発刊当時に読みとても感銘を受けていたのですが、再度手に取りました。本書、中身は大変有益なのですが、やや難解な点もあるので、できたら2度くらい読み返すと理解がかなり深まるのではないでしょうか。
ゲマワット教授はグローバルストラテジーの世界的な権威で、本書の冒頭にも書かれているように、本書はアカデミクス向けではなく、あくまで実務者向けを意図して書かれている本です。グローバルビジネスで悩んでいる実務者の方は是非読むことをオススメしますが、翻訳の質はイマイチなので、できたら原書も購入して読めると最高だと思います(そもそも日本語の題名の付け方で品位がだいぶ落ちている)。
本書で紹介されるツール(フレーム)は大きく3つです。1つめは、国の差異を分析する際に用いるCAGEフレームワーク。これはCulture(文化)、Administration(制度)、Geography(地理)、Economy(経済)の4つの面で国の差異を分析せよ、ということで、日本を主語にすると相手国によって差異の大きさや種類がだいぶ変わってきますし、どの差異に影響を受けるかは業種次第であるということが理解できます。
2つめのツールはADDINGスコアカードと呼ばれるもので、これはグローバルビジネスにあたってしっかり価値創造ができるのかを6つの要素面から検証するためのツールです。巷で出版されているグローバル本のほとんどが「グローバルビジネスは必須だ」という盲目的な前提の元で議論が進められますが、ゲマワット教授の素晴らしい点は、グローバル事業が価値を生み出すのか、生み出さないのならやるべきではない、というスタンスであることです。当たり前ですがこのスタンスは素晴らしいと思いました。
3つめのツールはAAA(トリプルA)と呼ばれるもので、これはグローバル戦略を3つのオプション(Aggregation:集約、Adaptation:適応、Arbitrage:裁定)に分類しています。Aggregationは国の差異をどう「克服(overcome)」するか、Adaptationは差異に対してどう「調整・修正(adjust)」するか、そしてArbitrageは国の差異を「活用(harness)」するという内容で、どれが優れているというものではなく、これらのオプションを幅広く念頭に置きながら戦略を作りなさい、というガイドラインとなっています。
繰り返しになりますが、本書は他のグローバル経営本とは違って、(1)実務者にとって実用的な内容になっている、(2)価値創造を究極の目標としている、(3)国の差異があるという現実に目を向けたケースバイケースの戦略立案を念頭に置いている、という点で大変優れていると感じました。オススメです。
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コークの味は国ごとに違うべきか 単行本 – 2009/4/23
パンカジ・ゲマワット
(著)
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購入オプションとあわせ買い
ウォルマート、トヨタ、資生堂ほか、多くの実例に学ぶ、ハーバード・ビジネス・スクール人気教授によるビジネスマンのための特別講義
- 本の長さ456ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2009/4/23
- ISBN-104163713700
- ISBN-13978-4163713700
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2009/4/23)
- 発売日 : 2009/4/23
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 456ページ
- ISBN-10 : 4163713700
- ISBN-13 : 978-4163713700
- Amazon 売れ筋ランキング: - 263,219位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 919位オペレーションズ (本)
- - 75,831位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
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2016年4月7日に日本でレビュー済み
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2014年11月10日に日本でレビュー済み
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学校のテキストとして使ってます。良い本だと思います 。配送も早かったんで良かったです
2009年10月4日に日本でレビュー済み
