「このページをめくれば、
あなたはこれまでの人生の全てを失うかもしれない」
帯にもそう書かれた本作。
大袈裟なのでは、本当にそこまでのものが描かれているのか、と
ほんの少し訝りながら読み始めましたが。。。。。。
納得しました。
そういうことか、と。
重度の鬱病の女性を愛した精神科医の物語。
彼はどうにか彼女を救おうとするが。。。というのがあらすじ。
こう書くとすごくありがちに思えるかもしれませんが、
人間心理がこれでもかと細かく描かれていて、
「著者の中村氏、ここまで物事を細かく見れて人間の本質を見抜けちゃうなら
生きづらいだろうなあ。。。」
とまで思った。
純文学作家さんだけど元々がミステリの要素を取り入れた物語を書くひとで
最近は特にミステリづいて来ているので、
純文ファンもミステリファンもどちらでも読める。
出だしから何が始まるのかとドキドキさせられ、
宮崎勤などの著者の考察も興味深く、
ラストシーンでは切なくてやるせなくて胸が締め付けられるようだった。
あっという間に物語は終わった。
ほんのわずかな希望だけ残して。
初期の中村作品が私は特に好きなのですが、
中村氏が公私共に充実している(いや、実際は知りませんが)せいか
最近は孤独が描かれず妙に明るくなってしまったなとちょっと残念に
思っていたのですが、中村節は健在だった、
いやむしろパワーアップしていると非常に喜ばしく思った。
非常におすすめです。
中村氏の抱える闇にやっぱり私は惹かれてならない。
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私の消滅 単行本 – 2016/6/18
中村 文則
(著)
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あなたはこれまでの人生の全てを失うかもしれない。
一行目に不気味な文章が書かれた、ある人物の手記。
それを読む男を待ち受けるのは、狂気か救済か。
『掏摸 スリ』『教団X』を越える衝撃。
中村文則が放つ、新たな最高傑作!
あなたはこれまでの人生の全てを失うかもしれない。
一行目に不気味な文章が書かれた、ある人物の手記。
それを読む男を待ち受けるのは、狂気か救済か。
『掏摸 スリ』『教団X』を越える衝撃。
中村文則が放つ、新たな最高傑作!
- 本の長さ166ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2016/6/18
- ISBN-104163904719
- ISBN-13978-4163904719
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2016/6/18)
- 発売日 : 2016/6/18
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 166ページ
- ISBN-10 : 4163904719
- ISBN-13 : 978-4163904719
- Amazon 売れ筋ランキング: - 369,840位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 8,996位日本文学
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上位レビュー、対象国: 日本
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2016年6月28日に日本でレビュー済み
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2018年12月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
つらかったですが、救済を感じるような気がして何度も何度も読みました。救済ってなんだろうと思うことは多々ありますが、他に言葉が見当たりませんでした。
作中に登場するゆかりさんという女性に共感しました。そして、私もそうだった、と思わずにはいられませんでした。
ゆかりさんは診察の日に丈の短いスカートを履いていました。
性犯罪被害者は大きくふたつにわけて、性的なことがものすごく怖くなって、そういった話を聞くのもつらいと全く受け付けられなくなる人と、体を売ったり複数の男性と性行為をするようになったりする、つまり性的に奔放(この言葉は苦手であまり使いたくはありませんでしたが、他に言葉が見当たらず、この言葉を使ってしまいます、ごめんなさい)になる人がいると思います。
