傑作❗️宮沢賢治を絡めながらのストーリーに宮沢作品を見たことない私は心配だったのですが問題なく楽しめました。読後心の中のなにかがずっと泣いているのです。そうか、誰もがきっと心の中に棲み着いている物があるのですね。
今後宮沢作品を色々楽しもうかと思います。夢枕作品はまだこの作品の余韻を響かせておきたいので少しお休みします。
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上弦の月を喰べる獅子 上 (ハヤカワ文庫 JA ユ 1-1) 文庫 – 1995/4/1
夢枕 獏
(著)
第10回(1989年) 日本SF大賞受賞
- 本の長さ420ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日1995/4/1
- ISBN-104150305021
- ISBN-13978-4150305024
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (1995/4/1)
- 発売日 : 1995/4/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 420ページ
- ISBN-10 : 4150305021
- ISBN-13 : 978-4150305024
- Amazon 売れ筋ランキング: - 204,176位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1951年、神奈川県小田原市生まれ。77年に作家デビュー後、“キマイラ・吼”“魔獣狩り”“闇狩り師”“陰陽師”シリーズ等人気作品を発表し、今日に 至る。89年『上弦の月を喰べる獅子』で、第10回日本SF大賞を、98年『神々の山嶺』で第11回柴田錬三郎賞を受賞。日本SF作家クラブ会員(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 天海の秘宝(上) (ISBN-13: 978-4022507631 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年6月4日に日本でレビュー済み
仏教の宇宙観を元に進化と宇宙の謎を解き明かす流れに、螺旋という独特のキーワードを組み込んだ物語。日本SF大賞を受賞した力作。
2016年9月9日に日本でレビュー済み
三島草平は大学紛争で学内が荒れまくった時代、実は過激派メンバーだった恋人を闘争で亡くした。そのトラウマをひきずって戦場カメラマンになった彼は末期の胃がんを患っている。脳の海馬には戦場で爆撃にあった際に入り込んでしまった石片が残っていて、そのせいか時々幻覚のようなものを見る。そしてその幻覚はいつも螺旋の形を取っているのだった。ある日、仕事でとあるビルに出かけた彼は、あるはずのない螺旋階段をそこに見る。その螺旋は宇宙かと見まがうようなはるか上空まで伸びていた。彼は呼ばれるようにその螺旋を上って行ったのだが・・・。
ひと昔さかのぼった時代のある東北の冬、農業指導者でもある詩人は(明らかに宮沢賢治を暗示している)二荒山の奥の斜面に巨大な螺旋を見る。それは直径5メートルもある巨大なオウム貝の化石だった。過酷な厳寒に悩まされ、思うように農業の収穫は上がらずひんぱんに飢餓に直面する日々、しかも彼は最近、最愛の妹を亡くしていた。彼自身も結核をかかえていた詩人は、導かれるようにその貝の螺旋の中に入っていった・・・。
海岸で目をさました男は、自分が完全に記憶を失っているのに気がついた。おぼろげに過去のものらしい記憶がよみがえるが、何のことかわからない。彼は年老いた両親と兄、妹の4人家族に拾われ、アシュヴィンという名前をもらって妹シェラの婿のようになる。その世界では、海から続々と魚が上陸し、渦巻き状の螺旋虫が生息する世界だった。海岸の上方には気の遠くなるような高く広大な大地が開けていて、海から来た生物はすべて上を目指して上がっていくようである。家族に「上には何があるのか?」ときいても両親には曖昧にされ、兄、妹は知らないと言うばかり。ある日、妹を取られたと嫉妬に狂った兄ダモンは両親を惨殺し、彼にも迫ってくる。「上に行こう。上には別世界がある。」と彼は妻となった妹と手を取りあってどんどん上へ上へと登り出すのだが・・・。
