2015年1月7日に起きた、イスラム過激派による「シャルリ・エ
ブド」への襲撃事件を受け、1月11日にパリで行われた抗議デモ
に対する、緻密な異議申し立てです。
その抗議デモにおいては、冒涜の権利を含めた表現の自由が主張
されていますが、欠落していたのが平等であるとされます。
その背景を、フランスの各県別の様々なチャート(宗教実践、
家族構造、平等志向、EU関係の国民投票、デモ参加者、学校
問題、失業率、各党派別の得票率など)を駆使して浮かび上
がらせて行きます。
中でも驚くべきは、保守や国民戦線への支持が平等志向の強い
地域であり、社会党や左翼への支持が不平等志向の強い地域で
あるという、ある種のねじれを感じさせるところでした。
フランスは英米日と比べ、中間層が厚く、収入格差も小さく、
出生率も回復していて、上手く行っていると思っていました。
逆に若者の失業者も多く、中間層への上昇を諦め、より下層の
スケープゴートを探すような事態になっているようです。
宗教や理念の巨大な空白が、EUを求めていることが見えて来ま
す。
歴史的にもアラブ恐怖症はあっても、イスラム恐怖症には実体
がなく、同化が上手く行ってきたこと、逆にシャルリ支持派は
多文化主義の名の下に同化を阻むことが、説得力を持って示さ
れます。
著者は最後に、悲観的な行く末と楽観的な行く末を両方提示し
ています。
このうちの楽観的な行く末における、イスラム教における平等
志向が、弱まりつつあるフランスのそれを補強するという視点
は、実に新鮮でした。
この日本語版には、「日本の読者へ」が巻頭と巻末にあります。
巻頭における注目点は、日本のリスクとして挙げられた以下の
記述です。
「従来の宗教的信念と社会経済的同質性の崩壊によってぐらつ
く日本は、世界の果てよりも少し彼方に、あるいは少しでも
「世界の外」の方に、不安を鎮める妙薬を探そうとしているの
ではないでしょうか。」
実に興味深いコメントです。
巻末は、2015年11月13日にパリで起きたISによるテロ事件を受
けて書かれています。
これが著者による、この事件への最初の文章になるようです。
それは、この本の原版がフランスに受け入れられなかったことの
結果であり、残念ながら、イスラム教の平等志向の採用が道遠い
ことを示しています。
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シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧 ((文春新書)) 新書 – 2016/1/20
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『シャルリとは誰か?』で私はフランス社会の危機を分析しましたが、11月13日の出来事〔パリISテロ〕は、私の分析の正しさを悲劇的な形で証明し、結論部の悲観的な将来予測も悲しいことに正しさが立証されてしまいました――「日本の読者へ」でトッド氏はこう述べています。
本書が扱うのは昨年一月にパリで起きた『シャルリ・エブド』襲撃事件自体ではなく、事件後に行なわれた大規模デモの方です。「表現の自由」を掲げた「私はシャルリ」デモは、実は自己欺瞞的で無意識に排外主義的であることを統計や地図を駆使して証明しています。
ここで明らかにされるのはフランス社会の危機。西欧先進国にも共通する危機で、欧州が内側から崩壊しつつあることに警鐘を鳴らしています。ユーロ、自由貿易、緊縮財政による格差拡大と排外主義の結びつきは、ベストセラー『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』にも通じるテーマで、前著の議論がより精緻に展開されています。
本書が扱うのは昨年一月にパリで起きた『シャルリ・エブド』襲撃事件自体ではなく、事件後に行なわれた大規模デモの方です。「表現の自由」を掲げた「私はシャルリ」デモは、実は自己欺瞞的で無意識に排外主義的であることを統計や地図を駆使して証明しています。
ここで明らかにされるのはフランス社会の危機。西欧先進国にも共通する危機で、欧州が内側から崩壊しつつあることに警鐘を鳴らしています。ユーロ、自由貿易、緊縮財政による格差拡大と排外主義の結びつきは、ベストセラー『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』にも通じるテーマで、前著の議論がより精緻に展開されています。
- 本の長さ320ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2016/1/20
- 寸法11 x 1.6 x 17.5 cm
- ISBN-104166610546
- ISBN-13978-4166610549
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商品の説明
出版社からのコメント
