戊辰戦争で旧幕府軍に加担したフランス人将校がいたことはよく知られている。その中心人物がこの小説の主人公であるジュール・ブリュネだ。フランス史が専門で幕末日本史にも詳しい著者であれば、これ以上の題材はないかもしれない。
箱館戦争において旧幕府軍の中心となった伝習隊は、フランスの軍事顧問によって育てられたものだ。ブリュネたちは江戸でそれを作っておしまい、となるはずだったのに、榎本武揚らに誘われて軍事顧問団から脱走し、五稜郭まで従軍し、この伝習隊を率いた。
薩長軍にはやはり英国の軍事顧問、そして大隊規模の兵団さえ含まれていて、それが戦争の絵図を描いているとブリュネは想像していた。しかし彼は海軍中心の英国軍に率いられた薩長軍にならば、仏陸軍が加担する旧幕府軍が勝てるという見込みを持っていた。盟友・土方歳三らはその期待通りに善戦するが、やがてその思惑は外れる。薩長にもダルタニヤン・三銃士に匹敵する陸の戦士たちがいたのだった。
この辺の筋の運び、くすぐり方が上手い。
物語は概ね史実をなぞる。それだけに、重大なエンディングが気になって仕方がない。本当にこうだったら・・・と思う。他の作品でも幾度か見てきたが、著者はこのような終わらせ方が本当に上手だ。見事な歴史娯楽小説になっている。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
ラ・ミッション ―軍事顧問ブリュネ― 単行本 – 2015/2/26
佐藤 賢一
(著)
箱館・五稜郭の戦いを指揮したフランス軍人
徳川幕府に軍事顧問として雇われ、
陸軍の近代化にあたっていたフランス陸軍士官、ジュール・ブリュネ。
大政奉還が行われ、幕府が終焉するとともに軍事顧問団は解任されるが、
幕臣・榎本武揚や新選組副長・土方歳三らとの関わりのなかで、
日本人の士道(エスプリ)に心をうたれたブリュネは、
母国での輝かしい未来を捨て、戊辰戦争に身を投じることを決意する。
映画「ラストサムライ」主人公のモデルになったといわれる男を描いた、
歴史エンターテイメント大作。
徳川幕府に軍事顧問として雇われ、
陸軍の近代化にあたっていたフランス陸軍士官、ジュール・ブリュネ。
大政奉還が行われ、幕府が終焉するとともに軍事顧問団は解任されるが、
幕臣・榎本武揚や新選組副長・土方歳三らとの関わりのなかで、
日本人の士道(エスプリ)に心をうたれたブリュネは、
母国での輝かしい未来を捨て、戊辰戦争に身を投じることを決意する。
映画「ラストサムライ」主人公のモデルになったといわれる男を描いた、
歴史エンターテイメント大作。
- 本の長さ438ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2015/2/26
- ISBN-104163902139
- ISBN-13978-4163902135
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2015/2/26)
- 発売日 : 2015/2/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 438ページ
- ISBN-10 : 4163902139
- ISBN-13 : 978-4163902135
- Amazon 売れ筋ランキング: - 742,771位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 194,856位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
1968年、山形県鶴岡市生まれ。東北大学大学院文学研究科で西洋史学を専攻。93年、『ジャガーになった男』で第六回小説すばる新人賞を受賞。99年、『王妃の離婚』で第一二一回直木賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 フランス革命の肖像 (ISBN-13:978-4087205411)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2022年7月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2020年8月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
