有名な作家となった著者が36年前に殺害された実母の未解決事件を調査する過程と、自分の半生を書いた本です。
実母の殺害事件。
当時10歳だった作者がその後どのように成長していったか。
事件をいっしょに調査してくれることになった退職刑事ストナーの半生。
事件の調査。
その結果分かった実母の人生。
衝撃的な事実を、淡々と羅列しているかたちの文章です。
実母の殺害事件も衝撃的ですが、
著者の半生が
「盗み、薬、のぞき、下着泥棒、公園での野宿生活、飲酒」
とものすごく荒れたもので衝撃的です。
その荒れた生活の中で、
「図書館にかよって小説をむさぼり読む」
という行為を一貫して続けていくのがとても不思議でした。
のちに作家として大成する理由ひとつは、無頼の生活とこの読書量にあったのだろうと思われます。
実母の殺害事件の調査を
穏やかに話す退職刑事ストナーとともに進めていく様子を
乾いた文章でえがいてます。
文章は突き放したように書かれているのですが、事実を追っているのでぐいぐいと引き込まれる迫力があります。
また、母を思慕する作者の心を垣間見せる部分も出てきて、切なく読みました。
とても興味深く、また読み応えのある本でした。
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わが母なる暗黒 単行本 – 1999/7/1
少年エルロイを狂わせた母の死。歪んだ前半生を越え、今、彼は事件の再捜査に挑む。母への愛と憎悪が荒れ狂う悲痛で凄絶な自伝
- 本の長さ586ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日1999/7/1
- ISBN-104163554602
- ISBN-13978-4163554600
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
崩壊家庭で育ち、母を憎悪し、母を欲した少年・ジェイムズ。10歳の時、何者かに実母を殺された彼は、心に暗いトラウマを抱え込み、狂いはじめる…。現在アメリカを代表する作家となった男が、自らの内なる闇を暴き出す自伝。
登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (1999/7/1)
- 発売日 : 1999/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 586ページ
- ISBN-10 : 4163554602
- ISBN-13 : 978-4163554600
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,124,948位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 12,324位英米文学研究
- - 155,460位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2007年1月20日に日本でレビュー済み
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2008年5月28日に日本でレビュー済み
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凄まじい生活とのことですが、それほどでもという読後感でした。ことさらに刺激的ではないです。
2014年4月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ブラックダリアで懲りたので ペーパーバックの第一章を読み終えたときに この訳本を入手。正確で違和感のない訳で大いに助かりました。ただ年号が一か所と数字(死体から発見されたアルコール濃度が一ケタ違う)の誤植、浅黒い男のいでたちについての誤訳(The Swarthy Man was dressed to kill.を浅黒い男は殺しの装いをしていた。とありますが、悩殺する身なりをしていた。ひどくめかしこんでいたと訳すべきではないかと)が気になりました。
2004年2月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「不夜城」でデビューした馳星周が強い影響を受けたというのが、本書の著者ジェイムズ・エルロイの暗黒小説だった。エルロイは10歳のとき、強姦殺人で母を喪う。そこから彼の人生を司る歯車は大きく軋み、捩れていった。アルコール、ドラッグ、窃盗など悪の限りを尽くす、筋金入りのアウトサイダーとしての人生を歩むのだ。その壮絶な生活が赤裸々に語られている。刑務所暮らしを余儀なくされる可能性もあったし、からだを壊し、生死の境を彷徨うこともあった。後年、作家になったエルロイは約40年前に母を死へ追いやった事件の再捜査に乗り出す。母とはいったいどういう女性だったのか・・・。母は誰に殺されたのか・・・。その捜査の過程は一級品の探偵小説を読んでいるような興奮を味わわせてくれた。問答無用で黙らせる、エクストリーム級の暗黒自伝小説だ!
