城主の地位に固執するあまり跡継ぎである息子まで敵視するフェンウィックの虐待から逃れるねため、ワードウィクは幼い頃から愚か者のふりをしてきた。
ついに恐るべき父親は狩りの最中の不慮の事故で他界し、晴れて自由に振舞えると思ったワードウィックだったが、これまでの演技が災いし、国王から「城主たるの資格なし」との烙印を押されてしまう。
あわや療養院送りになるところを辛くも逃げ出したワードウィックは、戦雲の近づきつつある南方で自慢の腕っ節を頼りに名を上げようとするのだが・・・・
舞台となるのは5つの領地からなる「五王国」。
どの領地も以前は独立していたが、今はタルベン国のジャコベン王が統べており、ワードウィックの一族は代々最北方に位置するヒューログ城の城主の家柄だ。
「ヒューログとはドラコンのこと。」という書き出しで始まるため、城とドラゴンの間に如何なる関係にあるのかと思うが、その答は中々現れない。
また、戦場で一旗上げるために旅立ったワードウィックだが、同行する者達の個性の強さなどによって波乱に富んだものとなっている。
特にフェンウィックの死と時を同じくしてワードウィックの前に現れたオレグは不思議な存在だ。
ヒューログ城の人間に「一族の守護霊」として認識されているこの少年は、ワードウィックの祖父・曽祖父はおろか、数百年も遡った初代城主の時代から仕えており、若い見掛けによらず広い知識と宮廷魔術師を超えるほどの魔法を操る。
一行の中にはワードウィックとは異なる形で父親の虐待から逃れていた弟のトステンも居るのだが、彼とオレグの外見が極めて似通っているという伏線に着目すると、色々な想像が働いて面白い。
ワードウィックとは行動を共にするわけではないが、彼の従兄にあたる双子の兄弟エルドリック(プレイボーイ)とベックラム(学究肌)は当初敵役のように登場するものの、宮廷政治の世界からワードウィックを支援して印象が変わってくる。
ワードウック達一行の冒険行と王や双子達の間での陰謀劇が交互に語られる様子はG.R.R.マーティンの大河ファンタジー「氷と炎の玉座」を想起させられるが、こちらは僅かに450ページ弱。
かと言って詰め込んだ窮屈さは感じられず、無理の無い大団円も気持ち良く纏まっており、やたらにシリーズものが目立つこのジャンルの中では比較的手に取り易いのではないだろうか。
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ドラゴンと愚者 (ハヤカワ文庫 FT フ 15-1) 文庫 – 2007/7/1
- 本の長さ454ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2007/7/1
- ISBN-104150204462
- ISBN-13978-4150204464
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2007/7/1)
- 発売日 : 2007/7/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 454ページ
- ISBN-10 : 4150204462
- ISBN-13 : 978-4150204464
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,633,283位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2017年7月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2010年1月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「裏切りの月に抱かれて」を読んでからブリッグズに興味を抱き、いくつか作品を読んだ後こちらの本を読んでみた。
凶暴な父を怖れて愚者を装ってきた主人公が、とある逃亡奴隷を保護した事から物語は動き出す。政治、戦争、魔術、伝承がうずまく中世のような世界は大変面白く、展開が早いので気楽に楽しめたが、一方で非常に中途半端な物語でもあった。
この作品は主人公の一人称視点と、作家の三人称視点のミックス構成なのだが、この視点の違いを作品として生かせなかった事がこの"中途半端"感の原因ではないだろうか。
三人称部分で語られる人物たちはいずれも複雑な背景を持ち、生きる方向を模索している。個々人に関して非常に詳しく語られてもいるが、これらの人物たちはメインのプロットに関して言うと活かされていない。
父の影響を怖れたり、伝承の王の勲にあこがれたりしながら戦いを通じて成長してゆく主人公ワードを追うのはスリリングである。彼に影のように従う守護霊オレグの存在も面白い。
このメインのプロットの外側に、失礼な言い方だが、やたらごちゃごちゃと問題を抱えた人々がいる、というだけになってしまっている。
