桐野夏生さんが描く女性たち、私大好きなんです。全作品を読破したわけではありませんが、桐野さんの本を勧めるなら今作がいいかな〜と思いました。桐野さんの世界観を気軽に楽しめる、お得な一冊です。
短編集で全7編。どれも生々しく毒々しく。短編なんだけどお腹いっぱいになるし、でも話がもっと続いてほしいという気持ちにもなる。そんな中で、とくに魅力的だった話、「えっ、意外!」と感じた話を挙げました。
*とくに魅力的だった『アンボス・ムンドス』
小学校の新任教師の女性が体験した(巻き込まれた)事件。そのはじまりから真相まで、女性が語っていくというかたちで展開されます。
事件のカギは、彼女が受けもつ教室の女子生徒たち。小学生女子たちのせまくるしいジメっとしたグループ。その中の階級や勢力図。「うへぇ残酷だぁ…」と引いちゃうくらいの子どもたちの好奇心。もちろん創作だろうけど、いやに現実的でありえそうな話。自分が小学生のころにも、学級の一大勢力みたいな女子グループがあったなぁと思い出しました。
*読んでいてちょっと動揺した『毒童』
貧乏寺で日々うっぷんを溜め込み生活する女性に、ある父子が現れて…。こちらは少しオカルトチックというか非現実的なストーリー。
私は桐野さんの本を何冊か読んでいるのですが、「えっ!こんな話も書かれるんだ」と意外でした。個人的に新しい発見ができてうれしかった作品です。「これもきっと毒気があって生々しいやつだろう(タイトルに毒ってついてるし)」と予想して読みはじめたら、まさかのへんてこりん展開でやけに印象に残ったのでした。
話の終盤に抱いた、な〜んか覚えのある、嫌な予感。熱湯風呂を前にして「押すなよ!?絶対に押すなよ!」ってさわぐ、あのお決まりの感じ。で、「あっ!やっぱり!そうなった!」と笑って読み終えました。
あと、『植林』は巻末の解説を読んでようやく「そういうことか!おもしろい!」となりました。バカな私は一度読んでも理解できず…。ぜひ最後まで読むことをおすすめします(笑)
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アンボス・ムンドス 単行本 – 2005/10/14
桐野 夏生
(著)
人生で一度の思い出にキューバに旅立った若い女教師と不倫相手の教頭を帰国後待っていたのは生徒の死と非難の嵐だった。煌く7篇
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2005/10/14
- ISBN-104163243801
- ISBN-13978-4163243801
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2005/10/14)
- 発売日 : 2005/10/14
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 256ページ
- ISBN-10 : 4163243801
- ISBN-13 : 978-4163243801
- Amazon 売れ筋ランキング: - 760,180位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 17,344位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
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桐野 夏生(きりの・なつお)
1951年生まれ。93年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。98年『OUT』で日本推理作家協会賞(同作品は英訳され、日本人初のエ ドガー賞候補となる)、99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で 婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 メタボラ(上) (ISBN-13: 978-4022645548 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年8月24日に日本でレビュー済み
『柔らかな頬』『グロテスク』『メタボラ』などの長編が大好きな私は、短編集である本作には正直、あまり期待していなかった。
しかし一読して、これらの長編に匹敵する魅力が本作『アンボス・ムンドス』には凝縮されていると感じた。
各短編を貫いているその魅力は、一言で表すと「自分が意識している『自分』と他人から見えている『自分』が一致しない、ということの恐怖」、つまり「自分を把握できていないことの恐怖」を味わわせてくれる点だと思う。
