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トータル・リコール (ディック短篇傑作選) 文庫 – 2012/7/5
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[収録作品]
「トータル・リコール」
「出口はどこかへの入口」
「地球防衛軍」
「訪問者」
「世界をわが手に」
「ミスター・スペースシップ」
「非(ナル)O」
「フード・メーカー」
「吊されたよそ者」
「マイノリティ・リポート」
- 本の長さ448ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2012/7/5
- 寸法10.8 x 1.8 x 15.8 cm
- ISBN-104150118639
- ISBN-13978-4150118631
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2012/7/5)
- 発売日 : 2012/7/5
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 448ページ
- ISBN-10 : 4150118639
- ISBN-13 : 978-4150118631
- 寸法 : 10.8 x 1.8 x 15.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 56,678位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
SF翻訳家、書評家、アンソロジスト。
1961年2月2日、高知県高知市生まれ。高知市立追手前小学校、土佐中・高等学校を経て、京都大学文学部文学研究科卒(英語アメリカ文学専攻)。
1986年、マリオン・ジマー・ブラッドリー『惑星救出計画』でSF翻訳者デビュー。訳書は、バリントン・J・ベイリー『時間衝突』『ロボットの魂』(以上、創元SF文庫)、P・K・ディック『ザップ・ガン』、コニー・ウィリス『ドゥームズデイ・ブック』『航路』など約100冊。共訳書に劉慈欣『三体』三部作、『円』『球状閃電』『超新星紀元』、『カート・ヴォネガット全短篇』全4巻(以上、早川書房)など。
編訳書に、シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』『輝く断片』(河出文庫)、コニー・ウィリス『最後のウィネベーゴ』(河出書房新社)、『マーブル・アーチの風』、(早川書房)など。
スタージョン「ニュースの時間です」、テッド・チャン「商人と錬金術師の門」、劉慈欣「流浪地球」(共訳)の翻訳により、第36回、第40回、第54回星雲賞海外短編部門を受賞。ベイリー『時間衝突』、劉慈欣『三体』『三体Ⅱ 黒暗森林』で星雲賞海外長編部門受賞。
〈小説奇想天外〉の翻訳SF時評「海外SF問題相談室」を皮切りに、各紙誌にコラム・書評を連載。〈本の雑誌〉新刊SF時評は1990年から(二度の中断をはさみ)継続中。
2004年3月に豊崎由美との共著『文学賞メッタ斬り!』を刊行。
2008年からアンソロジストとしても活動。創元SF文庫『年刊日本SF傑作選』(日下三蔵と共編)とその後継の『ベストSF』(竹書房文庫)、『不思議の扉』(角川文庫)の各シリーズや、『ゼロ年代日本SFベスト集成』全2巻、『時間SF傑作選 ここがウィネトカなら、きみはジュディ』などのSFアンソロジーを編纂。責任編集の河出文庫『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』全10巻で、第34回日本SF大賞特別賞、第45回星雲賞自由部門受賞。
著書に『20世紀SF1000』、『新編 SF翻訳講座』、『50代からのアイドル入門』、『現代SF観光局』など。
1995年4月に開設したウェブサイト(http://www.asahi-net.or.jp/~KX3M-AB/)の日記は、その一部が、『狂乱西葛西日記20世紀remix SF&ミステリ業界ワルモノ交遊録』にまとめられている。
ツイッターのアカウント(@nzm)は、http://twitter.com/nzm/
日本推理作家協会、本格ミステリ作家クラブ、日本SF作家クラブ会員。「ゲンロン 大森望 SF創作講座」主任講師。
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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本作も、10年くらい前に読んでいたなら、おそらくん何を言っているのか突拍子もなさすぎて読了できたか、自信がない。
現在、人間の頭脳がAIにかなわないとか、バーチャルリアリティが身近になり仮想現実体験ができたり、防犯カメラや携帯カメラで、事件事故の映像が見られたり、人間型ロボットが生活に入ってきたり、自動車の自動運転課されたり、はたまた 国が集団的自衛権・特定秘密保護法・情報監査委員会というような事象が、源氏に語られることが多くなったが故、ようやく本作品群も、ピンっとくるようになり、作者の先進すぎる発想に、恐れ入る。
デイックの作品初めて読むので、各作品、どういう内容を扱い、そういう結末を迎えるかが想像できないので、1度読みでは、深くは理解できず、2読目で、ようやく納得できる感じです。じょれからこんな世界になるのでしょうかね・・?
