大昔に読んだジョン・ル・カレの『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(1975年)を、再読したくなって家中を探したが見つからずAmazonで入手した。
この本を読むまえに当時話題になった『寒い国から帰ってきたスパイ』を読んでからこの本を読んだ記憶である。
最近TVでこの小説の映画化された『裏切りのサーカス』を観たが、物語の細部など忘れているが、なかなかよくできた映画だと思いながら観てしまいました。
あらためて本書を読むとやはり映画と異なり登場する人物のキャラクターがイメージと異なる。
映画でピーター・ギラムを演じたベネディクト・カンバーバッチが原作とはずいぶん違うように思えてしまった。
まあ、映画でのベネディクト・カンバーバッチの演じたピーター・ギラムは、それなりに存在感ある人物像を醸し出してはいたが・・・。
ジム・プリドーを演じたマーク・ストロングは、原作とのイメージにぴったりだと思いながら読み進んでしまった。
主人公のジョージ・スマイリーを演じたゲイリー・オールドマンは、原作での風貌とは異なるが、やはりジョン・ル・カレの描くスマイリーを上手く演じていたと思う。
映画好きの評者だから映画と比べるレビューになってしまったが、何十年ぶりに原作を読みながら最近観た映画とディティールなど異なるところも楽しみながら読むことができた。
東西冷戦華やかなりし1970年頃のスパイ小説など古典ともいえるかも知れないが、ジョン・ル・カレのスマイリー・シリーズは古さを感じさせなく読ませてくれたが、500ページ以上はすこし長すぎた。
英国諜報機関で活動した小説家としてサマセット・モームやグレアム・グリーンなどもよく知られているが、スパイ小説では、やはりジョン・ル・カレの右に出る作家はいないように思いながら本書『鋳掛屋、仕立て屋、兵隊、諜報員」を、時間をかけて読み終えました。
DVDなどで『裏切りのサーカス』を観てジョン・ル・カレを知ったような気になっているかたは、せめて2~3作くらいは彼の小説のほうも読んでほしい。
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ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV) 文庫 – 2012/3/31
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- 本の長さ549ページ
- 言語日本語, 英語
- 出版社早川書房
- 発売日2012/3/31
- 寸法10.6 x 2.2 x 15.7 cm
- ISBN-104150412537
- ISBN-13978-4150412531
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登録情報
- 出版社 : 早川書房; 新訳版 (2012/3/31)
- 発売日 : 2012/3/31
- 言語 : 日本語, 英語
- 文庫 : 549ページ
- ISBN-10 : 4150412537
- ISBN-13 : 978-4150412531
- 寸法 : 10.6 x 2.2 x 15.7 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 252,997位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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1 星
訳文がちょっとひどすぎる。
うーん、ちょっと、日本語になってない。読むことが苦痛。昭和の菊池訳の方がよっぽどわかりやすい。旧刊の菊池訳は文句なし、星5つです。この本の不出来は翻訳家のせいではないと思う。高齢だけど、往年の名翻訳家に頼めばいいという、浅慮がなせる技と思う。本当に意味が通らず、楽しい読書をだいなしにしてくれる文章。出版社、担当編集者がもっと情熱を注いでくれればと、残念です。このような傑作は加賀山さんの新訳で一刻も早く再出版すべき。
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2019年5月22日に日本でレビュー済み
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2020年8月16日に日本でレビュー済み
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初めて読みましたが、単純に面白かったです。
動的部分よりも、圧倒的に静的な部分に字数を割いているのに、そんななかで全く退屈にならずに引き込まれる不思議な感覚でした。
読む前はチャンドラーや、ハメット、ロバートパーカー的なイメージを勝手に抱いていましたが、むしろ司馬遼太郎に近いものを感じました。
3部作の残りを読むのが楽しみです。
動的部分よりも、圧倒的に静的な部分に字数を割いているのに、そんななかで全く退屈にならずに引き込まれる不思議な感覚でした。
読む前はチャンドラーや、ハメット、ロバートパーカー的なイメージを勝手に抱いていましたが、むしろ司馬遼太郎に近いものを感じました。