私は、今まで誰とも付き合ったことがなく、風俗につとめたこともなかったので、性的に奔放になることはなかったと思います。恋人がいないことは悲しいですが、それは、出会いがない、縁がない、性被害にあったから恋愛が怖い、それらだけでなく私の性格などに問題があるのだと、思っています。
短いスカートをはいて、やや挑発するような態度をとる、ゆかりさんのしたことは本当に性犯罪被害者の苦しんで苦しんで苦しんだ末にとった行動だと思いました。
あとになってから、ゆかりさんの短いスカートのくだりを思い出して、泣いてしまいました。彼女の傷は深すぎて、誰にも救うことができない、だけど、ほんとうは助けて欲しい、そういった気持ちや感情で、短いスカートをはいたのだと思いました。本当に苦しい気持ちです。
私には性被害にあった人に何ができるのだろうと思います。
考えてもほとんど何も思いつかず、ふがいなく自分が憎いです。
私はたくさんの性被害にあってきましたが、強姦されたことはありません。
母親は「犯されたわけじゃないんだから」と呆れています。
私の傷はそんなにどうでも良くて軽いものだったのかと、一番信頼できる家族の言葉が本当につらかったです。
私も性的に奔放、とまではい全くかないかもしれませんが、でも、覚えがあります。
セカンドレイプも何度も受けました。
日本では、性犯罪被害者の支援が遅れていると強く思うし、なにより被害者の話を聞いてくれる人がいません。
ゆかりさんも恐らくそうだったのだと思います。
そして、小塚亮大さんに会った。会うことができました。
私はゆかりさんが羨ましかったのだと思います。
二人の男の人に愛されて、嫉妬に近い感情を覚えてしまいました。
私はなんて醜い人間なのだろうと思います。でも、それでも私はゆかりさんが羨ましく思うのをやめられなかった。
自分の醜さに嫌悪しながらも、ゆかりさんの幸せを願わずにはおれませんでした。
もちろん、和久井太一さんと小塚亮大さんの幸せも。
微かな希望を残すラストシーンは本当に悲しかったです。
みんなが幸せになれることを願います。
人を傷つける人もなにか傷を背負っていると思うから(だからといって許される訳では決してないけれど)、だれかを傷つけたいと思えなくなるくらい幸せになってほしいです。
作中に登場するゆかりさんという女性に共感しました。そして、私もそうだった、と思わずにはいられませんでした。
ゆかりさんは診察の日に丈の短いスカートを履いていました。
性犯罪被害者は大きくふたつにわけて、性的なことがものすごく怖くなって、そういった話を聞くのもつらいと全く受け付けられなくなる人と、体を売ったり複数の男性と性行為をするようになったりする、つまり性的に奔放(この言葉は苦手であまり使いたくはありませんでしたが、他に言葉が見当たらず、この言葉を使ってしまいます、ごめんなさい)になる人がいると思います。
私は、今まで誰とも付き合ったことがなく、風俗につとめたこともなかったので、性的に奔放になることはなかったと思います。恋人がいないことは悲しいですが、それは、出会いがない、縁がない、性被害にあったから恋愛が怖い、それらだけでなく私の性格などに問題があるのだと、思っています。
短いスカートをはいて、やや挑発するような態度をとる、ゆかりさんのしたことは本当に性犯罪被害者の苦しんで苦しんで苦しんだ末にとった行動だと思いました。
あとになってから、ゆかりさんの短いスカートのくだりを思い出して、泣いてしまいました。彼女の傷は深すぎて、誰にも救うことができない、だけど、ほんとうは助けて欲しい、そういった気持ちや感情で、短いスカートをはいたのだと思いました。本当に苦しい気持ちです。
私には性被害にあった人に何ができるのだろうと思います。
考えてもほとんど何も思いつかず、ふがいなく自分が憎いです。
私はたくさんの性被害にあってきましたが、強姦されたことはありません。
母親は「犯されたわけじゃないんだから」と呆れています。
私の傷はそんなにどうでも良くて軽いものだったのかと、一番信頼できる家族の言葉が本当につらかったです。
私も性的に奔放、とまではい全くかないかもしれませんが、でも、覚えがあります。
セカンドレイプも何度も受けました。
日本では、性犯罪被害者の支援が遅れていると強く思うし、なにより被害者の話を聞いてくれる人がいません。
ゆかりさんも恐らくそうだったのだと思います。
そして、小塚亮大さんに会った。会うことができました。
