高校生のとき、重い病を患った同級生の自殺が、私のナイーブな生命観を根本的に揺るがした。そのときの底なしの不安感、大人や同級生たちの対応への説明できない嫌な感じを、私は見極めることができなかった。怖い、避けたいと思いつつ、私はそれを機会に教職から看護職志望に進路変更した。自分でそれを見つけないかぎり、私は安心して生き続けることができないような、そんな気がしたのである。
助産師として「生命誕生と死」に直面し、私はまたしても自らの未熟な生命観に挫折感を覚えたが、その自覚すら、患者や母親として体験したことに比べれば未熟なものだった。
現在住んでいる米国で、私は憑かれるように「生誕と死」に関する情報を読みあさった。クローン、遺伝子診断、生殖補助医療、臓器移植……。詳細は書かないが、それら生命科学の恩恵を受ける可能性がある立場として、賛成なのか反対なのか、利用する前に自分の立場を知っておくべきだと感じたのである。
しかし、これらの問題の難しさは、知れば知るほど、真摯になればなるほど、「賛成」とも「反対」ともいえなくなるところである。私はまたしても高校生のときの「見極めることのできないもどかしさ」を感じた。
「いのち-生命科学に言葉はあるか」は、筆者の最相葉月と12人の各分野の専門家との対話である。本書の優れた点は、哲学者、生命科学者、宗教学者、発生学者、医師、遺伝性疾患の発症リスクを持つ歴史学者など、異なる立場の専門家から“専門家という「立場」を離れた「人」としての言葉”を引き出そうとしたところにある。この本には、私が見極められなかった言葉がたくさん詰まっていて、「あぁ、私はこう感じていたのだ」と納得することができた。
迷うことの大切さを知るためにも、大人だけでなく、「いのち」を見極められずにいる高校生たちにぜひ読んで欲しい本である。
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いのち 生命科学に言葉はあるか (文春新書) 新書 – 2005/10/20
最相 葉月
(著)
脳死、クローン、ES細胞。進化する科学技術は、人類をどこへ導くのか? 医学、哲学、宗教学など斯界の第一人者は何を語ったか
- ISBN-104166604740
- ISBN-13978-4166604746
- 出版社文藝春秋
- 発売日2005/10/20
- 言語日本語
- 本の長さ294ページ
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2005/10/20)
- 発売日 : 2005/10/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 294ページ
- ISBN-10 : 4166604740
- ISBN-13 : 978-4166604746
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,255,307位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1963年、東京生まれの神戸育ち。関西学院大学法学部卒。科学技術と人間の関係性、スポーツ、近年は精神医療、カウンセリングをテーマに取材。
97年『絶対音感』で小学館ノンフィクション大賞。2007年『星新一 一〇〇一話をつくった人』で大佛次郎賞、講談社ノンフィクション賞、日本SF大賞、08年同書で日本推理作家協会賞、星雲賞。
ほかのノンフィクションに『青いバラ』『セラピスト』『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』『れるられる』『証し 日本のキリスト者』『中井久夫 人と仕事』など、エッセイ集に『なんといふ空』『最相葉月 仕事の手帳』『辛口サイショーの人生案内』『辛口サイショーの人生案内DX』『母の最終講義』、児童書に『調べてみよう、書いてみよう』、共著に『心のケア 阪神・淡路大震災から東北へ』『胎児のはなし』など。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2006年7月25日に日本でレビュー済み
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終章で著者の最早葉月さん自身も認めているように、かなり公平性を欠く視点から書かれた本だと思います。各分野、11人との対談を載せていますが、このうち、ああそうだなと思ったのは第8章、ノンフィクション作家の後藤正治さん。この章以外は、読んでいて虫酸が走る記述が多かったです。病に苦しむ患者の願いを無視して、好き勝手なことを言う知識人の何と多いことか。まぁ私自身、当事者として公平性を欠くので、レビューを書く資格はないのかも知れませんが・・・。再生医療や不妊治療、臓器移植に望みを託している人は読んでみて下さい。誰が敵で誰が味方なのか分かります。
2007年2月20日に日本でレビュー済み
97年 クローン羊 ドリーが誕生し 世の中の記事に 「ついに クロ−ン人間誕生か?」という記事が出た。それから、 ぱったり クローンの話題が消えたように感じる。
私は今回 久しぶりに クローンなどの生命倫理についての著書を読んだ。 この「いのち」でもかかれているが やはり 生命倫理についての話題は97年を ピークに 落ちているようだ。 著書を読みはじめて 近頃 ネコのクローンが誕生していたということを 知ったが、これも生命倫理について議論されなくなったため 大きく取り上げられなかったのではないかと思いました。
最相葉月さんは この頃 生命倫理について 専門的に取組んでいるようです。やはり忘れてはいけない問題ですので どんどん このような形で 書物にして欲しいと読んでいて感じた。
私は今回 久しぶりに クローンなどの生命倫理についての著書を読んだ。 この「いのち」でもかかれているが やはり 生命倫理についての話題は97年を ピークに 落ちているようだ。 著書を読みはじめて 近頃 ネコのクローンが誕生していたということを 知ったが、これも生命倫理について議論されなくなったため 大きく取り上げられなかったのではないかと思いました。
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