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という根本的な問いに対して明確で説得力を持った回答がたとえば株主に対してすぐに用意できる企業がはたしていくつあるのか?初期の海外進出では、巨大な「市場」があるから、という答えがほとんどであったが本書で繰り返し述べられているように事前の綿密な調査、準備が絶対に必要となる。同業他社との比較、業界全体の特徴、規模または範囲の経済の強さ測定などを前提にリスクを平準化する戦略づくりこそが最重要課題となる。もちろん「生産」のグローバル化を目標とする最近の傾向においてもこの作業は当たり前となる。著者はポーターとの共同研究でインドの産業競争力について調査の経験がある、とあとがきで書いているのでポーターの「競争戦略論」を併読するとさらにわかりやすいかもしれない。ケーススタディとしては日本コカコーラ社にとって、戦後アメリカから進出してきたコークが利益を生み出しているのではなく、自動販売機やコンビニ向けに数えきれなきほどの新商品を発売しその中でも特に本国の協力が得られなかったためにあえてあてこすりのネーミングをした「ジョージア」(本社の所在地)のおかげであることがひじょうに興味深い。
2015年6月19日に日本でレビュー済み
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お題と同様に軽いタッチで、本質的な問題提起がなされていて、考え方が整理される本です。
グローバル戦略という言葉に酔ってしまっている経営者に読んでもらうとよい本かと思います
グローバル戦略という言葉に酔ってしまっている経営者に読んでもらうとよい本かと思います
2010年10月17日に日本でレビュー済み
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多くの大学研究者が認めるとおり、本書はグローバル戦略策定の現段階での最先端に位置する著作である。理論だけでなく、具体的なケースでも説明され、戦略立案を行うために検討すべき具体的な評価軸が提案されている。そのような点で、本書は理論と実際の両面を兼ね備えた書である。但し、この本で書かれているグローバル戦略は、あくまで本社の世界戦略を担当する人向けのものであり、各地域の現地の担当者への示唆は少ない。
2010年1月26日に日本でレビュー済み
本書は「フラット化する世界」との比較で語られることが多い。
とはいえ、これらは、見ようとしている経済の枠組みが違うことを理解すべきであろう。
「フラット化する世界」は、ジャーナリストが一般の人に向けた啓発書である。
インターネットの発達により情報の格差が無くなり、安い労働力を求める競争が
世界に広がるという主張である。そういった意味では、本書「コーク・・・」の
裁定の部分だけを取り出しているように見えるのだが、実は、著者が伝えようと
している対象は、企業、経営者ではなく、一般の人である。
一方で、本書は、ビジネススクールの教授が、経営者に向けて書いた教科書である。
つまり、グローバルに展開する際に、考慮すべき注意点を提供している。つまり、
完全なグローバリゼーションは当面起こることはなく、セミ・グローバリゼーション、
国ごとの差異、利益の根源を的確にとらえることこそが成功のポイントであるとの
趣旨で、その戦略が「集約」「適応」「裁定」であり、戦略の評価の手法としての
CAGEやADDINGなどを紹介している。
そういった意味だと、本書は出版社の意図で、さも少し前に出た「フラット・・・」
への反論を述べているかのように見えるのだが、実は全く次元の違う書籍である。
「フラット・・・」は、比較的長いスパンにおいて、世の中がどのような方向へ向けて
変化しているかを示し、「コーク・・・」はその変化の過程の中で、近い将来において、
どのように企業は勝ち抜いていくかを示している本と見ることができる。
とはいえ、これらは、見ようとしている経済の枠組みが違うことを理解すべきであろう。
「フラット化する世界」は、ジャーナリストが一般の人に向けた啓発書である。
インターネットの発達により情報の格差が無くなり、安い労働力を求める競争が
世界に広がるという主張である。そういった意味では、本書「コーク・・・」の
裁定の部分だけを取り出しているように見えるのだが、実は、著者が伝えようと
している対象は、企業、経営者ではなく、一般の人である。
一方で、本書は、ビジネススクールの教授が、経営者に向けて書いた教科書である。
つまり、グローバルに展開する際に、考慮すべき注意点を提供している。つまり、
完全なグローバリゼーションは当面起こることはなく、セミ・グローバリゼーション、
国ごとの差異、利益の根源を的確にとらえることこそが成功のポイントであるとの
趣旨で、その戦略が「集約」「適応」「裁定」であり、戦略の評価の手法としての
CAGEやADDINGなどを紹介している。
そういった意味だと、本書は出版社の意図で、さも少し前に出た「フラット・・・」
への反論を述べているかのように見えるのだが、実は全く次元の違う書籍である。
