「婚礼、葬礼、その他」『文學界』二〇〇八年三月号
連休で屋久島に行って雨の後を聞こうとして旅行代理店に予約を入れたら大学時代のサークル仲間から結婚式の二次会幹事とスピーチを頼まれる。それで泣く泣く予約をキャンセルして式に臨むと、今度は披露宴直前に会社の部長のお父さんの葬式に来いと上司に(事実上)命令される。それで喪服に着替えて葬式会場に出向くと今度は……と、いかにも日本式のドタバタ喜劇で終末には泣きも入って纏まり良く終わる。読後感が良いのは種々の(気持ち的な)アルアルが満載されているからで、またこの作家の常用手段である視点人物を作者とダブらせる手法もそれを裏から生かしている。ちょっとした癒しや幸福は、いつだってどこに転がっているのかわからない。あらためてそう思わせる一篇だった。
「冷たい十字路」『文學界』二〇〇七年六月号
高校生の自転車事故に纏わる緩く軽くまた深いオムニバス短篇。視点人物が切り替わる度に新たな事実が提示されるが、その虚構性と庶民感覚の同居がこの作者の持ち味なのだろう。ただ枚数のせいもあって、そこに描かれるのが人生の上っ面だけになってしまっているのが残念だ。
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婚礼、葬礼、その他 単行本 – 2008/7/4
津村 記久子
(著)
会社員のヨシノが友人の結婚式に出席していると、上司の親の葬式に呼び出されてしまう……。芥川賞候補にもなった著者の最新刊!
- 本の長さ148ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2008/7/4
- ISBN-104163272607
- ISBN-13978-4163272603
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2008/7/4)
- 発売日 : 2008/7/4
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 148ページ
- ISBN-10 : 4163272607
- ISBN-13 : 978-4163272603
- Amazon 売れ筋ランキング: - 661,937位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 15,222位日本文学
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年4月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
結婚式はおめでたいがめんどくさい。葬式は悲しいがより一層めんどくさい。
身もふたもなく言えば皆、そう思っているのではないか。
さしてドラマチックなことは起こらないけれど、
冠婚葬祭自体がドラマティックと言えばそうだな、などと思ってしまう。
淡々と描きつつもどこかコミカルなお話です。
身もふたもなく言えば皆、そう思っているのではないか。
さしてドラマチックなことは起こらないけれど、
冠婚葬祭自体がドラマティックと言えばそうだな、などと思ってしまう。
淡々と描きつつもどこかコミカルなお話です。
2013年5月19日に日本でレビュー済み
短時間で読めそうだったので、半ば偶然みたいな成り行きで手にし、所収の2編を通読した。とくに標題作は見込んだ以上に面白く、ごく普通のようにみえなくもない「(関西の)若い女性の生活感覚」がさりげなく示されていて、すっと話の中に入っていけた。佳作だと思う。
もう一つの「冷たい十字架」は、うまく描けているようには思うものの、標題作より少しクールで、ゆとりや遊びの部分が少なく、読後はやや窮屈な印象が残った。ただ、作者の他の作品も、機会をつくって読んでみたい、とは思う。
もう一つの「冷たい十字架」は、うまく描けているようには思うものの、標題作より少しクールで、ゆとりや遊びの部分が少なく、読後はやや窮屈な印象が残った。ただ、作者の他の作品も、機会をつくって読んでみたい、とは思う。
2011年4月14日に日本でレビュー済み
著者の作品を何作か続けて読みましたが一番笑えたのがこれです。
意外と指摘されませんが、著者は多彩な創作上の文体を持っておりテーマに即して使い分けています。
饒舌な言葉や犀利な心理描写に注目しがちですが、文体によって雄弁に語る作風だと思います。
主人公が基本的にテンション(血圧)低めという設定も特徴かもしれません。
表題作は結婚式や葬儀といった冠婚葬祭の儀礼をユニークな視点で解題するもの。地味な関西人のユーモアが光っています。裏代表作として認定したい。
新たな語法を開発する著者の作品が同世代の男女にきちんと届いてほしいと願うばかりです。
シンガポールチキンライス!
意外と指摘されませんが、著者は多彩な創作上の文体を持っておりテーマに即して使い分けています。
饒舌な言葉や犀利な心理描写に注目しがちですが、文体によって雄弁に語る作風だと思います。
主人公が基本的にテンション(血圧)低めという設定も特徴かもしれません。
表題作は結婚式や葬儀といった冠婚葬祭の儀礼をユニークな視点で解題するもの。地味な関西人のユーモアが光っています。裏代表作として認定したい。
新たな語法を開発する著者の作品が同世代の男女にきちんと届いてほしいと願うばかりです。
シンガポールチキンライス!
