今まで音楽的な小説と言えばミラン・クンデラ「不滅」がそのポストにいたのだが、このジェニファー・イーガンのそれも勝るとも劣らぬほどの音楽的な出来栄えである。ただし前者がクラシックよりの、多声的な性質であったとするならば、こちらはヤク交じりの血が通い、時に血も噴き出すパンクな音楽が近いだろう。
語る人物は、語られる人物は章により代わる代わる変わり、その章の内部でも時間は未来へ過去へと飛び飛びになるので、語りとその人物に慣れるまではちと辛い。だが音楽プロデューサー「ベニー」と盗癖を持つ助手「サーシャ」、この二人の人物を中核に展開していく人物関係・因果の流れは興味深く、また業も深いものだ。社会の流れ、歴史の流れを背景に練り込み、アメリカから欧州まで語りの舞台を拡げていくが、しかし雄大さはない。「人物」を描くことに力を入れているからだろう。そしてそうした人物たちの行動が、口ずさんだメロディーが、主題を変え、節を変え、リズムがずれて後の人々の手により変奏されていくことに奇妙な感動を覚えるのではないだろうか。
A面とB面に分かれた全体構成の内、犯罪者のインタビュー・ルポ形式の第9章、二人称で書かれた第10章、パワーポイントで書かれた第12章と、後半になるにつれ実験的要素も深くなっていく。だがその頃には作中世界の「繋がり」を探すことに夢中になっているはずだ。
13章からなる優れた短編集とも言っていいし、一本の不思議な群像劇と言ってもいい。そして余韻は優れた音楽を聴いた後の、独特な寂しさが胸に残る。最初は馴染まないが、感動的な小説だと感じた。
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ならずものがやってくる (ハヤカワepi文庫 イ 2-1) 文庫 – 2015/4/22
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ふと目に留まった見知らぬ人の鞄と、そこからのぞく財布。サーシャはこらえきれず財布に手を伸ばすが……。問題を抱える若い女性と、その上司の元パンクロッカーからはじまる物語は、過去と未来を行き来しながら、二人が人生の軌跡を交えた人々につながっていく。あふれる詩情と優れた構成で描かれる、さまざまな生の落胆と希望。世界的ベストセラーとなったピュリッツァー賞、全米批評家協会賞受賞作。
解説/大和田俊之
解説/大和田俊之
- 本の長さ496ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2015/4/22
- ISBN-104151200827
- ISBN-13978-4151200823
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商品の説明
著者について
1962年、シカゴ生まれ。ペンシルヴァニア大学卒業。1993年に短篇集Emerald Cityを刊行。1995年に発表した初の長篇『インヴィジブル・サーカス』はベストセラーとなり、映画化された。長篇第二作Look at Me(2001)で全米図書賞候補となり、長篇第三作『古城ホテル』(2006)を経て、長篇第四作である本書でピュリッツァー賞、全米批評家協会賞、ロサンゼルス・タイムズ文学賞、全英図書賞(国際部門)を受賞。ニューヨーク在住。
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2015/4/22)
- 発売日 : 2015/4/22
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 496ページ
- ISBN-10 : 4151200827
- ISBN-13 : 978-4151200823
- Amazon 売れ筋ランキング: - 534,877位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年2月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
題名が面白そうだと思って買ったけれど、最低です。
なにかの賞を貰っているらしいけれどインチキ本だと思います。
なにかの賞を貰っているらしいけれどインチキ本だと思います。
2013年4月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
書評の番組でおすすめだったので購入しました。ちょっと難しかったです…
2013年4月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
なかなか本屋さんには売ってなくてとても良かったです。
何も考えずに読めてしまいました。
何も考えずに読めてしまいました。
2015年12月22日に日本でレビュー済み
物語となる舞台のニューヨークや、音楽のことなど、
