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素顔のユリーマ,月の裏側,楽園にて,パイン・キャッスル他

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本の長さ

463ページ
言語

日本語
出版社

早川書房
発売日

2012/11/1
ISBN-10

4150118728
ISBN-13

978-4150118723
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出版社 ‏ : ‎ 早川書房 (2012/11/1)
発売日 ‏ : ‎ 2012/11/1
言語 ‏ : ‎ 日本語
文庫 ‏ : ‎ 463ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4150118728
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4150118723

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R．A．ラファティ

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中島弘貴

昔には帰れない

2013年12月10日に日本でレビュー済み

Amazonで購入

「SF界のホラ吹きじいさん」と呼ばれたラファティの短篇集。彼の小説の全貌は、そのあだ名に反してSFの範疇のみに収まるとは到底思えない。人間や動物はもちろん異星人や異星生物、機械、神、悪魔、幽霊、想像を絶する謎の存在などが繰り広げる独特の物語世界なのだ。
大河とその河岸を丸ごと封じ込めた長大な絵、笛を吹くと地上に降りてくる小さな月、漫画を書く猿人や命を持つおが屑人形頭の巡りの極めて悪い発明の天才…ラファティの他の作品と同じく、とても考えつかないアイデアが本書にもたくさん詰め込まれており、愉快なキャラクターや事件で溢れ返った軽快な語り口の物語は実におもしろく読める。しかも、その語りとは裏腹の、深遠な哲学と世界や社会への絶大な賛美や痛切な批判が散りばめられているように思われるのだ。だから、この本に収録された短篇の多くは読者の心に余韻を残し、何らかの種を蒔きうる秀作であると言えるだろう。それでは、その一端を示す作中の台詞の抜粋を以下に挙げて結びとします。

「(この世界は)人間も含めて、ありとあらゆるものが完全で、どれも似たりよったりだ。何もかもを手に入れ、きちんと並べてしまった。わたしみたいながらくたがいる場所は、この世にはないんだ」【「素顔のユリーマ」より】
「過去のできごと―そのすさまじい総体というものは急速に嵩をなくしていく。かつて起こったことは、どんどん起こらなかったことにされていく。もちろん実質的な中身は、圧縮されながらも、行間から苦しみの悲鳴をあげているかもしれない」【「行間からはみだすものを読め」より】

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hp

素っ頓狂な特徴は薄くてもやっぱりラファティは魅力的

2012年12月7日に日本でレビュー済み

Amazonで購入

伊藤・浅倉共訳のラファティ短編集の新刊？とちょっと驚きつつ、当然のように予約購入してしまいました。
伊藤典夫さんのあとがきを読むと、単純に続刊が遅れて今になったということらしく、ラファティファンとしては怒るべきなのかもしれませんが、こんなに年月が経ってから普通に刊行されるのも、何となく昔の英米のアンソロジーや雑誌のようで、悪くない気がします。

内容的には、ラファティらしい素っ頓狂なアイデアや、空高く飛んでから急降下させられるようなちょっと居心地の悪い楽しさ、といった特徴は薄くなってしまったように思われます。展開としても愛読者にとっては予測の範囲内というものが多いような...

けれども素っ頓狂な楽しさが薄れた分、ウェットなのかドライなのかよくわからない世界観・人間観、哲学的な考察が強調されています。でもそれも、深いのかどうなのか、実はよくわからないような...そして実は、こういう固定できない鬼火のような印象がラファティの一番の魅力だと個人的には思っていますが、それが読後もさらにじわじわと増幅していくようで、やっぱりラファティはいいなと再確認しました。

それにしても、伊藤さんがあとがきで言及されている「どろぼう熊の惑星」も「つぎの岩につづく」も確か品切れ中でしたよね？早川さん、せっかくだから復刊してラファティ初心者をもっとディープに楽しませてあげてください！

18人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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ZEPHYROS

流石にラファティ！

2013年2月3日に日本でレビュー済み

Amazonで購入

短編集。ＳＦと云うよりは奇妙な味の作品が主体。「月の裏側」などニューヨーカーに掲載されてもおかしくない感じの作品だ。「パイン・キャッスル」はラストがピリッと利いたホラー。特に秀逸と感じられたのは、第二の月が地球の大気圏内どころか地上に近い所を漂っていると云うアイデアを子供時代への郷愁と云う形で描いた表題作、アウストラロピテクスに幽霊に意思を持った人形だのが居る「行間からはみだすものを読め」、テレビドラマの中に入り込んだ音声が劇中劇のドラマとは別なドラマを進行させ、１３本目のドラマで全てが明らかになる・・・いや、そもそも１３本目はドラマではなくドラマの作り手達の運命そのものである「1873年のテレビドラマ」。他にも皮肉なオチの「崖を登る」、生物の大移動が起こる「すべての陸地ふたたび溢れいづるとき」など美事。