3部作の残りを読むのが楽しみです。
2020年9月28日に日本でレビュー済み
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ル・カレを初めて手にしたのはもう十数年前、パーフェクトスパイからです。スパイ小説としては哀愁、情感があって、誰に対してか、何に対してかはわからないけど多少の罪の意識が感じられて不思議な感じがしていました。その後読んだのは、寒い国から…は、ただ面白いスパイ小説でした。それから年月が経って「裏切りのサーカス」を観てから、また気になって、先にスマイリーの仲間たちを読み、その中の「…ソ連の、またロシアの、深い、激しい苦しみを見て、いったい自分は…」という科白に驚き、通常ではない小説としての感銘を受け、遡って「ティンカー・テイラー・ソルジャー、スパイ」を読んでいます。本と、作者に尋常ではない才能と強い思いを感じています。後世に伝えたい本だと思います。また、翻訳がひどいという話でしたが、新訳本のせいか問題なく読みやすいと思います。周りにはこの本に興味を持つ人は誰もいないので、レビューに参加しました。
2021年7月16日に日本でレビュー済み
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特に最初のほうは日本語としてすんなり入ってこない言葉が多くて読みにくい。中盤以降は慣れてきてストーリーに引き込まれて行くのだが。
2016年3月6日に日本でレビュー済み
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映画が面白すぎたので購入しました。原作の素晴らしさ、また、映画の作りの見事さを改めて噛みしめました。
購入するときに誤訳のレビューを読んで少し迷ったのですが、刷り進むにつれて直しているようです。
レビューが届いているのですかね。
私はむしろ第一刷を読んでいないのですが、
http://www.amazon.co.jp/review/R2PU5693A8OD1O/ref=cm_cr_rdp_perm?ie=UTF8&ASIN=4150412537
こちらで指摘されていた、
(1)「ジムに注意しなくてはならなかった。」になっている
(2)「彼はきみを愛していたからだ。」になっている
(3)「幻想をすてた男の最後の幻想。」になっている
それ以上細かいところは見ていませんが、少なくとも文庫版第6刷(2013年4月25日発行)、kindle版(2013年2月25日発行)では
上記のようになっていました。購入のご参考まで。
(マーケットプレイスの出品も(あとkindleも)、発行日や版を明記してくれるといいですねえ)
購入するときに誤訳のレビューを読んで少し迷ったのですが、刷り進むにつれて直しているようです。
レビューが届いているのですかね。
私はむしろ第一刷を読んでいないのですが、
http://www.amazon.co.jp/review/R2PU5693A8OD1O/ref=cm_cr_rdp_perm?ie=UTF8&ASIN=4150412537
こちらで指摘されていた、
(1)「ジムに注意しなくてはならなかった。」になっている
(2)「彼はきみを愛していたからだ。」になっている
(3)「幻想をすてた男の最後の幻想。」になっている
それ以上細かいところは見ていませんが、少なくとも文庫版第6刷(2013年4月25日発行)、kindle版(2013年2月25日発行)では
上記のようになっていました。購入のご参考まで。
(マーケットプレイスの出品も(あとkindleも)、発行日や版を明記してくれるといいですねえ)
2020年7月21日に日本でレビュー済み
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映画「アナザーカントリー」→映画「裏切りのサーカス」を経てこの小説にたどり着きました。慣れないスパイ小説でしたが、とにかく面白い。登場人物の名前と人の多さにはとても苦労しましたけど、苦労の価値は十分ありました。
2012年4月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「回収・再訳を希望します」
これを新訳、というのは無理があります。 英文を単純に日本語にするという作業が成されただけで、前後の文脈をおもんばかった、読ませるための(著者の意・登場人物の個性・話の流れを汲んだ)書き直しがまったく行われていません。自動翻訳か? とすらおもわされる場所もあります。「単語を見て、コンテクストを見ず」。日本語としてろれつが回ってない。読みにくいなどという次元の騒ぎではありません。5つ星つけてる人はパラパラめくって、自分が誤訳を指摘したかったところをチェックしただけなんじゃないでしょうか。小説は英語大好きお勉強ちゃんの自己満足用品じゃないんです。
どうも訳者は目の前にある英文を直訳しただけで、物語全体を把握するステップを踏んでいないとしか思われません。これは序盤のごくわずかな記述が、最後の最後で生きてくるような、超絶伏線回収型小説の本書「ティンカー〜」では致命的で、巻を通じた文脈を配慮して訳されていないと、余韻もなにも起きてこない。結果、本書は読み通すのもつらい、無惨な紙束になりはてています。
そして、そんなことが村上博基氏の翻訳でありえるのか?