「表現の自由」を掲げた「私はシャルリ」デモが実は偽善的で排外主義的であったことを明らかにする本書が問題にしているのは、一見、ソフトな言辞を弄しながら、自由貿易、緊縮財政、格差拡大を容認し、自分より下層の人々を無視して社会を支配している、高学歴で自称「反体制派」である中産階級の自己欺瞞です。「この本を書いたのは、自分の属する社会の現状に苛立ったひとりのフランス人です」という激しい義憤に駆られ、仏国内のメディアをすべて敵に回わす危険を顧みずに書かれた本書は、高度な学問的著作であると同時に著者渾身の歴史的傑作と言える一冊です。〈附〉パリISテロについての特別寄稿
著者について
トッド,エマニュエル
1951年生まれ。フランスの歴史人口学者・家族人類学者
堀 茂樹
1952年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部教授(フランス文学・思想)。翻訳家。フランス文学の名訳者として知られる
1951年生まれ。フランスの歴史人口学者・家族人類学者
堀 茂樹
1952年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部教授(フランス文学・思想)。翻訳家。フランス文学の名訳者として知られる
登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2016/1/20)
- 発売日 : 2016/1/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 320ページ
- ISBN-10 : 4166610546
- ISBN-13 : 978-4166610549
- 寸法 : 11 x 1.6 x 17.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 83,347位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年1月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
『私はシャルリ』(Je suis Charlie)のデモに限ってなぜ突然あれほど大勢の人が参加したのか不思議に思っていた。著者も「マイノリティの信仰を『冒涜する権利』は命をかけて守るというくせに、マイノリティが迫害されていることには無関心」と疑問を示す。
著者は、全国各都市でのデモ参加者数を宗教的実践状況や大統領選挙での投票結果などの地域データと比較しながら、「私はシャルリ」デモを社会学的・家族人類学的に読み解こうとする。
著者の主張の要点は、
(1) 『言論の自由』を死守するためのデモに見えたものが、実は「ユーロ経済の不平等を許容する中産階級」と「20世紀後半にカトリック信仰が希薄化した地理的周縁部の人々」のそれぞれの不安の現れに過ぎない。イスラム系移民は両者の不安のはけ口(スケープゴート)にされた。デモには都市郊外に住むイスラム系移民はもちろん、国民戦線の支持層である労働者階級も含まれていなかった。
(2) 中産階級を不安にさせている原因は、共通通貨ユーロに代表される不平等な経済システムである。ドイツ企業には好都合でもフランスには経済停滞をもたらし、そのしわ寄せは若者と移民に向かう。
(3) 移民の第2・3世代はフランス社会に同化するので、むやみにイスラム教徒を恐れる必要はない。穏健な「ライシテ(世俗主義)」で折り合いをつければ良い。
(1)について、
欧米諸国を「自由尊重-権威主義」&「平等志向-不平等容認」という2軸で分類すると、英米は不平等を黙認するリベラル、独は不平等で権威主義的、露は平等で権威主義的だという。肝心のフランスは18世紀半ばに脱カソリックした中央部(パリ盆地~ボルドー及び地中海沿岸)は「自由・平等」的であるが、カソリック信仰が残った地理的周縁部はその逆の傾向(両者の折り合いをつけるための仕組みが「ライシテ(世俗主義)」)。
しかし、20世紀後半に周縁部でも信仰が薄れ、そのゾンビ・カトリシズムの不安感が今回のデモ参加に反映しているという。
(2)について、
同著者の「「ドイツ帝国」が世界を破滅させる」(文春新書、2015.5)に詳しい。「自由・平等」的だったはずの都市部中産階級もユーロ経済のなかで不平等を許容せざるをえなくなった。平等主義の民衆は、移民に対して、自国文化への同化(ライシテ)を望むが、エリート層による多文化主義は移民の同化を遅らせるという問題もある。
なお、学歴を背景とした中産階級にのしかかられた労働者階級は、自分たちより更に下に位置する移民を攻撃し、国民戦線FNの支持層となっている。
(3)について、
イスラム移民の2世・3世は学校でフランス文化に絶えず触れており、彼らの約半数は他のグループと結婚しているので、仏国内に「閉鎖的なイスラム社会」ができる心配などする必要はないという。他方、北東ヨーロッパでは異民族間の結婚率は低いらしい。ここでもヨーロッパがまとまろうとすることに無理があると主張する。
本書は国内政治批判、EU・ユーロ批判、カソリック批判が満載だったので、フランス本国でかなり物議を醸したそうだ。読者は仏社会党がどうかまでは承知していないが、著者はわざわざ他人を怒らせようとしているかのように挑発的である。「冒涜する権利」を守ることは著者にとっても重要なのだ。「当たり前とは違う見方」として参考になる。
