笹氏の短歌は、前作「念力家族」を繙いてわかるように一見奇を衒うように見えて繊細な作品に満ちている。今回は時代背景がはっきりしている分、私などの世代には題材が見えやすい。それだけに、なのかもしれないが、言葉の使い方、ことに口語と文語の組み合わせに何か蕪雑なものを感じてしまう歌があちこちにあって、少し悲しい。
しかし何より問題なのは巻末の栗木京子氏の解説である。「ジョジョの奇妙な冒険」も読まずに(ネーミングの由来は教えられたらしいが、それでも読んでいないとみえる)、この歌集について云々すること自体疑問符がつく。この歌集はそれぞれ個別の主題とも言える事項、たとえばジャミラにせよメトロン星人にせよ生方アナにせよケイシーにせよ、それらに対する理解がなければ殆ど成立しないのだから。読解力そのものはどうかというと。
ペーパーを買い損ねたる伊東家のトイレに垂れる一筋の縄
の「縄」が「水洗のために引っ張る紐だろうか」なんて書いてある。もちろんこれは、昔、紙が貴重品だったころに田舎であった排便後に尻を拭くための縄のことであるし、そうでなければこの歌は意味を為さない。大体「紐」と「縄」の区別を理解せずして、「細部へのこだわりが独特」などと言えるのが凄い。
歌集として星4つ、解説で一点減。
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抒情の奇妙な冒険 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) 単行本 – 2008/3/20
笹 公人
(著)
- 本の長さ185ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2008/3/20
- ISBN-104152089075
- ISBN-13978-4152089076
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2008/3/20)
- 発売日 : 2008/3/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 185ページ
- ISBN-10 : 4152089075
- ISBN-13 : 978-4152089076
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,075,599位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2017年6月12日に日本でレビュー済み
#笹公人 #短歌 「万博に行けなかった悔しさを原動力にできたかどうかはわからない」 泣くもんか砂場に半分埋もれてる科学特捜隊のヘルメット #返歌 「中津川フォークジャンボリーに行けなかった悔しさを原動力にできたかどうかはわからない」 十二月雨の日だってあるものさ息子が叩くドラムを聞きつ
2008年5月3日に日本でレビュー済み
「「ドラえもんがどこかにいる!」と子供らのさざめく車内に大山のぶ代」
・・・こうした作品を見れば分かるように、笹短歌とは基本「おもしろい」ものなのですが、かといってそれだけか?というと案外そうでもなくて、それが、なんというか、この方の作品が持っている「コク」であります。
最新作『抒情の奇妙な冒険』では、その「コク」が増しておりました。実に味わい深い。というか「切ない」。
夕焼け、裸電球、放課後、砂場、冬の陽だまり。このあたりのワードでキュンとなったらもう最後、ユリ・ゲラーやたけし城、なめ猫、聖子ちゃんカットと、さまざまな単語に、笑いよりもむしろ懐かしさ由来の切なさを感じずにはいられません。口元は笑っていても、心中は切ない。それが笹氏の「抒情」ということなのでしょう。
学習漫画『杉田玄白』読む子らよ腑分けの場面トラウマとなれ
陽だまりの春の廊下でふりむけばタイム・リープの少女に会える
一瞬でケンシロウに殴り殺される雑魚にも母がいるということ
・・・おもろ切ないこの「ねじれ具合」を味わってみて損はないかと思います!
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夕焼け、裸電球、放課後、砂場、冬の陽だまり。このあたりのワードでキュンとなったらもう最後、ユリ・ゲラーやたけし城、なめ猫、聖子ちゃんカットと、さまざまな単語に、笑いよりもむしろ懐かしさ由来の切なさを感じずにはいられません。口元は笑っていても、心中は切ない。それが笹氏の「抒情」ということなのでしょう。
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