恐らく、村上氏はすでに70代後半のご高齢であり、翻訳は下請けに回されたか、お弟子さんに任され、それがそのままノーチェックで世に出てしまったものと思われます。ご本人はざっと読んだ後、あと書きのみ自筆で書かれているのではないでしょうか。そうでなければあの「スマイリーと仲間たち」の、背筋に戦慄が走るような名訳と同一の手になる文とは、まったく思えません。
以下、あえて回収を、とまでお願いしたい理由を述べます。
(1)致命的な、致命的なケアレスミス。
536ページ、最後のページから1枚後ろ。ジムに注意を促しているのは、ジムではなくてビル・ローチ少年です!
親が金持ちで、離婚した家庭の子どもだから観察力が鋭いという以外、ほとんど何の力ももたないちびでデブのビル少年が、持てる力を尽くして、必死になってジムの力になろうとする、そのせつない物語を踏まえていれば、こんな誤植が起きるはずがない。評価してる皆さん、実は読んでないの? ラストのラストですよ。感動台無し。
(2)物語のすじを理解していないかのような訳語。
山ほどありますが、もっとも指摘したいのは528ページ「彼はきみを敬愛していたからだ」、違うでしょ! これは菊池訳の「愛」であって、「敬愛」ではない。原書でも当然「love」です。これが愛でなければ、本書の裏に流れる愛の物語が成立しなくなってしまう。これは訳した人(あえて村上氏と思いたくない)が、この文で示される人間関係を理解していないか、ホモセクシュアルに対して生理的嫌悪を抱いていたとしか思われません。
(3)全編に流れる単語選びのなげやりさ、適当感。
例えば530ページ、2行目「幻影なき男の最後の幻影」。これは菊池版では「迷い無き男の唯一の迷い」です。原書ではillusion。確かに直訳すれば幻影ですが、これはまさに「迷い」でしょう。
スマイリー三部作を貫く芯は、多くの人が指摘するとおり、スマイリーの鉄の意志です。「相手を叩きのめすときには、ほどほどに。それが大人の対応」と、私たちは何かにつけ社会で教えられます。「苦い結末、あいまいな結末こそ高尚かつ、文学的」というヘンな先入観、「カタルシス否定」で大人ごっこ。だから本書のスケールにくらべてライトで雑な「寒い国から帰ってきたスパイ」が、苦いカタルシス少なめの結末ゆえに、自称本格派の年寄りの読み手に誉めそやされ、かたや超超重量級なのに爽快・痛快、スカッとしまくるエンターテインメントである本書、そして続編が下に見られる風潮があるのでしょう。
スマイリーはカーラを追いつめます。3部作のラストでは、それこそ一瞬は喪に服したようなそぶりはすれど、いろんな相手に「ほどほどにしておけ」と諫められながらも、一切の迷い無く容赦なく、カーラ撃破へ突き進みます。ここまで文芸的豊穣さ、厚みを盛り込みながら、これほどスカッと悪役にトドメを刺してくれる小説は他に見たことがありません。
だからこその「迷い」です。菊池氏の訳語「迷い」が、シリーズの後になればなるほど生きて、意味を増し、輝いてくる。素晴らしい翻訳であり、片やこの新訳版の「幻影」という言葉は、新訳本全体をつらぬく「適当さ」を見れば、これも考え無しに訳されたみっともないやっつけ仕事にしか見えません。
(4)あとがき部分 〜この作品を「思い出の名作」にしないでいただきたい!
