論文調の本だと思っていたのですが、とても読みやすく、たちまち読みきってしまいました。
歴史における軍事作戦について少々かじっている方、孫子やクラウゼヴィッツなどの古典的兵書を読まれている方なら、さらに面白く読める本だと思います。
バトル・ドクトリン(戦闘教義)の発展と変遷を中心に据え、この視点から古今東西の主要な戦闘において勝者がいかに戦術的勝利を手に入れたかを非常に判りやすく解説しています。
特にその時代の戦術常識や兵器・用兵の知識が無くとも読みこなせるように、適切なボリュームで補足説明をしているところが心憎いです。
戦略>戦術>戦闘で言えば、戦闘準備と実施にあたっての指揮に関する有効な所見が多く散りばめられており、日々のビジネスシーンにおいて、現場のリーダーがいかにチームを育て、率いて成果を出すかの参考として役立つことでしょう。
あえて難点をあげれば、近代以降は軍事技術と兵科の連携が複雑になるためか、広く浅く傾向がより強く出ていて、少々物足りなさを感じる点でしょうか。
なお、主題を明確にするためか直接戦闘の解決に関する記述に偏重して論じられていますので、個々の歴史上の戦闘の評価をこの本だけで決めつけてしまうような読み方はお薦め出来ません。
著者の言葉そのままで無く、また一部に過ぎませんが、事例と共に次のようなことが語られています。
平時から得意技を磨き、その得意技を活かす方法論を確立しておくこと。戦時にはそのような余裕は無いこと。
成功体験に縛られず、保守派の批難を恐れず、パイオニアにならずとも進取し目的達成のために環境の変化に合わせ方法論を変えて行くこと。
システムだけでは目的は達成出来ないこと、リーダーの意思と資質、チームの錬度と規律がシステムを活かす条件であること。
一緒に仕事をする後輩達にも是非読ませたいと思った一冊でした。
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戦争学 (文春新書 19) 新書 – 1998/12/16
松村 劭
(著)
- 本の長さ222ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日1998/12/16
- ISBN-104166600192
- ISBN-13978-4166600199
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (1998/12/16)
- 発売日 : 1998/12/16
- 言語 : 日本語
- 新書 : 222ページ
- ISBN-10 : 4166600192
- ISBN-13 : 978-4166600199
- Amazon 売れ筋ランキング: - 429,981位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2007年7月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2022年11月1日に日本でレビュー済み
★3.2/2022年127冊目/10月8冊目/『戦争学』(文春新書/文藝春秋)/松村 劭/P.222/1998年/690円+税 #読書 #読書2022 #読了 #読了2022
過去の戦闘を検討して書かれた本格的戦略戦術教本。「学」とあるように内容はノウハウ寄りで、そこから得られる教養の側面は薄い。漫画ワンピースに出てくる海賊の元ネタもたくさん出てきて勉強になった。また、企業経営者はよく過去の戦争から学ぶと聞くが、フラー少佐『機甲戦ー作戦原則第三部の解説ー』は今の軍隊ないし企業経営にも参考になる原則が多い。明確な目標を立てる、一人の指揮官に指揮を委ねる、目的・目標が明快、確固たる戦闘教義(企業理念)を使う、など。その他、自分の判断に自信があり、実行力があることも重要だ。
過去の戦闘を検討して書かれた本格的戦略戦術教本。「学」とあるように内容はノウハウ寄りで、そこから得られる教養の側面は薄い。漫画ワンピースに出てくる海賊の元ネタもたくさん出てきて勉強になった。また、企業経営者はよく過去の戦争から学ぶと聞くが、フラー少佐『機甲戦ー作戦原則第三部の解説ー』は今の軍隊ないし企業経営にも参考になる原則が多い。明確な目標を立てる、一人の指揮官に指揮を委ねる、目的・目標が明快、確固たる戦闘教義(企業理念)を使う、など。その他、自分の判断に自信があり、実行力があることも重要だ。
2003年7月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
戦争の歴史を振り返りながら、戦術、戦略等を解説してあり、理解しやすい。ビジネスにも参考にはなるのだろうが、戦争はWin-loseであり、Win Winというケースはありえないので、そこは差し引いて捉える必要があると思う。日本の戦争の例があまりでていないのは意識してなのだろうか?
