『異端の数ゼロ』に次ぐC.サイフェの新著はエキサイティングでした。
シャノンの情報理論が、シュレディンガーの猫に審判を下す時が来たの
でしょうか。
結果は☆四つ。
7章(量子情報)では、放射性原子の核分裂を例にとって、重ね合わせ状態が
測定という情報移転によって収縮することで、核の崩壊を先延ばしにすることが
出来ると説明しています。しかしその後で、情報移転は、人間の観察がなくても
起こるためー測定が行われなければー自発的な収縮によって、核の崩壊が起こる
という記述となっています。
核が崩壊していない状態と、崩壊してしまった状態の重ね合わせが、測定なしに
自発的に収縮するのならば、人間がわざわざ測定などしなくても、核は永久に
崩壊しないことになってしまいますね。
これが6章(パラドックス)ならば、☆5つでしたが。
エベレットの多世界解釈については、コメントのしようがありませんが、
情報理論にコペンハーゲン解釈を乗り越える可能性を感じました。
一読を。
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宇宙を復号する―量子情報理論が解読する、宇宙という驚くべき暗号 単行本 – 2007/9/21
チャールズ・サイフェ
(著),
林 大
(翻訳)
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購入オプションとあわせ買い
宇宙は情報でできている。シュレディンガーの猫やマクスウェルの悪魔といったパラドクスも、情報という切り口で斬れば謎は氷解……情報をキーワードに、これまでの物理学史を新鮮に書き換え、常識を逸脱した最新科学理論の世界観のもとへと読者をいざなう。
好評『異端の数ゼロ』の著者が満を持して放つ、スリリングなポピュラー・サイエンス。
好評『異端の数ゼロ』の著者が満を持して放つ、スリリングなポピュラー・サイエンス。
- 本の長さ357ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2007/9/21
- ISBN-104152088591
- ISBN-13978-4152088598
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商品の説明
著者について
チャールズ・サイフェ Charles Seife:
サイエンス・ライター。イェール大学で数学の博士号を取得。《サイエンス》《サイエンティフィック・アメリカン》《エコノミスト》の各誌に寄稿。1997年から2000年にかけて《ニュー・サイエンティスト》誌記者をつとめた。著書に『異端の数ゼロ』(早川書房刊)がある。
サイエンス・ライター。イェール大学で数学の博士号を取得。《サイエンス》《サイエンティフィック・アメリカン》《エコノミスト》の各誌に寄稿。1997年から2000年にかけて《ニュー・サイエンティスト》誌記者をつとめた。著書に『異端の数ゼロ』(早川書房刊)がある。
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2007/9/21)
- 発売日 : 2007/9/21
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 357ページ
- ISBN-10 : 4152088591
- ISBN-13 : 978-4152088598
- Amazon 売れ筋ランキング: - 198,441位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 716位科学読み物 (本)
- - 1,130位物理学 (本)
- - 41,002位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年2月13日に日本でレビュー済み
