単純で独善的な大衆と現代のテクノロジーが結合することにより実現可能な近未来社会の物語。
いつも見られていることで人間は完璧になる、世界は良くなる、という稚拙な信念のもとに人々が団結して行きつく先が描かれている。
善と悪は単純には決められない。価値観には多様性がある。だから秘密は必然的に生まれる。他人の評価に邪魔されない隠れ場所を持ちたいということは悪いことではない。
全知全能の神は存在しない。まして人間は、真理を知るにはほど遠い存在だ。だから多数決は危うい。多数決による全人口への義務強制はもっと危険だ。
例えばワクチンの問題など。ワクチンが人類にとって有益か有害かという問いはまだ答えがない。ところが子供のワクチンを拒否する親は社会に対して無責任だと責められる。サークルがワクチン接種の義務化を多数決で決めて、誰も逃れられない状況を作るとどうなるか。すでにアメリカでは同様の状況が出来上がっているが、サークルのシステムがあればさらにそれが完全化される。
サークルの高速通信の世界では議論が省略される。現在の民主主義の手続きはまどろこしいが、少数派の意見も含めての議論を決定までのプロセスに組み入れるための工夫のはずだ(現実そうなっているかは別として)。
この立ち止りの欠如は、卑近な例でもすでに私たちの日常の中にある。手紙やメールでのやりとりでは、相手の文章を読んで、しばらく考え、時には1日2日経って考えが熟してから返信したものだった。今ではラインやメッセンジャーで送り先の既読・未読がわかってしまうから、読んだらすぐに返信しなければいけない。答えに迷っていると相手に思わせてはいけないという圧力を感じさせられる、相互監視社会だ。このような状況は小説の中にも描かれている。
この小説の肝は、主人公のメイが一貫して盲信的で軽薄であるという点だ。しかもまったくの白痴なのではなく、順応性があり努力家で、学業や仕事では優秀だ。ただ、彼女の人間性の中核があまりに空虚なのだ。作者の、ヒロインを生み出さないという決意、夢を描かないという冷徹さが小気味よかった。そしてこれは極めて現実に即していると思った。世の中を支配できるのは愚か者なのだ。批判精神や知的センスを持った人間なら、権力の座につくまでの道程で一度は躊躇してしまう。信念も良心もない人間ほど、頂点を目指して一直線に邁進することができる。メイが何も省みず、嬉々として破滅へ突き進むように。
最後に、訳の日本語が少し不自然なかんじがした。訳者の問題なのか、原文に忠実なのかわからない。余裕があれば原作にも挑戦したい。
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ザ・サークル 単行本(ソフトカバー) – 2014/12/19
世界最高のインターネット・カンパニー、サークル。広くて明るいキャンパス、一流のシェフを揃えた無料のカフェテリア、熱意ある社員たちが生み出す新技術――そこにないものはない。どんなことも可能だ。
故郷での退屈な仕事を辞めてサークルに転職した24歳のメイは、才気あふれる同僚たちに囲まれて幸せな会社生活を送りはじめる。しかし、サークルで推奨されるSNSでの活発な交流は、次第にメイの重荷になっていき……
人間とインターネットの未来を予見して世界を戦慄させた、笑いと恐ろしさに満ちた傑作小説。
故郷での退屈な仕事を辞めてサークルに転職した24歳のメイは、才気あふれる同僚たちに囲まれて幸せな会社生活を送りはじめる。しかし、サークルで推奨されるSNSでの活発な交流は、次第にメイの重荷になっていき……
人間とインターネットの未来を予見して世界を戦慄させた、笑いと恐ろしさに満ちた傑作小説。
- 本の長さ526ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2014/12/19
- ISBN-104152095113
- ISBN-13978-4152095114
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商品の説明
著者について
1970年生まれ。シカゴ近郊で育つ。イリノイ大学卒業。1998年に出版社マクスウィーニーズを創立。2000年に発表した初の著書である回想記『驚くべき天才の胸もはりさけんばかりの奮闘記』がピュリッツァー賞最終候補になり注目を集める。ノンフィクションとフィクションの双方で幅広く活動しており、2012年に刊行された長篇A Hologram for the King(早川書房近刊)は全米図書賞最終候補となり、映画化された。2013年に発表した本作は《ニューヨーク・タイムズ》をはじめとする有力紙誌で年度ベスト・ブックに選出された。社会活動家としても知られる、アメリカで最も期待される気鋭の作家である。
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2014/12/19)
- 発売日 : 2014/12/19
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 526ページ