ネタバレになりますので深く書きませんが、「地球防衛軍」「訪問者」は立場の逆転という視点を、「世界をわが手に」はいまでいうシミュレーション仮説につながる話です。「ミスター・スペースシップ」はBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)、「フード・メーカー」は、デジタル監視社会といった形で、むしろ2023年に読むほうが、リアリティを増しているという作品もあると思います。私は個人的に「世界をわが手に」が特に印象に残りました。この短編の中で、世界球という玩具を作っている会社の社長が、「人々は倫理観だけでは動かないんだよ、そうではなく・・・・」というシーンがあり、これは現代のSDGsへの大いなる警句だと思いました。つまり「サステナブル」「持続可能な社会」と倫理だけに訴えていても、一部の人は従うがマジョリティは動かないだろう、ということを想起させるわけです。SFのストーリー展開が卓越しているだけでなく人間心理を深くついた作品集だと思います。
映画やコブラとはまったく違って、地球内で完結して火星や宇宙に行くことすらないです。
ディックの小説 → コブラ(漫画)→ トータル・リコール(映画)
とオマージュされているようですね。
それ以外の作品もおもしろかったです。
ご一読あれ。
①トータル・リコール・・・映画 (シュワルツェネッガー主演 及び コリン・ファレル主演) とはかなり違った展開だが、この原作のプロットの巧妙さとスピード感、サスペンスあふれる筆致は数あるディックの短篇の中でも群を抜いており、何度も映画化されるのもうなずける。ただし何度映画化されても、そのまま真似をしたのでは原作を越えるのが難しいからか、映画ではそれぞれ映像作品ならではの特色あるストーリーやガジェットを加味して観客を楽しませるように作られているようだ。
②出口はどこかへの入り口・・・一介のセールスマンであるバイブルマンが、ハンバーガー屋さんでのくじ引きで大当たりを引いて名門大学へ進学するという話。出だしからブッ飛んだ展開だが、学内で仲良くなった美人女子学生メアリーと過ごす学生生活での出来事もブッ飛んでおり、またどこかユーモラスで、最後のオチには思わず「うーん、そうだったのか!」と感嘆してしまった。
③地球防衛軍・・・地上は米ソの核戦争で汚染され荒廃したので、人間は8年前から地下深くで暮らすようになり、地上では米ソ双方のロボットによる代理戦争がずっと続いている。人間は地上の戦況を映像でしか確認できない。定期的に地下へ戦況報告に降りてくるロボットの報告に疑問を抱いた人間の軍首脳部はある日、汚染されているはずの地上に上がろうとするのだが・・・。ヒューマニティーあふれるラストには感動させられた。
④訪問者・・・全面核戦争から3世紀を経た遠未来。人間をふくめた地上の生物たちは放射能汚染への耐性を獲得し独自の進化をとげていた。真正の人間は、全面戦争勃発時、地下に逃れた少数の人々だけ。そしていま真正人間は仲間の真正人間を求めて防御服に身をかため汚染された地上を捜索している。彼らが捜索の果てに出会ったのは・・・。衝撃のラストに込められた逆転の発想が鮮やかだ。
⑤世界をわが手に・・・人間の持つ破壊衝動に対するひとつの解釈か。ディックお得意の不健全なドラッグノベルっぽいストーリー。ラストに救いがありカタルシスが味わえる。
⑥ミスター・スペースシップ・・・宇宙船に人間の脳を移植するというアイデア自体はありふれているが、古来、戦争に明け暮れ、今はプロキシマ・ケンタウリ星人と戦争状態にある戦争好きな人類の一員 (ひと組のカップル) を、そんな閉塞状態から救い出すために脳移植宇宙船が活躍するのが秀逸。しかも、脳を提供したのは主人公クレイマーの大学時代の恩師である偏屈で個性的な老学者であるところが素晴らしかった。
⑦非O・・・いま流行りのサイコパスが主人公。非О(オブジェクト)思考を信奉するサイコパス軍団が、地球を、銀河を、そして宇宙全体の覆滅を画策するのだが・・・。サイコパス軍団が破壊に使う爆弾の名前が、出てくるたびに大笑い。水爆を越えるC爆 (コバルト爆弾)、さらには地爆 (地球を破壊する)、金爆 (金星破壊・ゴールデンボンバーかい?)、太爆 (太陽破壊!)、銀爆 (銀河系破壊!!)、宇爆 (宇宙破壊!!!)。狂気のサイコパス軍団の恐るべき野望がどこまで成就するかは読んでのお楽しみ。
⑧フード・メーカー・・・・・・フード (頭環) はテレパスから心を読まれないための防具。新人類テレパス VS 旧人類の戦いと一言で言ってしまえば、ヴァン・ヴォークトの傑作「スラン」と似たシチュエーションだが、ラストに大きなどんでん返しが待っている。
⑨吊されたよそ者・・・主人公ロイスは車での通勤途上、通りの真ん中にある小さな緑地帯に立つ街灯に死体が吊るされているところを発見して愕然とする。だが周囲を歩く人々も警察さえもその光景を不思議とも何とも思っていない。ディックの作品にはよくある現実崩壊のシチュエーション。追い詰められたロイスは隣町まで命からがら逃げ延びてその町の警察に救いを求めるのだが・・・。SFホラーの佳作。
⑩マイノリティ・リポート・・・トム・クルーズ主演の映画で有名な作品。全体のストーリーが映画とはかなり異なっているものの、原作のストーリーテリングの冴えはディック短篇の中でもおそらく屈指ではないか。10ページも読まないうちに謎めいた出来事が起こり、さらに中年太りの主人公アンダートンが、若くて美しい妻リサとイケメンの青年ウィットワーとの仲を疑いだすに及んで、アンダートンに取っていったい誰が敵で誰が味方なのか分からなくなる。謎が新たな謎をよび、ハラハラドキドキのし通しで、ページをめくる手が止まらなくなってしまう。怒涛のSFサスペンス。