すんごいなこの本。
スゴ本と読んでもいいのかもしれない。なんだろうこれ。
あたしの印象はインキュバス言語が筒井康隆を、家具の話が家畜人ヤプーへのオマージュ?
というもの。
ひとつひとつの内容は面白いし凝っていて、ぐいぐい引き込まれた。
パターンもかなり違うので飽きることもなく。
ただ、残念だったのはそれが収束していないこと。
最後にそれらが全部まとまっていたら、もう感激してたんだろうに。
まぁ、そういう楽しみ方だけじゃないよって言われたらそれまでなんだけどね。
全体の完成度だけで完璧、と、すべきなのか。
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楽園の知恵: あるいはヒステリーの歴史 (ハヤカワ文庫 JA マ 5-5 ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) 文庫 – 2007/7/1
牧野 修
(著)
- 本の長さ472ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2007/7/1
- ISBN-104150308950
- ISBN-13978-4150308957
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2007/7/1)
- 発売日 : 2007/7/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 472ページ
- ISBN-10 : 4150308950
- ISBN-13 : 978-4150308957
- Amazon 売れ筋ランキング: - 938,343位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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大阪府出身。
1992年『王の眠る丘』で作家デビュー。
1999年『スイート・リトル・ベイビー』で第6回日本ホラー小説大賞長編賞佳作。
2002年『傀儡后』で第23回日本SF大賞受賞。
2015年『月世界小説」』で36回日本SF大賞。
ホラー映画が大好物。
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2005年7月1日に日本でレビュー済み
「世界はどのようにできたか、どうなっているのか」という壮大なテーマの話から「くだらんけど、笑える」「くだらんけど、奥深い」話(分量的には、こちらの方が多い)、まで12編の話です。
どの話も、仕掛けや設定、舞台、内容が奇想天外で、趣向も異なり、よく考えたなーと、筆者の想像力にうっとりの本でした。エロイ・グロイ話も、少々です。
どの話も、飽きずに楽しく読めました。
どの話も、仕掛けや設定、舞台、内容が奇想天外で、趣向も異なり、よく考えたなーと、筆者の想像力にうっとりの本でした。エロイ・グロイ話も、少々です。
どの話も、飽きずに楽しく読めました。
2008年6月26日に日本でレビュー済み
独自の美意識を感じさせる言語感覚をもって、現実と妄想狂執のあわいを侵食するようにドロドロと溶かし込んでいく様が、非常に不気味でありおぞましくも魅力的であり、気持ち悪いのに昂然としてしまう、見たくないのに覗いてしまう、そんな強烈な吸引力というかニチャリとした吸盤で吸い付かれるような、ヒャー気持ち悪いでもナンだか異常に気持ちいい世界を創出する作家さん。
夢を見ない者の一人称の問わず騙りにより幕を開け、次第にその後景(もしくは光景)が明らかになるにつれ読み手は謎に駆られ、え何これどういうことっていうかちょっと不気味だ気持ち悪いかももしかしてグロイのかなウワちょっと怖いよ怖い待って待ってって意味分からんから待ってって言ってるのにどんどん加速していき混沌の渦に巻き込まれていく『いかにして夢を見るか』
それが乗ってきた
それは例えていうなら天使である