2006年8月24日に日本でレビュー済み
企業経営・戦略策定・事業開発に携わる人に推薦します。
戦争にフォーカスしながらも、結果として不確定な状況の中で素早く的確に判断し、果断に部下を成果へ駆り立てる、幅広い原則を提示する結果となっています。
ビジネスの実務家に多くの示唆を与える本であると思います。
戦争マニアだけに独占させておくには、あまりに惜しい本です。
戦争にフォーカスしながらも、結果として不確定な状況の中で素早く的確に判断し、果断に部下を成果へ駆り立てる、幅広い原則を提示する結果となっています。
ビジネスの実務家に多くの示唆を与える本であると思います。
戦争マニアだけに独占させておくには、あまりに惜しい本です。
2004年4月30日に日本でレビュー済み
●護身術にも通じますが、「相手の暴力」に対して「無抵抗」で対処するのは根本的に「甘い」と思います。医療でも完全な治療法がない場合、「予防」こそが最大の危機回避(=自衛)になります。●平和(=秩序)を維持するためには戦争(=無秩序)の歴史(=戦史=過去の事例)を知り、敗北から学び、教訓を引き出し、現在に加工・応用していく。常時変化する現実世界においては、柔軟に方針(戦略)を変え、対応(=戦術)を変える。●有史以来2600年に渡る人類の足跡を学ぶ上で、戦争は最高の教材です。義務教育でこの分野が軽視されているのはどこかおかしい、と思うのは私だけではありますまい。●「地政学」と合わせて、この「戦争学」で現実を直視できる人が増えれば喜ばしい限りであります。
2013年9月28日に日本でレビュー済み
新書版にふさわしく先述の歴史を古代から辿るのに格好の本だと思う。ただ百科事典風記述というのだろうか、取り上げるすべてを均等にまんべんなく記述しているため、一冊の本全体としてのメリハリあるいはリズム感に乏しく、小さな本なのに読み通すのに少し苦労した。戦術について以前から関心がありいろいろな本を読んできたが、たいてい歴史家や文化研究者の著作だったため、いわゆる軍人さんの書いた本は少し趣が違ったような気がする。
内容的にもこれまで単に長槍重装歩兵の突進力に頼っていたと思い込んでいたアレクサンダーの戦術が、近世のグスタフ・アドルフに先立つ複数の兵科の緊密な連携によるものであったことは新知見だったし、ベリサリウスとビザンツ帝国軍の戦術にかなりのページが割いてあるところも貴重だど思う。陸軍戦術のみならず海軍戦術にも目が向けられている。また戦術の変化が単に部隊の運用法や軍事技術の変化のような外的要因に先立って、先述の発想法ともいうべき「戦闘教義」の転換に左右されているという指摘も重要である(もちろんこうした転換の背後にはある特定の社会的・歴史的要因があり、単に一人の軍事的天才の創造力のみを強調してはならないが)。
ただ気になったのは万遍なく要領よく戦術史が紹介される一方、近代的先述の曙ともいうべき中世末期からイタリア戦争にかけての欧州の戦術の変遷史が、実にあっさりとスルーされしまっているところだ(もちろんスペインのテルシオやグスタフ・アドルフの三兵戦術につき一通りの説明はあるが)。その点読者として少し不完全燃焼感も残った。
内容的にもこれまで単に長槍重装歩兵の突進力に頼っていたと思い込んでいたアレクサンダーの戦術が、近世のグスタフ・アドルフに先立つ複数の兵科の緊密な連携によるものであったことは新知見だったし、ベリサリウスとビザンツ帝国軍の戦術にかなりのページが割いてあるところも貴重だど思う。陸軍戦術のみならず海軍戦術にも目が向けられている。また戦術の変化が単に部隊の運用法や軍事技術の変化のような外的要因に先立って、先述の発想法ともいうべき「戦闘教義」の転換に左右されているという指摘も重要である(もちろんこうした転換の背後にはある特定の社会的・歴史的要因があり、単に一人の軍事的天才の創造力のみを強調してはならないが)。
ただ気になったのは万遍なく要領よく戦術史が紹介される一方、近代的先述の曙ともいうべき中世末期からイタリア戦争にかけての欧州の戦術の変遷史が、実にあっさりとスルーされしまっているところだ(もちろんスペインのテルシオやグスタフ・アドルフの三兵戦術につき一通りの説明はあるが)。その点読者として少し不完全燃焼感も残った。
2012年10月9日に日本でレビュー済み
巷では“戦略”“戦術”は聞きますが、“戦闘教義”なる言葉を聞くことはあまりないでしょう。
本書はその言葉を知るだけでも、十分な価値があります。
一般には“戦略”の下位に“戦術”があるように取り扱われていますが
“戦略”“戦術”“戦闘教義”それぞれがその時代において優位な軍隊が勝利してきた事象を
解説しています。
著者も述べているように、戦術が中心になっているので
その分、軍事に興味のない人には読みにくい(興味を引かない)ところはあります。
本書の表層(具体的な戦史の解説)だけでなく
組織論として読んでみれば
“戦略”“戦術”だけの二元論だけで論じられる時事問題や組織論が
いかに空虚なものであるか気付くきっかけになるでしょう。
本書はその言葉を知るだけでも、十分な価値があります。
一般には“戦略”の下位に“戦術”があるように取り扱われていますが
“戦略”“戦術”“戦闘教義”それぞれがその時代において優位な軍隊が勝利してきた事象を
解説しています。
著者も述べているように、戦術が中心になっているので
その分、軍事に興味のない人には読みにくい(興味を引かない)ところはあります。
本書の表層(具体的な戦史の解説)だけでなく
組織論として読んでみれば
“戦略”“戦術”だけの二元論だけで論じられる時事問題や組織論が
いかに空虚なものであるか気付くきっかけになるでしょう。
2001年1月4日に日本でレビュー済み
戦争を肯定するつもりはないが、世界で紛争の解決の方法として、減る気配はない。また、人間の集団の戦いとして考えた場合そこでの現象には比喩的に学べることも多い。例えば、ビジネスで戦略、作戦、決断、チーム管理、リーダシップなどが大事であることに異論を唱える人は少ないと思われるが、これらの要素が戦争においても決定的に重要な要素となる。元陸上自衛隊で作戦立案にあたった著者が、アレキサンダー大王から現在の戦争までの戦術論を『戦闘教義』という概念で整理する。驚くべきことはこの長い人間の歴史の中で、兵器の発達があるのにも係わらず、革新的な協議の発展は限られており、成功したリーダーは過去の教義を性格に理解し、戦うべき戦争のシステムとしての性格を理解していることである!。旧日本軍も含め多くのリーダーはこれら原則に戻ることなく、負けるべくして負けていることである。ビジネスに通ずることが多いことに驚かされる。