ジェイムズ·エルロイのアンダーワールドUSA三部作の第三部『アンダーワールドUSA(元題Blood's a Rover) 』四度目の再読。
基本的に三人の主人公の視点から、この小説は語られる。
ウェインの最後の行動に胸が高鳴り、ドワイトの幕引きの言葉に胸が締め付けられる。両者とも魅力的だが、やはり私はへなちょこの糞餓鬼クラッチ(覗き魔で熟女好き)がたまらなく好きだ。
ドン·クラッチフィールド。23才。
父親は頭のイカれたホームレス。
母親はクラッチがまだ10歳の頃に父親と別れ、彼の元を去る。
それ以来、彼は母親を探し続けている。
駆け出しの探偵である彼は、子供として描かれる。エルロイが子供を主人公に据えたことにまず驚く。
ある仕事をきっかけにアメリカの裏面史に関わっていく彼は、悪夢を抱え込みながら成長を遂げ、やがて終盤、死んでいったもの達の為に、愛する女の為に、そして自らの悪夢をしずめる為に、行動を開始する。
その決意の一つ一つが、激しく胸を打つ。
誰もが鼻であしらうクラッチは、実は誰よりも強い。何故彼はそこまで強くいられるのか。その秘密は恐らく彼の幼さにある。彼はその幼さゆえに自らの孤独の深さに気づいていないのだ。よって彼は自己憐憫に落ちない。どんな困難に見舞われようと、彼は怯えながらではあるが最善策を講じ切り抜けようとする。たった一人、誰の助けも無く。
幼さが強さ。こんな悲しく強い話しがあるだろうか。
フィリップ·マーロウもサム·スペードも、クラッチには敵わない。本物のタフガイとはドン·クラッチフィールドのことだ。
そしてこのクラッチ、実は若かりし頃のエルロイの生き写しなのだ。
もしかするとエルロイは、一番惨めで愛に飢えていた頃の自分に光を当てたかったのかもしれない。
邪推かもしれないが、そう考えるとエルロイファンとしては感動もひとしおなのだ。
この小説は私の宝物だ。クラッチに会う為に、彼の勇気に触れ、それを少しでも自分のものにする為に、これからも何度となく読み返すだろう。
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アンダーワールドUSA 下 単行本 – 2011/7/22
ジェイムズ・エルロイ
(著),
田村 義進
(翻訳)
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善人も悪人も白人も黒人も、無残に斃れていった。
さあ、《悪い白人ども》への復讐の宴をはじめよう。
ドミニカ共和国――大虐殺の平原。隣国ハイチとの戦乱は絶えず、独裁者トルヒーヨとバラゲールが人民を捕らえ、拷問し、殺す土地。そこでマフィアのために動くウェイン・ジュニアを、暗い罪悪感が苦しめる。自分が殺してきた黒人たち。この罪を贖うことはできるのか。
LAの黒人過激派組織を内偵するドワイト・ホリーの前にちらつくのは一九六四年に起こった現金輸送車襲撃事件。多額の現金とエメラルドが奪われ、いまもなお未解決。消えたカネと宝石はどこに流れたのか。
クラッチは心の底から怯えていた――覗きと盗聴で知ってしまったこと=JFK、RFK、キング牧師暗殺の真相。死を回避するため、彼は地下世界の住人たちと行動をともにする。眼前で展開される白人どもの悪行。それがもたらすトラウマが若き探偵の魂を鍛造してゆく。
幾筋もの黒い奔流がついに一つに合流し、やがて訪れる荘厳な最終楽章。《アメリカ文学界の狂犬》が白熱の文体が奏でる畢生の大作。
さあ、《悪い白人ども》への復讐の宴をはじめよう。
ドミニカ共和国――大虐殺の平原。隣国ハイチとの戦乱は絶えず、独裁者トルヒーヨとバラゲールが人民を捕らえ、拷問し、殺す土地。そこでマフィアのために動くウェイン・ジュニアを、暗い罪悪感が苦しめる。自分が殺してきた黒人たち。この罪を贖うことはできるのか。
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クラッチは心の底から怯えていた――覗きと盗聴で知ってしまったこと=JFK、RFK、キング牧師暗殺の真相。死を回避するため、彼は地下世界の住人たちと行動をともにする。眼前で展開される白人どもの悪行。それがもたらすトラウマが若き探偵の魂を鍛造してゆく。
幾筋もの黒い奔流がついに一つに合流し、やがて訪れる荘厳な最終楽章。《アメリカ文学界の狂犬》が白熱の文体が奏でる畢生の大作。
- 本の長さ432ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2011/7/22
- ISBN-104163742905
- ISBN-13978-4163742908
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2011/7/22)
- 発売日 : 2011/7/22