いつも西洋中世史を舞台に面白い物語を読ませてくれる歴史の語り部佐藤賢一が、本書では主人公は
仏人だが、舞台を幕末の蝦夷が島(北海道)に移して、日本武士の士道と仏人軍人のエスプリをテーマに
興味ある作品を書き上げている。徳川幕府の仏人軍事顧問であったジュール・ブルネは、薩長を中心と
した官軍の攻勢に対して、今まで江戸幕府を支えてきたフランスが、煮え切らない態度をとることに
我慢できず、後刻自分に降りかかるに違いない災厄を顧みず、蝦夷が島で一戦を交えようとする
旧幕府軍残党に与することを決心する。この旧幕府軍には、榎本釜次郎、土方歳三、などもおり、
また、何とか官軍と幕府との間を取り持とうとする勝海舟も登場する中、佐藤は見事にこういう
人物を自分なりの解釈で味付けした人物として描いていく。結果、誰もが知るように、この戦争は
官軍の勝利に終わり、ブリュネたちの苦労も徒労に終わるかと思わせるが、最後のエピローグで、佐藤は
結論にちょっと粋な味付けを施すことで余韻たっぷりの作品に仕上げている。幕末の内戦を仏人の
目から見た作品は新鮮であったし、仏人の心情と武士道をうまくマッチさせた筋書きも見事だと思う。
仏人だが、舞台を幕末の蝦夷が島(北海道)に移して、日本武士の士道と仏人軍人のエスプリをテーマに
興味ある作品を書き上げている。徳川幕府の仏人軍事顧問であったジュール・ブルネは、薩長を中心と
した官軍の攻勢に対して、今まで江戸幕府を支えてきたフランスが、煮え切らない態度をとることに
我慢できず、後刻自分に降りかかるに違いない災厄を顧みず、蝦夷が島で一戦を交えようとする
旧幕府軍残党に与することを決心する。この旧幕府軍には、榎本釜次郎、土方歳三、などもおり、
また、何とか官軍と幕府との間を取り持とうとする勝海舟も登場する中、佐藤は見事にこういう
人物を自分なりの解釈で味付けした人物として描いていく。結果、誰もが知るように、この戦争は
官軍の勝利に終わり、ブリュネたちの苦労も徒労に終わるかと思わせるが、最後のエピローグで、佐藤は
結論にちょっと粋な味付けを施すことで余韻たっぷりの作品に仕上げている。幕末の内戦を仏人の
目から見た作品は新鮮であったし、仏人の心情と武士道をうまくマッチさせた筋書きも見事だと思う。
2015年6月7日に日本でレビュー済み
いやぁ、面白いお話に出くわしたものです。前半息を詰めて読み、後半手に汗を握り、ラストに至って「そう来たか!」と叫んでおりました。
舞台は幕末から明治にかけての日本。幕府側にはフランスが付き、薩長はイギリスが後押ししていたことは知られていますが、この物語はフランス陸軍から幕府の軍事顧問檀の副団長として来日した砲兵中尉ジュール・ブリュネが、幕府倒れてのち旧幕臣の側に寄り添って行動した顛末を描いています。
外国人の目で見た明治維新、日本人気質。フランスとイギリスの行動様式の違い、外交官と軍人の考え方の違い。読みながらへぇぇと嘆息してしまうくらい登場人物が生き生きと立ち現われて物語が動いていきます。
私は塩野七生のローマものと佐藤賢一のフランスものは「何気なく手に取る」などという軽い気持ちで読めるものではなく、気合を入れて手にしなければならない類の本だと思ってきました。また、フランスの時代ものといえばデュマの小説がすぐ思い浮かぶように、うかつに手に取ったら最後、一気に読み終えるまで離してくれないコワイ本だと思っていました。
そんなわけで佐藤賢一の歴史小説は、一度読んでみたいと思いながら手が出せず、この本が私にとって最初の作品となりました。やっぱりのめりこんでしまい、ほかのことは後回しになりましたが、読んでよかった。あらためて歴史とは世界史と日本史の2つがあるのではなく、日本史は世界史のなかの一地域の歴史だったのだと気づかされました。
だけど、面白くなければ小説じゃない。そして、ひょこっと出てきた「すいません」という言葉(p.189)や「心が折れる」という言い回し(p.388)に作家のご愛嬌ともいえるものを感じました。
舞台は幕末から明治にかけての日本。幕府側にはフランスが付き、薩長はイギリスが後押ししていたことは知られていますが、この物語はフランス陸軍から幕府の軍事顧問檀の副団長として来日した砲兵中尉ジュール・ブリュネが、幕府倒れてのち旧幕臣の側に寄り添って行動した顛末を描いています。
