SFとは、ある科学技術が実現された際、それが社会にどのような影響を与えるか(どのような社会になるか)をシミュレートすることを、大きな構成要素とする文学です。少なくとも、故アイザックアシモフ氏はそのように考え、毎作、自分なりの当てはめを表現していたように思います。
さて本作ですが、谷甲州氏の「エリコ」(上・下)でもそうであったように、主人公「だけが」手に入れられた科学技術の希少性・貴重性と、主人公の社会的属性・特殊性がまるで釣り合っていません。
逆に言えば、この程度の特異性(事件に巻き込まれた)しか持たない主人公にも与えられる禁断の科学技術など考えられず、これら技術はもっと社会全般に浸透していないはずは無い、ということになります。
作者自身が後書きで認めているように、この物語は、少女とネズミを想起することから組み立てられ、その前後に誕生と結末を足し合わせたものと思われますが、私には、この第1巻が物語る誕生秘話は、あまり説得力を持つものではありませんでした。
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マルドゥック・スクランブルThe First Compres (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-1) 文庫 – 2003/5/1
冲方 丁
(著)
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- 本の長さ316ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2003/5/1
- ISBN-104150307210
- ISBN-13978-4150307219
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2003/5/1)
- 発売日 : 2003/5/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 316ページ
- ISBN-10 : 4150307210
- ISBN-13 : 978-4150307219
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,156,833位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1977年岐阜県生まれ。早稲田大学在学中の1996年に『黒い季節』で第1回スニーカー大賞金賞を受賞してデビュー。2003年、第24回日本SF大賞 を受賞した『マルドゥック・スクランブル』などの作品を経て、2009年、天文暦学者・渋川春海の生涯を描いた初の時代小説『天地明察』で第31回吉川英 治文学新人賞、第7回本屋大賞を受賞し、第143回直木賞の候補となる(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『マルドゥック・スクランブル』(ISBN-10:4152091533)が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2003年8月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
冲方丁氏の『マルドゥック・スクランブル』の第一巻です。
少女娼婦であるルーン=バロットは、賭博師であるシェル=セプティノスに囲われている身ですが、ある日バロットは自分の偽造身分を知ろうとしてシェルに殺されそうになります。
瀕死の重傷を負ったバロットは、その後のパートナーとなるウフコックやドクターに助けられますが、生命保持のため "マルドゥック - 09" という緊急法令によって禁忌とされる科学技術を利用した体に改造され、その特殊能力を如何なく発揮します。
誰も自分を愛してくれなかったという傷を負った彼女は、ウフコックやドクターと共にシェルを法的に裁くために動きますが、逆に命を狙われるはめになります。
本書の面白さは、新しい能力を手に入れたバロットの活躍と、ウフコックという特殊な相棒との心の触れあい、シェル側の人間(?)であるボイルドとの対決など息をつかせぬアクションにあります。
『ピルグリム・イェーガー』の原作でもそうでしたが、冲方丁氏の緻密なストーリー仕立ては、決して読者を失望させることはないでしょう。