私はゆかりさんが羨ましかったのだと思います。
二人の男の人に愛されて、嫉妬に近い感情を覚えてしまいました。
私はなんて醜い人間なのだろうと思います。でも、それでも私はゆかりさんが羨ましく思うのをやめられなかった。
自分の醜さに嫌悪しながらも、ゆかりさんの幸せを願わずにはおれませんでした。
もちろん、和久井太一さんと小塚亮大さんの幸せも。
微かな希望を残すラストシーンは本当に悲しかったです。
みんなが幸せになれることを願います。
人を傷つける人もなにか傷を背負っていると思うから(だからといって許される訳では決してないけれど)、だれかを傷つけたいと思えなくなるくらい幸せになってほしいです。
2016年7月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
人の深層心理がよく考えられた作品でした。
後半になるにつれ、物語の真実が見えてきたときには、
そういうことだったのかという衝撃をうけ、一気に読むことができました。
マインドコントロールや精神分析系が好きな方にはおすすめです。
後半になるにつれ、物語の真実が見えてきたときには、
そういうことだったのかという衝撃をうけ、一気に読むことができました。
マインドコントロールや精神分析系が好きな方にはおすすめです。
2023年7月22日に日本でレビュー済み
そうなのだが、歪まれた自己を、受け入れられず、その受け入れられない自己を他に押しかぶせ、それを抹殺することによって、もう、他に押しかぶせる必要のなくなった――完全になくなった訳ではない、平凡な妄想のように固執された夢想の実現を一応夢見ているのだから、しかし、そんな夢想が全く実現されず、果たされた歪みを引きずった、果たされたがゆえに、かすのように、残滓のように残った歪みを身につけた自分として生きることも許容する、というような、自己回復、自己定立の物語。
自己はもう気がついたときには、ままならぬ、複雑な解くこともできない自己を抱えているのだから、その、自分にとって外部といえるような、暴風のような自己を抱えた自己は、その暴風雨を手なずける、許容する自己になる他ない、この物語では、なる他なかったというふうに、自己の回復の、自己の定立の物語。
ここで行われる、脳に電気ショックを与えながら、記憶を書き換えるや、その中での、その果てでの殺人や、愛する人が強姦されること、凌辱されることや、少年時代の性的欲動や、母子相姦の願望や、兄妹コンプレクスの憎しみや、同性愛的に憧れられる共犯者や、自己の惨めを投影されたような愛する人やは、どういうのだろうか、登場人物の現実的な、実在的な体験というより、主人公に投影された、ある精神のあり方、主人公を通して主人公に肉付けされた、ある精神のあり方が、招き寄せる概念ドラマのように描かれており、そのような文体的特徴のもとでの、自己回復物語、自己定立物語であるように思える。
自己はもう気がついたときには、ままならぬ、複雑な解くこともできない自己を抱えているのだから、その、自分にとって外部といえるような、暴風のような自己を抱えた自己は、その暴風雨を手なずける、許容する自己になる他ない、この物語では、なる他なかったというふうに、自己の回復の、自己の定立の物語。
ここで行われる、脳に電気ショックを与えながら、記憶を書き換えるや、その中での、その果てでの殺人や、愛する人が強姦されること、凌辱されることや、少年時代の性的欲動や、母子相姦の願望や、兄妹コンプレクスの憎しみや、同性愛的に憧れられる共犯者や、自己の惨めを投影されたような愛する人やは、どういうのだろうか、登場人物の現実的な、実在的な体験というより、主人公に投影された、ある精神のあり方、主人公を通して主人公に肉付けされた、ある精神のあり方が、招き寄せる概念ドラマのように描かれており、そのような文体的特徴のもとでの、自己回復物語、自己定立物語であるように思える。
2016年7月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
読み終えた中村文則さんの最新作、「私の消滅」。
最後まで読み終え、あとがきを読み、「この世界は時に残酷ですが、共に生きましょう」の言葉に涙が溢れた。
またひとつ、人間の内面の奥の奥に踏み込み、この人はなんとか一人でも暗闇の中から救いたいと強く想っているのではないかと、深く感じて胸が痛んだ。
全てを読み終えて表紙を見たとき、壁に掛けられたドレスがウエディングドレスに見えたのは私だけだろうか?