9人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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buena

不思議世界

2014年10月20日に日本でレビュー済み

第一部
「素顔のユリーマ」「月の裏側」「楽園にて」「パイン・キャッスル」「ぴかぴかコインの湧きでる泉」「崖を登る」「小石はどこから」「昔には帰れない」
SFカラーはやや控えめで、人間の内面が持つ矛盾、欲を鋭く小気味よく描いています

第二部
「忘れた偽足」「ゴールデン・トラバント」「そして、わが名は」「大河の千の岸辺」「すべて陸地ふたたび溢れいづるとき」「廃品置き場の裏面史」「行間からはみだすものを読め」「一八七三年のテレビドラマ」
第一部よりハイレベルです
ワクワクする高揚感が味わえます
しかし、最後の2編はギブアップ
ラファティ自身によれば大傑作なのだそうですが、何が書いてあるのか全く理解できませんでした

読み終えて思い出すのは「トワイライトゾーン」でしょうか
レンズの向こうの別の世界を覗き見たような…

大人になってからはＳＦ小説を読む機会が減りましたが、時には読んでみるのも良いですね

1人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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夢追人009

時々出て来るおふざけや冗談と上手につきあいながら奇妙奇天烈なＳＦ落語を楽しもう！

2016年3月6日に日本でレビュー済み

ＳＦ界きっての稀代のホラ吹きおじさんとの異名を取る異才ラファティの傑作１６編を収録した日本オリジナル短編集です。本書収録の短編群を読んでの第一印象は、これは完全に「ＳＦ落語の世界」だなという思いでしたね。時々出て来るこれでもかとばかりのおふざけや冗談を読んでいると時には正直イラッとする事もありましたが、まあ例えシリアスなテーマの物語であっても何処かに笑いの要素を入れないと気のすまないのが著者の流儀で芸風なのだと諦めて辛抱強く最後までつきあい深く真面目に考えすぎずにシンプルにあっけらかんと大笑いするのが正しい読み方だと言えるでしょうね。
『素顔のユリーマ』この世に生まれた最後の愚純な子どもアルバートは生きるのが下手で困難に直面する度に便利な機械を作って何とか誤魔化して来たのだが・・・・。そもそも阿呆に複雑な機械を作るだけの頭脳が備わっているだろうか？という変な筋立てが常人には思いつかない著者一流のとぼけたジョークですね。最後の方は笑うに笑えない暗く悲しい結末になりそうだったのがどうにかこうにかご陽気に終わってホッと安堵しましたね。『月の裏側』誰もが毎晩おなじ街角でバスを降りる習慣だったのに、ジョニーはそのパターンを破ったブロンド娘に影響を受け自分も敢えて別のバス停で降りてみると・・・・。「知らぬは亭主ばかりなり」をＳＦ的比喩で表現した単純だけど笑えるオチですね。『楽園にて』ハ＝アダマー、ハウワーと名乗る人間の男女二人しかいない惑星を見つけた調査隊の一行は感激しここを理想の楽園と信じるのだが・・・・。仕掛けはまあ想定内ですが、最後の問答の台詞が笑えますね。『パイン・キャッスル』真っ暗闇の狭い飲み屋〈松の城〉でスティーヴンは不気味な客達から人間の根源的な恐怖について次々と聞かされるのだった。細部は曖昧ながらもブラックな衝撃の恐怖譚ですね。『ぴかぴかコインの湧きでる泉』無限に銀貨のなくならない銭入れを持つ爺さんマシューの運にも翳りが出て遂に駒鳥と会話する程に落ちぶれる。「恐るべし！爺さんの生への飽くなき執念」と笑いを超越して心から感嘆しますね。『崖を登る』太古の昔から繰り返されて来たどこまで高く崖を登れるかにチャレンジした人々の物語。人々の行為を下らない事だと茶化さずに尊敬の念を込めて讃える筆致が清々しい読後感です。『小石はどこから』雨が降った後は決まって窓の下に小石がたまる謎に挑む男の話で、最後はＳＦならではの無責任で滅茶苦茶な結末ですね。『昔には帰れない』〈まいご月の谷〉に浮かぶ岩で月のホワイトカウ・ロックで遊んだ子供時代の仲間が大人になって再び彼の地を訪れると・・・・。昔はあんなに素晴らしく思えたのに今となれば幻滅しか感じられない、っていう経験は悲しいけれど良くある話ですね。『忘れた義足』エイリアン専門の名医ドゥーク＝ドクターに死の時が近づくのだが中々悟りが開けずに悩み抜いて・・・・。完全な球体生物スファイリコス族の持つ特別なサルヴ（慰め）とはどんな物なのか？ぜひとも体験したいと思いますが残念ながら絶対に不可能ですね。『ゴールデン・トラバント』密輸金塊の取引業者パトリックが怪しい船乗りの男シルドから買った地球外の金塊にまつわる話の顛末。何とも凄すぎるこの粘り！シルドはマシュー爺さんと同じＤＮＡの持ち主かも知れませんね。『そして、わが名は』輝く男が何処から現われ全ての生き物を集め名づけた後で再び送り返して行く。驕れる人類に反省を促す著者流の滅びの終末ＳＦ奇譚ですね。『大河の千の岸辺』金持ちのインディアンにしてあらゆる物の収集家のレオが今度は長く巨大な絵の断片を集めまくる。このとんでもなく巨大な絵を描いた作者の正体とは？最後まで謎が解明されず結局謎のままなのは残念ですが、でも神秘的で却って良いのでしょうね。『すべての陸地ふたたび溢れいづるとき』終末ＳＦ奇譚の２つ目はもっと過激で躍動的な突拍子もない展開のドラマですが、でもこちらの方はそれ程に絶望的でなくもう一度やり直せそうな未来への希望が感じられますね。『廃品置き場の裏面史』ポルダー通りの廃品置き場を舞台に繰り広げられる警察官ドラムヘッド・ジョー・クレスと犯罪者Ｊ・パーマー・キャスとの狂気を帯びた対決のサイコ・ドラマ。まあこういうオチになるのは仕方ないのでしょうけれどありきたりの真相ではつまらないので、私は見えない犬ジャンクヤードが本当に実在するのだと思いたいですね。『行間からはみだすものを読め』バーナビイ・シーン邸で当主と四人の友人達と奇妙な連中、猿人（？）アウストロ、人形の娘ロレッタ、幽霊メアリが集まってどうにも理解不能な調子の狂った会話が延々と続く。うーん、完全には理解できなくてもいいから著者が大いに乗って楽しんで書いている気持ちが伝わって来るハチャメチャなストーリーを最後まで味わいつくしましょう。『一八七三年のテレビドラマ』一八七三年を皮切りに作られたオーレリアン・ベントリー作の１３本のテレビドラマのアウトラインが紹介される。まあ、これは著者の頭の中だけにあるパラレル・ワールドの世界のドキュメンタリーで要するに何でもありなのでしょうね。最高の女優クラリンダ・カリオペーはどうしてこんなにたくさん何役もこなさなければいけなかったのか？他にまともな女優は誰もいなかったのか？と呆れますね。最初から最後までしつこくこれでもかとばかりに繰り返される幻の声の侵入音声もさっぱり訳のわからないセレン（若しくはスロー・ライト）理論も有り得るはずもない出鱈目の酷い物でしたね。でもまあ随所に笑いながら奇妙奇天烈なＳＦ落語をたっぷりとお腹一杯楽しめて満足出来た一冊でしたね。