- ISBN-10 : 4152095113
- ISBN-13 : 978-4152095114
- Amazon 売れ筋ランキング: - 794,006位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 10,735位英米文学
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年5月20日に日本でレビュー済み
24歳のメイは大学時代の友人アニーのつてを頼って、世界中が憧れるインターネット企業サークルに就職を果たす。
サークルは次々と人間と社会の<透明化>に向けた新機軸を打ち出していく。政府や政治家が国民に隠し事をしないよう、そして犯罪者やテロ組織が街の平穏に乗じて密かに紛れ込むことがないよう、対策を講じていき、世界に賛同者を増やしていった。そしてメイはその<透明化>の顔に指名される。そのメイに、カルデンと名乗る謎の男が近づく。カルデンはサークルの社員だと言うが、その記録は社員データに見つからない…。
----------------------------
サークル社はGoogle、Facebook、Youtube、Instagram、さらにはニコニコ動画を統合したかのような企業です。国家の不正を暴露し、犯罪の抑止を進めるための様々な仕組みの構築に邁進する姿は、社会の<進化>と人類の<向上>に向けた素敵な取り組みに見えます。
しかし、それはやがて、個人に一切のプライバシーを許さない、人間活動の森羅万象をネット上で永久に公開し続ける仕組みへと変貌していきます。
――というと、なんだかオーウェルが『 一九八四年 』で描いた苛烈なディストピアが広がっているように感じられるかもしれません。
事実、323頁にはサークル社の標語「秘密は嘘/分かち合いは思いやり/プライバシーは盗み」が掲げられています。これは『一九八四年』が全体主義国家のモットーとして刻んだ「戦争は平和である/自由は屈従である/無知は力である」を想起させるものです。
ですが、この小説『ザ・サークル』は『一九八四年』に比べるともっと軽妙洒脱で滑稽なテイストがします。
「すごい、ここは天国だ」――出勤初日にメイは、会社の広大な敷地、生き生きと働く同僚らを見て心底そう思うほど。彼女は無邪気このうえなく、ネット社会が抱える難点にはとことん無頓着です。
メイに底の浅さを感じる読者もいるかもしれません。ですが、もらったメールにきちんと返事をしなくてはと強迫観念にかられたり、自分の日常活動を誇示するために写真や動画をひたすら公開し続けたり、ネットでの自分の評判に一喜一憂したりするあたりは、誰しも一度ならず身に覚えがあることではないでしょうか。ですからメイを底の浅い人間だと斬り捨てられる人は少数派かもしれません。なじみのネット生活が戯画化されているだけと思えば、気になるどころか、むしろ苦笑することしきりだった読者のほうが多いのでは。
さて、私がこの小説を読んでみようと考えたのは、先日読んだジョディ・アーチャー /マシュー・ジョッカーズ共著『 ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム 』で紹介されていたからです。近年の全米ベストセラーの中からコンピュータが、もっともよくできた作品として選んだのがこの小説だったのです。
『ベストセラーコード』の分析するところによると、ベストセラー本に共通する要素とは次のとおりです。
◆最もよく見られるテーマは<人間同士のつながりを感じさせる親密な関係>。それ以外に上位にくるのは、<家庭>、<仕事>、<最新テクノロジー>。
◆ベストセラーのプロットラインは山と谷が規則正しいリズムを刻む。三幕構成の均斉のとれるプロットラインが読者をひきつけ、感情の起伏の上下が緻密に計算されているとヒットにつながる。
◆最高の書き出し文は、300頁の物語が孕む対立のすべてを20ワード以下の一文に盛り込んだもの。
まさしく『ザ・サークル』はこうした要素をきちんと備えています。プロットラインは、メイの一喜一憂ぶりに伴って山と谷を交互に刻んでいきます。メイが仕事で上司や同僚から高い評価を得て華やいだ気分が頁を満たすかと思うと、その次には家族や元カレとのギクシャクした人間関係に暗澹たる気持ちが描かれる、といった具合です。そのアップダウンが心地よい読書を生んでいるわけですから、まさに著者の思うつぼといえるでしょう。
私は微苦笑しながら読みました。
----------------------------
*362頁:ジャッキーがフランシスに対して作った<しな>はカメラにははっきりと映らなかったし、フランシス自身にもわかってもらえなかったけれど、メイには「銅鑼の音ほども微妙な仕草だった」と表現されています。
ここは原文では「To Mae it was as subtle as a gong.」となっていて、確かに「銅鑼の音ほども微妙な仕草だった」と直訳できますが、「銅鑼の音」はおよそ「微妙」というような類いのものではなく、とてもはっきりとした大きな音です。
