ディクスン名義を含むカーの著作全ての中で、「火刑法廷」に次ぐものであると思います。
当方はミステリ、冒険小説、SFなどをつまみ食いしてきたやや邪道なミステリファンですが、
この作品はデュマの「ダルタニャン物語」の系譜を継ぐチャンバラ小説として楽しませて頂きました。
カーの愛読書は「三銃士」で、彼の歴史物はその世界を自分なりに再現しようという試みであると私は思っているのですが、
その試みはこの作品で確実に成功しています。それも異色の解決というおまけをつけて。
17世紀イギリスという馴染みのない舞台での時代考証を要求されるのがネックですが、とにかく無類に面白い「読物」ですので、我慢して読んでください。
主人公の性格が好きになれないという意見もありますが、
カーはシチュエーションの作家ですので、キャラクターに関する不満は「味」と割り切って純粋に物語を愉しむのがいいでしょう。
本格への興味が薄れても、手元に置いておきたい本の一つであると思います。
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ビロードの悪魔 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-7) 文庫 – 1981/1/28
ジョン ディクスン カー
(著),
吉田 誠一
(翻訳)
1995年3刷です。カバー表紙に経年ツカレ(表紙右上部の微ヨレ・微ヤケ・微キズ等)がございます。本文は、経年のわりに微ヤケ軽く、書き込み・折れ・ヨゴレ等はございません。経年並みのコンディションです。帯無です。丁寧に発送いたします。どうぞよろしく。
- 本の長さ557ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日1981/1/28
- ISBN-104150703574
- ISBN-13978-4150703578
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (1981/1/28)
- 発売日 : 1981/1/28
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 557ページ
- ISBN-10 : 4150703574
- ISBN-13 : 978-4150703578
- Amazon 売れ筋ランキング: - 932,542位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年5月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ディクスン・カーの歴史ミステリーの諸作の中でも一番の出来では。廃版なのが残念なぐらい、秀逸な出来栄えです。
2002年5月23日に日本でレビュー済み
モンテクリスト伯などと似た風合い。歴史ミステリ。当然作者がカーであるから、なぞ解きの部分にも力が入っている。分厚さに反して、大変読みやすい。
2011年1月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ジョン・ディクスン・カーは、密室を中心とした不可能犯罪を得意とする作家であることから、これまでそうした本格ミステリ作品しか読んでいませんでしたが、後年力を注いだとされる「歴史ミステリ」作品を初めて読みました。
それは、良い意味で期待を裏切る傑作でした。
本作品は、1951年発表の作品で、カー名義では31作目となります。
1925年のこと。
58歳になる、ニコラス・フェントン「教授」は悪魔と契約を交わし、1675年にタイムスリップした。
精神状態は1925年のまま、当時生きていた26歳の同名の男性、ニコラス・フェントン「卿」の身体に転送されたのだった。
目的は、その一ヵ月後に起こるフェントン卿の妻、リディアの毒殺を未然に防ぐことだった…。
面白いのは時代設定で、タイムスリップした1675年の約10年後には名誉革命が勃発、イギリスは市民革命を成し遂げます。
日本でいえば、明治維新の直前、幕末の動乱期といったところでしょう。
