著者は、リクルートに入社しリクルート問題に関わり、その後、企業危機コンサルタントとして独立した田中辰巳さん。さまざまな企業危機との対峙した経験から、現実的で緊迫感のある内容だ。
冒頭、田中さんは、日本人が平和に慣れすぎており、「企業の人々の心には、どこか油断があるように思えてならない」(18ページ)と語る。その結果、面倒な仕事を反社会勢力に依頼してしまうことになるが、「『正義のアウトロー』などいないと知るべき」(19ページ)と警鐘を鳴らす。
そして、意外なことだが、「渉外担当には、およそ体育会とはかけ離れた印象の人物こそ適任」(21ページ)という。「言語が不明確で、“のれんに腕押し”のような、それでいて結構撤密な人」。「そんな人物を闇社会の住民はもっとも苦手としている」からだ。
田中さんは、「『危機だ、リスクだ』と騒ぐ前に、『何の危機か』を正確に把握しておかないと、対応を誤ってしまう」(54ページ)と指摘する。守るべきものを間違えた結果、ミドリ十字は姿を消し、ジョンソン&ジョンソンは存続し続けている。
リスク管理の第一歩は、守るべきものを棚卸することである。私はシステム開発に携わっている立場上、設計書などの機密情報や、個人情報を毎年棚卸している。いままで漏洩したことはないが、こうして管理しておくことで万が一の時の訓練ができる。
田中さんは「危機管理はマニュアルになじみません」(91ページ)という。マニュアルは作業を標準化したものであるから、イレギュラーケースを扱う機器管理には馴染まないのだ。それより「部下の育成や危機意識の高揚を図るために自前で取り組むことをお勧めしたい」と低減する。
また、危機に際しては「共通の敵」を作ることで組織を結束できると説く。
怪文書に対しては、句読点の位置を変えるなどの「ホクロ作戦」をとり、流通ルートを特定する。犯人には炙り出した結果を伝えるだけで十分という。
田中さんは、「起きることを前提とした予防」(115ページ)が大切と説く。しかし、多くの経営者は、起こさない努力をすることに注力してしまうという。
また、「危機管理が難しいのは、限られた情報の中で、早い判断を求められ、やり直しがきかないから」(122ページ)と指摘する。だから、その時点でベターな選択をとるしかなく、マスコミのコメンテーターなどがベストとされる「タラ・レバ」を突きつけるのは酷だという。
田中さんが言うように、危機管理にマニュアルは無い。だとすると、日々のニュースに目を通し、自分が勤めている会社のについて、常に客観的に分析できる姿勢でいることが大切だと思った。
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企業危機管理 実戦論 (文春新書 43) 新書 – 1999/5/20
田中 辰巳
(著)
総会屋、企業ストーカーにあなたの会社は狙われている。闇社会からの攻撃をブロックするための企業危機管理マニュアル、遂に誕生!
- 本の長さ222ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日1999/5/20
- ISBN-104166600435
- ISBN-13978-4166600434
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (1999/5/20)
- 発売日 : 1999/5/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 222ページ
- ISBN-10 : 4166600435
- ISBN-13 : 978-4166600434
- Amazon 売れ筋ランキング: - 586,224位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 939位経営管理
- - 1,161位文春新書
- - 2,378位マネジメント・人材管理
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2006年8月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
企業を含めて危機管理はとても重要な事にも関わらず
重要視されていないと思います。
危機に対応するには教育も必要であり、教育もレベルに
あわせて必要であると言う著者の説明はもっともな事です。
ローマ帝国が傭兵に警護を行わせて滅んだと言うのは
企業が危機管理を外部委託をした場合の末路を暗示して
いると感じた次第です。
マニュアルに出来ない危機管理には基本になる考え方が
一番重要と感じる書籍です。
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2005年10月16日に日本でレビュー済み
危機は突然起こるし、正解と呼べる善後策が常に用意されているわけではない。
その助けにと思って本書を手にしたが、事例を経験で学びながらケーススタディをひとつひとつ養っていくしかないという。印象的なのは「危機管理はマニュアル化できない」という言葉である。目の前にある事例を、ひとつひとつ対処することが最も近道なのだ。
仕事に王道なし、を改めて教えられた本だった。
その助けにと思って本書を手にしたが、事例を経験で学びながらケーススタディをひとつひとつ養っていくしかないという。印象的なのは「危機管理はマニュアル化できない」という言葉である。目の前にある事例を、ひとつひとつ対処することが最も近道なのだ。
仕事に王道なし、を改めて教えられた本だった。
2002年8月14日に日本でレビュー済み
あなたの会社の広報担当部署は「攻める広報」か、「守る広報」か。そう聞かれても、ピンとこない人が多いだろう。本来、企業の危機管理を担う部署は、そんなに目立たないものだ。しかし、大企業の広報トップを務めた筆者は、「広報」「総務」が企業の生命線の一つを握っていることをこの本で明示している。
筆者は「危機管理にマニュアルなし」と言い切る。しかし、記載された豊富な実例や考え方は、きっとマニュアル以上に役に立つと思う。
三菱自動車、雪印、日本ハム…。企業の不祥事が連日の新聞、テレビをにぎわせている。「明日は我が身」と考える企業実務を担う皆さんに、ぜひお勧めしたい。
筆者は「危機管理にマニュアルなし」と言い切る。しかし、記載された豊富な実例や考え方は、きっとマニュアル以上に役に立つと思う。
三菱自動車、雪印、日本ハム…。企業の不祥事が連日の新聞、テレビをにぎわせている。「明日は我が身」と考える企業実務を担う皆さんに、ぜひお勧めしたい。
2002年5月24日に日本でレビュー済み
企業危機管理の実務家が書き下ろした入門書としては最適な良書。
使えない入門書が多い中で、比較的まともに纏まっている。
企業実務家で危機管理全般について知りたい方にはまず読んで貰いたいと思います。
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企業実務家で危機管理全般について知りたい方にはまず読んで貰いたいと思います。
2014年10月25日に日本でレビュー済み
企業広報とは何をしているところか、企業危機管理の対応のしかたの断片を垣間見ることができる本。
著者が本文で触れている通り企業危機管理にはマニュアルは役に立ちません。
この本は「マニュアル」ではなく、著者が実際に直面したトラブルの処理事例集だと思います。
著者が本文で触れている通り企業危機管理にはマニュアルは役に立ちません。
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