もっとも印象的だったくだりは、ヒトという種族が精神性(こころ)を獲得してゆく道行きに関するもので、
著者によると、ヒトは基本的に早産であるため、あたかもカンガルーネズミのごとく、
育児嚢など代替物を備えていないことから、はるか祖先種まで遡って先天性に精神機能を獲得し、
その際に、ヘッケルのいうように、胎児期に個体として系統発生を繰り返すのではないか、との指摘であります。
たしかに言われてみれば、そのような徴候がないともいえず、
実際生まれながらにしてある程度のことを、それと教えられずにこなせるのは、
ひとえに人間のみではなく、「習(倣)うより慣れる」という法諺も、その点を示していると考えられ、
例えばですが、先日テレビで放映されていた、8歳児による手際よい料理作りもまた、
そのあたりのことを示していると思います。
本書はさまざまなエピソードを交えながら、
ヒト種による精神機能の獲得過程を論じたものと考えられ、
知識するだとか、思考するといった代表的な精神機能の淵源について、
改めて考えさせられました。
因みにですが、福島章氏の著書に『ヒトは狩人だった』(青土社)というのがありますが、
その所説も一部はほぼ同じ由来について指摘しているようで、
ただし、ヒト精神について、狩猟=蛮行で攻撃的、農耕=平和で穏健的との概念分類は、
本書ではむしろ狩猟=経済的に分配的で微分的、農耕=土地、延いては物的人的に収奪的で積分的、
としているようなので、これら2冊を見比べてみることで、
なにが論点かが分かり、精神機能についても何某かを語っているようです。
生態学的にすべてを尽くすわけにもゆきませんが、事柄の一端を示しているようなので、
そのあたりも含めて、おすすめな1冊です。
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精神はいつ生まれたのか ヒトとサルのあいだ 単行本 – 2008/2/28
吉田 脩二
(著)
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購入オプションとあわせ買い
少年犯罪の続発に心を痛め、長期間、断筆していたカリスマ精神科医が、今までの治療法理論の根幹を覆す脳と精神の理論を公開!
- 本の長さ316ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2008/2/28
- ISBN-104163699805
- ISBN-13978-4163699806
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2008/2/28)
- 発売日 : 2008/2/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 316ページ
- ISBN-10 : 4163699805
- ISBN-13 : 978-4163699806
- Amazon 売れ筋ランキング: - 954,622位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2016年1月27日に日本でレビュー済み
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2008年3月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
専門用語をほとんど使っていないので読みやすい。とはいえ、この種の本は何となく苦手とか、最初の方でつまづいたら、まず、サブタイトル「精神はいつ生れたのか」の「精神」について深くふれている。第三部「精神」とはから、その後、第二部→第一部→第四部と読み進めていくと少し楽に読めるかもしれません。各部、各章、各節、各項目に散りばめられた刺激的な言葉や文章に導かれて「精神」とは何かがよく理解できます。その上で、今、私達の身の回りに起きている不可解な出来事のおきる理由や、それをおこさないためにはどうあるべきかもよくわかります。例えば、KYが増えた理由なども簡単にわかります。その後、もう一度頭から順に読むと、この本の内容を誰かに話して聞かせたくなってしまうに違いありません。その時、タイトルの「ヒトとサルのあいだ」に何があるのかをはっきり知る事となり、なぜ人に話したくなったのかもわかります。弱干、話を急ぎ、説明不足のところがあるものの、その分、時には立ち止まり、前のページに戻りながらゆっくり読む。読めば必ず心に残る一言や文章を見つけることができる。これからの社会の役に立つ本だと思います。
2008年8月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書のタイトルは「ヒトとサルのあいだ」となっているが、「ヒトとサルのちがい」としたほうが内容に忠実だろう。人間は精神を持っており、これがいかなる他の動物とも、またコンピュータとも本質的に異なるところだとする。ヒトが約700万年前に原始類人猿から分岐して人類への道を歩む間に、いつ、いかなる理由で精神を持つようになったのかを、著者は現代の科学的知識に基づいて考察する。
著者は自分の見解を「理論精神学」と称しているが、これは少しおこがましいように思う。彼はいろいろな状況証拠をもとに仮説を提起しているが、それはあくまでもまだ試論の段階である。理論と呼べるためには、論理的推論もしくは科学的検証が必要である。状況証拠に基づいた推論は一見尤もなようにみえても、どういう状況証拠を取り上げるかには、どうしても当人の無意識的作為が入ってしまうからである。たとえば、著者は人間の脳が外界からのデジタルな情報をアナログ化していることの重要性を取り上げているが、精神とは直接無関係な感覚器官がすでにアナログ化をやっていることは全く考慮していない。
著者は自分の見解を「理論精神学」と称しているが、これは少しおこがましいように思う。彼はいろいろな状況証拠をもとに仮説を提起しているが、それはあくまでもまだ試論の段階である。理論と呼べるためには、論理的推論もしくは科学的検証が必要である。状況証拠に基づいた推論は一見尤もなようにみえても、どういう状況証拠を取り上げるかには、どうしても当人の無意識的作為が入ってしまうからである。たとえば、著者は人間の脳が外界からのデジタルな情報をアナログ化していることの重要性を取り上げているが、精神とは直接無関係な感覚器官がすでにアナログ化をやっていることは全く考慮していない。
2008年3月8日に日本でレビュー済み
人間ってどんな生き物なのか?
大なり小なり誰もが生きていく中で考えてきたような疑問を丁寧に拾って系統立ててあり、最後まで興味を失うことなく読むことができました。各所にある刺激な言葉が示唆に富んでいて、具体的に起こっている社会的問題や自分が抱える疑問にたくさんの糸口があります。
個人的には障害児教育に携わるなかで「人間の本質、精神ってなんだろう?」と考えてきたし、「個人と国家の関係の流れのなかにある教育ってなんだろう?」と思ってきました。職場で出会う200人近くの様々な障害のある人たち、とりわけ自閉症児と向き合いながら感じてきたいろいろなことがデジタルとアナログの考え方でより理解しやすくなります。
そうでなくても、誰が読んでもどこかがかならず引っかかる部分がある。疑問の投げかけ方もよく練ってあり、専門的な言葉などでごまかすことなく著者なりの論理的な説得に納得させられながらすすんでいけた感じがしました。
20世紀は戦争の時代だったけど、21世紀は人間の時代になっていくでしょう。その100年間で「人間ってどんな生き物なのか?」を考えるための1冊になっていくのではないか?と思わされるような内容でした。
大なり小なり誰もが生きていく中で考えてきたような疑問を丁寧に拾って系統立ててあり、最後まで興味を失うことなく読むことができました。各所にある刺激な言葉が示唆に富んでいて、具体的に起こっている社会的問題や自分が抱える疑問にたくさんの糸口があります。
個人的には障害児教育に携わるなかで「人間の本質、精神ってなんだろう?」と考えてきたし、「個人と国家の関係の流れのなかにある教育ってなんだろう?」と思ってきました。職場で出会う200人近くの様々な障害のある人たち、とりわけ自閉症児と向き合いながら感じてきたいろいろなことがデジタルとアナログの考え方でより理解しやすくなります。
そうでなくても、誰が読んでもどこかがかならず引っかかる部分がある。疑問の投げかけ方もよく練ってあり、専門的な言葉などでごまかすことなく著者なりの論理的な説得に納得させられながらすすんでいけた感じがしました。
20世紀は戦争の時代だったけど、21世紀は人間の時代になっていくでしょう。その100年間で「人間ってどんな生き物なのか?」を考えるための1冊になっていくのではないか?と思わされるような内容でした。