天使が男に授けたインキュバス言語。それは中年男性の性的妄想を主体として構成された言語であり、その修得によって男は世界を言葉によって再構築していく、という設定としてはBにもならんようなありふれた代物でありながら、それがこの牧野修の手にかかれば、いやホントにこの人の頭の中はドウナッテイルノダロウカと思わずにはいられない、超圧倒的という言葉でもってしても到底形容できないような文字の洪水、密蜜しい淫靡な言語のTSUNAMIが紙面を埋め尽くし世界を創造していく余りにも馬鹿馬鹿しく余りにも壮絶な『インキュバス言語』
演歌と神秘主義の関わりを、思わず「ホントかよ!」と信じてしまいかねないほとんど妄執的とも言える大真面目な緻密さによって記していく『演歌の黙示録』は、そうした奇想天外なアイデアに自己埋葬されてしまうことなく完璧なエンターテイメント性を放出し、気づけば最後にはスペーシーな怪物が登場するスプラッターまがいのグログロ世界へと突入するという凄まじさ。
そして、テキスト情報から生成される[テキステイク]という物質から製造された言語人形(ラングドール)の逃避を描く『逃げゆく物語の話』は、牧野ワールド全開の本作においても最も著者らしい、美麗な言語感覚と情感が迸るように横溢するステキで詩的な物語。
津原泰水『綺譚集』を読んだ際と非常に似た昂揚感を覚えた、何だかあまり深みにハマッては不味いような、異形のモノが放つ凄みを見せつけられたような作品。
夢を見ない者の一人称の問わず騙りにより幕を開け、次第にその後景(もしくは光景)が明らかになるにつれ読み手は謎に駆られ、え何これどういうことっていうかちょっと不気味だ気持ち悪いかももしかしてグロイのかなウワちょっと怖いよ怖い待って待ってって意味分からんから待ってって言ってるのにどんどん加速していき混沌の渦に巻き込まれていく『いかにして夢を見るか』
それが乗ってきた
それは例えていうなら天使である
天使が男に授けたインキュバス言語。それは中年男性の性的妄想を主体として構成された言語であり、その修得によって男は世界を言葉によって再構築していく、という設定としてはBにもならんようなありふれた代物でありながら、それがこの牧野修の手にかかれば、いやホントにこの人の頭の中はドウナッテイルノダロウカと思わずにはいられない、超圧倒的という言葉でもってしても到底形容できないような文字の洪水、密蜜しい淫靡な言語のTSUNAMIが紙面を埋め尽くし世界を創造していく余りにも馬鹿馬鹿しく余りにも壮絶な『インキュバス言語』
演歌と神秘主義の関わりを、思わず「ホントかよ!」と信じてしまいかねないほとんど妄執的とも言える大真面目な緻密さによって記していく『演歌の黙示録』は、そうした奇想天外なアイデアに自己埋葬されてしまうことなく完璧なエンターテイメント性を放出し、気づけば最後にはスペーシーな怪物が登場するスプラッターまがいのグログロ世界へと突入するという凄まじさ。
そして、テキスト情報から生成される[テキステイク]という物質から製造された言語人形(ラングドール)の逃避を描く『逃げゆく物語の話』は、牧野ワールド全開の本作においても最も著者らしい、美麗な言語感覚と情感が迸るように横溢するステキで詩的な物語。
津原泰水『綺譚集』を読んだ際と非常に似た昂揚感を覚えた、何だかあまり深みにハマッては不味いような、異形のモノが放つ凄みを見せつけられたような作品。
2008年1月17日に日本でレビュー済み
これは、2003年に出た新書版に短編二つが追加されたものです。
追加の一つ目『病室にて』は、本書の最期に収録されている『付記・ロマンス法について』と対になると思われるものです。小説とは何か、何故書くのか等、作者の意見の一端が垣間見える書き下ろし作品。
追加の二つ目は異形コレクションの『魔地図』に掲載された『いつか、僕は』。
静かに切ない、しんみりした話から開いた口が塞がらない妄想爆発の与太話、かと思えば連続殺人鬼誕生譚、果ては不気味な人類滅亡譚までバラエティに富んだ短編集ですが、全体として見ると作者・牧野修氏のカラーで統一されておりバラけた印象は受けません。
どれも全て面白かったのですが、一番印象に残ったのは「踊るバビロン」。牧野版「不思議の国のアリス」のような話で、ルイス・キャロル顔負けの不気味で奇妙な生き物が跳梁跋扈するSFファンタジーです。特に、独自の論理と喋り方が印象的な家具人間・ポー先生はチェシャ猫やハンプティ・ダンプティを思わせます。
