出版社による改題前のタイトルは『歴史の方程式~科学は大事件を予知できるか』だったようです。
10年以上前の作品ですが、コロナ禍の今、生態系のしくみに希望を見出したく、読み返してみました。
ネットワーク科学の最前線を知る著者だけに、広々とした語りは網羅的なのですが、う~ん、冗長。
以下↓ここは冗長さに埋もれさせるのはもったいないから、メモしておこう!と思った箇所です。
我々の社会やネットワークでは、孤立した行為というものは存在しない。
我々の世界は、わずかな行為でさえ大きく増幅され記録されるような形に、(我々によってではなく)
自然の力によって設計されているから。(ああ、行為だけではなく、以心伝心という心の伝播さえ。)
人類の歴史や個人についてはしばらく棚上げして、まず、より単純な非生物の世界について見ていこう。
地表の下の、暗い砂まみれの地下世界へと潜り、そこで何が起こっているか詳しく調べることにしよう。
驚くことに、変化する地球の地下でおこるうごめきに、様々な物事の仕組みの見本を見つけることになる。
カウフマンは関心の対象を生命の起源から、生命が誕生した後の過程、すなわち生態系の複雑な仕組みの
なかで起こる進化へと移した。(考えても仕方ないことから、関心が移ったのは良かった。)
・・・
進化生物学者は、このような問題を明らかにするために、もっぱら「地形」について考えを巡らせている。
といっても本当の地形ではなく、「適応度地形」と呼ばれる起伏に富んだ数学的な曲面についてである。
・・・したがってある生物種の進化的変化は、種のあいだの相互作用を通して、他の種の進化的変化を
引き起こすことがある。カウフマンは、このような理論的な可能性から見て、そういった「共進化」が
何か面白い効果を及ぼすのではないかと考えた。残念ながら、生態系はあまりにも入り組んでいるので、
実際の生態系における生物種の適応度地形の形については、ほとんどわかっていない。しかし・・
ネットワークのある一部分の再構築は、それに隣接した領域の変化をも必要とする。
そしてこのような変化は、さらに別の場所の変化を要求する。(レヴィ・ストロースの構造主義的!)
人間のアイディアは、科学以外にも影響を与える。都市計画から演劇まで、あらゆる分野の人間の活動は、
それぞれ相互作用する優れたアイディアからなる独自の「生態系」を持っている。
芸術や音楽でも同じである。
新たなアイディアが現れると、それが既成のアイディアのネットワークに取り込まれるとき、
必ず周囲に影響を及ぼす。(当たり前なお話ですが、改めてそうだなぁ。)
より大胆に言うと、より広い範囲における人間の歴史という力強い川の流れのなかにも、
臨界状態を表すこの「べき乗則」を見出せるのではないだろうか?
(と、タイトルの印象よりも、内容はいたって誠実。)
個人が大きな影響を及ぼす可能性は、(個人より)何よりも社会システムの特有な組織構造に左右される。
以上、サンタフェ研究所のS・カウフマン氏についての解説が多かった印象ですが、
カウフマン氏の『自己組織化と進化の論理』を翻訳された女性物理学者・米沢富美子さんいわく、
*私たちは偶然の産物ではなく、生まれるべくして生まれた必然の結果であることが説得力のある筆致で
解かれている。(「偶然と必然/J・モノー著」いわくの自由な分子の遺伝回路の発見らしい。)
*カオスとの関連で言えば、自己組織化が働くのは「カオスの縁」(秩序とカオスの境界)近くの
秩序側にシステム(文化的DNA=太古の物語の残像システムのことらしい。)があるとき。
*複雑系の科学の基本キーワードは、非平衡状態における「自己組織化」の理論。
あ、だんだんと冗長になってきましたが、早い話、<ネットワークという自然>との一体感によって、
もはや西欧的な自然観(ヒトと自然の分離)と東洋的な生活感覚(ヒトと自然の一体)との差異さえ、
克服されてきているわけで、タイトルの「べき乗則」よりも、見出したかったのはこっちなのでした。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
¥1,034¥1,034 税込
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
¥1,034¥1,034 税込
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
¥93¥93 税込
配送料 ¥257 6月9日-10日にお届け
発送元: リサイクル商品在宅買取【りもったい】(株式会社シガースタイル) 販売者: リサイクル商品在宅買取【りもったい】(株式会社シガースタイル)
¥93¥93 税込
配送料 ¥257 6月9日-10日にお届け
発送元: リサイクル商品在宅買取【りもったい】(株式会社シガースタイル)
販売者: リサイクル商品在宅買取【りもったい】(株式会社シガースタイル)
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ) 文庫 – 2009/8/25
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥1,034","priceAmount":1034.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1,034","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"%2BbX2Gf1SThoVmXSbFRIGwwFGjLjx4JuJ12q78c5IU8OzIqMiboF22tJ%2B3C4a6cG0w%2FBcQGpCFgMCmu7QaMzAuYMuBvPySE%2BpCFZquZAWzOCi2eqPdxHQLkadSCmjqTK4","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥93","priceAmount":93.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"93","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"%2BbX2Gf1SThoVmXSbFRIGwwFGjLjx4JuJtaQF3RYw3HaZNONTI%2BoFLIYTFmYC2Essw9sdfZD%2BGV%2B35KJmxu0bTQZzHFn2RR3HOKFVHB4YrYLoFFqxH7dgcq%2BS4wsL6%2BmwDbzlT%2BZEFBilzxyywuqdu9385yUSMmbpzayK9Rna8SeX%2F0BZPvVsgg%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
なぜ株式市場は暴落するのか?
