著者若桑みどり氏によって真摯な姿勢で書き下ろされた本書は、フィレンツェに遺された膨大な歴史的、或いは芸術的遺産を丁寧に紹介した実用的なガイドブックの側面を持っていると同時に、ルネサンスを生み出した新思想の母体としての奥深い都市の歴史を纏め上げた労作として高く評価したい。体裁を美しく仕上げることより、むしろ内容を充実させることの方に注意が注がれている教養書なので、豊富なカラー写真やイラストで彩られたイメージ主体のガイドブックとは全く別物であることを知っておく必要があるだろう。掲載されている写真は口絵を除いてはモノクロでサイズもヒントを与える程度の小さいものだが、それはあくまでも実際にフィレンツェの街を訪れ、実物を見ることを前提としているからだ。本書によってフィレンツェの見どころがより身近に、しかも詳細に体験できるようになったことを歓迎したい。
若桑氏が美術の専門家であることから、本書で彼女が採り上げて説明している絵画、彫刻や建築物などは多岐に渡り、また比較対象のためにも数多くのサンプルが提供されていて、勢い専門的になる。それ故彼女の文章はそれほど平易ではなく、読む側にもある程度の予備知識が求められるのは致し方ないが、随所に特有の鋭い洞察を伺わせる美術史家としての主張に貫かれているところが面白みで、特に第9章❲フィレンツェを歩きながら❳は、この著書を総括する彼女の面目躍如たる部分になっている。通り一遍の観光旅行を卒業して、一歩踏み込んだルネサンスの美術巡りの旅をしたい方には、本書と中公文庫から出版されている高階秀爾氏の❲フィレンツェ❳の併読をお薦めしたい。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
世界の都市の物語 13 単行本 – 1994/10/1
若桑 みどり
(著)
フィレンツェ
- 本の長さ1ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日1994/10/1
- ISBN-104163494103
- ISBN-13978-4163494104
この著者の人気タイトル
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (1994/10/1)
- 発売日 : 1994/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 1ページ
- ISBN-10 : 4163494103
- ISBN-13 : 978-4163494104
- Amazon 売れ筋ランキング: - 856,337位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 409位ヨーロッパの地理・地域研究
- - 5,366位紀行文・旅行記
- - 16,111位社会学概論
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中5つ
5つのうち5つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
2グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2018年11月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2006年2月24日に日本でレビュー済み
最初のイタリア旅行で駆け足でしかみられなかったフィレンツェが最も
印象深く、ウフィッツ美術館程度しかゆっくり見なかったので、絶対に
フィレンツェだけはゆっくり来たいと思い情報を集めました。その第一
に読んだ本です。
世界の都市の物語というシリーズの1冊で、フィレンツェの成り立ちから
その後の歴史、街の要所となる建築物、教会、メディチ家の興隆、また
ルネッサンスを推進した芸術家など多方面からフィレンツェの全体像と
絵画を紹介してくれる。
参考文献、フィレンツェ市史などを含み、ボリュームがあるのですが、
よく理解できます。
その後、フィレンツェの路地を歩きまわって歴史と美術を堪能しました。
印象深く、ウフィッツ美術館程度しかゆっくり見なかったので、絶対に
フィレンツェだけはゆっくり来たいと思い情報を集めました。その第一
に読んだ本です。
世界の都市の物語というシリーズの1冊で、フィレンツェの成り立ちから
その後の歴史、街の要所となる建築物、教会、メディチ家の興隆、また
ルネッサンスを推進した芸術家など多方面からフィレンツェの全体像と
絵画を紹介してくれる。
参考文献、フィレンツェ市史などを含み、ボリュームがあるのですが、
よく理解できます。
その後、フィレンツェの路地を歩きまわって歴史と美術を堪能しました。