2013年1月20日に日本でレビュー済み

ラファティの名前を聞き、少しでも彼のことを知っている人間は、彼のことをどう表現するだろうか？サイエンスフィクションの旗手？スーパーナチュラルの名手？否！『自分でも何を言っているのか分からないが、ありのままを話す』と、こうなるはずだ。『ラファティの作品をSFだと思って読んでいたら、いつのまにかとんでもないところに連れていかれちまった！』と。…誰が言ったか、彼は世界最高のホラ吹きじいさんなのだそうだ。ところが、このホラの気宇壮大なこと、ただごとではない。どういう意味か？説明不能！とにかく読んでもらうしか、ない。ただし！ラファティを読む際の注意その１。長編は避けるべし。その２。短編はできるだけ短いものを選ぶべし。で、ないと、じいさんの本当の魅力に触れる前に、せっかく購入した本を投げ出してしまいかねない。いや、マジで！それにしても、だ。「失踪日記」で著名な吾妻ひでお氏もパロディにしていたラファティ。「おばあさん９００人とすれちがう！」など、元ネタを知っていてもフツ―の頭からは出てこないし、そもそも元ネタ自体が、フツ―じゃ、ないっ。彼の本を訳してきた人々は無条件にエライ！自動翻訳ソフトなどつかったなら、おそらく１ページもまともに訳せないであろう。この本は、それら訳者の技量を吟味するうえでも、格好のテキストと言える。ああ、じいさん、あんたはホントに異才だった。紙一重だった。故人だということがまだ、信じられない。その魂に、安らぎと笑いと、あんたの得意技の「投げっぱなし」とあれかし！

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