アシュヴィンの話を中心として、他の時空の2つの話が時々織り込まれて進みます。まずその世界観に圧倒されました。この現代の地球とは異次元に、またははるかな別宇宙に存在しているかのような世界の描写が実在感を持って迫ってきます。他のレビューアさんが書いておられたのを読んで、この小説がSF大賞受賞作だと知りましたが、SFというよりは、幻想小説、哲学的宗教的文学作品といった方が近いような・・。著者は宮沢賢治の作品をはじめとして、遺伝子学、多彩な仏典やリグ・ヴェーダ、ウパニシャッドをはじめとしたインド哲学、インド神話をかなり読み込んでおられるのだと思います。あとがきで著者は「これは天についての物語である」と書かれています。また、「これは進化の物語である」とも、「数式を使わずに、言葉、表現、言い回しによって宇宙を語ることはできないのだろうか」とも。登場人物たちの姿や人生を借りていますが、描こうとされたのは真理や宇宙なるものだったのではないでしょうか。
ストーリーの間には、禅問答のような難解な哲学的理論が展開され、このあたりで投げ出してしまう人も少なくないかもしれません。自分は作品の持つ迫力に当てられて、1日で一気読みしてしまいました。著者自身が述べておられるように「物語の方が書き手に降りてきた」と。どうしてこのように壮大な話が書けるのだろうか、稀に見る素晴らしい作品だと思います。
ひと昔さかのぼった時代のある東北の冬、農業指導者でもある詩人は(明らかに宮沢賢治を暗示している)二荒山の奥の斜面に巨大な螺旋を見る。それは直径5メートルもある巨大なオウム貝の化石だった。過酷な厳寒に悩まされ、思うように農業の収穫は上がらずひんぱんに飢餓に直面する日々、しかも彼は最近、最愛の妹を亡くしていた。彼自身も結核をかかえていた詩人は、導かれるようにその貝の螺旋の中に入っていった・・・。
海岸で目をさました男は、自分が完全に記憶を失っているのに気がついた。おぼろげに過去のものらしい記憶がよみがえるが、何のことかわからない。彼は年老いた両親と兄、妹の4人家族に拾われ、アシュヴィンという名前をもらって妹シェラの婿のようになる。その世界では、海から続々と魚が上陸し、渦巻き状の螺旋虫が生息する世界だった。海岸の上方には気の遠くなるような高く広大な大地が開けていて、海から来た生物はすべて上を目指して上がっていくようである。家族に「上には何があるのか?」ときいても両親には曖昧にされ、兄、妹は知らないと言うばかり。ある日、妹を取られたと嫉妬に狂った兄ダモンは両親を惨殺し、彼にも迫ってくる。「上に行こう。上には別世界がある。」と彼は妻となった妹と手を取りあってどんどん上へ上へと登り出すのだが・・・。
アシュヴィンの話を中心として、他の時空の2つの話が時々織り込まれて進みます。まずその世界観に圧倒されました。この現代の地球とは異次元に、またははるかな別宇宙に存在しているかのような世界の描写が実在感を持って迫ってきます。他のレビューアさんが書いておられたのを読んで、この小説がSF大賞受賞作だと知りましたが、SFというよりは、幻想小説、哲学的宗教的文学作品といった方が近いような・・。著者は宮沢賢治の作品をはじめとして、遺伝子学、多彩な仏典やリグ・ヴェーダ、ウパニシャッドをはじめとしたインド哲学、インド神話をかなり読み込んでおられるのだと思います。あとがきで著者は「これは天についての物語である」と書かれています。また、「これは進化の物語である」とも、「数式を使わずに、言葉、表現、言い回しによって宇宙を語ることはできないのだろうか」とも。登場人物たちの姿や人生を借りていますが、描こうとされたのは真理や宇宙なるものだったのではないでしょうか。
ストーリーの間には、禅問答のような難解な哲学的理論が展開され、このあたりで投げ出してしまう人も少なくないかもしれません。自分は作品の持つ迫力に当てられて、1日で一気読みしてしまいました。著者自身が述べておられるように「物語の方が書き手に降りてきた」と。どうしてこのように壮大な話が書けるのだろうか、稀に見る素晴らしい作品だと思います。
2013年7月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
仏教をベースにした世界観。伝奇バイオレンスの面影もありつつ、手塚治虫のブッダよりも夢枕獏独特の世界に引き込む。夢の中の世界のような独特の世界に引き込まれて行く。
2013年3月5日に日本でレビュー済み
ある種、ユングの言う人類共通の無意識に降りてゆくような作品だ。
螺旋という世界観で、インド思想と宮沢賢治の詩を混在させかつ統率し、それを根源的な神話世界として一種の冒険のような形にもしてまとめている。
厚めの作品だが、文章は簡明なものなのでわりとすらすらと読み進められる。
SF小説ということになっているが、この作品の無意識への没入と分析はかなり純文学的な香りを漂わせており、強い作品と言えそうだ。
ヘッセの「シッダールタ」を最近読んだので、理解の助けとなった。
螺旋という世界観で、インド思想と宮沢賢治の詩を混在させかつ統率し、それを根源的な神話世界として一種の冒険のような形にもしてまとめている。
厚めの作品だが、文章は簡明なものなのでわりとすらすらと読み進められる。