著者は、全国各都市でのデモ参加者数を宗教的実践状況や大統領選挙での投票結果などの地域データと比較しながら、「私はシャルリ」デモを社会学的・家族人類学的に読み解こうとする。
著者の主張の要点は、
(1) 『言論の自由』を死守するためのデモに見えたものが、実は「ユーロ経済の不平等を許容する中産階級」と「20世紀後半にカトリック信仰が希薄化した地理的周縁部の人々」のそれぞれの不安の現れに過ぎない。イスラム系移民は両者の不安のはけ口(スケープゴート)にされた。デモには都市郊外に住むイスラム系移民はもちろん、国民戦線の支持層である労働者階級も含まれていなかった。
(2) 中産階級を不安にさせている原因は、共通通貨ユーロに代表される不平等な経済システムである。ドイツ企業には好都合でもフランスには経済停滞をもたらし、そのしわ寄せは若者と移民に向かう。
(3) 移民の第2・3世代はフランス社会に同化するので、むやみにイスラム教徒を恐れる必要はない。穏健な「ライシテ(世俗主義)」で折り合いをつければ良い。
(1)について、
欧米諸国を「自由尊重-権威主義」&「平等志向-不平等容認」という2軸で分類すると、英米は不平等を黙認するリベラル、独は不平等で権威主義的、露は平等で権威主義的だという。肝心のフランスは18世紀半ばに脱カソリックした中央部(パリ盆地~ボルドー及び地中海沿岸)は「自由・平等」的であるが、カソリック信仰が残った地理的周縁部はその逆の傾向(両者の折り合いをつけるための仕組みが「ライシテ(世俗主義)」)。
しかし、20世紀後半に周縁部でも信仰が薄れ、そのゾンビ・カトリシズムの不安感が今回のデモ参加に反映しているという。
(2)について、
同著者の「「ドイツ帝国」が世界を破滅させる」(文春新書、2015.5)に詳しい。「自由・平等」的だったはずの都市部中産階級もユーロ経済のなかで不平等を許容せざるをえなくなった。平等主義の民衆は、移民に対して、自国文化への同化(ライシテ)を望むが、エリート層による多文化主義は移民の同化を遅らせるという問題もある。
なお、学歴を背景とした中産階級にのしかかられた労働者階級は、自分たちより更に下に位置する移民を攻撃し、国民戦線FNの支持層となっている。
(3)について、
イスラム移民の2世・3世は学校でフランス文化に絶えず触れており、彼らの約半数は他のグループと結婚しているので、仏国内に「閉鎖的なイスラム社会」ができる心配などする必要はないという。他方、北東ヨーロッパでは異民族間の結婚率は低いらしい。ここでもヨーロッパがまとまろうとすることに無理があると主張する。
本書は国内政治批判、EU・ユーロ批判、カソリック批判が満載だったので、フランス本国でかなり物議を醸したそうだ。読者は仏社会党がどうかまでは承知していないが、著者はわざわざ他人を怒らせようとしているかのように挑発的である。「冒涜する権利」を守ることは著者にとっても重要なのだ。「当たり前とは違う見方」として参考になる。
2023年11月18日に日本でレビュー済み
正確かつ内容が染み込んでいくような自然な邦訳が難しいことは百も承知だが、日本語的センスがない。正確さを保ちながら同じことをもっとよい日本語で表現できるだろうよ、と読みながら何度も思った。エマニュエルトッドが可哀想。読むのが苦痛になる邦訳。
2016年2月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
苦労して読みました。
まず著者については、wikiに書かれていることしか知りませんでした。
作品中で、自分はユダヤ系であり元共産党員、それとなくですが祖父がポール・ニザン、
つまりサンジェルマン・アン・レイ育ちのエリート知的階級出身であることを述べています。
そういう立場ですから、フランスに広がるイスラム恐怖と並行して反ユダヤの風を強く感じ危機意識も鋭敏なようです。
以下、素人の誤解と偏見からの感想です。
記述の中で興味深い内容多々あります。
直系家族主義と彼が呼ぶ地域は、全国学力テストで際立って成績がよろしい。
元来カトリック勢力の強い地域でしたが、今日目立つこととしてゾンビ・カトリシズム、
笑える名称ですが著者はそう呼んでいます、その地域ではそのカトリックの燃えカスのような伝統、博愛主義が強い一方で、
父権的権威が強く、組織に忠誠心が強く規律正しく従順、そのためか子供の成績は良く、資本家から従業員として使いやすい、
そういう地域が地方に分布しています。
腐っても何とかで、死んだと思っていたゾンビが彼らの地域社会の支えとなっているというわけです。
彼らは、心理的には差別主義、とうよりも不平等主義、社会には不平等が不可避である、という立場であります。
対照的にパリ市及びその周辺、南仏のある地域は平等意識が強い。大革命のときの原動力であった、共和制というものを重んじる地域、
が、子供の学力は低く、今日の新自由主義経済、ユーロ通貨による社会的疲弊を最も被っている、という地域なのだそうです。
