性行為で伝染するウィルスが世界中に蔓延したことから、通常は人工授精での試験管ベビーでしか子供を作れなくなった未来世界では、情報化技術が発展し、誰もが掌に埋め込んだノードで国家ネットワークに接続でき、そこを介して思念を交換できる。
そんな世界で14歳の不動火輪(カリン)と滝口兎譚(とたん)は仲良しですが、前半ではカリンはウジウジしていて大丈夫かなと心配になるぐらい。後半では一つ理解を深めたことで力を得てグングン動きだし、兎譚ともう一人の少女と一緒に、最後は本を掴んでいないと読んでいる方が振り落とされそうなぐらい暴れます。カリンの成長物語ではあるのですが、どんなふうに一皮剝けるかについては非常に独創的です。作者が学生の頃学んだ中世の仏教知識、そこからのお寺好きが燃料になって、女の子達を爆走させた感じです。そしてカリンが拝む不動明王のクールさ、パワフルさ。実にカッコいい。
超高度情報化社会を統べる者は誰かという謎も基底にあって、情報化社会、宗教の実相、少女の自立といった関係なさそうな事柄を想像を絶する方法で結び付けて物語を作ってしまった力業に唸ります。
Science Fictionというより、Speculative Fictionの部分が大きいか。特殊な状況を設定することで自分らしい自立と他者との絆の意味を改めて追求した物語です。
神戸市垂水区が主な舞台で、そこの歴史も十二分に取り込んでいるので、その辺りを知る人には特に味わい深いでしょう。
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不動カリンは一切動ぜず (ハヤカワ文庫 JA モ 4-1) 文庫 – 2010/9/30
森田季節
(著)
近未来の人工授精社会。大人の都合と対峙する14歳少女2人の絆を描く、新世代青春小説
すべての子どもたちが人工授精で誕生し、掌にノードを埋め込まれて生活する現代。人々はノードを介して情報や思念を交換する。中2の少女、不動火輪(カリン)と滝口兎譚(とたん)は授業の自由課題で小学校の遠足バス転落事故を調査し、死亡前の生徒の思念記録を偶然手に入れた。その記録に関わる大きな陰謀と、二人の家庭の事情が複雑に絡み、遂に事件は勃発する――大人世界の不条理に抗う少女たちの絆を描く、俊英作家の新世代青春小説。
すべての子どもたちが人工授精で誕生し、掌にノードを埋め込まれて生活する現代。人々はノードを介して情報や思念を交換する。中2の少女、不動火輪(カリン)と滝口兎譚(とたん)は授業の自由課題で小学校の遠足バス転落事故を調査し、死亡前の生徒の思念記録を偶然手に入れた。その記録に関わる大きな陰謀と、二人の家庭の事情が複雑に絡み、遂に事件は勃発する――大人世界の不条理に抗う少女たちの絆を描く、俊英作家の新世代青春小説。
- 本の長さ368ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2010/9/30
- ISBN-104150310106
- ISBN-13978-4150310103
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2010/9/30)
- 発売日 : 2010/9/30
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 368ページ
- ISBN-10 : 4150310106
- ISBN-13 : 978-4150310103
- Amazon 売れ筋ランキング: - 988,585位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2017年3月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年1月2日に日本でレビュー済み
著者はライトノベル/青春小説の書き手。
本書は、いまから数百年後の日本を舞台としたSF小説で、すべての子どもが人工授精で誕生するようになっていたり、機械によって思念をそのままやりとりできるようになっていたりする。さらに宗教や神や愛の問題がからまり、けっこう実験的な小説となっている。いかにもSFっぽい。
暗くて重い展開でいろいろと考えさせられる物語だ。
ただ、小説としては袋小路にはまりこんだような印象が……。
本書は、いまから数百年後の日本を舞台としたSF小説で、すべての子どもが人工授精で誕生するようになっていたり、機械によって思念をそのままやりとりできるようになっていたりする。さらに宗教や神や愛の問題がからまり、けっこう実験的な小説となっている。いかにもSFっぽい。
暗くて重い展開でいろいろと考えさせられる物語だ。
ただ、小説としては袋小路にはまりこんだような印象が……。
2010年11月3日に日本でレビュー済み
「ともだち同盟」でなかなか良い感じに復活したと思えたが
本作は更に更に良くなった。
SFと言う括りでは括れない怪談というか伝奇というか、
はたまた妄想じみた、独特としか言い様のない世界観は実に興味深い。
作者の他作品もそうだが、実在の関西の地名がふんだんに
出てきて現実と地続きの親近感を持たせながら、
妙に幻想的な不思議な感覚を与えてくれる。
パラレルワールドに紛れ込んだ様な感じ。
「すべての子どもたちが人工授精で誕生し、掌にノードを埋め込まれて生活する時代」
同じ日本で関西なのに、違う価値感や倫理感で生きる人達を見る
なんとも言えない違和感。
設定だけならともかく、そんな時代の人間達の思考をトレースして
みせるのは並の才能じゃないと思う。
内容は結構、宗教じみた所もあり作者の内面世界を見せられた様な
感じで「この作者、この先大丈夫なんか」なんて思ったり。
伝奇ものと言う意味ではダークな部分はもう少し知的好奇心を
満足させて欲しかった所だ。投げっ放し感がある。
でも独特の滑稽なテキストセンスは楽しいし、
作品世界と真摯に対話している様な気がして好感を持った。
分裂気味な前半が後半、収束していくのも心地良く少女の成長譚としても良かった。
SFやファンタジーの定義はともかく
異世界や未来世界に足を踏み入れた感じを体感したいならオススメ!