周辺のカルチャーを理解していればより楽しめます。
解説にも書かれていましたが、アルトマンの群像劇のような趣もあり、
映画化したら面白そう。
周辺のカルチャーを理解していればより楽しめます。
解説にも書かれていましたが、アルトマンの群像劇のような趣もあり、
映画化したら面白そう。
2012年12月18日に日本でレビュー済み
Facebookを開設したマーク・ザッカーバーグは、人は本能的につながりたがると言った。本書もまた、人と人とをつなげる物語だ。しかも、時空を超えて。
過去の恥ずかしい失敗に苦悶しながら生きる音楽プロデューサーと、盗癖を病む女性部下が物語の軸となる。そこから彼らと関わりのある(あるいは、かつて関わった)人たちへ、さらにその周辺の人たちへと、物語は時空を超えて拡散し再構築される。
プロットが素晴らしく、バラバラだったパズルのピースが組み合わさっていくかのような脳的快感がある。むろん、つながった物語は喜びだけではなく哀しみに彩られている。それだけに、嘘がない。
登場人物の多くは病んだ人間だ。だがみんな懸命に生きている。だからこそ感情移入できる。所々に散りばめられたユーモアも実に効果的だ。
星四つとしたのは、登場人物のひとりが精神科医のセラピーを受ける冒頭の場面など、良くも悪くも紋切り型のアメリカ的光景に辟易する読者がいるかもしれないことと、翻訳の文章が小説の彫りをいささか浅くしているのではないかという懸念を抱いたため。
ともあれ、ピュリッツァー賞などに選ばれた本書が、巧みなプロットと豊かな詩情を兼ね備えているのは事実。読んで損はない。
過去の恥ずかしい失敗に苦悶しながら生きる音楽プロデューサーと、盗癖を病む女性部下が物語の軸となる。そこから彼らと関わりのある(あるいは、かつて関わった)人たちへ、さらにその周辺の人たちへと、物語は時空を超えて拡散し再構築される。
プロットが素晴らしく、バラバラだったパズルのピースが組み合わさっていくかのような脳的快感がある。むろん、つながった物語は喜びだけではなく哀しみに彩られている。それだけに、嘘がない。
登場人物の多くは病んだ人間だ。だがみんな懸命に生きている。だからこそ感情移入できる。所々に散りばめられたユーモアも実に効果的だ。
星四つとしたのは、登場人物のひとりが精神科医のセラピーを受ける冒頭の場面など、良くも悪くも紋切り型のアメリカ的光景に辟易する読者がいるかもしれないことと、翻訳の文章が小説の彫りをいささか浅くしているのではないかという懸念を抱いたため。
ともあれ、ピュリッツァー賞などに選ばれた本書が、巧みなプロットと豊かな詩情を兼ね備えているのは事実。読んで損はない。
2014年4月10日に日本でレビュー済み
盗癖のある女性が様々な人々と様々な体験をし・・・というお話。
と簡単に書きましたが、ストレートに進行していかないのがこの小説のキモのようで、一応主人公にあたると思われる女性の過去・現在・未来に時制がずれながら展開し、場所も色々な国や地域に跨ったり、叙述も三人称から一人称から二人称から果てはパワーポイントみたいな章もありかなり複雑な様相を極める小説。
ここで著者がなにをしたかったか憶測してみると、主人公格の女性の一生を描くにあたり、その女性を真正面から描かずにその女性の外面からその女性の一生を描こうとしたのではないかと思いました。記憶が確かではないですが、この女性の一人称はなかったと思うし、全てこの女性の外面から見たこの女性の人格と人生を描こうとしたのではないかと。それと作中結構ロックのことが出てきますが、ロックで言えばコンセプト・アルバムのつもりで一人の女性の営為をえがきたかったのかなとも思いました。
なのでそれ程長い小説ではありませんがかなりの精読を要する小説に思えました。読む方はそれなりに集中して読まないとならない結構疲れる小説。メタフィクションとかに興味のある向きにおススメしておきます。
と簡単に書きましたが、ストレートに進行していかないのがこの小説のキモのようで、一応主人公にあたると思われる女性の過去・現在・未来に時制がずれながら展開し、場所も色々な国や地域に跨ったり、叙述も三人称から一人称から二人称から果てはパワーポイントみたいな章もありかなり複雑な様相を極める小説。
ここで著者がなにをしたかったか憶測してみると、主人公格の女性の一生を描くにあたり、その女性を真正面から描かずにその女性の外面からその女性の一生を描こうとしたのではないかと思いました。記憶が確かではないですが、この女性の一人称はなかったと思うし、全てこの女性の外面から見たこの女性の人格と人生を描こうとしたのではないかと。それと作中結構ロックのことが出てきますが、ロックで言えばコンセプト・アルバムのつもりで一人の女性の営為をえがきたかったのかなとも思いました。
なのでそれ程長い小説ではありませんがかなりの精読を要する小説に思えました。読む方はそれなりに集中して読まないとならない結構疲れる小説。メタフィクションとかに興味のある向きにおススメしておきます。