英語には「as subtle as a sledgehammer」という表現があり、(直訳)「大型ハンマーと同じくらい繊細で」⇒(意訳)「全然繊細でない・ひどく荒っぽい」=「微妙さ・繊細さのかけらもない」という意味になります。これは皮肉の表現なのです。
ですから「To Mae it was as subtle as a gong.」も「メイには、明々白々だった」としたほうが分かりやすかったのではないでしょうか。「銅鑼の音ほども微妙」という日本語で皮肉が通じる期待するのはなかなか難しいと思います。
サークルは次々と人間と社会の<透明化>に向けた新機軸を打ち出していく。政府や政治家が国民に隠し事をしないよう、そして犯罪者やテロ組織が街の平穏に乗じて密かに紛れ込むことがないよう、対策を講じていき、世界に賛同者を増やしていった。そしてメイはその<透明化>の顔に指名される。そのメイに、カルデンと名乗る謎の男が近づく。カルデンはサークルの社員だと言うが、その記録は社員データに見つからない…。
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サークル社はGoogle、Facebook、Youtube、Instagram、さらにはニコニコ動画を統合したかのような企業です。国家の不正を暴露し、犯罪の抑止を進めるための様々な仕組みの構築に邁進する姿は、社会の<進化>と人類の<向上>に向けた素敵な取り組みに見えます。
しかし、それはやがて、個人に一切のプライバシーを許さない、人間活動の森羅万象をネット上で永久に公開し続ける仕組みへと変貌していきます。
――というと、なんだかオーウェルが『 一九八四年 』で描いた苛烈なディストピアが広がっているように感じられるかもしれません。
事実、323頁にはサークル社の標語「秘密は嘘/分かち合いは思いやり/プライバシーは盗み」が掲げられています。これは『一九八四年』が全体主義国家のモットーとして刻んだ「戦争は平和である/自由は屈従である/無知は力である」を想起させるものです。
ですが、この小説『ザ・サークル』は『一九八四年』に比べるともっと軽妙洒脱で滑稽なテイストがします。
「すごい、ここは天国だ」――出勤初日にメイは、会社の広大な敷地、生き生きと働く同僚らを見て心底そう思うほど。彼女は無邪気このうえなく、ネット社会が抱える難点にはとことん無頓着です。
メイに底の浅さを感じる読者もいるかもしれません。ですが、もらったメールにきちんと返事をしなくてはと強迫観念にかられたり、自分の日常活動を誇示するために写真や動画をひたすら公開し続けたり、ネットでの自分の評判に一喜一憂したりするあたりは、誰しも一度ならず身に覚えがあることではないでしょうか。ですからメイを底の浅い人間だと斬り捨てられる人は少数派かもしれません。なじみのネット生活が戯画化されているだけと思えば、気になるどころか、むしろ苦笑することしきりだった読者のほうが多いのでは。
さて、私がこの小説を読んでみようと考えたのは、先日読んだジョディ・アーチャー /マシュー・ジョッカーズ共著『 ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム 』で紹介されていたからです。近年の全米ベストセラーの中からコンピュータが、もっともよくできた作品として選んだのがこの小説だったのです。
『ベストセラーコード』の分析するところによると、ベストセラー本に共通する要素とは次のとおりです。
◆最もよく見られるテーマは<人間同士のつながりを感じさせる親密な関係>。それ以外に上位にくるのは、<家庭>、<仕事>、<最新テクノロジー>。
◆ベストセラーのプロットラインは山と谷が規則正しいリズムを刻む。三幕構成の均斉のとれるプロットラインが読者をひきつけ、感情の起伏の上下が緻密に計算されているとヒットにつながる。
◆最高の書き出し文は、300頁の物語が孕む対立のすべてを20ワード以下の一文に盛り込んだもの。
まさしく『ザ・サークル』はこうした要素をきちんと備えています。プロットラインは、メイの一喜一憂ぶりに伴って山と谷を交互に刻んでいきます。メイが仕事で上司や同僚から高い評価を得て華やいだ気分が頁を満たすかと思うと、その次には家族や元カレとのギクシャクした人間関係に暗澹たる気持ちが描かれる、といった具合です。そのアップダウンが心地よい読書を生んでいるわけですから、まさに著者の思うつぼといえるでしょう。
私は微苦笑しながら読みました。
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*362頁:ジャッキーがフランシスに対して作った<しな>はカメラにははっきりと映らなかったし、フランシス自身にもわかってもらえなかったけれど、メイには「銅鑼の音ほども微妙な仕草だった」と表現されています。