本作は更に更に良くなった。
SFと言う括りでは括れない怪談というか伝奇というか、
はたまた妄想じみた、独特としか言い様のない世界観は実に興味深い。
作者の他作品もそうだが、実在の関西の地名がふんだんに
出てきて現実と地続きの親近感を持たせながら、
妙に幻想的な不思議な感覚を与えてくれる。
パラレルワールドに紛れ込んだ様な感じ。
「すべての子どもたちが人工授精で誕生し、掌にノードを埋め込まれて生活する時代」
同じ日本で関西なのに、違う価値感や倫理感で生きる人達を見る
なんとも言えない違和感。
設定だけならともかく、そんな時代の人間達の思考をトレースして
みせるのは並の才能じゃないと思う。
内容は結構、宗教じみた所もあり作者の内面世界を見せられた様な
感じで「この作者、この先大丈夫なんか」なんて思ったり。
伝奇ものと言う意味ではダークな部分はもう少し知的好奇心を
満足させて欲しかった所だ。投げっ放し感がある。
でも独特の滑稽なテキストセンスは楽しいし、
作品世界と真摯に対話している様な気がして好感を持った。
分裂気味な前半が後半、収束していくのも心地良く少女の成長譚としても良かった。
SFやファンタジーの定義はともかく
異世界や未来世界に足を踏み入れた感じを体感したいならオススメ!
2010年11月15日に日本でレビュー済み
この作者に、
青臭いもどかしさ、それを昇華する少女の描写を書かせたら最高なのだ。
ということを証明した一冊。
デビュー作のベネズエラ'ビター'マイスウィートなどでも感じることだが、
SF、ライトノベル、などという言葉より、ジュブナイルと言った方が似合うと思う。
子供騙しでないジュブナイルは人を選ばない。
青臭いもどかしさ、それを昇華する少女の描写を書かせたら最高なのだ。
ということを証明した一冊。
デビュー作のベネズエラ'ビター'マイスウィートなどでも感じることだが、
SF、ライトノベル、などという言葉より、ジュブナイルと言った方が似合うと思う。
子供騙しでないジュブナイルは人を選ばない。
2010年10月1日に日本でレビュー済み
フィリップ・K・ディックを想い起こさせるタイプの変な作品。
暗い近未来SF・・・と想って読んでいたらだんだんオカルトの方へ・・・しかしそれでも何故かきちんと纏まっている。
感染防止の為、人々がセックスをしなくなり、子供も試験管で作られる日本が舞台。自慰が推奨されたがそれも過去の話で、「自慰って何だろう」と言うくらい、セックスが人々の生活と切り離されてしまっている。
自ら出産を望み、試験管の中で出来た子を自分の腹の中に一度移してから産む「腹子」にも笑った。しかも男がやっている。中にはゲームのヒロインに入れ込み過ぎて、わざわざ腹子で産んで理想のゲームヒロイン、いや娘を育てようとする男とか、色々とアイデアが楽しい。
物語としても実に面白かった。三人のヒロイン達もなかなか魅力的。
暗い近未来SF・・・と想って読んでいたらだんだんオカルトの方へ・・・しかしそれでも何故かきちんと纏まっている。
感染防止の為、人々がセックスをしなくなり、子供も試験管で作られる日本が舞台。自慰が推奨されたがそれも過去の話で、「自慰って何だろう」と言うくらい、セックスが人々の生活と切り離されてしまっている。
自ら出産を望み、試験管の中で出来た子を自分の腹の中に一度移してから産む「腹子」にも笑った。しかも男がやっている。中にはゲームのヒロインに入れ込み過ぎて、わざわざ腹子で産んで理想のゲームヒロイン、いや娘を育てようとする男とか、色々とアイデアが楽しい。
物語としても実に面白かった。三人のヒロイン達もなかなか魅力的。
2011年3月31日に日本でレビュー済み
あくまで個人的感想です 書店でぶらぶらしていたら、かわいい表紙と、裏表紙の粗筋に惹かれて衝動買いしました。 神サマと思念する少女、 父親に嫌悪する子ども、 人とのコミュニケーションが苦手な少女、 多様な人々が、思念で会話する世界、人工的に生まれた子供、情報管理社会、強制善人…… 最初は上記のような未来的な世界が広がっていて後半の展開はどうなるのかと楽しみにしていました。 でも後半になると、プツンと世界が途切れたように、前半にあった謎があっさり解明。 という感じでした。 政府って? 思念って? 強制善人に指示をだしていたのって? みたいなもやもや〜とした感覚が読了後に残りました。 あとスケールがちょっとちっさいかな、と言う感じでした。 国とか政府が絡む内容なのに兵庫県(一部、京都嵐山付近)が舞台ってなぁ、と個人的に思いました。 長々とすいません。 でも未来的な世界観は素晴らしいと思ったので、その分惜しいと思いました。
2010年10月6日に日本でレビュー済み
最近、ライトノベル作家にSFを書かせているハヤカワ文庫JA。これもその一冊。残念ながら、著者の本は読んだことがなかったが、書店に並んでいるのを手に取り、裏表紙の惹句に惹かれて読んでみた。
設定としては、とても面白い。セックスを通じて感染するなぞの伝染病のためにセックスがタブーとなり、すべての子どもたちが人工授精で誕生する近未来。そこでは、人々は掌にノードと言われるものを埋め込まれて、そのノードを介して情報や思念を交換している。
主人公は、中学二年生の女の子。彼女の親友が誘拐され、それを助けに行くのだが...