「情報」の世界と「熱力学」の世界は、同じエントロピーの概念で捉える事が出来る―という情報理論の考え方にワクワクしました。例えば永久機関の存在に繋がってしまう「マックスウェルの悪魔」については、悪魔が抱えきれなくなった情報を「消去」する時に発生する熱量で、やはりエントロピーは増加するのだ…という具合に、です。また、(シュレディンガーの)「猫」という巨視的な存在に「重ね合わせ」が起きないのは、測定者たる「自然」に情報が絶えず流れ込んでいるから、とも(デコヒーレンス)。全く同じ概念という訳ではありませんが、両者共に「エントロピー」という言葉が使われているのは全くの偶然とも云えないようです。平行宇宙理論を紹介してからのうやむやな幕切れは少し残念ですが、情報も熱量も「有限」なこの世界の、いろんな眺めかたがある事を提示しているのでしょう。
2016年5月13日に日本でレビュー済み
原著は2007年。原題は「Decoding the universe」であり、著者は数学の博士号をもつサイエンス・ライターである。
曰く・・・
どんな確固たる法則にも統計的要素がある。ごく小さなスケールでは、ごく短時間に素粒子が出現しては消滅することがありうる(真空のゆらぎ)。これで質量およびエネルギー保存の法則が破られたわけではない。現代物理学はこのようなゆらぎを受け入れている。
シャノンは、メッセージに含まれる情報をビットの概念で分析する関数を思いついた。シャノンの関数は、気体が詰まった容器のエントロピーを分析するのにボルツマンが用いたものとそっくりだった。シャノンはこの関数をどう称するか考えていたとき、フォン・ノイマンにエントロピーという名前を提案された。エントロピーと情報という言葉は無関係のように見えるが、情報はエントロピーおよびエネルギー(熱力学の主題)と密接に関連している。熱力学は情報理論の特別な場合に過ぎない。
2つの領域を仕切る扉があり、ある悪魔が、熱い分子(高速分子)が右に、冷たい粒子が左に集まるようにタイミング良く扉をオープンにすれば、熱い領域と冷たい領域に分かれるはず。熱い分子か冷たい分子かという情報を得ることそのものは、宇宙のエントロピーを増大させる。悪魔がエントロピーを減少させた分はこれで帳消しになる。
生きた有機体は絶えず衰退と闘っている。宇宙は常にエントロピーを増やしているにもかかわらず、有機体は内部の秩序を維持する。ものを食べ、太陽から来るエネルギーを消費することで、平衡状態に近づかないようにする。生き物の本質的機能は情報の消費、処理、保存、複製である(シュレディンガー)。
チンパンジーやゴリラは遺伝的に多様だがヒトの多様性はチンパンジー数十匹の集団の平均よりも小さい。おそらく、50万年から80万年ほど前に我々の祖先は何らかの原因で滅びかけ、総人口が1000人ほどまで落ち込んだのだろう。ここから種が再建されたため、我々の遺伝的多様性は小さいのではないか。この数十万年前の大災害のせいで、はなはだしい近親交配が起こったのだろう。
アインシュタインの相対性理論はその核心において、場所から場所に情報をどのように伝送できるかという理論である。
アインシュタインは光の速さはどんな運動にも影響を受けないと「仮定」した。3人の観測者(互いに違う動き方をしている)がそれぞれ光速を測定しても秒速30万キロという観測結果は同じとなる。この矛盾を避けるのは速さの概念、情報である。速さとはある時間を進む距離だが、速さを測るためには距離と時間についての情報を集めねばならない。上記矛盾から抜け出すには、時計とものさしが運動の影響を受けると仮定すればよい。時間と距離は相対的であり準拠枠によって変わる。
それぞれの観測者がどのように動いているかわかっていれば、一般相対性理論の方程式を求めて、それぞれの観測者が何を目にするかを正確に予測できる。相対性理論を理解する鍵はこれである。相対性理論は観測者から観測者にどのように情報が伝えられるかをめぐる法則を支配しており、同じ現象を解釈する仕方が観測者によってどのように異なるかを教える。
相対性理論の副作用の一つに同時性の概念が崩れることがある。二つの出来事が同時に起こったのか、一方がもう一方より先に起こったのか、その逆か、について観測者によって見方が食い違うことがあり得る。