この作品の「仕掛け」の巧みさや、ストーリーの基軸が恋人を喪失した者の復讐劇であること、人形師が作った本物の人間のような人形が出てくる点などは、近作の「去年の冬、きみと別れ」を想起させる。
しかし、あの作品はミステリーの要素が強かったが、今回の作品はより人間の真相に深く分け入ったという点ではずっと重厚になっている。
それは、現実の宮崎勤の事件をよく調べ、その内面に深く接近したことや、以前から中村文則さんがもっているテーマでもある“性の衝動”に更に鋭くメスを入れたこと(性の衝動が特に色濃く出ている作品は「最後の命」)、そして「私」という存在の認識は果たして明確なものであるのかという哲学者が問題にしてきた自己認識に対する精神分析や脳科学からのアプローチなど、様々な問題意識が深く考察されているからだろう。
しかし、この物語から私が得たシンプルな感触はこうだ。
「普通の顔をして生きている人間の悪意ほど恐ろしいものはない」。
殺人を犯すところまで追いつめられた人間には、そこに行き着くまでに多くの人間の他愛ない悪意が積み重ねられている。そういう悪意を秘めている人間の方がのうのうと暮らしていて、そんな自分に罪悪感すら抱かないのかもしれない。自分たちの悪意が生み出した結果を法で裁くことで安堵して、自分の悪意に見て見ぬふりをしているのではないか。そうやって、自分の悪を許し飼い慣らしている以上、殺人や暴力はこの世界から消えることはないのではないか。そう思わずにはいられなかった。
私は、殺人事件や暴行事件、自殺の報道やテロ、紛争や戦争などニュースに触れると、いつも心に痛みが走る。なぜ、人は自分や他人を殺してまで世界に復讐しなければならないのだろうと。どうしてこんなに生きづらい世界なんだろうと。こんなに生きづらくしてしまったのは、結局は人間そのものなのに、なぜ人間は世界を変えられないのだろうと。
でも、こうやって、戦っている人がいる。世界をなんとか変えられないだろうかと、生きづらい人々が少しでも長く、なんとか明日に向かって生きられないだろうかと模索している人がいる。
中村さんの小説を読んでいると、小説を読み終えて「あとがき」の「共に生きましょう」に出会うと、いつもそのように励まされ、私もなんとか生きなくてはと思う。
今回の小説も、また深く考えさせられ、またひとつ勇気づけられた。
この小説の最後が、絶望なのか希望なのか、それは読者一人一人に委ねられるものだが、その先に私はやはり希望を見出したいと思う。
最後まで読み終え、あとがきを読み、「この世界は時に残酷ですが、共に生きましょう」の言葉に涙が溢れた。
またひとつ、人間の内面の奥の奥に踏み込み、この人はなんとか一人でも暗闇の中から救いたいと強く想っているのではないかと、深く感じて胸が痛んだ。
全てを読み終えて表紙を見たとき、壁に掛けられたドレスがウエディングドレスに見えたのは私だけだろうか?
この作品の「仕掛け」の巧みさや、ストーリーの基軸が恋人を喪失した者の復讐劇であること、人形師が作った本物の人間のような人形が出てくる点などは、近作の「去年の冬、きみと別れ」を想起させる。
しかし、あの作品はミステリーの要素が強かったが、今回の作品はより人間の真相に深く分け入ったという点ではずっと重厚になっている。
それは、現実の宮崎勤の事件をよく調べ、その内面に深く接近したことや、以前から中村文則さんがもっているテーマでもある“性の衝動”に更に鋭くメスを入れたこと(性の衝動が特に色濃く出ている作品は「最後の命」)、そして「私」という存在の認識は果たして明確なものであるのかという哲学者が問題にしてきた自己認識に対する精神分析や脳科学からのアプローチなど、様々な問題意識が深く考察されているからだろう。
しかし、この物語から私が得たシンプルな感触はこうだ。
「普通の顔をして生きている人間の悪意ほど恐ろしいものはない」。
殺人を犯すところまで追いつめられた人間には、そこに行き着くまでに多くの人間の他愛ない悪意が積み重ねられている。そういう悪意を秘めている人間の方がのうのうと暮らしていて、そんな自分に罪悪感すら抱かないのかもしれない。自分たちの悪意が生み出した結果を法で裁くことで安堵して、自分の悪意に見て見ぬふりをしているのではないか。そうやって、自分の悪を許し飼い慣らしている以上、殺人や暴力はこの世界から消えることはないのではないか。そう思わずにはいられなかった。