2022年2月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
友人の結婚披露宴、しかも二次会の幹事なのに、直前に会社の上司の父親の葬儀に呼び出された主人公のドタバタ。「通奏低音」的に空腹なのが可笑しい。併録の「冷たい十字路」は、高校生の自転車同士の衝突事故が、周囲の人の心に波風をたてる様を描く。どちらも、著者の本としては面白くない方である。
2009年4月1日に日本でレビュー済み
お葬式って、親族の知り合いとかで、本人のことまったく知らないことが多い…。
しかも、そのお葬式に出ることが、何層にも重なった犠牲の上にあるもので、自分がそこにいる意義が全然見出せなかったら…。
切れ間なく押し寄せるハプニングに笑いながらも、お葬式の本音のような部分がものすごくわかるような気がした本でした。
しかも、そのお葬式に出ることが、何層にも重なった犠牲の上にあるもので、自分がそこにいる意義が全然見出せなかったら…。
切れ間なく押し寄せるハプニングに笑いながらも、お葬式の本音のような部分がものすごくわかるような気がした本でした。
2010年1月26日に日本でレビュー済み
「アレグリアとは仕事はできない」に続いて本書を読んだ。表題作の他「冷たい十字路」を含む。
表題作は、"人を呼べない"性格のヨシノが、同じ日に、予定していた友人の結婚式と突然の会社の部長の義母の葬儀に"呼ばれる"様を通して、冠婚葬祭と言った人生の節目に表出する人間模様を戯画的に描いたもの。ヨシノの思考・行動に頷ける箇所もあり(特にラストが良い)、面白く読めるのだが、作者の作風がパターン化しているのが気になる。控えめな若い女性の本音を語って、鬱憤を晴らすと言う点では見るべきものがあるのだが、逆に言うと、それだけの感がある。一作目は良いけど、二作目はね、と言う感じ。10年, 20年経っても同じ様なものを書くつもりなのだろうか ? また、「アレグリア」と同様、ヒロインはカタカナで表記されるのだが、本作では漢字で表記される登場人物も居る。私が見た所、「カタカナ=姓」、「ひらがな=名」なのだが、直感的にカタカナで表記される人物は「抽象度が高い=作者の描写対象」のように思われるが、区別が判然としない。「セガワ>さゆり」なのか ? 細かい点だが、私は50年以上生きているが、披露宴ではなく結婚式に友人として招かれた経験は無い(キリスト教式除く)。「葬>婚」は常識以前。告別式ではなく通夜に会社の人間が大挙して押し掛けると言う話も聞かない。「冷たい十字路」は地下鉄付近の交差点での朝の自転車事故を端緒に、通勤途上の女性会社員、小学校の女教師、パートの女性、女子小学生等の意識の流れを綴ったものだが、「アレグリア」中の「地下鉄の叙事詩」と大差ないモチーフ。しかも、個々の意識の世界がセコ過ぎる。
物語の構成力もあり、ユーモアの裏に人生を見据える厳しい目もあるのだから、もっと作風の違う作品を読んで見たいと思う。
表題作は、"人を呼べない"性格のヨシノが、同じ日に、予定していた友人の結婚式と突然の会社の部長の義母の葬儀に"呼ばれる"様を通して、冠婚葬祭と言った人生の節目に表出する人間模様を戯画的に描いたもの。ヨシノの思考・行動に頷ける箇所もあり(特にラストが良い)、面白く読めるのだが、作者の作風がパターン化しているのが気になる。控えめな若い女性の本音を語って、鬱憤を晴らすと言う点では見るべきものがあるのだが、逆に言うと、それだけの感がある。一作目は良いけど、二作目はね、と言う感じ。10年, 20年経っても同じ様なものを書くつもりなのだろうか ? また、「アレグリア」と同様、ヒロインはカタカナで表記されるのだが、本作では漢字で表記される登場人物も居る。私が見た所、「カタカナ=姓」、「ひらがな=名」なのだが、直感的にカタカナで表記される人物は「抽象度が高い=作者の描写対象」のように思われるが、区別が判然としない。「セガワ>さゆり」なのか ? 細かい点だが、私は50年以上生きているが、披露宴ではなく結婚式に友人として招かれた経験は無い(キリスト教式除く)。「葬>婚」は常識以前。告別式ではなく通夜に会社の人間が大挙して押し掛けると言う話も聞かない。「冷たい十字路」は地下鉄付近の交差点での朝の自転車事故を端緒に、通勤途上の女性会社員、小学校の女教師、パートの女性、女子小学生等の意識の流れを綴ったものだが、「アレグリア」中の「地下鉄の叙事詩」と大差ないモチーフ。しかも、個々の意識の世界がセコ過ぎる。
物語の構成力もあり、ユーモアの裏に人生を見据える厳しい目もあるのだから、もっと作風の違う作品を読んで見たいと思う。
2010年4月11日に日本でレビュー済み
婚礼・葬礼といった社会的行事の背後の
人間を描くという試みで
なかなか面白かったのですが
割とエッセイ的に軽いタッチの中に
ちょっとええこと言ってやろうというような
揺らぎのようなものが見えて
ちょっとどっちつかずな感じあるいは
消化不良な印象を受けました。
しかししかしなかなか良かったですよ。
人間を描くという試みで
なかなか面白かったのですが
割とエッセイ的に軽いタッチの中に
ちょっとええこと言ってやろうというような
揺らぎのようなものが見えて
ちょっとどっちつかずな感じあるいは
消化不良な印象を受けました。
しかししかしなかなか良かったですよ。