「フラット・・・」は、比較的長いスパンにおいて、世の中がどのような方向へ向けて
変化しているかを示し、「コーク・・・」はその変化の過程の中で、近い将来において、
どのように企業は勝ち抜いていくかを示している本と見ることができる。
2014年12月18日に日本でレビュー済み
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コカコーラの戦略はちょっとです。
その他の事例が面白いです。でも、海外大手企業の戦略例が多いです。
その他の事例が面白いです。でも、海外大手企業の戦略例が多いです。
2015年11月9日に日本でレビュー済み
フラット化する世界と言われて、誰もがグローバル企業に世界中が蹂躙されることを考えた。実際、アップルやアマゾンなど日本企業がコテンパンにやられている例も多いけれど、意外と地域の壁は大きかった、ということを解説した本。
グローバル化推進の壁を分析する視点としてあげているのが、CAGE(C=文化的隔たり、A=制度的隔たり、G=地理的隔たり、E=経済的隔たり)で、例えば、アメリカとイギリスは遠く離れているけど、壁は低く、インドとパキスタンは隣だけれど壁は高い。
そしてその壁を乗り越えるための方法として、AAA(差異への対応、集約、裁定)を紹介している。差異への対応は想像がつくが、集約とは、一国から全世界をコントロールするのではなく、同じ地域内にビジネスの中心を置くことで地域への適応力を高めることをいい、裁定とは、逆に文化の違いなどを有効に利用しようという試みだ。例えば、ファッションのイメージが強いフランスを全面に押し出したり、タックスヘブンを活用したりすることが当てはまる。
こういったことを、豊富な事例やデータ、図表にして説明してくれるんだけれど、内容はかなり堅い。ハーバードビジネスレビューの論文のサマリーなので当然だけれど、はたして、この本の日本語化をした人はかなりマーケティングのセンスがあると思う。
題名で第1章の「コークの味は国ごとに違うべきか」はさておき、第3章「ハーゲンダッツはヨーロッパの会社ではない」にいたっては、ハーゲンダッツについて2行ほどあるだけで、原題は「GLOBAL VALUE CREATION」で全然違う。すごくキャッチーなタイトルをつけていますが、これは堅い経済学の論文です。かる〜く読めると思ってる人は要注意。
自分も以前某グローバル会社で働いていたが、グローバルとはいうものの、エグゼクティブの多くはアメリカにいて、グローバルスタンダードとはアメリカのスタンダードでした。アメリカとアジアのやり方が違う時、それはアジアが間違っているからアメリカ方式にするべきか、アジアのやり方にあうようにグローバルスタンダードを変更するかという議論が日常茶飯事でした。このところを読み誤ると本書のコーラの例のような失敗につながってしまう。誰でも、同じ言葉を話す隣の人の言うことが正しいと思うし、文化が違うと、ほとんどの人は自分の文化が一番だって感じます。ここの裁きがキッチリと正しく、かつスピーディーにできないとグローバル化なんて絵に描いた餅になってしまいます。特にアメリカという国は野球でワールドシリーズと言うと全州が参加することを意味するくらい、アメリカが世界で、アメリカ以外は周辺諸小国としか思っていない。日本コカコーラ社が缶コーヒーを提案した時はアメリカ本社は大反対だったという。コーヒーはごっついマグに入れて、砂糖をたっぷりまぶしたドーナツと食うもんで、缶に入れるなど言語道断。日本コカコーラ社はそれを押し切って、しかも嫌がらせのように本社のあるジョージアを缶コーヒーの名前にして売り出したところ、大ヒット。こういう事があると、アメリカ本社も、周辺国の連中の言うことも聞かんとあかん…と思う。そんな「教育」された人もアサイメントが変わって、新しいアメリカ人がやってくると、「何?コーヒー缶だって!」となる。まさにこういうことの繰り返しがいわゆるグローバル企業の内部では毎日起きている。
一方で、グローバル化は上手くいくと、スケールメリットを生かした強力な組織力を発揮する。世界中で同じiPhoneを売るアップルなどがいい例で、一つの商品に莫大な研究開発費を投入しても一億台売れるから十二分に元が取れる。自分がつくった製品が一億台売れるとなると、世界中のスーパーエリートがこぞって製品開発に関与したく名乗りをあげる。それだけすごい人達がとてつもない開発費をかけて作り出した商品だからみんなが買いたがるからさらに売り上げが上がる。これはもう最強のポジティブスパイラルとなりローカル企業は日本国内などのニッチなマーケットで食いつなぐしかない。でもiPhoneは世界中で全く同じではなくて、例えば、フリック入力を最初に出したのはAppleで、差異についてはキッチリと認識し、ローカルの競合よりもさらに良いのを出してくるのがすごい。この辺はAppleジャパンの人達がグローバルチームとうまくコミュニケーションしたのもあるし、社員の色眼鏡を排除し、徹底したユーザー目線で製品開発していった背景があるに違いない。
