死を反射鏡にして生きる意味をつきつめてゆく白石作品のいつものテーマを、
ここでは力を抜いた、読者に緊張を強いない文体で、あえてつくり込まない物語にのせて語るという試みをしていると感じた。
そのぶん人物も他の作品の登場人物よりも癖や毒が薄く親近感があり、
より多くの読者にアピールしたいという作者の意図の表れだと思う。
この物語の要となる第15章のせいちゃんとあっちゃんのやりとり。このあっちゃんの独白は美しい。
読んでいてあっちゃんの言葉が素直に心に沁みてくるのは、まさにこれらの言葉を最も効果的に読者の心の中に届けるために、
ここまで語られてきた物語があったからで、それに対するせいちゃんの「答え」も、
月並みだけれどやはり、こうとしか言えないよなあという説得力がある。
この独白には、石牟礼道子「苦海浄土」の語りに通じるものを感じた。
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永遠のとなり 単行本 – 2007/6/15
白石 一文
(著)
会社、家族、心……。何もかも壊して帰郷した男を、小学生から四十年来の親友「あっちゃん」だけが見守っている。書き下ろし傑作長篇
- 本の長さ221ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2007/6/15
- ISBN-104163261907
- ISBN-13978-4163261904
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2007/6/15)
- 発売日 : 2007/6/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 221ページ
- ISBN-10 : 4163261907
- ISBN-13 : 978-4163261904
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,304,543位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 30,445位日本文学
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2016年9月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
今、自分も福岡に住み、数年前に
がんの治療をしたことから
特別な思いで読みました。
我々世代の微妙な心情をいつもながら
上手に語った重苦しさのない
秀作ですね。
がんの治療をしたことから
特別な思いで読みました。
我々世代の微妙な心情をいつもながら
上手に語った重苦しさのない
秀作ですね。
2007年9月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
幼馴染みのあっちゃんとせいちゃんという、二人の男性の生き様が描かれる。
二人とも、抱えている悩みが小さくはなく、博多弁の話し言葉で、それらが赤裸々に語られる。
内容には前途洋々とした面は無く、人生の黄昏の中で、藻掻いているという印象だ。
ある程度の年齢になると、誰もが一つ、また一つと、心身の衰えを自覚してゆく。
衰えは心身のみならず、自身の人生の展望にも、閉塞感という形でのしかかってくる。
この作品は、そんな状況にぴったりと調和するので、大きく共感出来る。
著者は常に生きる事の意味を追求する。
人間の最大の仕事は、就職でも結婚でもなく、生きる事そのもの、だと私は思う。
本書は、何度もそんな問いかけを投げかけるが、その結論は結局は示されない。
本書は、ある程度読者を選ぶ。
意気揚々としている方よりも、黄昏れている方の方が、本書を好きになれると思う。
時には、素人哲学者になるのも良いものだ。
二人とも、抱えている悩みが小さくはなく、博多弁の話し言葉で、それらが赤裸々に語られる。
内容には前途洋々とした面は無く、人生の黄昏の中で、藻掻いているという印象だ。
ある程度の年齢になると、誰もが一つ、また一つと、心身の衰えを自覚してゆく。
衰えは心身のみならず、自身の人生の展望にも、閉塞感という形でのしかかってくる。
この作品は、そんな状況にぴったりと調和するので、大きく共感出来る。
著者は常に生きる事の意味を追求する。
人間の最大の仕事は、就職でも結婚でもなく、生きる事そのもの、だと私は思う。
本書は、何度もそんな問いかけを投げかけるが、その結論は結局は示されない。
本書は、ある程度読者を選ぶ。
意気揚々としている方よりも、黄昏れている方の方が、本書を好きになれると思う。
時には、素人哲学者になるのも良いものだ。
2012年4月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
白石さんの本は初めて読みますが
とっても優しい文章で
読みやすかったです。
別な本も読みたくなりました。
とっても優しい文章で
読みやすかったです。
別な本も読みたくなりました。
2008年11月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ちんたらちんたらした話
いろんなことをこの二人は話しているのだが、生とか死とか愛とか意味とか・・・
許せないのは、主人公が時々、親友の奥さんに対して「この人は手強い」という判断を下す。
おとなしくもういい大人でうつ病もちのくせに!