ここは原文では「To Mae it was as subtle as a gong.」となっていて、確かに「銅鑼の音ほども微妙な仕草だった」と直訳できますが、「銅鑼の音」はおよそ「微妙」というような類いのものではなく、とてもはっきりとした大きな音です。
英語には「as subtle as a sledgehammer」という表現があり、(直訳)「大型ハンマーと同じくらい繊細で」⇒(意訳)「全然繊細でない・ひどく荒っぽい」=「微妙さ・繊細さのかけらもない」という意味になります。これは皮肉の表現なのです。
ですから「To Mae it was as subtle as a gong.」も「メイには、明々白々だった」としたほうが分かりやすかったのではないでしょうか。「銅鑼の音ほども微妙」という日本語で皮肉が通じる期待するのはなかなか難しいと思います。
2021年8月19日に日本でレビュー済み
文庫版の方を上/下巻共に読みました。以下ネタバレなしで感想を書きます。
感想としては、あまりにも世界が物語にとって都合よく描かれているので、
風刺以上の何物にも感じられませんでした。
中編、短編だったら許容できる範囲内のお話ですけど、分厚い文庫本二冊分の分量があります。
秀逸で笑える描写はあるものの、あらすじをどこかで読むぐらいが丁度いい小説だと思いました。
この小説では個人がどんどんプライバシーを手放していく描写が主眼となるわけですが、
そこの描写があまりにもリアリティを感じさせないので、読んでいて手応えを何も感じません。
特に、2010年代の混乱を知っている我々からすると、なおさらな感じがあります。
寓話として読むなら面白いけど、一つの小説として読むにはちょっとキツいかな、という感じです。
…ただ、こうやってアマゾンでこの小説をレーティングしている時点で、
自分も「ザ・サークル」的な世界に片足を突っ込みつつあるのかもしれない…
そう思うと、少し背筋が寒くなるのも事実で、そう考えると、これからの時代を生きる我々に、
何かしらの警鐘を与えてくれるほどには面白小説だとはいえるのかもしれません。
感想としては、あまりにも世界が物語にとって都合よく描かれているので、
風刺以上の何物にも感じられませんでした。
中編、短編だったら許容できる範囲内のお話ですけど、分厚い文庫本二冊分の分量があります。
秀逸で笑える描写はあるものの、あらすじをどこかで読むぐらいが丁度いい小説だと思いました。
この小説では個人がどんどんプライバシーを手放していく描写が主眼となるわけですが、
そこの描写があまりにもリアリティを感じさせないので、読んでいて手応えを何も感じません。
特に、2010年代の混乱を知っている我々からすると、なおさらな感じがあります。
寓話として読むなら面白いけど、一つの小説として読むにはちょっとキツいかな、という感じです。
…ただ、こうやってアマゾンでこの小説をレーティングしている時点で、
自分も「ザ・サークル」的な世界に片足を突っ込みつつあるのかもしれない…
そう思うと、少し背筋が寒くなるのも事実で、そう考えると、これからの時代を生きる我々に、
何かしらの警鐘を与えてくれるほどには面白小説だとはいえるのかもしれません。
2020年12月7日に日本でレビュー済み
いつもネットやSNSに触れている人ほど、鮮明なイメージを持って読めると思います。
学生時代の友人のつてで、巨大IT企業に勤めることになった若い女性が主人公。
職場は明るくきれいで、何でも揃っており、快適そのもの。
任されたカスタマーサポート業務の成果は、明確な数値で示されるため、張り合いがある。
SNSへの参加も重要業務のひとつで、これも参画の度合いによって順位がつけられる。
最初は戸惑っていた主人公が、次第に環境に慣れ、ツールを使いこなして社会貢献に励む姿は、颯爽としていますが、時に滑稽です。
読みながら、苦笑したり、ハラハラしたり。先へ先へとページをめくりました。
最後に彼女が選んだ道は、果たして……?
読み終わって、特に気に入ったのは、伏線の回収が読者の想像に任されているところ。
主人公がうっかり忘れているらしい出来事を、読み手として思い返してみれば、物語の「その後」に何が起こるのか、いくらか具体的に想像がつきます。
逆に、不満に思ったのは、恋愛要素の入れ方が雑なところで、「この人は主人公のどこに惹かれたのだろう」等、よく分からないまま終わってしまいました。
いずれにしても、テンポよく面白く読むことができました。
現代社会における、個人の属性についての行き過ぎた数値化や、SNSの功罪について、あらためて考えさせられます。
学生時代の友人のつてで、巨大IT企業に勤めることになった若い女性が主人公。
職場は明るくきれいで、何でも揃っており、快適そのもの。
任されたカスタマーサポート業務の成果は、明確な数値で示されるため、張り合いがある。
SNSへの参加も重要業務のひとつで、これも参画の度合いによって順位がつけられる。
最初は戸惑っていた主人公が、次第に環境に慣れ、ツールを使いこなして社会貢献に励む姿は、颯爽としていますが、時に滑稽です。
読みながら、苦笑したり、ハラハラしたり。先へ先へとページをめくりました。
最後に彼女が選んだ道は、果たして……?
