この「魔術師ベルガラス」シリーズは、「ベルガリアード物語」「マロリオン物語」の前日談にして後日談という外伝的な位置づけであるが、まさに最終巻の本書は読み終わるとまた「ベルガリアード物語」から読み直したくなる魅力に溢れている。
本書の前半は、いよいよ「球」奪還のために大軍を起こしたアンガラクの竜神”カル・トラク”と西方の諸国の正面対決である、ポー・ミンブルの戦役に、後半は「ベルガリアード物語」前夜に至るまでの双方の動きが綴られている。
まず、圧巻なのはポー・ミンブルの戦役である。各民族の特色と双方の魔術を存分に活躍したファンタジー世界の戦争は、既に「ベルガリアード物語」のタール・マードゥの戦いでも描かれているが、圧倒的な大軍を前にして、あやふやな予言を読み解きながら防衛戦のための足並みを揃え、民族間の不和を乗り越えて困難な防衛戦を成功させるというのは実に読み応えがある。遅滞戦闘、防衛サイドでの攻城戦、そして魔術師ならではの上空からの指揮などはまさに手に汗握る描写であるが、各民族の足並みを揃える部分、ゴリムの人格やトルネドラ軍人のプロフェッショナル振りの評価なども面白い。
そして、後段の前夜に至るまでの”準備”であるが、あやふやな予言に振りまわされ、不幸を目の当たりにせざるを得ない”永遠の者”の悲しみが描かれる。特に、「ベルガリアード物語」で解決される諸問題に関しては、本作の中では”やられっぱなし”とでもいうような歯がゆさが漂い、ともすれば”予言”や”宿命”に腹立たしさを感じて、”宿命”の裏をかこうとするベルガラスに感情移入してしまう。
もちろん、その中にもベルガラスの喜びや「ベルガリアード物語」への希望も綴られているが、やはり「ベルガリアード物語」を読まないと落ち着けそうもない。既存のシリーズを読みながら、続刊予定の「女魔術師ポルガラ」シリーズを本書でのセ・ネドラよろしくなんとしても待つことにしようと思う。
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王座の血脈 魔術師ベルガラス (3) (ハヤカワ文庫 FT エ 1-29 魔術師ベルガラス 3) 文庫 – 2005/9/9
デイヴィッド&リー・エディングス
(著),
宇佐川 晶子
(翻訳)
- 本の長さ463ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2005/9/9
- ISBN-104150203970
- ISBN-13978-4150203979
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2005/9/9)
- 発売日 : 2005/9/9
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 463ページ
- ISBN-10 : 4150203970
- ISBN-13 : 978-4150203979
- Amazon 売れ筋ランキング: - 752,978位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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