なぜ地震予知は失敗しつづけるのか?
すべてのカギは、この法則にある――。
解説:増田直紀(東京大学大学院准教授・ネットワーク科学)
混沌たる世界を支配する、究極の物理法則「べき乗則」。それは砂山の雪崩、地震、絶滅などの自然現象だけでなく、株価変動や流行といった社会現象にさえ見出せる。自らの発見を可能にした科学の進歩過程にも現われるこの法則を、人為と偶然の蓄積である「歴史」全般に敷衍したとき、私たちが手にする驚くべき洞察とは……統計物理の基本から壮大な応用可能性までを語りつくす、スリリングな科学読本。(『歴史の方程式』改題)
なぜ地震予知は失敗しつづけるのか?
すべてのカギは、この法則にある――。
解説:増田直紀(東京大学大学院准教授・ネットワーク科学)
混沌たる世界を支配する、究極の物理法則「べき乗則」。それは砂山の雪崩、地震、絶滅などの自然現象だけでなく、株価変動や流行といった社会現象にさえ見出せる。自らの発見を可能にした科学の進歩過程にも現われるこの法則を、人為と偶然の蓄積である「歴史」全般に敷衍したとき、私たちが手にする驚くべき洞察とは……統計物理の基本から壮大な応用可能性までを語りつくす、スリリングな科学読本。(『歴史の方程式』改題)
- 本の長さ400ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2009/8/25
- 寸法10.5 x 1.7 x 15 cm
- ISBN-104150503583
- ISBN-13978-4150503581
よく一緒に購入されている商品
対象商品: 歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
¥1,034¥1,034
最短で6月8日 土曜日のお届け予定です
残り11点(入荷予定あり)
¥1,840¥1,840
最短で6月8日 土曜日のお届け予定です
残り2点 ご注文はお早めに
¥2,640¥2,640
最短で6月8日 土曜日のお届け予定です
残り1点(入荷予定あり)
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
マーク・ブキャナン
Mark Buchanan
1961年オハイオ生まれ。物理学で博士号を取得。『ネイチャー』『ニュー・サイエンティスト』の編集者を経て、現在はサイエンスライター。他の著書に『複雑な世界、単純な法則』『人は原子、世界は物理法則で動く』がある。
Mark Buchanan
1961年オハイオ生まれ。物理学で博士号を取得。『ネイチャー』『ニュー・サイエンティスト』の編集者を経て、現在はサイエンスライター。他の著書に『複雑な世界、単純な法則』『人は原子、世界は物理法則で動く』がある。
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2009/8/25)
- 発売日 : 2009/8/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 400ページ
- ISBN-10 : 4150503583
- ISBN-13 : 978-4150503581
- 寸法 : 10.5 x 1.7 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 109,289位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 106位ハヤカワ文庫 NF
- - 390位科学読み物 (本)
- - 24,214位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2021年8月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2023年9月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
物理系の本ではあるが、非常に分かり易く記載されている。べき乗則が何か、世の中で見られる現象にどのように関わっているかが良くわかる。例えば、地震の大きさと頻度の関係にべき乗則が関わっている一方で、壊滅的なダメージを与えるような大きな自身の予知は不可能とする考えも良くわかる。また、フラクタル構造に興味を持つ方であれば、エイドリアン・べジャンの「流れとかたち」も良いかもしれない。
私は、タイトルからもっと大きな法則のようなものを連想して期待感で本書を手に取ったが、何故、べき乗則なのか、べき乗則にどのように支配されているか、ということを期待する方には少々物足りない内容かもしれない。
私は、タイトルからもっと大きな法則のようなものを連想して期待感で本書を手に取ったが、何故、べき乗則なのか、べき乗則にどのように支配されているか、ということを期待する方には少々物足りない内容かもしれない。
2021年8月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