読み終わって、特に気に入ったのは、伏線の回収が読者の想像に任されているところ。
主人公がうっかり忘れているらしい出来事を、読み手として思い返してみれば、物語の「その後」に何が起こるのか、いくらか具体的に想像がつきます。
逆に、不満に思ったのは、恋愛要素の入れ方が雑なところで、「この人は主人公のどこに惹かれたのだろう」等、よく分からないまま終わってしまいました。
いずれにしても、テンポよく面白く読むことができました。
現代社会における、個人の属性についての行き過ぎた数値化や、SNSの功罪について、あらためて考えさせられます。
2017年10月3日に日本でレビュー済み
IT企業に勤める主人公が仕事が重荷になり・・・というお話。
書かれたの2013年だそうですが、私が買った2~3年前より今現在読んだ方が面白い、というか色々な単語等が理解しやすいかも、というインターネット社会を予見した作品に思えました。例えばストリーミングとかソーシャル・メディア・ネットワークとか少し前より今の方が通りが良いと思えます。
内容も来るべきインターネット社会を風刺乃至批判していて、その先見性に驚かされます。あまりネットに頼り過ぎすると或いは依存しているとこういう風になる、という著者からの警告めいた社会派小説として十分面白い小説だと思えました。
私も生活のインフラの大部分がパソコンで、かなり依存しておりまして、故障して使えなくなると、かなり不便に感じる事が多く、そういう利点と欠点が同じという、パソコン中心の暮らしを見直した方がいいのは判っておりますが、やはり便利なので、つい頼り過ぎになるのを反省しております。
来るべきIT社会を警告した社会派小説の傑作。是非ご一読を。
書かれたの2013年だそうですが、私が買った2~3年前より今現在読んだ方が面白い、というか色々な単語等が理解しやすいかも、というインターネット社会を予見した作品に思えました。例えばストリーミングとかソーシャル・メディア・ネットワークとか少し前より今の方が通りが良いと思えます。
内容も来るべきインターネット社会を風刺乃至批判していて、その先見性に驚かされます。あまりネットに頼り過ぎすると或いは依存しているとこういう風になる、という著者からの警告めいた社会派小説として十分面白い小説だと思えました。
私も生活のインフラの大部分がパソコンで、かなり依存しておりまして、故障して使えなくなると、かなり不便に感じる事が多く、そういう利点と欠点が同じという、パソコン中心の暮らしを見直した方がいいのは判っておりますが、やはり便利なので、つい頼り過ぎになるのを反省しております。
来るべきIT社会を警告した社会派小説の傑作。是非ご一読を。
2015年3月4日に日本でレビュー済み
自分が今・どこで・なにをしているかをSNSへ投稿する方は少なくないと思います。
それは文章、画像、動画という形で公開されるわけですが、
それがあなたの望む望まないに関わらず、
リアルタイムで、連続的に公開されるとしたら・・・?
あなたの行動が常に可視化されたとき、
「常に誰かが一緒に居る安心感」を抱くのか。
あるいは
「常に誰かに監視されている恐怖」を抱くのか。
この小説は、「可視化」を進める企業に入社した主人公が
段々とのめり込み、いや飲み込まれていく様を描写しています。
もし本書のような社会が実現したら・・・
SNSをする手を少し止めて、考えてみるのもいいかもしれませんね。
それは文章、画像、動画という形で公開されるわけですが、
それがあなたの望む望まないに関わらず、
リアルタイムで、連続的に公開されるとしたら・・・?
あなたの行動が常に可視化されたとき、
「常に誰かが一緒に居る安心感」を抱くのか。
あるいは
「常に誰かに監視されている恐怖」を抱くのか。
この小説は、「可視化」を進める企業に入社した主人公が
段々とのめり込み、いや飲み込まれていく様を描写しています。
もし本書のような社会が実現したら・・・
SNSをする手を少し止めて、考えてみるのもいいかもしれませんね。
2022年5月22日に日本でレビュー済み
結局の所、SNS疲れと監視社会の話。 陳腐じゃないか? なんかすごいことやりそうだったタイが、なんの秘策もなくやられちゃったのは拍子抜け。