私は、殺人事件や暴行事件、自殺の報道やテロ、紛争や戦争などニュースに触れると、いつも心に痛みが走る。なぜ、人は自分や他人を殺してまで世界に復讐しなければならないのだろうと。どうしてこんなに生きづらい世界なんだろうと。こんなに生きづらくしてしまったのは、結局は人間そのものなのに、なぜ人間は世界を変えられないのだろうと。
でも、こうやって、戦っている人がいる。世界をなんとか変えられないだろうかと、生きづらい人々が少しでも長く、なんとか明日に向かって生きられないだろうかと模索している人がいる。
中村さんの小説を読んでいると、小説を読み終えて「あとがき」の「共に生きましょう」に出会うと、いつもそのように励まされ、私もなんとか生きなくてはと思う。
今回の小説も、また深く考えさせられ、またひとつ勇気づけられた。
この小説の最後が、絶望なのか希望なのか、それは読者一人一人に委ねられるものだが、その先に私はやはり希望を見出したいと思う。
2016年9月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
レビューを見ていて、嫌な予感がしましたが、外れでした。
私に合ったリズム、テーマでした。
さすが中村さん!! それとなくちりばめられた、純度の高いメッセージが心に響きました。
「私は変われるか?」 洗脳、薬、電気ショックと現在考えうる「脳を変える」方法で試される私。
しかし、私はそんなもので変われるのか? 脳とは本当に私なのか? 私とは私個人が所有している私だけなのか?
と沢山の問いを投げて下さってありがとうです。
久しぶりにいい本に出会いました。
私に合ったリズム、テーマでした。
さすが中村さん!! それとなくちりばめられた、純度の高いメッセージが心に響きました。
「私は変われるか?」 洗脳、薬、電気ショックと現在考えうる「脳を変える」方法で試される私。
しかし、私はそんなもので変われるのか? 脳とは本当に私なのか? 私とは私個人が所有している私だけなのか?
と沢山の問いを投げて下さってありがとうです。
久しぶりにいい本に出会いました。
2016年8月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ひとのこころのむずかしい問題を、複雑なやりかたで
書いている。
いろいろ衣を脱がしてみると、ひとのこころは
一たすいちは一。というかなり無謀な結論に
いたり、おどろかされた。
一たすいちは一ではない解をみちびくのが
小説ではないかと思う。
宮崎を実名でだす必要性があるのかも
小説としてふしぎ。もうすこし抽象化した
存在として書いたほうが、自由なのになぜ。
もし、作者が新人なら、3年寝かしてから書けと
いいたい。アイデアの羅列で、アイデアはおもしろいが、
このなかに人間がえがかれているとはまったく感じなかった。
ただのひとりも人間でなく、ただ、アイデアを実行する
役割の存在。
また、小説ならではの裏技、語り手の顔が見えない
ゆえのどんでんがえしを、安易に消費してほしくなかった。
「死の接吻」なみの傑作が生まれた場合に、
本作が先行しているといわれたら、かわいそうだ。
書いている。
いろいろ衣を脱がしてみると、ひとのこころは
一たすいちは一。というかなり無謀な結論に
いたり、おどろかされた。
一たすいちは一ではない解をみちびくのが
小説ではないかと思う。
宮崎を実名でだす必要性があるのかも
小説としてふしぎ。もうすこし抽象化した
存在として書いたほうが、自由なのになぜ。
もし、作者が新人なら、3年寝かしてから書けと
いいたい。アイデアの羅列で、アイデアはおもしろいが、
このなかに人間がえがかれているとはまったく感じなかった。
ただのひとりも人間でなく、ただ、アイデアを実行する
役割の存在。
また、小説ならではの裏技、語り手の顔が見えない
ゆえのどんでんがえしを、安易に消費してほしくなかった。
「死の接吻」なみの傑作が生まれた場合に、
本作が先行しているといわれたら、かわいそうだ。