保守派と新興勢力が覇権を争っていた時代とあれば、歴史ものとしてつまらない訳がありません。
主人公のフェントンがそうした時代のうねりに巻き込まれる中、剣術を用いた活劇としての展開が急テンポで進み、500頁を越す大部ながら、全く長さを感じさせない、ジェットコースター的作品になっています。
もちろん、ミステリ作家としての本分である「謎解き」の部分にも抜かりはありません。
毒殺を巡るトリックや事件の真相にも配慮が行き届いています。
また、悪魔との取引とタイムスリップというSF的な設定にも巧妙な仕掛けを施しており、一冊で「冒険活劇」「推理」「SF」の三要素が楽しめる、一大傑作となっていることを強調しておきます。
読み終わるのがもったいないと思えるほど、あっという間の歴史ミステリの旅でした。
「怪奇趣味」のカーが好みでない方でも、歴史ミステリに興味があれば、必読の一冊です。
それは、良い意味で期待を裏切る傑作でした。
本作品は、1951年発表の作品で、カー名義では31作目となります。
1925年のこと。
58歳になる、ニコラス・フェントン「教授」は悪魔と契約を交わし、1675年にタイムスリップした。
精神状態は1925年のまま、当時生きていた26歳の同名の男性、ニコラス・フェントン「卿」の身体に転送されたのだった。
目的は、その一ヵ月後に起こるフェントン卿の妻、リディアの毒殺を未然に防ぐことだった…。
面白いのは時代設定で、タイムスリップした1675年の約10年後には名誉革命が勃発、イギリスは市民革命を成し遂げます。
日本でいえば、明治維新の直前、幕末の動乱期といったところでしょう。
保守派と新興勢力が覇権を争っていた時代とあれば、歴史ものとしてつまらない訳がありません。
主人公のフェントンがそうした時代のうねりに巻き込まれる中、剣術を用いた活劇としての展開が急テンポで進み、500頁を越す大部ながら、全く長さを感じさせない、ジェットコースター的作品になっています。
もちろん、ミステリ作家としての本分である「謎解き」の部分にも抜かりはありません。
毒殺を巡るトリックや事件の真相にも配慮が行き届いています。
また、悪魔との取引とタイムスリップというSF的な設定にも巧妙な仕掛けを施しており、一冊で「冒険活劇」「推理」「SF」の三要素が楽しめる、一大傑作となっていることを強調しておきます。
読み終わるのがもったいないと思えるほど、あっという間の歴史ミステリの旅でした。
「怪奇趣味」のカーが好みでない方でも、歴史ミステリに興味があれば、必読の一冊です。
2020年11月12日に日本でレビュー済み
ジョン・ディクスン・カーは不可能犯罪の巨匠と言われている作家です。
両大戦間のいわゆる探偵小説の黄金時代にデビューし、数多くのトリックを生み出して、一時代を築いた正に巨匠ですが、本国では忘れられつつある作家です。しかし、ここ日本では現役の新本格派の作家が影響を公言して称揚された事(熱過ぎて却って贔屓の引き倒しと思う時がありますが…)で、再評価著しく、未訳作品の翻訳や旧作の新訳出版が続いています。
1950年に発表された本作は作家活動の後半の作風を占める事となる歴史ミステリです。
その歴史ミステリですが、著名な作品『時の娘』のように、史実の謎を残されたデータを基に本格ミステリとして再構成したものと、ある年代を舞台とした時代小説の要素の濃いものの二つに大別できます。
カーの場合は、前者は『エドマンド・ゴッドフリー殺人事件』があるのみで、後者が多くを占めます。
本作は、その代表作であり、後続の作品でもカーが好んで使うタイムスリップを用いた最初の作品でもあります。
物語の舞台は英国の王政復古(1660年~1688年)のチャールズ2世の治世下です。
かなりの英国の歴史の好事家で博識なカーですが、取り分けこの時代にかなり思い入れがあるらしく、本作の他にも前述の『エドマンド…』や『深夜の密使』でも扱っています。
しかし、実社会でも保守的で王党派を自認するカーですが、認知した子だけでも14人というただの好色男とも思えるチャールズ2世を好意的に凛々しい名君然と描いているのは興味深いです。
恐らく創作ではリアリズムを忌避して、過ぎ去った時代に思いを馳せるロマンチストであるカーなので、多くの王が流転の生涯を辿ったスチュワート朝に多いに共感した為と思われます。(その証拠に後のハノーヴァ朝を嫌っています)