情報は場所から場所に瞬時に伝わるのではなくせいぜい光の速さで伝わることができるだけ。同時という概念は何の意味もない。実は、情報が観測者に届くのに時間がかかるという事実を勘定に入れなければならない。観測者の運動は情報が観測者に届く順序に影響を与える。相対性理論によればある人の視点から見て、ある出来事は、その出来事が起こったという情報がその人に届いて初めて「起こる」。出来事は、その情報が出来事が起こった場所からその人に届くまでは本当に起こるわけではない。これこそ同時性が崩れる原因である。
光より速く動けるものはないという言い方は単純化しすぎている。光より速く動けるものはあるし、光すら光速を超えることもできる。本当のルールは、情報は光よりも速く伝わりえない、というもの。1ビットの情報を送信し、光線より速く受け手に届かせることはできない。さもないと因果律が崩れてしまう。相対性理論は深いところでは情報についての理論である。
相対性理論では二人の観測者が同じ出来事について情報を集めて矛盾する答えを出すことはあり得る。光は粒子であって波でもあるというのは、どちらも正しいし、どちらも正しくない。情報をどのように集めるか実験の結果に影響を与える。量子論は、情報理論の言語で(情報移転について述べる言葉で)言い表せる。
光の振る舞い方は粒子のようでもあり波のようでもあるが、実は光は、波と粒子のどちらの性質もある程度もちあわせていながら、本当の意味では粒子でも波でもない存在である。
情報を集め、それを取り巻く環境に広めるのは自然である。自然そのものが絶えず測定を行っている。これこそがシュレディンガーの猫のパラドクスを解く鍵である。宇宙は粒子に満ちあふれている。私たちが環境を知覚できるのは光子のおかげである。太陽がなくなれば情報源もなくなる。人間がなんの信号も受け取っていないからといって自然が測定をやめたわけではない。
素粒子レベルの微小スケールでは、粒子が絶え間なく出現しては消滅している。この粒子は無から現れ、情報を集め、集めた情報を環境に広めてから、無の中に消えていく。この真空のゆらぎこそは、自然が行う測定から物体を完全に守ることを不可能にする元凶である。情報は宇宙のある物質の本質的な性質であり、ハイゼンベルクの不確定性原理は、情報への制約である。この原理は、誰かが何らかの情報を集めているかどうかにかかわらず、自然のあらゆる側面に当てはまる。
フラーレン(炭素原子70個)のような大きな分子も重ね合わせ状態に置くことができる。この分子は観測されない限り重ね合わせ状態にとどまるはず。フラーレンは乱されない限り、シュレディンガーの猫のように同時に両方に存在できる。しかし、フラーレンを乱されないようにするのは簡単ではない。屋外にあれば窒素分子などと絶えずぶつかり、ぶつかることで窒素分子は測定を行い、フラーレンについての情報を集める。こうして、フラーレンと窒素分子は「からみあう」。衝突後の窒素分子はフラーレンの情報を運ぶ。窒素分子の軌道によりフラーレンがどこにあるかがわかる。これが量子のからみあいの本質である。ある対象について情報を集めると、別の対象について情報を得ることになる。フラーレンが環境ともつれ合うにつれてフラーレンについての情報は遠くまで広がっていく。重ね合わせ状態は崩壊し、フラーレンはいずれかの状態を選ぶ。対象が環境とからみあい、対象についての情報がそれを取り巻くものに流れ込むことを「デコヒーレンス」とよぶ。
ある対象から環境に情報が流れると、その対象は重ね合わせ状態を失い、その振る舞いが古典的対象に似てくる。猫が環境に情報をもらすのをふせぐことができれば猫の重ね合わせ状態を維持できる。本当に生きているし死んでいる猫をつくりだすことができる。そのためにはデコヒーレンスを止めなければならない。猫は大きいので、絶えず多くの衝突をうけ、頻繁に測定される。物体が大きいほど、放射を通して情報をもらさずにはいられない。総じて、何かが小さいほど、単純であるほど、冷たいほどデコヒーレンスを起こしにくい。猫が重ね合わせ状態は維持するのは非常に難しい。これこそ微視的な量子世界と巨視的な古典的世界との本質的な違いである。