「自分は魅力的な人間である」「自分には特別な価値がある」などといった自意識は、誰もが持っていたことがある(or持っている)と思う。しかしそうした誤った自意識は、周りの人間の言葉や行動に接することで修正されていくものだ。そしてそのような修正の過程には、しばしば羞恥や屈辱といった苦い感情が伴うものではないだろうか。
『アンボス・ムンドス』に収められている話では、自分を把握できていなかった主人公たちが、ふとした出来事をきっかけに他人から見えている(醜く惨めな)自分を意識してしまう。その瞬間の心臓が締めつけられるような恐怖を、著者は見事に描いていると思う。
しかし一読して、これらの長編に匹敵する魅力が本作『アンボス・ムンドス』には凝縮されていると感じた。
各短編を貫いているその魅力は、一言で表すと「自分が意識している『自分』と他人から見えている『自分』が一致しない、ということの恐怖」、つまり「自分を把握できていないことの恐怖」を味わわせてくれる点だと思う。
「自分は魅力的な人間である」「自分には特別な価値がある」などといった自意識は、誰もが持っていたことがある(or持っている)と思う。しかしそうした誤った自意識は、周りの人間の言葉や行動に接することで修正されていくものだ。そしてそのような修正の過程には、しばしば羞恥や屈辱といった苦い感情が伴うものではないだろうか。
『アンボス・ムンドス』に収められている話では、自分を把握できていなかった主人公たちが、ふとした出来事をきっかけに他人から見えている(醜く惨めな)自分を意識してしまう。その瞬間の心臓が締めつけられるような恐怖を、著者は見事に描いていると思う。
2019年6月2日に日本でレビュー済み
7編収められた作品は、気にいるものもあれば、あまり好きになれないものもあったが、同性に対する視線が厳しいな、と思った。そして「植林」に描かれるように容赦がない。
これはもしかして男性に対する厳しさを遠慮するあまり、女性に厳しいのだろうかと思ってしまった。(高村薫なら男にも手厳しいような気がする)
有名な作家の史実を連想させる「浮島の森」や、破滅的な「怪物たちの夜会」よりも、「ルビー」「愛ランド」のエログロさには女性の複雑な情念が描かれていると思った。「毒道」の異質さは悪夢のよう。
表題作「アンボス・ムンドス」に至っては、スキャンダルな週刊誌的な設定や告白体の形を借りて、小学生でも女性同士の恐ろしさというものを痛感させてくれる衝撃を与えてくれる。
これはもしかして男性に対する厳しさを遠慮するあまり、女性に厳しいのだろうかと思ってしまった。(高村薫なら男にも手厳しいような気がする)
有名な作家の史実を連想させる「浮島の森」や、破滅的な「怪物たちの夜会」よりも、「ルビー」「愛ランド」のエログロさには女性の複雑な情念が描かれていると思った。「毒道」の異質さは悪夢のよう。
表題作「アンボス・ムンドス」に至っては、スキャンダルな週刊誌的な設定や告白体の形を借りて、小学生でも女性同士の恐ろしさというものを痛感させてくれる衝撃を与えてくれる。
2015年6月8日に日本でレビュー済み
短編集ではありますが、インパクトの強さは長編なみ、いやそれ以上かもしれません。それぞれに作者の「アクの強さ」がにじみ出ていて、一種独特な桐野ワールドで埋め尽くされた感があります。全く世界の違う話をこれだけまとめて話に出来る、その才能に拍手です。厳密に言えば一つだけあまり好きではない話もありましたが、そんなことはどうでもよくなるほどの読後感の強さに圧倒されます。ややもすると冗長になりがちな長編小説に比べ、すべてが「凝縮」されているので、その「濃さ」に心地よく酔いながら、ほとんど一気に読み進めてしまいました。今までに読んだ桐野さんの作品の中では一番好きかもしれません。
2021年5月12日に日本でレビュー済み
この人は、なぜ書くのか。餅が 喉を とうらない不快感がある。いつもの棚には、いつもの 。 埃の被った商品がある。
包装紙の中には何の内容がない。文学がパート職業になっているのなら、お孫さんだけにして下さい。
包装紙の中には何の内容がない。文学がパート職業になっているのなら、お孫さんだけにして下さい。
2008年12月18日に日本でレビュー済み
長編ばかり読んでいたので、桐野の短編も読んでみた。結構面白いじゃないの。やはり読後感はすっきりとはいかないけれど。印象に残ったのは、子供の毒を描いたアンボス・ムンドス。小学生のいじめのたちの悪さは経験してみないと分からないものだが、それをここまで描けた作家はそうそういないと思う。子供の悪意のたちの悪さは、描かれたとおり、残酷なまでにひどいものだと思う。でも、やはり作者は長編作家なのかな。
2016年4月17日に日本でレビュー済み
悪意の描写、巧みなストーリー展開は他の方のレビューのとおり。個人的には谷崎と佐藤春夫の事件を使った浮島の森が良かった。子供時代の自分を思い出すシーンを読むとこの作家の子供の悪意を描く力が感じられる。表題作の「小説という形式だったら私の気持ちをうまく表せるかもしれません。」に作者の力強い思いを感じた。