前半部分は、非常にいい。思念をモニタリングする世界というジョージ・オーウェルの『1984』を思わせる、ディストピア、監視社会という設定が、ネットワークが発達した現代社会における監視の恐怖という問題にもつながり、また、現代人のコミュニケーション不全などもテーマになっているのかな、と思わせる。また、神々が偏在し、国家=神という図式の提示も権力批判やさらにはオカルト的な興味をそそられてしまう。
しかし、主人公の不動カリンが不動明王と合一するといったところから、どうも展開が変わってくる。前半のテーマ性が薄くなり、弱々しかった少女が親友を救うために頑張る、みたいな感じで、もったいないなぁって感じ。この少女たちがとてもカワイくて、これはこれで楽しめるかもしれないんだけど、もっと、前半のダークなところを突き詰めていくと、もっと面白い作品になったんじゃないかなぁ。
面白かったし、キライじゃないけど、もったいない感じ。でも才能のキラメキは感じる。次作も読んでみたい。
設定としては、とても面白い。セックスを通じて感染するなぞの伝染病のためにセックスがタブーとなり、すべての子どもたちが人工授精で誕生する近未来。そこでは、人々は掌にノードと言われるものを埋め込まれて、そのノードを介して情報や思念を交換している。
主人公は、中学二年生の女の子。彼女の親友が誘拐され、それを助けに行くのだが...
前半部分は、非常にいい。思念をモニタリングする世界というジョージ・オーウェルの『1984』を思わせる、ディストピア、監視社会という設定が、ネットワークが発達した現代社会における監視の恐怖という問題にもつながり、また、現代人のコミュニケーション不全などもテーマになっているのかな、と思わせる。また、神々が偏在し、国家=神という図式の提示も権力批判やさらにはオカルト的な興味をそそられてしまう。
しかし、主人公の不動カリンが不動明王と合一するといったところから、どうも展開が変わってくる。前半のテーマ性が薄くなり、弱々しかった少女が親友を救うために頑張る、みたいな感じで、もったいないなぁって感じ。この少女たちがとてもカワイくて、これはこれで楽しめるかもしれないんだけど、もっと、前半のダークなところを突き詰めていくと、もっと面白い作品になったんじゃないかなぁ。
面白かったし、キライじゃないけど、もったいない感じ。でも才能のキラメキは感じる。次作も読んでみたい。
2010年9月26日に日本でレビュー済み
遠未来を舞台にしたディストピアSFだと思って読んでいたら、どんどん違うジャンルに変貌していきました。
舞台は現代ではありませんが少女の関係性を中心に物語が進むので、世界観の把握は容易ですしリーダビリティも高いです。
後半、主人公ととあるキャラクタの価値観が対比されますが、主人公の主張に強くシンクロしながら読むことが出来ました。
SFだとは思いますが、サイエンス的な要素は強くありませんし、軽快な読み心地ですので、SFだからという事で踏鞴を踏んでる方でも読み易い作品だと思います。
舞台は現代ではありませんが少女の関係性を中心に物語が進むので、世界観の把握は容易ですしリーダビリティも高いです。
後半、主人公ととあるキャラクタの価値観が対比されますが、主人公の主張に強くシンクロしながら読むことが出来ました。
SFだとは思いますが、サイエンス的な要素は強くありませんし、軽快な読み心地ですので、SFだからという事で踏鞴を踏んでる方でも読み易い作品だと思います。