なんていうか、傲慢。自己嫌悪に陥ったり、悩んだり、流されたりするくせに
「手強い」とかいっちゃうのって、どうかと思う、醒めてしまう。
浅い浅い、浅い本音、浅い主人公、浅い話、浅い作品・・・ふぅ
ぐだぐだしてる、ぐだぐだ本
閉塞感だらけのおやじの話
いろんなことをこの二人は話しているのだが、生とか死とか愛とか意味とか・・・
許せないのは、主人公が時々、親友の奥さんに対して「この人は手強い」という判断を下す。
おとなしくもういい大人でうつ病もちのくせに!
なんていうか、傲慢。自己嫌悪に陥ったり、悩んだり、流されたりするくせに
「手強い」とかいっちゃうのって、どうかと思う、醒めてしまう。
浅い浅い、浅い本音、浅い主人公、浅い話、浅い作品・・・ふぅ
ぐだぐだしてる、ぐだぐだ本
閉塞感だらけのおやじの話
2007年10月18日に日本でレビュー済み
白石さんらしい、いい本でした。
舞台は福岡。
うつ病になり、妻子と別れ、退職して故郷に戻ってきた男性。仕事のあても立たず、なんとか体調を戻しながら暮らしを立てようとするが、簡単ではない。
結婚と離婚を繰り返す幼馴染の男性。肺がんに侵されて、再発を克服し、なおも死の恐怖と戦い続けていた。
中年を過ぎようとする、そんな二人の男性の、それぞれの生き方から見える命とは何か。
------
わしは怒って怒って怒って、もう怒りきらんごと怒っとると。
見てみんね、篠田のばあちゃんの死に様ば。見てみんね坂下のじいさんの暮らしば。見てみんね、血友病でずっと結婚もできんかった久美の人生ば。見てみんね、死んだ父親と三つ年上の兄貴に小さい頃からさんざん虐待ば受けてきた下枝の人生ば。わしは許せんとよ、こげなひどか、こげなむごか、こげな悲惨な世界ば作ったやつのことが、どげん許さないかんと思ってみても、どうしても許せんと。
やけどね、せいちゃん。
このわしのそん怒りが、この胸のど真ん中にどげんもこげんもならん腫瘍ば作っとるとよ。こん怒りがさ、わしの身体にがんば作ってしまっとるとよ。
どう思うね、せいちゃん。
人間って一体なんやろね。
------
日常の描き方が、通り一遍ではない。
隠さず、衒わず、良い意味で温度のない目線で書かれている。
読み手を選ぶが、この作家は畢生を描くのが上手い。
舞台は福岡。
うつ病になり、妻子と別れ、退職して故郷に戻ってきた男性。仕事のあても立たず、なんとか体調を戻しながら暮らしを立てようとするが、簡単ではない。
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中年を過ぎようとする、そんな二人の男性の、それぞれの生き方から見える命とは何か。
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わしは怒って怒って怒って、もう怒りきらんごと怒っとると。
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やけどね、せいちゃん。
このわしのそん怒りが、この胸のど真ん中にどげんもこげんもならん腫瘍ば作っとるとよ。こん怒りがさ、わしの身体にがんば作ってしまっとるとよ。
どう思うね、せいちゃん。
人間って一体なんやろね。
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日常の描き方が、通り一遍ではない。
隠さず、衒わず、良い意味で温度のない目線で書かれている。
読み手を選ぶが、この作家は畢生を描くのが上手い。
2008年12月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
少し浮世ばなれしていて、自己を追求する幼馴染の2人。深刻な病を抱えていて、不安におびえながら、お互い支えあって生きてゆく。福岡を舞台に静かで、透明感のあるストーリーが淡々と進む。日常生活の中から「生きる意味」について考えさせる。これら登場人物の思索は著者一流のものであり読ませる。ただ、この著者の作品で気に入っている「一瞬の光」や「すぐそばの彼方」と比較して、ドラマチックさに欠ける。この設定とテーマであればここまで中長編にしなくてもいいのではないかと思った。
2020年10月14日に日本でレビュー済み
主人公と親友のあっちゃん、ともに生きることへの諦めがある。病気になって初めて今までの人生を振り返ることができたのだろう。
自分は自分しか幸せにできない。自分のことだけで手一杯である。幸せなどグリコのおまけのようなものであった方が良いがなくても別に構わないと、作中の言葉が印象深い。
不幸にならないと自分を理解できない。幸せとは何か理解できない。逆説的だが、そういったものだよな、とストンと腑に落ちた。
自分は自分しか幸せにできない。自分のことだけで手一杯である。幸せなどグリコのおまけのようなものであった方が良いがなくても別に構わないと、作中の言葉が印象深い。
不幸にならないと自分を理解できない。幸せとは何か理解できない。逆説的だが、そういったものだよな、とストンと腑に落ちた。