外国人の目で見た明治維新、日本人気質。フランスとイギリスの行動様式の違い、外交官と軍人の考え方の違い。読みながらへぇぇと嘆息してしまうくらい登場人物が生き生きと立ち現われて物語が動いていきます。
私は塩野七生のローマものと佐藤賢一のフランスものは「何気なく手に取る」などという軽い気持ちで読めるものではなく、気合を入れて手にしなければならない類の本だと思ってきました。また、フランスの時代ものといえばデュマの小説がすぐ思い浮かぶように、うかつに手に取ったら最後、一気に読み終えるまで離してくれないコワイ本だと思っていました。
そんなわけで佐藤賢一の歴史小説は、一度読んでみたいと思いながら手が出せず、この本が私にとって最初の作品となりました。やっぱりのめりこんでしまい、ほかのことは後回しになりましたが、読んでよかった。あらためて歴史とは世界史と日本史の2つがあるのではなく、日本史は世界史のなかの一地域の歴史だったのだと気づかされました。
だけど、面白くなければ小説じゃない。そして、ひょこっと出てきた「すいません」という言葉(p.189)や「心が折れる」という言い回し(p.388)に作家のご愛嬌ともいえるものを感じました。
2019年12月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
面白かった。武士道に共感したフランス人が実在したなんて知りませんでした。
2018年3月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
なるほど、ラストサムライのモデルかもしれません。ですが私の印象は、昭和の終わりの年末時代劇五稜郭のブリュネそのまんまでした。鳥羽伏見、江戸開城、会津若松落城と描かれていきますが、戦闘シーンはあっさり。庄内藩の戦いが取り上げられるのは佐藤賢一さんならではでしょうね。函館戦争の様相がよく研究されていて、時代のイメージがわきました。フランス軍人カズヌーブは…?ありです!歴史文学はイメージの産物です。十分に楽しめました。
2022年9月6日に日本でレビュー済み
旧幕府軍に函館まで同行した仏・軍事顧問ブリュネを描く力作だが、彼を高く評価し美化するかの記述には疑問も残る。吉村昭『幕府軍艦「回天」始末』[文春文庫、1993]では、ブリュネは自ら提案した報酬金額を榎本武揚に拒否され、仕方なく半分に減額するが交渉はなお難航。なんとか雇ってもらいたいブリュネは最終的には大幅減額でようやく妥結(同p.26~27)。徹底した取材で定評のある吉村氏は、ブリュネを美化せず淡々と具体的な金額の細部も含めて事実を述べる。一方、友情や男気などを強調する佐藤氏の本書には、報酬に関しては、榎本の一方的な好意にブリュネも驚いたかの記述があるのみ。
本来、プロの傭兵ならば自らの技量を高く売込むのは当然とも思えるが、自伝的史料に依拠したものならば弁明の意図も想定しての史料批判も必要かと思われる。『女信長』?的なフィクションという見方もできようが、文庫版巻末では、東大史料編纂所の著名なH氏は佐藤氏を絶賛し礼賛している。
本来、プロの傭兵ならば自らの技量を高く売込むのは当然とも思えるが、自伝的史料に依拠したものならば弁明の意図も想定しての史料批判も必要かと思われる。『女信長』?的なフィクションという見方もできようが、文庫版巻末では、東大史料編纂所の著名なH氏は佐藤氏を絶賛し礼賛している。
2018年3月5日に日本でレビュー済み
鳥羽伏見の戦いから戊辰戦争終結までをフランスの軍人の目で追った小説です。史実に沿っているが、かなりフィクションを交えているように感じました。
キーワードは列強で交わされた「局外中立」、つまりどの国も日本の内戦の片方に加担しないという誓約です。このお陰で日本は他国の植民地になるのを免れたし、戊辰戦争も内乱で終わったという視点で、なんとなく説得力がありました。
エピローグではフランスに帰国した際の歓迎ぶりが示されていたが、解説によるその後は本編では想像できない扱いであったことがわかりました。
キーワードは列強で交わされた「局外中立」、つまりどの国も日本の内戦の片方に加担しないという誓約です。このお陰で日本は他国の植民地になるのを免れたし、戊辰戦争も内乱で終わったという視点で、なんとなく説得力がありました。
エピローグではフランスに帰国した際の歓迎ぶりが示されていたが、解説によるその後は本編では想像できない扱いであったことがわかりました。