歴史学者のニック・フェントンは、1925年の現代から1675年にタイムスリップする事を悪魔に望みます。
同名の貴族ニコラス・フェントン卿の妻を狙う毒殺者から救うため歴史を変えに―。
物語は、剣戟やロマンスがありながら、肝心の毒殺へのタイムリミットが迫っていく中、それを阻止できるのか、というクライマックスに向かい絞め上げるような盛り上がりを見せます。
しかし、意外な結末が…
本格ミステリの驍将のカーだけに、意外な毒殺の犯人を用意していましたが、これには賛否分かれると思いますね。
自分は伏線も張ってあるし、タイムスリップ物という特質を生かした結末だと納得しましたが。
ともあれ、カーの歴史ミステリでは、ベスト3を争う佳作としてオススメします
両大戦間のいわゆる探偵小説の黄金時代にデビューし、数多くのトリックを生み出して、一時代を築いた正に巨匠ですが、本国では忘れられつつある作家です。しかし、ここ日本では現役の新本格派の作家が影響を公言して称揚された事(熱過ぎて却って贔屓の引き倒しと思う時がありますが…)で、再評価著しく、未訳作品の翻訳や旧作の新訳出版が続いています。
1950年に発表された本作は作家活動の後半の作風を占める事となる歴史ミステリです。
その歴史ミステリですが、著名な作品『時の娘』のように、史実の謎を残されたデータを基に本格ミステリとして再構成したものと、ある年代を舞台とした時代小説の要素の濃いものの二つに大別できます。
カーの場合は、前者は『エドマンド・ゴッドフリー殺人事件』があるのみで、後者が多くを占めます。
本作は、その代表作であり、後続の作品でもカーが好んで使うタイムスリップを用いた最初の作品でもあります。
物語の舞台は英国の王政復古(1660年~1688年)のチャールズ2世の治世下です。
かなりの英国の歴史の好事家で博識なカーですが、取り分けこの時代にかなり思い入れがあるらしく、本作の他にも前述の『エドマンド…』や『深夜の密使』でも扱っています。
しかし、実社会でも保守的で王党派を自認するカーですが、認知した子だけでも14人というただの好色男とも思えるチャールズ2世を好意的に凛々しい名君然と描いているのは興味深いです。
恐らく創作ではリアリズムを忌避して、過ぎ去った時代に思いを馳せるロマンチストであるカーなので、多くの王が流転の生涯を辿ったスチュワート朝に多いに共感した為と思われます。(その証拠に後のハノーヴァ朝を嫌っています)
歴史学者のニック・フェントンは、1925年の現代から1675年にタイムスリップする事を悪魔に望みます。
同名の貴族ニコラス・フェントン卿の妻を狙う毒殺者から救うため歴史を変えに―。
物語は、剣戟やロマンスがありながら、肝心の毒殺へのタイムリミットが迫っていく中、それを阻止できるのか、というクライマックスに向かい絞め上げるような盛り上がりを見せます。
しかし、意外な結末が…
本格ミステリの驍将のカーだけに、意外な毒殺の犯人を用意していましたが、これには賛否分かれると思いますね。
自分は伏線も張ってあるし、タイムスリップ物という特質を生かした結末だと納得しましたが。
ともあれ、カーの歴史ミステリでは、ベスト3を争う佳作としてオススメします
2011年6月30日に日本でレビュー済み
ミステリというよりは、冒険小説だね。
現代の人間の意識が、タイムスリップして過去の人の意識に入る、という設定。
これにインスパイアされたのが井沢「猿丸〜」だ。
一応、謎とその解明、意外性がないわけではない。
しかし、著者の興味は、そこにあるわけではない。
剣劇とロマンス、そして中世のムードである。
話は長い。
読み応えはある。
ただし、その分、途中でかなりだれるというか、緊張感が薄くなる。
冒険小説ならそれで、もっと緊張感が続くようなものにしてほしかった。
これは、ストーリーテラーの著者には、無理な注文ではないと思う。
そして実際に、本作より短い作品で、きりっとしまった「喉切り隊長」みたいな大傑作があるんだから。
それでも、読み始めたら、スピードに乗ったら、読むのが止められなくなるほどの面白さではある。