シュレディンガーの猫は、測定かデコヒーレンスで情報が環境に漏れ、重ね合わせが収縮し、生と死を選ぶことを強いられる。同様に人間の心は同時に意識と無意識の境目の下をよぎっている。複数の半ば形作られている考えをとらえるようであり、それから、何かの形で何かがパッとひらめく。ある考えが凝集し意識の前面に出てくる。人間の思考は初め前意識で重ね合わせ状態にあり、それから重ね合わせ状態が崩れ、波動関数が収縮すると共に意識に現れるという説がある(ペンローズら)。
情報は抽象的な概念ではなく、物質とエネルギーに備わる、数量化でき測定できる具体的な性質であり、宇宙にあるなにもかも情報によって形づくられ、情報の法則にしたがわねばならない。
などなど。
曰く・・・
どんな確固たる法則にも統計的要素がある。ごく小さなスケールでは、ごく短時間に素粒子が出現しては消滅することがありうる(真空のゆらぎ)。これで質量およびエネルギー保存の法則が破られたわけではない。現代物理学はこのようなゆらぎを受け入れている。
シャノンは、メッセージに含まれる情報をビットの概念で分析する関数を思いついた。シャノンの関数は、気体が詰まった容器のエントロピーを分析するのにボルツマンが用いたものとそっくりだった。シャノンはこの関数をどう称するか考えていたとき、フォン・ノイマンにエントロピーという名前を提案された。エントロピーと情報という言葉は無関係のように見えるが、情報はエントロピーおよびエネルギー(熱力学の主題)と密接に関連している。熱力学は情報理論の特別な場合に過ぎない。
2つの領域を仕切る扉があり、ある悪魔が、熱い分子(高速分子)が右に、冷たい粒子が左に集まるようにタイミング良く扉をオープンにすれば、熱い領域と冷たい領域に分かれるはず。熱い分子か冷たい分子かという情報を得ることそのものは、宇宙のエントロピーを増大させる。悪魔がエントロピーを減少させた分はこれで帳消しになる。
生きた有機体は絶えず衰退と闘っている。宇宙は常にエントロピーを増やしているにもかかわらず、有機体は内部の秩序を維持する。ものを食べ、太陽から来るエネルギーを消費することで、平衡状態に近づかないようにする。生き物の本質的機能は情報の消費、処理、保存、複製である(シュレディンガー)。
チンパンジーやゴリラは遺伝的に多様だがヒトの多様性はチンパンジー数十匹の集団の平均よりも小さい。おそらく、50万年から80万年ほど前に我々の祖先は何らかの原因で滅びかけ、総人口が1000人ほどまで落ち込んだのだろう。ここから種が再建されたため、我々の遺伝的多様性は小さいのではないか。この数十万年前の大災害のせいで、はなはだしい近親交配が起こったのだろう。
アインシュタインの相対性理論はその核心において、場所から場所に情報をどのように伝送できるかという理論である。
アインシュタインは光の速さはどんな運動にも影響を受けないと「仮定」した。3人の観測者(互いに違う動き方をしている)がそれぞれ光速を測定しても秒速30万キロという観測結果は同じとなる。この矛盾を避けるのは速さの概念、情報である。速さとはある時間を進む距離だが、速さを測るためには距離と時間についての情報を集めねばならない。上記矛盾から抜け出すには、時計とものさしが運動の影響を受けると仮定すればよい。時間と距離は相対的であり準拠枠によって変わる。
それぞれの観測者がどのように動いているかわかっていれば、一般相対性理論の方程式を求めて、それぞれの観測者が何を目にするかを正確に予測できる。相対性理論を理解する鍵はこれである。相対性理論は観測者から観測者にどのように情報が伝えられるかをめぐる法則を支配しており、同じ現象を解釈する仕方が観測者によってどのように異なるかを教える。
相対性理論の副作用の一つに同時性の概念が崩れることがある。二つの出来事が同時に起こったのか、一方がもう一方より先に起こったのか、その逆か、について観測者によって見方が食い違うことがあり得る。