少女娼婦であるルーン=バロットは、賭博師であるシェル=セプティノスに囲われている身ですが、ある日バロットは自分の偽造身分を知ろうとしてシェルに殺されそうになります。
瀕死の重傷を負ったバロットは、その後のパートナーとなるウフコックやドクターに助けられますが、生命保持のため "マルドゥック - 09" という緊急法令によって禁忌とされる科学技術を利用した体に改造され、その特殊能力を如何なく発揮します。
誰も自分を愛してくれなかったという傷を負った彼女は、ウフコックやドクターと共にシェルを法的に裁くために動きますが、逆に命を狙われるはめになります。
本書の面白さは、新しい能力を手に入れたバロットの活躍と、ウフコックという特殊な相棒との心の触れあい、シェル側の人間(?)であるボイルドとの対決など息をつかせぬアクションにあります。
『ピルグリム・イェーガー』の原作でもそうでしたが、冲方丁氏の緻密なストーリー仕立ては、決して読者を失望させることはないでしょう。
2006年3月7日に日本でレビュー済み
カジノシーンは多くの方が指摘されている通りに興奮します。以下に並んだ書評を読んで本書(三部作)を手にとった者からすれば期待通りのパフォーマンスでした。偉そうですが。
「物語の既視感」とはよく言ったもので、著名な批評家がその当時の売れっ子作家を指して評した用語です。「物語の既視感」とは「過去にいつかどこかで見たことのある話だ」という意味です。当時も今も変わらぬ売れっ子作家へと向けられたこの評価は、現在の文学(?)とりわけ、数多くのライトノベルについても当てはまるように思います。
戦闘系美少女の代名詞である「綾波レイ」を主人公に見立て「SPAWN」の世界観を拝借した作品。『マルドゥック・スクランブル』三部作に対する私の中での「物語の既視感」は概ねこのようなものです。
作者と年齢が近いからでしょうか。小説に完全なるオリジナル性を求めることが酷であることは承知しております。しかし、作品上の「物語出自」を見過ごすには、少々それらは露骨過ぎました。
「たしかどこで見たり、聞いたり、読んだりしたことのある」作品、この「Well made」な物語性こそ、安定した「マルドゥック〜」の人気を支えているのかもしれません。「良質な職業作家」の誕生は、いつの時代も歓迎されるものですから。
「物語の既視感」とはよく言ったもので、著名な批評家がその当時の売れっ子作家を指して評した用語です。「物語の既視感」とは「過去にいつかどこかで見たことのある話だ」という意味です。当時も今も変わらぬ売れっ子作家へと向けられたこの評価は、現在の文学(?)とりわけ、数多くのライトノベルについても当てはまるように思います。
戦闘系美少女の代名詞である「綾波レイ」を主人公に見立て「SPAWN」の世界観を拝借した作品。『マルドゥック・スクランブル』三部作に対する私の中での「物語の既視感」は概ねこのようなものです。
作者と年齢が近いからでしょうか。小説に完全なるオリジナル性を求めることが酷であることは承知しております。しかし、作品上の「物語出自」を見過ごすには、少々それらは露骨過ぎました。
「たしかどこで見たり、聞いたり、読んだりしたことのある」作品、この「Well made」な物語性こそ、安定した「マルドゥック〜」の人気を支えているのかもしれません。「良質な職業作家」の誕生は、いつの時代も歓迎されるものですから。
2010年8月21日に日本でレビュー済み
巨大企業オクトーバー社が支配する退廃的な港湾型重工業都市、マルドゥック・シティ。15歳の娼婦バロットは賭博師シェルの愛人となり、何不自由ない生活を送っていた。しかし、それはシェルによって巧妙に仕組まれた罠であった。バロットは知らず知らずのうちにシェルの犯罪に加担させられており、そして口封じのために消されようとしていたのだ!
「雛料理(バロット)」という名前通り、エアカーという殻の中で焼き殺される寸前だったバロットを間一髪で救ったのは、委任事件担当官(事件屋)のドクターとウフコックだった。
ドクターは緊急法令「マルドゥック・スクランブル-09」に基づき、宇宙戦争用の禁忌の科学技術によってバロットを治療する。全身をサイボーグ化された彼女は、周辺の電子機器を自由に操作する高度な電子干渉能力を得た。高度な知性を持ちあらゆる兵器に“変身”できるネズミのウフコックと共に、バロットはシェルとその背後にいるオクトーバー社の犯罪を暴こうとする。
だが2人(1人と1匹)の前に、シェルに雇われた凄腕の委任事件担当官ボイルドが立ちはだかる。彼はかつてウフコックを“濫用”した優秀な元軍人で、最強の武器であるウフコックに依然として執着していた・・・・・・!