さすがに、こういう時代冒険ものを書きたくてしかたがなかったらしい著者の作品だけのことはある。
そして、ツボを押さえたストーリー展開。
長すぎる事が唯一のマイナスポイントではあるが、傑作である。
現代の人間の意識が、タイムスリップして過去の人の意識に入る、という設定。
これにインスパイアされたのが井沢「猿丸〜」だ。
一応、謎とその解明、意外性がないわけではない。
しかし、著者の興味は、そこにあるわけではない。
剣劇とロマンス、そして中世のムードである。
話は長い。
読み応えはある。
ただし、その分、途中でかなりだれるというか、緊張感が薄くなる。
冒険小説ならそれで、もっと緊張感が続くようなものにしてほしかった。
これは、ストーリーテラーの著者には、無理な注文ではないと思う。
そして実際に、本作より短い作品で、きりっとしまった「喉切り隊長」みたいな大傑作があるんだから。
それでも、読み始めたら、スピードに乗ったら、読むのが止められなくなるほどの面白さではある。
さすがに、こういう時代冒険ものを書きたくてしかたがなかったらしい著者の作品だけのことはある。
そして、ツボを押さえたストーリー展開。
長すぎる事が唯一のマイナスポイントではあるが、傑作である。
2004年1月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
カーの作品はどれも好きなのですが、わけても好きなのがこの作品です。
いわゆる本格ミステリとは毛色のちがう歴史ミステリ。
悪魔と契約して中世のイギリスにタイムスリップした主人公の目的は、ある貴婦人を非業の死から救うこと。彼女の夫として転生した主人公は、姿なき殺人者から美しい妻を守ろうとするのだが……!
カーお得意のスリリングな描写で、息つく暇もなく次々と事件が起こります。また、歴史オタクのカーの緻密な中世ヨーロッパの風俗描写にも注目。
これぞ、カー・ロマンティシズム! これを読まずして、歴史ミステリは語れません!
いわゆる本格ミステリとは毛色のちがう歴史ミステリ。
悪魔と契約して中世のイギリスにタイムスリップした主人公の目的は、ある貴婦人を非業の死から救うこと。彼女の夫として転生した主人公は、姿なき殺人者から美しい妻を守ろうとするのだが……!
カーお得意のスリリングな描写で、息つく暇もなく次々と事件が起こります。また、歴史オタクのカーの緻密な中世ヨーロッパの風俗描写にも注目。
これぞ、カー・ロマンティシズム! これを読まずして、歴史ミステリは語れません!
2012年8月27日に日本でレビュー済み
カーの代表的な歴史ミステリー、といっても、実はカーの歴史ものは初めて読んだので、他の作品との比較はできない。が、とにかく面白かった。
主人公のフェントン教授が、過去の毒殺事件を阻止するため悪魔と契約を交わしてタイムスリップするというSFとオカルトをミックスしたような設定だが、話にすんなり入り込めて後は一気に読み通せた。ロマンスと剣戟、歴史ミステリーというより歴史ロマンといった方が良いのかもしれない。
ミステリーとしては悪魔との駆け引きがミソで、悪魔を出し抜く一方、悪魔に欺かれたりもし、そして実は(詳しくは書けないが)ここにトリックが仕掛けられていて、最後にフェントン教授も読者もともにガツンとやられてしまうのだが、それがまた快感でもあった。
ラストはちょっと中途半端な終わり方で、後日談のようなものが欲しかったが、全体としては500ページ超という長さを感じさせなかった。
主人公のフェントン教授が、過去の毒殺事件を阻止するため悪魔と契約を交わしてタイムスリップするというSFとオカルトをミックスしたような設定だが、話にすんなり入り込めて後は一気に読み通せた。ロマンスと剣戟、歴史ミステリーというより歴史ロマンといった方が良いのかもしれない。
ミステリーとしては悪魔との駆け引きがミソで、悪魔を出し抜く一方、悪魔に欺かれたりもし、そして実は(詳しくは書けないが)ここにトリックが仕掛けられていて、最後にフェントン教授も読者もともにガツンとやられてしまうのだが、それがまた快感でもあった。
ラストはちょっと中途半端な終わり方で、後日談のようなものが欲しかったが、全体としては500ページ超という長さを感じさせなかった。