村上氏が同世代の内藤陳さんを追悼したくなるのはわかります(わたしも「読まずに死ねるか」で育ちました)しかし、本書が刊行から40年経て冷戦の緊張感も伝わりにくくなった2012年の今なお、読まれ、映画化されるに値する特別な小説であることに言及していただきたかった。
あのジェフリー・ディーヴァーが「最もクールな小説」として讃え、オマージュを捧げる本書。ジェイムズ・エルロイが、高村薫が… 現代・現役のプロ作家のフォロワー・信者数知れずの「グレイト・クラシック」である本書。しかし「行きつ・戻りつ」読めるこの小説構造は、ネット時代の日々大量のテキスト情報に触れている、モダンな読み手にこそ挑戦していただきたいんです。
・すべてのことは読者が周知であるように記述され、(そもそも、ここで挫折する読者が多数)
・一読後、再度読みこむことで、後述の事実が前述に補強され、明らかにされる
・一度全貌を理解すると、前に、後ろに、自在に読み進むことで、支線・伏線がさらにクリアになり楽しめる
・この「前後に読み進める過程」そのものが、スマイリーがサーカスの文書を読み進めつつモグラを追いつめるプロセスそのものであり、記述構造そのものによってスマイリーの追跡術(遡行)を読者が「追体験」できるという、読み手の知性と我慢強さと記憶力に信をおいた、エンターテインメントではあまり類を見ない書かれ方です。
この快感は書物でしか体験できない。映画や舞台のような時間軸に縛られたリニアなメディアでは不可能です。文字の書かれた紙の束である、「書物」であるべき作品なのです。出版全体がまさに電子書籍への移行期・過渡期にある今、本書のような「ページを繰って、指で読む」ことに最適化されたエンターテインメントの存在が、示唆するものは大きいはずです。
また、昨今の一般人はみな、ネット上で偽装せざるを得なくなっています。やれフェイスブックだmixiだと実名&実生活オープンで素晴らしい未来を煽られますが、未知の悪意・人間関係のこじれ(しかも消えない)を思えば自分の本当の誕生日すら公開はためらわれます。多くの人はさらけ出したくない「弱み」や「人に嫌われる部分」を持っているし、そういう神経の細かさへの配慮には、インターネットはまだ追いついていません。
そんなときに、主要な登場人物のすべてが偽りの名前・身分で登場し、権力と評判を手にするためにドロドロの嘘で闘い合う本作は、人の情報の取扱について、「弱みの暴露」がもたらす致命性について、今起きていることのように、リアルな警鐘をならしてくれます。
「挙げれば切りがない粗雑さ」
そもそも「一度読んだら終わり」というようなつくりになっていない本書で、文脈のつながりを感じない今回の翻訳は、致命的です。訳は単にお弟子さんに出したというだけでなく、複数の下請けに出したのではないでしょうか。パートによって品質のばらつきも目立ちます。
例えばある章では「セント・アーミンズ(ヴァーミンズ)」との単語表記、ラストのほうではジムがコントロールと打ち合わせた場所が「スン・ジェイムジズ」の表記。もともと日本語のカタカナ表記は原音を正確に表すのには不向きなのですから、皆さん馴染みの「セント・ジェイムスズ」でいいでしょうに。あるいは逆でもいいです。とにかくなじませていない、こなれていない訳なので、眼が滑って話に入っていくのがつらい。
