何故この小説を読むに至ったか?(誰も聞いていませんが(笑))翻訳が、愛してやまない「われらが背きし者」(ジョン・ル・カレ)の翻訳者(上岡伸雄さん)によるものだったこと。50歳を目前にした中年のアメリカ人作家が、恋人の結婚式から遠くエスケイプするために引き受けられる仕事をすべて引き受けて世界一周旅行に旅立つ、その道中記。哀しみから逃れて。サンフランシスコから、メキシコ、イタリア、ドイツ、ちょっとフランスに立ち寄って、モロッコ、インド、そしてDestinationは、日本。その終着地が日本だと知ったことが、この小説を読む2つ目のモチベーションでした。アメリカ人が書く「日本」への多大なる興味が、台風の中打ち寄せる波に果敢に挑むサーファーのように滾ります(大袈裟だ)。
ということで、「レス("LESS")」(アンドリュー・ショーン・グリア 早川書房)を読む。
主人公レスは同性愛者ですが、そのことはこの読書に影響を与えるものではありません。同性愛者も異性愛者も同じように恋愛の持つ「愚かしさ」に苦しみながらそれでも愛を求め、裏切られ、老齢による衰えを気にしつつも「恋」の囚われから幾つになっても自由になることができません。また、"ラブ・アディクション"は(もちろん同性愛者特有のものではありませんが、)文字通り恋愛中毒という強い「囚われ」から発生していることもまたよく理解できます。主人公レスの神経症的な繊細さ、イノセンス、心優しさ、正直さ、真面目さを伺い知ることができますが、それらをほとんど持ちえない私には、とうてい理解できないエピソードも多く描かれていると思います(笑)まあ、これほどモテることが羨ましい(笑)
諧謔あるいはユーモア、そして滑稽さと自虐に彩られたこの「恋愛小説」は、少し昔のウッディ・アレンの傑作映画群にも似た時に大らかで、時にペシミスティックな、シニカルでうっとおしい饒舌な「笑い」に満ち満ちています。読んでいる途中、何度も声に出して笑いました。
終着地、「日本」エピソードのエンディングも見事だと思います。それは異国人の視点から語られる「不条理な」笑いをもたらしながら、この国のNativeでは決して語られることのないシャープな、意表を突いた「感性」に裏打ちされています。類まれな「感性」は、才能なのだと思います。
主人公は断ち切れない「恋愛」の苦しみを棚上げするために世界一周旅行に旅立ち、その土地、土地で味わう理不尽で、不可解な「言語」、「心」に向き合うことで、苦しみながらもそのことを手離そう、手離そうと試みます。情けないほど女々しい苦しみの果てに、作者は、或いは<神様>は本当に素敵な結末を用意してくれていますね。
失くした財布を探しまくって見つからなくて、本当に諦めた時だけ、ふと目をあげると棚の上にそっとその財布がのっていたようなそんな「ほっとする」いい小説なのだと思います。
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レス 単行本 – 2019/8/20
アンドリュー ショーン グリア
(著),
上岡 伸雄
(翻訳)
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ピュリッツァー賞(文学部門)受賞作!
50歳の誕生日目前の売れない作家アーサー・レス。彼のもとに、9年間付き合った元恋人の結婚式への招待状が届く。レスはこう思う。
どうやったら式から逃れられる?
出席を断る口実に、レスは世界中の文学イベントを回る旅に出かけることを思いつく。ニューヨーク、ベルリン、パリ、モロッコ、そして京都へ。様々な出会いがありながらも、レスが思い出すのは元恋人のことばかり……。
《ニューヨーク・タイムズ》《ワシントン・ポスト》《サンフランシスコ・クロニクル》各紙の年間ベストブックに選出された感動のラブストーリー。
- 本の長さ325ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2019/8/20
- ISBN-104152098775
- ISBN-13978-4152098771
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商品の説明
著者について
アメリカの小説家。1970年生まれ。代表作に《サンフランシスコ・クロニクル》《シカゴ・トリビューン》両紙の年間ベストブックに選出された『マックス・ティヴォリの告白』(The Confessions of Max Tivoli, 2004)がある。同書はニューヨーク公共図書館ヤング・ライオン賞を受賞した。邦訳には短篇「フリン家の未来“The Future of the Flynns"」(柴田元幸篇訳『いずれは死ぬ身』収録, 2009)がある。 本書は著者の第5長篇であり、2018年度のピュリッツァー賞を受賞している。著者は本書に登場するすべての土地に旅をした経験があるが、なかでもイタリアでは非常に人気があるとのこと。
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2019/8/20)
- 発売日 : 2019/8/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 325ページ
- ISBN-10 : 4152098775
- ISBN-13 : 978-4152098771
- Amazon 売れ筋ランキング: - 468,510位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 6,227位英米文学
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年8月23日に日本でレビュー済み
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2019年12月14日に日本でレビュー済み
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映像化したらきれいだろうなと思えるシーンがたくさん。
翻訳が少しぎこちない気がした。
翻訳が少しぎこちない気がした。
2019年9月19日に日本でレビュー済み
性的少数者である人が、結構あちこちで「相手」をさっと見つけて宜しくやってるのが割と不思議な気がした
絶対数が少ない分、出会いに苦労するんだろうなー。と漠然と思っていたので
50歳に拘る理由も、誕生日をそれ程重要な日と捉えてるのもピンと来なかった
とりあえず、ピュリッツァー賞ってのは、マイノリティが好きなんだろうなー。位な感じだった
「白人で中年のアメリカ人男性には同情しにくい」だけ共感
絶対数が少ない分、出会いに苦労するんだろうなー。と漠然と思っていたので
50歳に拘る理由も、誕生日をそれ程重要な日と捉えてるのもピンと来なかった
とりあえず、ピュリッツァー賞ってのは、マイノリティが好きなんだろうなー。位な感じだった
「白人で中年のアメリカ人男性には同情しにくい」だけ共感
2019年12月26日に日本でレビュー済み
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ゲイの気弱な主人公が、自分を振った恋人が結婚するのをきっかけに逃避の旅にでかけます。
たまたま主人公がゲイなのですが、まあ誰でも、こんな逃避行をしたくなることはあるでしょう。その逃避行の旅に、ささやかな応援をしたくなる、ほのぼのとした内容です。
たまたま主人公がゲイなのですが、まあ誰でも、こんな逃避行をしたくなることはあるでしょう。その逃避行の旅に、ささやかな応援をしたくなる、ほのぼのとした内容です。