著者曰く、ここ25年で唯一の太平洋戦争全史。出典を主に、アメリカ海軍協会とコロンビア大学が録音し書き起こした口述筆記資料に拠っている。そのため、政治・軍事のハイレベルだけでなく、「甲板、塹壕、操縦席の視点」も数多く含まれこととなり、「いかに戦われたか」ではなく「いかに経験されたか」に寄り添う生々しい戦史となっている。
・巨艦大砲主義や武士道的決戦の幻影（海軍教本や日露戦の日本海海戦勝利）に捕らわれて、空母を中心とした海戦・航空戦に移行しつつあった戦争のトレンドを読みそこなった。
・暗号解読はワシントンの本部ではなく、ハワイの専門施設で不眠不休の努力や機知によって可能となった。
・ミッドウェイ海戦で大敗したことで当初講和に持ち込むことを目論んでいた山本五十六は（極右に狙われていたこともあり）瀬戸内海の大和に蟄居。戦艦大和は飽食の「大和ホテル」と揶揄されていた。撃墜された際は、通信傍受されていただけでなく、あまりに計画通り空路移動したためピンポイントで迎撃された。
・当初優勢だった航空戦は優秀なパイロット達の無駄死を繰り返すことや、若手の教習に人員を割かなかったこともあり、徐々に形勢逆転の圧倒的劣勢となった。終戦1年半前には既に日本軍機は戦意喪失して抗戦しない傾向があった。
・「特攻」はそもそも訓練されてないのでそうせざるを得なかっただけ、ということになる。戦争初期に落第したパイロット達の方が後期に飛行したパイロット達よりも優秀だった。
・敗退が確定的になると、バンザイ突撃など玉砕が行われたが、投降に応じた兵士達もいた（ほとんどは朝鮮半島出身者）。やがて投降を決断した日本兵は、トイレや映画上映広場などに出没した（撃たれないから）。
・日米共に軍内部の覇権争いがあり、時に致命的。アメリカはヨーロッパ第一主義にも関わらず、キング提督がリーダーシップを発揮して早期の太平洋戦反攻を実現させた。現地指揮官も上陸作戦の成否にはブルドーザーやジープが有益との知見があり、無許可で積載して出港した。
以上、
上巻・中巻の雑感まとめ
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