旧訳に関してある程度弁護したいです。菊池光氏の版は初版から数冊持っていますが、版を改めるごとにケアレスや細かい部分が直されています。非の打ち所のない訳とはいいませんが、少なくとも、物語を理解し、それぞれの登場人物の個性を把握した上で訳されている。なのでパーシィの傲慢さ、トビーの小物感、ビルの奥深さ、すべてキャラが立ち、愛しくてなりません。特に終盤もぐらの逮捕について話し合うときの政治家マイルズ・サーカムのぬらぬらしたしゃべりと、それをスマイリーがタヌキ然といなすシーンなどは菊池版が絶品ものだと思います。(是非読み比べてください!)本書の訳に関しては、「ロング・グッドバイ」の村上春樹氏に対する「長いお別れ」の清水俊二氏とまではいかずとも、菊池版が「読ませる」訳だと、この新訳を前にして感じます。
この本は特別な本なんですよ。バターとワインを正統的にたっぷり使った(ホームズ+ポワロ)×ウォッチメン。大人の舌と胃袋のためのゴージャスな娯楽。こんな贅沢は他にないです。
深い共感というのは同じ旅、経験をした人同士ならではのものです。出来るだけ多くの人と、このティンカーテイラーからはじまる重たくも後味爽快の3部作の旅を共有したいです。本作を心から愛する者として、こんなにひどい訳は、悲しみに耐えません。回収と再発行を、心よりお願いいたします。
これを新訳、というのは無理があります。 英文を単純に日本語にするという作業が成されただけで、前後の文脈をおもんばかった、読ませるための(著者の意・登場人物の個性・話の流れを汲んだ)書き直しがまったく行われていません。自動翻訳か? とすらおもわされる場所もあります。「単語を見て、コンテクストを見ず」。日本語としてろれつが回ってない。読みにくいなどという次元の騒ぎではありません。5つ星つけてる人はパラパラめくって、自分が誤訳を指摘したかったところをチェックしただけなんじゃないでしょうか。小説は英語大好きお勉強ちゃんの自己満足用品じゃないんです。
どうも訳者は目の前にある英文を直訳しただけで、物語全体を把握するステップを踏んでいないとしか思われません。これは序盤のごくわずかな記述が、最後の最後で生きてくるような、超絶伏線回収型小説の本書「ティンカー〜」では致命的で、巻を通じた文脈を配慮して訳されていないと、余韻もなにも起きてこない。結果、本書は読み通すのもつらい、無惨な紙束になりはてています。
そして、そんなことが村上博基氏の翻訳でありえるのか?
恐らく、村上氏はすでに70代後半のご高齢であり、翻訳は下請けに回されたか、お弟子さんに任され、それがそのままノーチェックで世に出てしまったものと思われます。ご本人はざっと読んだ後、あと書きのみ自筆で書かれているのではないでしょうか。そうでなければあの「スマイリーと仲間たち」の、背筋に戦慄が走るような名訳と同一の手になる文とは、まったく思えません。
以下、あえて回収を、とまでお願いしたい理由を述べます。
(1)致命的な、致命的なケアレスミス。
536ページ、最後のページから1枚後ろ。ジムに注意を促しているのは、ジムではなくてビル・ローチ少年です!