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 432ページ
- ISBN-10 : 4163742905
- ISBN-13 : 978-4163742908
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上位レビュー、対象国: 日本
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2014年1月29日に日本でレビュー済み
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いつ読んでもジェイムス・エルロイの世界は映像的で素晴らしいですが、描いている内容はキツイですね。
2014年2月25日に日本でレビュー済み
原題は物語の特徴が良く出てますイデオロギー的に中途半端な奴らの中途半端な大河小説
スパイ要素高めですがアイデンティティ喪失からもう一歩踏み込む姿勢はル・カレにはなかった
ファムファタルによって右から左へ堕ちる男たちのノワールとしてジャンル小説的にも楽しめる
堕ちるといっても心地よく後悔もないところにブードゥーのモチーフをかぶせてくるあたり文芸してるし
自虐史観とか騒ぎそうな連中を煽る嫌がらせ本としても素晴らしい
スパイ要素高めですがアイデンティティ喪失からもう一歩踏み込む姿勢はル・カレにはなかった
ファムファタルによって右から左へ堕ちる男たちのノワールとしてジャンル小説的にも楽しめる
堕ちるといっても心地よく後悔もないところにブードゥーのモチーフをかぶせてくるあたり文芸してるし
自虐史観とか騒ぎそうな連中を煽る嫌がらせ本としても素晴らしい
2011年8月21日に日本でレビュー済み
長かった物語がようやく終わりました。
読み終わった直後に書いていますが、ただ物語の持つ力圧倒されたというのが、読後感を象徴する最も適切な言葉でしょう。
小説としては、主要登場人物にフォーカスするあまりいくつかのサブプロットが置いてきぼりになる、ストーリーを進める為に地の文や挿入文書を使った補足説明を多用するといった欠点が目に付きます。
しかし、人種や政治的な差別が横溢する裏社会で必死に生きる登場人物たちが、懊悩の中、行き急ぐ姿は、娯楽小説という枠組みを否定し、多々物語としての存在感が強く感じさせます。
長い三部作ですが、是非第一部「アメリカン・タブロイド」から読み薦めて欲しいシリーズです。
これから三部作を読み始める人は、次作の刊行を首を長くして待つ必要が無いので、うらやましいと思います。
読み終わった直後に書いていますが、ただ物語の持つ力圧倒されたというのが、読後感を象徴する最も適切な言葉でしょう。
小説としては、主要登場人物にフォーカスするあまりいくつかのサブプロットが置いてきぼりになる、ストーリーを進める為に地の文や挿入文書を使った補足説明を多用するといった欠点が目に付きます。
しかし、人種や政治的な差別が横溢する裏社会で必死に生きる登場人物たちが、懊悩の中、行き急ぐ姿は、娯楽小説という枠組みを否定し、多々物語としての存在感が強く感じさせます。
長い三部作ですが、是非第一部「アメリカン・タブロイド」から読み薦めて欲しいシリーズです。
これから三部作を読み始める人は、次作の刊行を首を長くして待つ必要が無いので、うらやましいと思います。
2011年10月30日に日本でレビュー済み
上巻でどんどん増殖した主要キャラクターが絞り込まれ、内面が吐露されていく下巻。
広がった世界にいくつかの深い淀みが示されることで、読み手はやっと物語のつながりを感じ始め、終盤へと向かうモチベーションが高まる。
しかし、JFKやキング牧師を配して綴られた前2作と比べると、今作には日本人にとってなじみのある歴史的事実が少なく、唯一残るフーバーとニクソンの存在感も薄く、すでに歴史とは切り離された形。特にハイチは呪術と麻薬に浸った幻想の森のようで、アメリカを舞台にした、という印象すら薄めてしまう。その結果、前2作を読んでいない身としては、この3部作が描く叙事詩の全体像を満喫できていないのではないか、という思いがぬぐえず、心残り。
広がった世界にいくつかの深い淀みが示されることで、読み手はやっと物語のつながりを感じ始め、終盤へと向かうモチベーションが高まる。
しかし、JFKやキング牧師を配して綴られた前2作と比べると、今作には日本人にとってなじみのある歴史的事実が少なく、唯一残るフーバーとニクソンの存在感も薄く、すでに歴史とは切り離された形。特にハイチは呪術と麻薬に浸った幻想の森のようで、アメリカを舞台にした、という印象すら薄めてしまう。その結果、前2作を読んでいない身としては、この3部作が描く叙事詩の全体像を満喫できていないのではないか、という思いがぬぐえず、心残り。