神林長平初期短編集を再読。当時は、才気に溢れSFマインドも濃厚な作品を次々に発表する脅威の新人で、将来を大いに嘱望されていたと思うが、その後期待通り日本を代表する最強SF作家に成長した。彼の作品をリアルタイムで読む事が出来たのは、SFファンとしては僥倖の一語である。
今読んでも十分評価に値する傑作揃いと思ったが、表題作に顕著な、小説と言う文系的なものに理系的なアプローチを試みる斬新さが彼の武器であり、魅力である事を再認識した。余計な情緒的主観を排除したハードボイルドな文体が彼の特徴で、その文体自体がSF迪なのだ。
どの後の名作群を知っているので満点評価とはしないが、大物の片鱗を十分にうかがわせる作品種で、今でも一読の価値はあると思う。
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言葉使い師 (ハヤカワ文庫 JA 173) 文庫 – 1983/6/29
神林 長平
(著)
- 本の長さ262ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日1983/6/29
- ISBN-104150301735
- ISBN-13978-4150301736
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (1983/6/29)
- 発売日 : 1983/6/29
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 262ページ
- ISBN-10 : 4150301735
- ISBN-13 : 978-4150301736
- Amazon 売れ筋ランキング: - 446,738位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1953年新潟県生まれ。1979年、第5回ハヤカワ・SFコンテスト佳作入選作『狐と踊れ』で作家デビュー。
第1長篇『あなたの魂に安らぎあれ』以来、独自の世界観をもとに「言葉」「機械」などのテーマを重層的に絡みあわせた作品を多数発表、SFファンの圧倒的な支持を受けている。『敵は海賊・海賊版』、『グッドラック 戦闘妖精・雪風』などの長短篇で、星雲賞を数多く受賞(以上、早川書房刊)。1995年、『言壺』で第16回日本SF大賞を受賞した。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年11月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2001年2月7日に日本でレビュー済み
いきなり舞台は火星で、主人公は描けなくなった画家。心理治療士の勧めで、スフィンクス=マシンに会いにゆく。 --語り口のテンポがよく、冒頭からのめり込んでしまった。
(余談:神林作品全般の特徴だが、この仮想生物の生態などが、一定の科学的法則にきっちり従うものとして、その科学側面がきっちり説明される。感情表現の言葉ではなくて、物理や科学理論の言葉で法則が説明される。この感触をして私はSFを感じる。)
この短編集のなかでは、「甘やかな月の錆」が内容も文章も一番好きだ。 多少ネタバレになるが…
文章としては、前半の小学生としての自我を描く文体が醸し出す「甘い日々の追憶」に心を動かされる。この主人公は母を好きになり、大人になれない自分を悔やむ。しかし、自分自身はそのことを理解しておらず、どうして変な感じがするのか思い悩む。
通常であれば、「大人になれない自分」は、幼少の焦りにすぎない。しかしこのお話では、ここをSFにした。--彼(を含む全員)は、実際に年を取っていない、という設定で物語りは続く。具体的にどうなのかは、本文を読んで欲しい。
しっかりとした現実法則がありながら、それでいてちょっとだけ現実と違う。その違いは、本の中では科学的に説明しつくされている。--これこそがSFの面白さだと思う。
(余談:神林作品全般の特徴だが、この仮想生物の生態などが、一定の科学的法則にきっちり従うものとして、その科学側面がきっちり説明される。感情表現の言葉ではなくて、物理や科学理論の言葉で法則が説明される。この感触をして私はSFを感じる。)
この短編集のなかでは、「甘やかな月の錆」が内容も文章も一番好きだ。 多少ネタバレになるが…
文章としては、前半の小学生としての自我を描く文体が醸し出す「甘い日々の追憶」に心を動かされる。この主人公は母を好きになり、大人になれない自分を悔やむ。しかし、自分自身はそのことを理解しておらず、どうして変な感じがするのか思い悩む。
通常であれば、「大人になれない自分」は、幼少の焦りにすぎない。しかしこのお話では、ここをSFにした。--彼(を含む全員)は、実際に年を取っていない、という設定で物語りは続く。具体的にどうなのかは、本文を読んで欲しい。
しっかりとした現実法則がありながら、それでいてちょっとだけ現実と違う。その違いは、本の中では科学的に説明しつくされている。--これこそがSFの面白さだと思う。
2004年10月16日に日本でレビュー済み
1981-83年に『SFマガジン』に発表された短篇6作をまとめたもの。神林の初期短編集の一冊。
陰鬱で出口のない話が多く、気分の落ち込んでいる時などに読むと、実に暗い気分になれる。しかしSFとしての魅力には凄まじいものがある。人類の心に潜む闇が、ふとしたSF的設定で露わになる。人類の未来は絶望的である。
しかし、こうした陰鬱さは、やはり初期作品ならではであろう。キャリアを積むに連れて、SF作家は陰鬱さに糖衣をまとわせる術に熟達していく。一見、読みやすくなっていくのである。私もそちらの方が好きだ。とはいえ、どちらを好むか、それは読者次第なのだろう。
陰鬱で出口のない話が多く、気分の落ち込んでいる時などに読むと、実に暗い気分になれる。しかしSFとしての魅力には凄まじいものがある。人類の心に潜む闇が、ふとしたSF的設定で露わになる。人類の未来は絶望的である。
しかし、こうした陰鬱さは、やはり初期作品ならではであろう。キャリアを積むに連れて、SF作家は陰鬱さに糖衣をまとわせる術に熟達していく。一見、読みやすくなっていくのである。私もそちらの方が好きだ。とはいえ、どちらを好むか、それは読者次第なのだろう。