他にも、公衆便所で殺された女性の暗く悲しい走馬灯「夜明け、彼は妄想より来る」や、人類が実に幸せそうに滅びてゆく様が不気味な「バロック あるいはシアワセの国」、黒魔術の歴史パロディ「演歌の黙示録」、自殺しようとした女性と彼女にとりついた「憑依者」のつかの間の交流を描いた切ない「憑依奇譚」等、様々な種類の短編が幅広く取り揃えてあるので、何かしらお気に入りは見つかると思います。
ちなみに本書は作家の平山夢明さんが解説を書いており、これがなかなか面白かったので、平山さんのファンにもちょっとお勧めです。
追加の一つ目『病室にて』は、本書の最期に収録されている『付記・ロマンス法について』と対になると思われるものです。小説とは何か、何故書くのか等、作者の意見の一端が垣間見える書き下ろし作品。
追加の二つ目は異形コレクションの『魔地図』に掲載された『いつか、僕は』。
静かに切ない、しんみりした話から開いた口が塞がらない妄想爆発の与太話、かと思えば連続殺人鬼誕生譚、果ては不気味な人類滅亡譚までバラエティに富んだ短編集ですが、全体として見ると作者・牧野修氏のカラーで統一されておりバラけた印象は受けません。
どれも全て面白かったのですが、一番印象に残ったのは「踊るバビロン」。牧野版「不思議の国のアリス」のような話で、ルイス・キャロル顔負けの不気味で奇妙な生き物が跳梁跋扈するSFファンタジーです。特に、独自の論理と喋り方が印象的な家具人間・ポー先生はチェシャ猫やハンプティ・ダンプティを思わせます。
他にも、公衆便所で殺された女性の暗く悲しい走馬灯「夜明け、彼は妄想より来る」や、人類が実に幸せそうに滅びてゆく様が不気味な「バロック あるいはシアワセの国」、黒魔術の歴史パロディ「演歌の黙示録」、自殺しようとした女性と彼女にとりついた「憑依者」のつかの間の交流を描いた切ない「憑依奇譚」等、様々な種類の短編が幅広く取り揃えてあるので、何かしらお気に入りは見つかると思います。
ちなみに本書は作家の平山夢明さんが解説を書いており、これがなかなか面白かったので、平山さんのファンにもちょっとお勧めです。
2007年5月28日に日本でレビュー済み
異色の短編集。牧野修という、驚愕すべき才能の大いなる発露である。
特にホラー・SFなどのジャンルで、異様な物語を語る際の形容詞として、よく「悪夢的」といった言葉が使われる。悪夢は、現実では有り得ない程に混沌としているという先入観があるので使われるのだろう。
だが、この本に描かれている世界に比べると、悪夢の世界すら現実的なものに思えてきてしまう。12本の短編小説(付記が一つある)の描く異形の世界は、人間が考え得る奇想の限界を超えているのではないかとすら思える。危険で不潔で悪趣味ながら、素晴らしく魅力的だ。
しかも、この短編集はこれ程の独自性を持ちながら読み易く、また収録された短編全てがヴァラエティーに富んでいて飽きるという事が無い。
敢えて断言したい。面白い小説が読みたいなら、これを読むべきであると。
特にホラー・SFなどのジャンルで、異様な物語を語る際の形容詞として、よく「悪夢的」といった言葉が使われる。悪夢は、現実では有り得ない程に混沌としているという先入観があるので使われるのだろう。
だが、この本に描かれている世界に比べると、悪夢の世界すら現実的なものに思えてきてしまう。12本の短編小説(付記が一つある)の描く異形の世界は、人間が考え得る奇想の限界を超えているのではないかとすら思える。危険で不潔で悪趣味ながら、素晴らしく魅力的だ。
しかも、この短編集はこれ程の独自性を持ちながら読み易く、また収録された短編全てがヴァラエティーに富んでいて飽きるという事が無い。
敢えて断言したい。面白い小説が読みたいなら、これを読むべきであると。
2004年9月25日に日本でレビュー済み
牧野修らしいグロテスクさに満ちた世界観が満喫できる一冊。後半やや物足りない感を受けるが、氏の短編集としてはこれがベストではないだろうか。「時の王国」と現代の薬物流行に関する物語『バロック あるいはシアワセの国』、バイオテクノロジーが生み出した家=島での家具人間と「僕」の冒険譚『踊るバビロン』、人形と化した物語が焚書政策からの逃亡を図る『逃げゆく物語の話』など、特にお勧め。