親が金持ちで、離婚した家庭の子どもだから観察力が鋭いという以外、ほとんど何の力ももたないちびでデブのビル少年が、持てる力を尽くして、必死になってジムの力になろうとする、そのせつない物語を踏まえていれば、こんな誤植が起きるはずがない。評価してる皆さん、実は読んでないの? ラストのラストですよ。感動台無し。
(2)物語のすじを理解していないかのような訳語。
山ほどありますが、もっとも指摘したいのは528ページ「彼はきみを敬愛していたからだ」、違うでしょ! これは菊池訳の「愛」であって、「敬愛」ではない。原書でも当然「love」です。これが愛でなければ、本書の裏に流れる愛の物語が成立しなくなってしまう。これは訳した人(あえて村上氏と思いたくない)が、この文で示される人間関係を理解していないか、ホモセクシュアルに対して生理的嫌悪を抱いていたとしか思われません。
(3)全編に流れる単語選びのなげやりさ、適当感。
例えば530ページ、2行目「幻影なき男の最後の幻影」。これは菊池版では「迷い無き男の唯一の迷い」です。原書ではillusion。確かに直訳すれば幻影ですが、これはまさに「迷い」でしょう。
スマイリー三部作を貫く芯は、多くの人が指摘するとおり、スマイリーの鉄の意志です。「相手を叩きのめすときには、ほどほどに。それが大人の対応」と、私たちは何かにつけ社会で教えられます。「苦い結末、あいまいな結末こそ高尚かつ、文学的」というヘンな先入観、「カタルシス否定」で大人ごっこ。だから本書のスケールにくらべてライトで雑な「寒い国から帰ってきたスパイ」が、苦いカタルシス少なめの結末ゆえに、自称本格派の年寄りの読み手に誉めそやされ、かたや超超重量級なのに爽快・痛快、スカッとしまくるエンターテインメントである本書、そして続編が下に見られる風潮があるのでしょう。
スマイリーはカーラを追いつめます。3部作のラストでは、それこそ一瞬は喪に服したようなそぶりはすれど、いろんな相手に「ほどほどにしておけ」と諫められながらも、一切の迷い無く容赦なく、カーラ撃破へ突き進みます。ここまで文芸的豊穣さ、厚みを盛り込みながら、これほどスカッと悪役にトドメを刺してくれる小説は他に見たことがありません。
だからこその「迷い」です。菊池氏の訳語「迷い」が、シリーズの後になればなるほど生きて、意味を増し、輝いてくる。素晴らしい翻訳であり、片やこの新訳版の「幻影」という言葉は、新訳本全体をつらぬく「適当さ」を見れば、これも考え無しに訳されたみっともないやっつけ仕事にしか見えません。
(4)あとがき部分 〜この作品を「思い出の名作」にしないでいただきたい!
村上氏が同世代の内藤陳さんを追悼したくなるのはわかります(わたしも「読まずに死ねるか」で育ちました)しかし、本書が刊行から40年経て冷戦の緊張感も伝わりにくくなった2012年の今なお、読まれ、映画化されるに値する特別な小説であることに言及していただきたかった。
あのジェフリー・ディーヴァーが「最もクールな小説」として讃え、オマージュを捧げる本書。ジェイムズ・エルロイが、高村薫が… 現代・現役のプロ作家のフォロワー・信者数知れずの「グレイト・クラシック」である本書。しかし「行きつ・戻りつ」読めるこの小説構造は、ネット時代の日々大量のテキスト情報に触れている、モダンな読み手にこそ挑戦していただきたいんです。
・すべてのことは読者が周知であるように記述され、(そもそも、ここで挫折する読者が多数)
・一読後、再度読みこむことで、後述の事実が前述に補強され、明らかにされる
・一度全貌を理解すると、前に、後ろに、自在に読み進むことで、支線・伏線がさらにクリアになり楽しめる
・この「前後に読み進める過程」そのものが、スマイリーがサーカスの文書を読み進めつつモグラを追いつめるプロセスそのものであり、記述構造そのものによってスマイリーの追跡術(遡行)を読者が「追体験」できるという、読み手の知性と我慢強さと記憶力に信をおいた、エンターテインメントではあまり類を見ない書かれ方です。
この快感は書物でしか体験できない。映画や舞台のような時間軸に縛られたリニアなメディアでは不可能です。文字の書かれた紙の束である、「書物」であるべき作品なのです。出版全体がまさに電子書籍への移行期・過渡期にある今、本書のような「ページを繰って、指で読む」ことに最適化されたエンターテインメントの存在が、示唆するものは大きいはずです。