情報は場所から場所に瞬時に伝わるのではなくせいぜい光の速さで伝わることができるだけ。同時という概念は何の意味もない。実は、情報が観測者に届くのに時間がかかるという事実を勘定に入れなければならない。観測者の運動は情報が観測者に届く順序に影響を与える。相対性理論によればある人の視点から見て、ある出来事は、その出来事が起こったという情報がその人に届いて初めて「起こる」。出来事は、その情報が出来事が起こった場所からその人に届くまでは本当に起こるわけではない。これこそ同時性が崩れる原因である。
光より速く動けるものはないという言い方は単純化しすぎている。光より速く動けるものはあるし、光すら光速を超えることもできる。本当のルールは、情報は光よりも速く伝わりえない、というもの。1ビットの情報を送信し、光線より速く受け手に届かせることはできない。さもないと因果律が崩れてしまう。相対性理論は深いところでは情報についての理論である。
相対性理論では二人の観測者が同じ出来事について情報を集めて矛盾する答えを出すことはあり得る。光は粒子であって波でもあるというのは、どちらも正しいし、どちらも正しくない。情報をどのように集めるか実験の結果に影響を与える。量子論は、情報理論の言語で(情報移転について述べる言葉で)言い表せる。
光の振る舞い方は粒子のようでもあり波のようでもあるが、実は光は、波と粒子のどちらの性質もある程度もちあわせていながら、本当の意味では粒子でも波でもない存在である。
情報を集め、それを取り巻く環境に広めるのは自然である。自然そのものが絶えず測定を行っている。これこそがシュレディンガーの猫のパラドクスを解く鍵である。宇宙は粒子に満ちあふれている。私たちが環境を知覚できるのは光子のおかげである。太陽がなくなれば情報源もなくなる。人間がなんの信号も受け取っていないからといって自然が測定をやめたわけではない。
素粒子レベルの微小スケールでは、粒子が絶え間なく出現しては消滅している。この粒子は無から現れ、情報を集め、集めた情報を環境に広めてから、無の中に消えていく。この真空のゆらぎこそは、自然が行う測定から物体を完全に守ることを不可能にする元凶である。情報は宇宙のある物質の本質的な性質であり、ハイゼンベルクの不確定性原理は、情報への制約である。この原理は、誰かが何らかの情報を集めているかどうかにかかわらず、自然のあらゆる側面に当てはまる。
フラーレン(炭素原子70個)のような大きな分子も重ね合わせ状態に置くことができる。この分子は観測されない限り重ね合わせ状態にとどまるはず。フラーレンは乱されない限り、シュレディンガーの猫のように同時に両方に存在できる。しかし、フラーレンを乱されないようにするのは簡単ではない。屋外にあれば窒素分子などと絶えずぶつかり、ぶつかることで窒素分子は測定を行い、フラーレンについての情報を集める。こうして、フラーレンと窒素分子は「からみあう」。衝突後の窒素分子はフラーレンの情報を運ぶ。窒素分子の軌道によりフラーレンがどこにあるかがわかる。これが量子のからみあいの本質である。ある対象について情報を集めると、別の対象について情報を得ることになる。フラーレンが環境ともつれ合うにつれてフラーレンについての情報は遠くまで広がっていく。重ね合わせ状態は崩壊し、フラーレンはいずれかの状態を選ぶ。対象が環境とからみあい、対象についての情報がそれを取り巻くものに流れ込むことを「デコヒーレンス」とよぶ。
ある対象から環境に情報が流れると、その対象は重ね合わせ状態を失い、その振る舞いが古典的対象に似てくる。猫が環境に情報をもらすのをふせぐことができれば猫の重ね合わせ状態を維持できる。本当に生きているし死んでいる猫をつくりだすことができる。そのためにはデコヒーレンスを止めなければならない。猫は大きいので、絶えず多くの衝突をうけ、頻繁に測定される。物体が大きいほど、放射を通して情報をもらさずにはいられない。総じて、何かが小さいほど、単純であるほど、冷たいほどデコヒーレンスを起こしにくい。猫が重ね合わせ状態は維持するのは非常に難しい。これこそ微視的な量子世界と巨視的な古典的世界との本質的な違いである。
