少女エミコについては「ご主人様」との関係でエイミー・トムスン『ヴァーチャル・ガール』だとか、奇形の美しさということで「人類補完機構」のク・メルだとか、新人類や人間の似姿ということでディックのシュミラクラだとかヴォクトのスランだとか。
諸々例に挙げつつ、新人類だとかフランケンシュタイン・コンプレックスだとかあるいはジェンダー云々とかの各文脈に載せ、色々とぐだぐだ言うこともできそうです。
個人的にはおよそ気乗りしませんので、詳しくはやりませんけれど。
ハッタリと活劇に溢れた手に汗握る群像劇なのだけど、個性的な登場人物たちはしかし、あらゆる要素が過剰に溢れかえり、汗や廃棄物や食物や充満し交錯する欲の臭いに溢れた未来都市・バンコクの一要素。
小説の主役は都市そのものであり、それが何よりの魅力。
石油枯渇後の社会で、遺伝子操作された象もどきがやはり遺伝子改変のゼンマイを回し「カロリーをジュールに」してエネルギー供給というハッタリはなんとも楽し過ぎる。
遺伝子操作を軸に食物流通(を基礎にエネルギーその他も)を支配し平然と国家も覆す国際企業の人員が「カロリーマン」と呼ばれているセンスも光る。
なお、題名になっている日本産の遺伝子改変新人類の一員であるトンデモ奉仕奴隷「ねじまき少女」が「日本人より日本人らしい」とか何とか言われているような、各所に見られる歪んだジャポニズムは笑って流そう。
一昔前のサイバーパンクでも読んでいれば、十分以上に耐性はついている筈。
それと、上下巻合わせて一枚絵になる表紙は鮮烈である一方、最大の魅力であるところの都市の猥雑なエネルギーがいまいち感じられないようにも思えるけど、それも「あえて」の表現なのかもしれない。
なお、ねじまき少女エミコについては「ご主人様」との関係でエイミー・トムスン『ヴァーチャル・ガール』だとか、奇形の美しさということで「人類補完機構」のク・メルだとか、新人類や人間の似姿ということでディックのシュミラクラだとかヴォクトのスランだとか。
諸々例に挙げつつ、新人類だとかフランケンシュタイン・コンプレックスだとかあるいはジェンダー云々とかの各文脈に載せ、色々とぐだぐだ言うこともできそうです。
個人的にはおよそ気乗りしませんので、詳しくはやりませんけれど。
2020年6月9日に日本でレビュー済み
"きみたちはいま、過去にしがみついてるせいで死んでるんだ。わたしたちはいまごろ、全員ねじまきになっているべきだったんだ。初期バージョンの人間を瘤病から守るよりも、瘤病に耐性を持つ人間を作るほうが簡単なんだから。"2009年発刊の本書は、SF賞を総なめにしたディストピアSF傑作。
個人的にも少し縁のあるタイ、バンコクを舞台にした本書。群像劇的に展開する上巻の途中で挫折していたのですが、今回ようやく読み終えました。
さて、そんな本書は【石油が枯渇しゼンマイ仕掛けの機械(とそれを巻く遺伝子改造された象)エネルギーが普及した】世界、また意図をもって創り出された【疫病が蔓延する一方、それに対応した穀物を法外な値段で売りつける】カロリー企業が牛耳っている世界を舞台に複数の登場人物の視点で物語がバラバラに展開していくのですが。
率直に言って、以前は【ややあやしい翻訳】それと【エネルギー資源問題、ウイルス、遺伝子操作】と現在地球上で懸念されている事態がことごとく最悪の形で実現した】ようなディストピア設定を読み込むのに一苦労したのと(この点は確かに帯通りにニューロマンザーと近い感覚)また、そこで日本企業の遺伝子操作により労働者として生まれた新人類"ねじまき少女"ことエミコが【度々性的に虐げられている場面】に嫌悪感を覚えて【上巻で挫折してしまっていた】のですが。
今回【途中から最後まで無事に読み終えて】そのエミコが自らとった行動によって【全てが加速して、見事に収束しているラスト】に拍手を贈りたくなりました。また一方で、エミコも含めた個性豊かな登場人物を勧善懲悪的ではなく【それぞれに偏らずに描いている】点も含めて面白かったです。
また東洋的なモチーフが取り入れられた似たようなディストピア世界だとブレードランナーとかを想像しがちですが。SF作品には珍しく?タイを舞台にしていることで、また違った【熱帯的な暑さや雑多感を感じさせてくれている】のも新鮮かつ本書の特徴的なところではないかと思いました。(しかし、こんな破滅の予感しかない酷い近未来が、どこかしらありうるかも?と今は思ってしまうのが怖い。。)
よく練られた設定、世界観を感じさせるSF作品好きな方へ、またSFならではのディストピア世界に浸りたい方やタイに縁ある方にもオススメ。
個人的にも少し縁のあるタイ、バンコクを舞台にした本書。群像劇的に展開する上巻の途中で挫折していたのですが、今回ようやく読み終えました。
さて、そんな本書は【石油が枯渇しゼンマイ仕掛けの機械(とそれを巻く遺伝子改造された象)エネルギーが普及した】世界、また意図をもって創り出された【疫病が蔓延する一方、それに対応した穀物を法外な値段で売りつける】カロリー企業が牛耳っている世界を舞台に複数の登場人物の視点で物語がバラバラに展開していくのですが。
率直に言って、以前は【ややあやしい翻訳】それと【エネルギー資源問題、ウイルス、遺伝子操作】と現在地球上で懸念されている事態がことごとく最悪の形で実現した】ようなディストピア設定を読み込むのに一苦労したのと(この点は確かに帯通りにニューロマンザーと近い感覚)また、そこで日本企業の遺伝子操作により労働者として生まれた新人類"ねじまき少女"ことエミコが【度々性的に虐げられている場面】に嫌悪感を覚えて【上巻で挫折してしまっていた】のですが。
今回【途中から最後まで無事に読み終えて】そのエミコが自らとった行動によって【全てが加速して、見事に収束しているラスト】に拍手を贈りたくなりました。また一方で、エミコも含めた個性豊かな登場人物を勧善懲悪的ではなく【それぞれに偏らずに描いている】点も含めて面白かったです。
また東洋的なモチーフが取り入れられた似たようなディストピア世界だとブレードランナーとかを想像しがちですが。SF作品には珍しく?タイを舞台にしていることで、また違った【熱帯的な暑さや雑多感を感じさせてくれている】のも新鮮かつ本書の特徴的なところではないかと思いました。(しかし、こんな破滅の予感しかない酷い近未来が、どこかしらありうるかも?と今は思ってしまうのが怖い。。)
よく練られた設定、世界観を感じさせるSF作品好きな方へ、またSFならではのディストピア世界に浸りたい方やタイに縁ある方にもオススメ。