2016年8月28日に日本でレビュー済み
結婚離婚を繰り返し社会に浮沈する女(母系)が辿り難いことに大抵の未解決の闇がある。
2011年11月16日に日本でレビュー済み
小説の方が面白いですが、ノベルを読んでジェームズエルロイに興味を持たざるをえない
本書は全体が、三人称で描かられる事件当時、子供のころの自伝、捜査官のキャリア、作者の一人称による母の探索
といった構成によって作られており、その関係が小説ほどはすっきりしてはいないのですが
なんといっても事実の重みは 切なく苦しい
この本のレビューはどうも私の感触と皆違っている。エルロイが一応折り合いをつけられた暗黒 にわれわれはそう簡単に納得できないのである。
ヘレンは私(エルロイ)を「未来しかない弾丸」と呼んだ。私が自己憐憫にかけるのを理解していた。私が前向きの勢いをそぎかねないものをすべて嫌う理由を知っていた。弾丸には両親は無いと知っていた。弾丸は空間を猛スピードで通り過ぎ標的にあたりもすればはずれもするのであった。p346
ビル(捜査官)は私が母に容赦なさすぎると思っていた。ビルは私のパートナーとしての素直さを好いていたが、息子が母に抱く感傷性の欠如は嫌っていた。私は母の存在を容認しようとしているのだと努めているのだといった。私は母と対話を交わしていた。だが、それはほとんど内面のものだった。外面へのあらわれ方はすべて批判と客観を装った査定となった。母は私の内部で逃げ回っていた。p481
本書は全体が、三人称で描かられる事件当時、子供のころの自伝、捜査官のキャリア、作者の一人称による母の探索
といった構成によって作られており、その関係が小説ほどはすっきりしてはいないのですが
なんといっても事実の重みは 切なく苦しい
この本のレビューはどうも私の感触と皆違っている。エルロイが一応折り合いをつけられた暗黒 にわれわれはそう簡単に納得できないのである。
ヘレンは私(エルロイ)を「未来しかない弾丸」と呼んだ。私が自己憐憫にかけるのを理解していた。私が前向きの勢いをそぎかねないものをすべて嫌う理由を知っていた。弾丸には両親は無いと知っていた。弾丸は空間を猛スピードで通り過ぎ標的にあたりもすればはずれもするのであった。p346
ビル(捜査官)は私が母に容赦なさすぎると思っていた。ビルは私のパートナーとしての素直さを好いていたが、息子が母に抱く感傷性の欠如は嫌っていた。私は母の存在を容認しようとしているのだと努めているのだといった。私は母と対話を交わしていた。だが、それはほとんど内面のものだった。外面へのあらわれ方はすべて批判と客観を装った査定となった。母は私の内部で逃げ回っていた。p481
2001年8月8日に日本でレビュー済み
恐ろしい本である。いや、呪われているといっても良いかもしれない。これは最近のクライムフィクションの売れっ子作家ジェイムズ・エルロイの波乱と漆黒の闇に埋もれた半生を墓穴から掘り出す作業の書である。
よって、作家自身による伝記と言える作品ゆえ、エルロイの作品に毒される前の読者であれば手にとらないほうが幸せであろう。もし、エルロイの過激なる炎に冒されてしまった人であるなら一読することをお薦めする。
この本はその分厚さをもろともさせない真理探究の努力と、それをさすまいとする時間との真剣勝負が繰り広げられているため、一度読み始めると止まらなくなること間違いなしである。 愛する母への愛と邪まな考えとがエルロイ自身を最後まで悩ます。結論は彼自身、そして我々にも及びがつかない。その真理は暗闇の奥にあるのだろうか。
よって、作家自身による伝記と言える作品ゆえ、エルロイの作品に毒される前の読者であれば手にとらないほうが幸せであろう。もし、エルロイの過激なる炎に冒されてしまった人であるなら一読することをお薦めする。
この本はその分厚さをもろともさせない真理探究の努力と、それをさすまいとする時間との真剣勝負が繰り広げられているため、一度読み始めると止まらなくなること間違いなしである。 愛する母への愛と邪まな考えとがエルロイ自身を最後まで悩ます。結論は彼自身、そして我々にも及びがつかない。その真理は暗闇の奥にあるのだろうか。