本書のZARAの紹介にあったけれど、ファッションの先端を行っている人は、逆に地域性がない方を好むと言います。グルメだってそう。こういうアーリーアダプターと言われる人は確実に地域の壁を超えて、世界の枠で一番良いものを求めている。そのうち一般の人もそうなっていくのだと思うし、インターネットや進化する物流やTPPなどの自由化がその速度を速めていると思う。でもその速度は決して偉い人が考えていたほどではないということがわかる良書でした。
グローバル化推進の壁を分析する視点としてあげているのが、CAGE(C=文化的隔たり、A=制度的隔たり、G=地理的隔たり、E=経済的隔たり)で、例えば、アメリカとイギリスは遠く離れているけど、壁は低く、インドとパキスタンは隣だけれど壁は高い。
そしてその壁を乗り越えるための方法として、AAA(差異への対応、集約、裁定)を紹介している。差異への対応は想像がつくが、集約とは、一国から全世界をコントロールするのではなく、同じ地域内にビジネスの中心を置くことで地域への適応力を高めることをいい、裁定とは、逆に文化の違いなどを有効に利用しようという試みだ。例えば、ファッションのイメージが強いフランスを全面に押し出したり、タックスヘブンを活用したりすることが当てはまる。
こういったことを、豊富な事例やデータ、図表にして説明してくれるんだけれど、内容はかなり堅い。ハーバードビジネスレビューの論文のサマリーなので当然だけれど、はたして、この本の日本語化をした人はかなりマーケティングのセンスがあると思う。
題名で第1章の「コークの味は国ごとに違うべきか」はさておき、第3章「ハーゲンダッツはヨーロッパの会社ではない」にいたっては、ハーゲンダッツについて2行ほどあるだけで、原題は「GLOBAL VALUE CREATION」で全然違う。すごくキャッチーなタイトルをつけていますが、これは堅い経済学の論文です。かる〜く読めると思ってる人は要注意。
自分も以前某グローバル会社で働いていたが、グローバルとはいうものの、エグゼクティブの多くはアメリカにいて、グローバルスタンダードとはアメリカのスタンダードでした。アメリカとアジアのやり方が違う時、それはアジアが間違っているからアメリカ方式にするべきか、アジアのやり方にあうようにグローバルスタンダードを変更するかという議論が日常茶飯事でした。このところを読み誤ると本書のコーラの例のような失敗につながってしまう。誰でも、同じ言葉を話す隣の人の言うことが正しいと思うし、文化が違うと、ほとんどの人は自分の文化が一番だって感じます。ここの裁きがキッチリと正しく、かつスピーディーにできないとグローバル化なんて絵に描いた餅になってしまいます。特にアメリカという国は野球でワールドシリーズと言うと全州が参加することを意味するくらい、アメリカが世界で、アメリカ以外は周辺諸小国としか思っていない。日本コカコーラ社が缶コーヒーを提案した時はアメリカ本社は大反対だったという。コーヒーはごっついマグに入れて、砂糖をたっぷりまぶしたドーナツと食うもんで、缶に入れるなど言語道断。日本コカコーラ社はそれを押し切って、しかも嫌がらせのように本社のあるジョージアを缶コーヒーの名前にして売り出したところ、大ヒット。こういう事があると、アメリカ本社も、周辺国の連中の言うことも聞かんとあかん…と思う。そんな「教育」された人もアサイメントが変わって、新しいアメリカ人がやってくると、「何?コーヒー缶だって!」となる。まさにこういうことの繰り返しがいわゆるグローバル企業の内部では毎日起きている。
一方で、グローバル化は上手くいくと、スケールメリットを生かした強力な組織力を発揮する。世界中で同じiPhoneを売るアップルなどがいい例で、一つの商品に莫大な研究開発費を投入しても一億台売れるから十二分に元が取れる。自分がつくった製品が一億台売れるとなると、世界中のスーパーエリートがこぞって製品開発に関与したく名乗りをあげる。それだけすごい人達がとてつもない開発費をかけて作り出した商品だからみんなが買いたがるからさらに売り上げが上がる。これはもう最強のポジティブスパイラルとなりローカル企業は日本国内などのニッチなマーケットで食いつなぐしかない。でもiPhoneは世界中で全く同じではなくて、例えば、フリック入力を最初に出したのはAppleで、差異についてはキッチリと認識し、ローカルの競合よりもさらに良いのを出してくるのがすごい。この辺はAppleジャパンの人達がグローバルチームとうまくコミュニケーションしたのもあるし、社員の色眼鏡を排除し、徹底したユーザー目線で製品開発していった背景があるに違いない。
本書のZARAの紹介にあったけれど、ファッションの先端を行っている人は、逆に地域性がない方を好むと言います。グルメだってそう。こういうアーリーアダプターと言われる人は確実に地域の壁を超えて、世界の枠で一番良いものを求めている。そのうち一般の人もそうなっていくのだと思うし、インターネットや進化する物流やTPPなどの自由化がその速度を速めていると思う。でもその速度は決して偉い人が考えていたほどではないということがわかる良書でした。