また、昨今の一般人はみな、ネット上で偽装せざるを得なくなっています。やれフェイスブックだmixiだと実名&実生活オープンで素晴らしい未来を煽られますが、未知の悪意・人間関係のこじれ(しかも消えない)を思えば自分の本当の誕生日すら公開はためらわれます。多くの人はさらけ出したくない「弱み」や「人に嫌われる部分」を持っているし、そういう神経の細かさへの配慮には、インターネットはまだ追いついていません。
そんなときに、主要な登場人物のすべてが偽りの名前・身分で登場し、権力と評判を手にするためにドロドロの嘘で闘い合う本作は、人の情報の取扱について、「弱みの暴露」がもたらす致命性について、今起きていることのように、リアルな警鐘をならしてくれます。
「挙げれば切りがない粗雑さ」
そもそも「一度読んだら終わり」というようなつくりになっていない本書で、文脈のつながりを感じない今回の翻訳は、致命的です。訳は単にお弟子さんに出したというだけでなく、複数の下請けに出したのではないでしょうか。パートによって品質のばらつきも目立ちます。
例えばある章では「セント・アーミンズ(ヴァーミンズ)」との単語表記、ラストのほうではジムがコントロールと打ち合わせた場所が「スン・ジェイムジズ」の表記。もともと日本語のカタカナ表記は原音を正確に表すのには不向きなのですから、皆さん馴染みの「セント・ジェイムスズ」でいいでしょうに。あるいは逆でもいいです。とにかくなじませていない、こなれていない訳なので、眼が滑って話に入っていくのがつらい。
旧訳に関してある程度弁護したいです。菊池光氏の版は初版から数冊持っていますが、版を改めるごとにケアレスや細かい部分が直されています。非の打ち所のない訳とはいいませんが、少なくとも、物語を理解し、それぞれの登場人物の個性を把握した上で訳されている。なのでパーシィの傲慢さ、トビーの小物感、ビルの奥深さ、すべてキャラが立ち、愛しくてなりません。特に終盤もぐらの逮捕について話し合うときの政治家マイルズ・サーカムのぬらぬらしたしゃべりと、それをスマイリーがタヌキ然といなすシーンなどは菊池版が絶品ものだと思います。(是非読み比べてください!)本書の訳に関しては、「ロング・グッドバイ」の村上春樹氏に対する「長いお別れ」の清水俊二氏とまではいかずとも、菊池版が「読ませる」訳だと、この新訳を前にして感じます。
この本は特別な本なんですよ。バターとワインを正統的にたっぷり使った(ホームズ+ポワロ)×ウォッチメン。大人の舌と胃袋のためのゴージャスな娯楽。こんな贅沢は他にないです。
深い共感というのは同じ旅、経験をした人同士ならではのものです。出来るだけ多くの人と、このティンカーテイラーからはじまる重たくも後味爽快の3部作の旅を共有したいです。本作を心から愛する者として、こんなにひどい訳は、悲しみに耐えません。回収と再発行を、心よりお願いいたします。
2013年10月17日に日本でレビュー済み
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2011年の映画『裏切りのサーカス』の原作です。
映画を見て消化不良だった人には、この原作がお勧め。
設定が全然変わってしまっている人も居ますが、絶対こちらの方が面白いです。
映画ではいまいちよく分からなかった、様々な伏線が、この原作を読んでようやく理解できます。
とにかく映画以上に伏線が多く、色々なシーンをシーン毎にどこに繋がっているかが全く明かされず、話すが進んでラストへと収束していくうちにようやく分かってくると言う複雑さ。
一枚一枚のシーンがパネルのようで、最後全部が分かった時点で絵になると言うイメージかな。
それでもこの回りくどい奥深さが癖になります。
映画を見て消化不良だった人には、この原作がお勧め。
設定が全然変わってしまっている人も居ますが、絶対こちらの方が面白いです。
映画ではいまいちよく分からなかった、様々な伏線が、この原作を読んでようやく理解できます。
とにかく映画以上に伏線が多く、色々なシーンをシーン毎にどこに繋がっているかが全く明かされず、話すが進んでラストへと収束していくうちにようやく分かってくると言う複雑さ。
一枚一枚のシーンがパネルのようで、最後全部が分かった時点で絵になると言うイメージかな。
それでもこの回りくどい奥深さが癖になります。