ゼロ年代日本SFの代表作の1つとされる本作だが、サイバーパンクな道具立てを除けば、未来社会の描写は案外少なく、マネーロンダリングやドラッグ、性的虐待、児童買春など現代に直結するテーマが多い。リアルな近未来世界を独自に構築しているというより、現代社会のグロテスクな裏側をSFというコードによって未来的な通俗へと“反転変身(ターンオーバー)”させた、という印象が強い。その意味でSF作品として成功しているかどうかは疑問も残るが、ハードボイルド小説として読むとなかなか斬新である。
本作の仮借ない暴力表現、性表現は正統的なSF作品のそれとは一線を画しており、翻訳調の文体と相俟って、ハードボイルド的な雰囲気を濃厚に漂わせている。何しろ敵役の名前が「ボイルド」という、そのまんまの名前なので、作者がハードボイルドの文法を意図的に採用していることは明らかであろう。
作者が後書きで記しているように、本作からは映画『レオン/完全版』の影響を強く感じる。不当に虐げられてきた薄幸の美少女と、彼女を守るために全力を尽くす殺人マシーンとの不器用な交流、という設定は『レオン』そのものである。しかしバロットの生い立ちはマチルダ以上に苛酷なため、心の闇はより深い。抑圧され続けた反動としての残虐さは壮絶である。しかも彼女の相棒は金色の毛のネズミ(笑)。美少女とネズミという、およそハードボイルドには似つかわしくないコンビが悪党どもに銃を乱射するというギャップが秀逸。
「雛料理(バロット)」という名前通り、エアカーという殻の中で焼き殺される寸前だったバロットを間一髪で救ったのは、委任事件担当官(事件屋)のドクターとウフコックだった。
ドクターは緊急法令「マルドゥック・スクランブル-09」に基づき、宇宙戦争用の禁忌の科学技術によってバロットを治療する。全身をサイボーグ化された彼女は、周辺の電子機器を自由に操作する高度な電子干渉能力を得た。高度な知性を持ちあらゆる兵器に“変身”できるネズミのウフコックと共に、バロットはシェルとその背後にいるオクトーバー社の犯罪を暴こうとする。
だが2人(1人と1匹)の前に、シェルに雇われた凄腕の委任事件担当官ボイルドが立ちはだかる。彼はかつてウフコックを“濫用”した優秀な元軍人で、最強の武器であるウフコックに依然として執着していた・・・・・・!
ゼロ年代日本SFの代表作の1つとされる本作だが、サイバーパンクな道具立てを除けば、未来社会の描写は案外少なく、マネーロンダリングやドラッグ、性的虐待、児童買春など現代に直結するテーマが多い。リアルな近未来世界を独自に構築しているというより、現代社会のグロテスクな裏側をSFというコードによって未来的な通俗へと“反転変身(ターンオーバー)”させた、という印象が強い。その意味でSF作品として成功しているかどうかは疑問も残るが、ハードボイルド小説として読むとなかなか斬新である。
本作の仮借ない暴力表現、性表現は正統的なSF作品のそれとは一線を画しており、翻訳調の文体と相俟って、ハードボイルド的な雰囲気を濃厚に漂わせている。何しろ敵役の名前が「ボイルド」という、そのまんまの名前なので、作者がハードボイルドの文法を意図的に採用していることは明らかであろう。
作者が後書きで記しているように、本作からは映画『レオン/完全版』の影響を強く感じる。不当に虐げられてきた薄幸の美少女と、彼女を守るために全力を尽くす殺人マシーンとの不器用な交流、という設定は『レオン』そのものである。しかしバロットの生い立ちはマチルダ以上に苛酷なため、心の闇はより深い。抑圧され続けた反動としての残虐さは壮絶である。しかも彼女の相棒は金色の毛のネズミ(笑)。美少女とネズミという、およそハードボイルドには似つかわしくないコンビが悪党どもに銃を乱射するというギャップが秀逸。
2005年6月15日に日本でレビュー済み
仮想世界の中の特別な存在という豪華な設定と
過去を背負ったキャラクター達の生きるアクションを描いたSF
SF入門者にオススメ。
簡単に読める。登場人物も魅力的。
ただし、重度のSF中毒患者には物足りない。
登場人物に簡単に過去を語らせるのはどうなの?
登場人物のそれぞれの動きに対する動機が軽くないか?
登場人物の所作(癖)、背景を透かす描写が殆どない。
(直接語らせているから必要ない)
よって、総じて薄い。
登場人物への感情移入もなければ、読み終わった後に
殴られたような衝撃はない。
アクションとして、楽しいからSFをこれから読んでみたい、
という人が手軽に取って読めるし、そこそこ面白い作品です。
過去を背負ったキャラクター達の生きるアクションを描いたSF
SF入門者にオススメ。
簡単に読める。登場人物も魅力的。
ただし、重度のSF中毒患者には物足りない。
登場人物に簡単に過去を語らせるのはどうなの?