もうひとつ気になった点は、出てくる女性陣がすべて平板な点だ。男性陣はそれなりに多面的なキャラクターになっているが、女性陣は人間に限らず聖獣までもが深みのない、感情移入しずらいキャラクターだった。
最期に、この作品は作家Ms.Briggsについて考える題材としては大変興味深い。
現在彼女はひとつの世界設定で、一人称視点の作品と三人称視点の作品を並行して書いているが、これがどちらを読んでも上手く影響しあっており面白い。作家としての成長を強く感じる。
凶暴な父を怖れて愚者を装ってきた主人公が、とある逃亡奴隷を保護した事から物語は動き出す。政治、戦争、魔術、伝承がうずまく中世のような世界は大変面白く、展開が早いので気楽に楽しめたが、一方で非常に中途半端な物語でもあった。
この作品は主人公の一人称視点と、作家の三人称視点のミックス構成なのだが、この視点の違いを作品として生かせなかった事がこの"中途半端"感の原因ではないだろうか。
三人称部分で語られる人物たちはいずれも複雑な背景を持ち、生きる方向を模索している。個々人に関して非常に詳しく語られてもいるが、これらの人物たちはメインのプロットに関して言うと活かされていない。
父の影響を怖れたり、伝承の王の勲にあこがれたりしながら戦いを通じて成長してゆく主人公ワードを追うのはスリリングである。彼に影のように従う守護霊オレグの存在も面白い。
このメインのプロットの外側に、失礼な言い方だが、やたらごちゃごちゃと問題を抱えた人々がいる、というだけになってしまっている。
もうひとつ気になった点は、出てくる女性陣がすべて平板な点だ。男性陣はそれなりに多面的なキャラクターになっているが、女性陣は人間に限らず聖獣までもが深みのない、感情移入しずらいキャラクターだった。
最期に、この作品は作家Ms.Briggsについて考える題材としては大変興味深い。
現在彼女はひとつの世界設定で、一人称視点の作品と三人称視点の作品を並行して書いているが、これがどちらを読んでも上手く影響しあっており面白い。作家としての成長を強く感じる。
2008年2月12日に日本でレビュー済み
異世界ファンタジーで、主人公は城主の息子、
城主の死から物語りは動いていきます。
いざこざに巻き込まれ、飛び込んでいった主人公は
城の幽霊で魔法使いのオレグ、口の聞けない妹や従者、などと
連れ立って領地から脱出します。
父親の死を切っ掛けに、今まで父親の暴力から身を守るため愚者の
ふりをしていた主人公が、仮面を脱ぎ成長していく様は読んでいて
とても楽しく、また愚者のふりを十数年続けていたために、少し間がぬけている
ところも読みどころです。
物語は後半に向けて、国の政治や諸外国との関係も絡んでどんどん
膨れてゆきます。
軽快なテンポや、ころころかわる場面で一気に読んでしまいました。
主人公、その他登場人物も魅力的で、なかなかの痛快ファンタジーです!
城主の死から物語りは動いていきます。
いざこざに巻き込まれ、飛び込んでいった主人公は
城の幽霊で魔法使いのオレグ、口の聞けない妹や従者、などと
連れ立って領地から脱出します。
父親の死を切っ掛けに、今まで父親の暴力から身を守るため愚者の
ふりをしていた主人公が、仮面を脱ぎ成長していく様は読んでいて
とても楽しく、また愚者のふりを十数年続けていたために、少し間がぬけている
ところも読みどころです。
物語は後半に向けて、国の政治や諸外国との関係も絡んでどんどん
膨れてゆきます。
軽快なテンポや、ころころかわる場面で一気に読んでしまいました。
主人公、その他登場人物も魅力的で、なかなかの痛快ファンタジーです!
2007年7月30日に日本でレビュー済み
竜やドワーフなどが存在する世界で,剣豪の王子が,魔法使いや剣士などの仲間とともに活躍するファンタジー小説です。
ファンタジーとはいえ,人間中心で,魔法使いや魔物は脇役です。
敵も魔物ではなく人間です。
行動中心で物語が展開してゆき,心理描写が延々続くような箇所はありません。
敵味方を明確に分けて,勧善懲悪的な展開をする,子供向けのファンタジーのような単純さなく,人間関係はやや複雑で屈折しています。
ラブロマンスはほとんど無しです。
物語は,コンパクトで読みやすいボリュームです。
英語版は,続編が出ているようですが,続編を前提として書かれた本ではないので,文庫本1冊できっちり完結しています。
ファンタジーとはいえ,人間中心で,魔法使いや魔物は脇役です。
敵も魔物ではなく人間です。
行動中心で物語が展開してゆき,心理描写が延々続くような箇所はありません。
敵味方を明確に分けて,勧善懲悪的な展開をする,子供向けのファンタジーのような単純さなく,人間関係はやや複雑で屈折しています。
ラブロマンスはほとんど無しです。
物語は,コンパクトで読みやすいボリュームです。
英語版は,続編が出ているようですが,続編を前提として書かれた本ではないので,文庫本1冊できっちり完結しています。