SF小説ということになっているが、この作品の無意識への没入と分析はかなり純文学的な香りを漂わせており、強い作品と言えそうだ。
ヘッセの「シッダールタ」を最近読んだので、理解の助けとなった。
2019年8月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
あまりに面白くなかったので途中で読むことを諦めました。
2011年5月15日に日本でレビュー済み
1986年から88年まで早川書房の「SFマガジン」に連載され、翌年、単行本化、その年度の日本SF大賞を受賞した作品。当時から存在は知っていたが読めなかったこの作品をようやく読むことができた。
当時、すでに著者の本は、『魔獣狩り』や『餓狼伝』は読んでいたはずなので、この本も読んでいておかしくなかったんだけど、やはり私の中では伝奇バイオレンス作家の著者というイメージが強くて、それらの作品とガラリと変わったこの作品は馴染めなかったのかもしれない。
今回、はじめて読んだが、全くそういう違和感はなく、むしろ今の夢枕獏氏の多才さを示すような作品となっている。まだ上巻なので、これからの展開は分からないけれど、「螺旋」をキーワードに、螺旋収集家のカメラマンと宮沢賢治の二人を主人公に異世界をさまようというストーリーにあっという間に引きこまれていく。
業、縁といった仏教的な世界観、宇宙観を題材にして、どのように話をまとめていくのか、下巻の展開がとても楽しみだ。
当時、すでに著者の本は、『魔獣狩り』や『餓狼伝』は読んでいたはずなので、この本も読んでいておかしくなかったんだけど、やはり私の中では伝奇バイオレンス作家の著者というイメージが強くて、それらの作品とガラリと変わったこの作品は馴染めなかったのかもしれない。
今回、はじめて読んだが、全くそういう違和感はなく、むしろ今の夢枕獏氏の多才さを示すような作品となっている。まだ上巻なので、これからの展開は分からないけれど、「螺旋」をキーワードに、螺旋収集家のカメラマンと宮沢賢治の二人を主人公に異世界をさまようというストーリーにあっという間に引きこまれていく。
業、縁といった仏教的な世界観、宇宙観を題材にして、どのように話をまとめていくのか、下巻の展開がとても楽しみだ。
2003年11月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日本SF大賞を獲ったという本書ではあるが、SFの意味を単なるサイエンスフィクションと捉えていると、途中でこの本を投げ出すだろうと思う。
かって「世界で一番美しい物語」という科学の概説書を読んだとき、私は「宇宙の始まりや未来の話、あるいは生物発生の秘密の話を聞けば聞くほど、哲学的なことを考えてしまうのはなぜだろう」という感想を持った。そういう感想を推し進めるとこういう作品が出来上がるのだろう。この作品は優れて「SF哲学」とでもいうべき本なのである。
この作品の主人公の「前身」として「肺を病む岩手の詩人」が出てくる。名前はついに明らかにはしてないがどう考えても「宮沢賢治」である。何しろ彼の詩や文章がほとんどそのまま引用されているのだから。ただ唯一違うのはこの詩人が「螺旋」に興味を持っているという設定である。その賢治に現代の「修羅」みたいな男をもう一人の「前身」として結びつける。そうすると、どういうことがおきるかというと、かって賢治が生前には出来なかった「殺生」「姦淫」などをこの主人公は行うことになる。その上で「自分は何者か」「人は幸せになれるのか」という「問い」を尋ねていくのである。私にはものすごい「冒険」に思える。まだ下巻は読んではいないが、いいかげんな「答」なら賢治ファンの私としては許すことが出来ない本になるだろうと思う。
かって「世界で一番美しい物語」という科学の概説書を読んだとき、私は「宇宙の始まりや未来の話、あるいは生物発生の秘密の話を聞けば聞くほど、哲学的なことを考えてしまうのはなぜだろう」という感想を持った。そういう感想を推し進めるとこういう作品が出来上がるのだろう。この作品は優れて「SF哲学」とでもいうべき本なのである。
この作品の主人公の「前身」として「肺を病む岩手の詩人」が出てくる。名前はついに明らかにはしてないがどう考えても「宮沢賢治」である。何しろ彼の詩や文章がほとんどそのまま引用されているのだから。ただ唯一違うのはこの詩人が「螺旋」に興味を持っているという設定である。その賢治に現代の「修羅」みたいな男をもう一人の「前身」として結びつける。そうすると、どういうことがおきるかというと、かって賢治が生前には出来なかった「殺生」「姦淫」などをこの主人公は行うことになる。その上で「自分は何者か」「人は幸せになれるのか」という「問い」を尋ねていくのである。私にはものすごい「冒険」に思える。まだ下巻は読んではいないが、いいかげんな「答」なら賢治ファンの私としては許すことが出来ない本になるだろうと思う。