登場人物のそれぞれの動きに対する動機が軽くないか?
登場人物の所作(癖)、背景を透かす描写が殆どない。
(直接語らせているから必要ない)
よって、総じて薄い。
登場人物への感情移入もなければ、読み終わった後に
殴られたような衝撃はない。
アクションとして、楽しいからSFをこれから読んでみたい、
という人が手軽に取って読めるし、そこそこ面白い作品です。
2010年4月27日に日本でレビュー済み
なにも考えず殻に閉じこもっていた、少女バロットの成長物語
ウフコックといいドクターといいボイルドといい
魅力的なキャラクターであふれかえっていますね
敵として立ちはだかるもと相棒のボイルドがかっこいいですね
彼がいなければ、この物語の魅力は半減したでしょう
力を手に入れ暴走したバロットを圧倒的暴力でたたきつぶし、ウフコックを手にしたものはその力に溺れ拒絶されると言う彼のセリフは
もと所有者であり、彼の暴力的な、なにものにも止められない強さを語っています
買うなら三冊同時でないと中途半端な区切りで終わっちゃうよ
ウフコックといいドクターといいボイルドといい
魅力的なキャラクターであふれかえっていますね
敵として立ちはだかるもと相棒のボイルドがかっこいいですね
彼がいなければ、この物語の魅力は半減したでしょう
力を手に入れ暴走したバロットを圧倒的暴力でたたきつぶし、ウフコックを手にしたものはその力に溺れ拒絶されると言う彼のセリフは
もと所有者であり、彼の暴力的な、なにものにも止められない強さを語っています
買うなら三冊同時でないと中途半端な区切りで終わっちゃうよ
2010年7月27日に日本でレビュー済み
**全巻を通してのレビュー**
サイバーパンクな世界観が好きな人にはオススメ。
展開のテンポがよく、ストーリーに引き込まれていく感覚。
アクション描写も細かすぎず、大雑把過ぎず。
でも、
クライマックス付近の心理戦では、
グッと描写が細かくなり手に汗を握る展開が繰り広げられます。
ネタばれにならないように説明するのが難しいですが、
SFファンなら必読あれ♪
サイバーパンクな世界観が好きな人にはオススメ。
展開のテンポがよく、ストーリーに引き込まれていく感覚。
アクション描写も細かすぎず、大雑把過ぎず。
でも、
クライマックス付近の心理戦では、
グッと描写が細かくなり手に汗を握る展開が繰り広げられます。
ネタばれにならないように説明するのが難しいですが、
SFファンなら必読あれ♪
2006年2月14日に日本でレビュー済み
主人公ルーン・バロットは、一巻終盤でこういう。『Now Here(ここにいる)』と。
著者が脚本その他を担当した、ロボットアニメ『蒼穹のファフナー』でも同種の描写がある。
冲方 丁にとって、『生きる』ということは存在をアピールすることであり、それ即ち価値観を持つことで、それはいずれ『戦う』ことに発展する。
『戦う』のは何も力をぶつけ合う事ではない。
意見を交わすことも、知略をめぐらせる事も、言ってみれば、生きることはそれ自体が戦いだ。
こういう主張が強く渦巻いている。
これは戦いの物語。戦って、感じて、学んで、成長する物語。
虚ろだった少女が、ラストでは立派でかっこいい女性になってるではないか。
それが何より印象的で、緻密な描写もすべてそこに収束する。
その世界、ぜひ一読あれ。
著者が脚本その他を担当した、ロボットアニメ『蒼穹のファフナー』でも同種の描写がある。
冲方 丁にとって、『生きる』ということは存在をアピールすることであり、それ即ち価値観を持つことで、それはいずれ『戦う』ことに発展する。
『戦う』のは何も力をぶつけ合う事ではない。
意見を交わすことも、知略をめぐらせる事も、言ってみれば、生きることはそれ自体が戦いだ。
こういう主張が強く渦巻いている。
これは戦いの物語。戦って、感じて、学んで、成長する物語。
虚ろだった少女が、ラストでは立派でかっこいい女性になってるではないか。
それが何より印象的で、緻密な描写もすべてそこに収束する。
その世界、ぜひ一読あれ。