シュレディンガーの猫は、測定かデコヒーレンスで情報が環境に漏れ、重ね合わせが収縮し、生と死を選ぶことを強いられる。同様に人間の心は同時に意識と無意識の境目の下をよぎっている。複数の半ば形作られている考えをとらえるようであり、それから、何かの形で何かがパッとひらめく。ある考えが凝集し意識の前面に出てくる。人間の思考は初め前意識で重ね合わせ状態にあり、それから重ね合わせ状態が崩れ、波動関数が収縮すると共に意識に現れるという説がある(ペンローズら)。
情報は抽象的な概念ではなく、物質とエネルギーに備わる、数量化でき測定できる具体的な性質であり、宇宙にあるなにもかも情報によって形づくられ、情報の法則にしたがわねばならない。
などなど。
2007年11月4日に日本でレビュー済み
最新の科学理論をわかりやすく、おもしろく解説する暇つぶしにもってこいの良書。
『異端の数0』で発揮された、最新の科学理論が構築されるまでの歴史的変遷やちょっとした
エピソードで、知らず知らずのうちに難解な理論がうっすら理解できるようになるという手法は、今回も健在。
電話回線にどれだけの情報を詰め込むことができるか?という疑問から宇宙を復号(理解)する一大理論に発展していく過程がオモチロイ。
ただし、後半にかけて消化不良を起こす可能性があるため、量子理論に関する若干の基礎知識を持っていることをお勧めします。(もちろん必須ではありませんが、スラスラ読めないと面白くないですし。さしあたって、サイモン・シンがお勧めです)
減点材料は、お値段の高さくらいです。
ポピュラー・サイエンスとしての中身は、満点。
『異端の数0』で発揮された、最新の科学理論が構築されるまでの歴史的変遷やちょっとした
エピソードで、知らず知らずのうちに難解な理論がうっすら理解できるようになるという手法は、今回も健在。
電話回線にどれだけの情報を詰め込むことができるか?という疑問から宇宙を復号(理解)する一大理論に発展していく過程がオモチロイ。
ただし、後半にかけて消化不良を起こす可能性があるため、量子理論に関する若干の基礎知識を持っていることをお勧めします。(もちろん必須ではありませんが、スラスラ読めないと面白くないですし。さしあたって、サイモン・シンがお勧めです)
減点材料は、お値段の高さくらいです。
ポピュラー・サイエンスとしての中身は、満点。
2007年10月24日に日本でレビュー済み
クロード・シャノンの情報理論を応用することによって相対性理論や量子論がわかりやすくなることを示した良書。ある程度の数学的基礎は必要なものの、シュレディンガーの思考実験「生きていて死んでいる猫」、アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼンのパラドックスの意味が理解できた。
エベレットの他世界解釈に触れた最終章だけはもう一押し欲しい感あり。文中で幾度か言及されたセス・ロイドの仕事を紹介する『宇宙をプログラムする宇宙』が近刊とのことなので、今から楽しみである。
エベレットの他世界解釈に触れた最終章だけはもう一押し欲しい感あり。文中で幾度か言及されたセス・ロイドの仕事を紹介する『宇宙をプログラムする宇宙』が近刊とのことなので、今から楽しみである。
2007年11月11日に日本でレビュー済み
大変面白かった。
科学的な解釈から、筆力まで素晴らしい。
特にエントロピーの説明が秀逸。
どっかのサイトで、だれかが書いていたように「多世界解釈」については今ひとつだが、後半の章もそれなりに刺激を受けるところも多く、それなりによい。
『異端の数ゼロ』も読んでみたくなった。
科学的な解釈から、筆力まで素晴らしい。
特にエントロピーの説明が秀逸。
どっかのサイトで、だれかが書いていたように「多世界解釈」については今ひとつだが、後半の章もそれなりに刺激を受けるところも多く、それなりによい。
『異端の数ゼロ』も読んでみたくなった。