何の話しかと思ったら、バタフライ効果(=ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こす)のような、個人レベルのちょっとした変化が結果に大きな影響を及ぼすこと、またもたらす結果の予測困難性を様々な具体的事例をあげて、説明していた。(と理解しました)
本書の内容からは、飛躍しますが、以下、読んだ後に感じたこと。
日本の政治も臨界点(長期に渡るアベスガ政権の歪み、国民のストレス・分断が蓄積)に近く、今後、何が起こってもおかしくないと思います。
2020年の検察庁法改正案の強行採決阻止・廃案につながる怒涛のアクションが一人の無名の女性の「#抗議します」ツイートからはじまったように、ちっぽけな個人のつぶやきが大きな変化を促すことも証明されています。(ただし同様のアクションは種子法や水道民営化では不発)
コントロールはできないけど、良い方向の変化を促すようなアクション・発言を続けていこうと思いました。
本書の内容からは、飛躍しますが、以下、読んだ後に感じたこと。
日本の政治も臨界点(長期に渡るアベスガ政権の歪み、国民のストレス・分断が蓄積)に近く、今後、何が起こってもおかしくないと思います。
2020年の検察庁法改正案の強行採決阻止・廃案につながる怒涛のアクションが一人の無名の女性の「#抗議します」ツイートからはじまったように、ちっぽけな個人のつぶやきが大きな変化を促すことも証明されています。(ただし同様のアクションは種子法や水道民営化では不発)
コントロールはできないけど、良い方向の変化を促すようなアクション・発言を続けていこうと思いました。
2016年5月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一見、本書のタイトルはマニアックですが、本の内容は「あ、この本は私関係ないです」とは絶対に言えないシロモノで、個人的には人生においてもインパクトのある一冊でした。
なぜ地震の発生場所や時間、マグニチュードは予測できないのか?
金持ちが意外とたくさんいるのはなぜか?
戦争はなぜ起きるのか?
種の減少・絶滅に法則はあるのか?
文系理系問わず、それらを横断しながらさまざまなトピックを紹介していくこの知的興奮ったらありません!
たとえば過去同じような感銘を受けた本で言うと、
沈黙の螺旋理論[改訂復刻版]: 世論形成過程の社会心理学
波紋と螺旋とフィボナッチ: 数理の眼鏡でみえてくる生命の形の神秘
眠れなくなる宇宙のはなし
といった本でしょうか。
いずれも、この世、あるいは人間の普遍的な性質や事象について、切れ味鋭く、多様な視点から分析していく本たちです。
しかし、この「べき乗則」のミステリアスな性質をもって、これらのどの本よりも強い関心を惹かれました。
いい読書時間でした!
なぜ地震の発生場所や時間、マグニチュードは予測できないのか?
金持ちが意外とたくさんいるのはなぜか?
戦争はなぜ起きるのか?
種の減少・絶滅に法則はあるのか?
文系理系問わず、それらを横断しながらさまざまなトピックを紹介していくこの知的興奮ったらありません!
たとえば過去同じような感銘を受けた本で言うと、
沈黙の螺旋理論[改訂復刻版]: 世論形成過程の社会心理学
波紋と螺旋とフィボナッチ: 数理の眼鏡でみえてくる生命の形の神秘
眠れなくなる宇宙のはなし
といった本でしょうか。
いずれも、この世、あるいは人間の普遍的な性質や事象について、切れ味鋭く、多様な視点から分析していく本たちです。
しかし、この「べき乗則」のミステリアスな性質をもって、これらのどの本よりも強い関心を惹かれました。
いい読書時間でした!
2017年2月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は複雑系という、創発性のあるものがどうしたら臨界状態になるかを解説したもので、著者の考えには飛躍もあるが、最終的には、第一次世界大戦は、どうして起き、なぜこんなにたくさんの国を巻き込んで長く続いたのかを、答えられるかもしれないという見解を述べていますので、
歴史好きも読んでみてください。
歴史好きも読んでみてください。
2024年2月17日に日本でレビュー済み
原著のタイトルは「Ubiquity」となっているが、文庫の「歴史はべき乗則で動く」もしくは単行本の「歴史の方程式ー科学は大事件を予知できるか」と訳し、どれも歴史というワードを強調しているのは、本の趣旨および一部の章の内容と若干違っていて、違和感を感じた。ネイチャー誌の元編集者で、執筆にかなりの腕前を披露してくれているが、少しくどい。そして、数理に関する議論は基本、数式を採用せず深掘りしていないので、人文向けの気分で読んだほうが良いかもしれない。
2015年6月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「自己組織的臨界」の概念とその豊富な事例を知ることができたのは収穫だった。
互いに影響しあったり、団結したりする系なら自然に自己組織的臨界状態が形成される点は興味深い。
なぜ自然はこのようにできているのか。
互いに影響しあったり、団結したりする系なら自然に自己組織的臨界状態が形成される点は興味深い。
なぜ自然はこのようにできているのか。