さてゾンビ・カトリシズム、直系家族の地域が権威的であり、それに抗する少数者、イスラムなのかもしれません、
に寛容ではない、ということはわかります。
後者は平等主義者でありますが、イスラムを恐怖し忌避します。
それは彼らが疲弊したパリの知的階級であれば、すがりつくゾンビ・カトリシズムが最も希薄であり、
世俗主義laiciteであることが彼らの大義名分でもあります。
そのため日々の報われない生活とともに不安定となり、世俗の権力にすがる、laiciteに抗するイスラムを排除、となる。
また平等主義の社会的下位グループである労働者階級、彼らは左翼ではなく極右にそのよりどころを求めるのです。
彼らは、下層ではあっても最下層にはなりたくない、イスラム、というよりも外国人、移民に最下層の席を指定したいわけです。
極右、国民戦線は100万人の大デモには参加しませんでした。
オランド政権から参加を拒否されたのです。
彼らにとって、中流のインテリと呼ばれる階層には憎悪があるのみであり、同じ行動をとる義理などないのです。
また彼らの強烈な平等意識は、権威的平等主義であるロシアに友好的であるという意外な面を持っています。
あの大デモは、フランスの大義、それは少数者のよりどころを侮辱することを妨げてはならない、
というある種のイデオロギー化、変質したものへの忠誠の誓い、狂信なのかもしれません。
それに少しでも異を唱えるもの、迅速に同化できないものに対して憎悪で答える、
デモ参加者らをそのような集団と言ってしまったトッドは、フランス「市民」社会からの礫を投げられたわけです。
特に第3章:逆境に置かれた平等、第4章:極右のフランス人
は、重要なことが記述されており2回読んでみましたが、まだ理解しづらいところがあります。
特に現政権の社会党、オランド大統領の微妙な立場に関する説明は、十分には理解できませんでした。
そのあたりを更にわかりやすく説明していただきたかった、
しかし複雑な国、フランスの一つの側面を冷徹に抉り出せている、見事です。
まず著者については、wikiに書かれていることしか知りませんでした。
作品中で、自分はユダヤ系であり元共産党員、それとなくですが祖父がポール・ニザン、
つまりサンジェルマン・アン・レイ育ちのエリート知的階級出身であることを述べています。
そういう立場ですから、フランスに広がるイスラム恐怖と並行して反ユダヤの風を強く感じ危機意識も鋭敏なようです。
以下、素人の誤解と偏見からの感想です。
記述の中で興味深い内容多々あります。
直系家族主義と彼が呼ぶ地域は、全国学力テストで際立って成績がよろしい。
元来カトリック勢力の強い地域でしたが、今日目立つこととしてゾンビ・カトリシズム、
笑える名称ですが著者はそう呼んでいます、その地域ではそのカトリックの燃えカスのような伝統、博愛主義が強い一方で、
父権的権威が強く、組織に忠誠心が強く規律正しく従順、そのためか子供の成績は良く、資本家から従業員として使いやすい、
そういう地域が地方に分布しています。
腐っても何とかで、死んだと思っていたゾンビが彼らの地域社会の支えとなっているというわけです。
彼らは、心理的には差別主義、とうよりも不平等主義、社会には不平等が不可避である、という立場であります。
対照的にパリ市及びその周辺、南仏のある地域は平等意識が強い。大革命のときの原動力であった、共和制というものを重んじる地域、
が、子供の学力は低く、今日の新自由主義経済、ユーロ通貨による社会的疲弊を最も被っている、という地域なのだそうです。
さてゾンビ・カトリシズム、直系家族の地域が権威的であり、それに抗する少数者、イスラムなのかもしれません、
に寛容ではない、ということはわかります。
後者は平等主義者でありますが、イスラムを恐怖し忌避します。
それは彼らが疲弊したパリの知的階級であれば、すがりつくゾンビ・カトリシズムが最も希薄であり、
世俗主義laiciteであることが彼らの大義名分でもあります。
そのため日々の報われない生活とともに不安定となり、世俗の権力にすがる、laiciteに抗するイスラムを排除、となる。
また平等主義の社会的下位グループである労働者階級、彼らは左翼ではなく極右にそのよりどころを求めるのです。
彼らは、下層ではあっても最下層にはなりたくない、イスラム、というよりも外国人、移民に最下層の席を指定したいわけです。
極右、国民戦線は100万人の大デモには参加しませんでした。
オランド政権から参加を拒否されたのです。
彼らにとって、中流のインテリと呼ばれる階層には憎悪があるのみであり、同じ行動をとる義理などないのです。
また彼らの強烈な平等意識は、権威的平等主義であるロシアに友好的であるという意外な面を持っています。
あの大デモは、フランスの大義、それは少数者のよりどころを侮辱することを妨げてはならない、
というある種のイデオロギー化、変質したものへの忠誠の誓い、狂信なのかもしれません。
それに少しでも異を唱えるもの、迅速に同化できないものに対して憎悪で答える、
デモ参加者らをそのような集団と言ってしまったトッドは、フランス「市民」社会からの礫を投げられたわけです。
特に第3章:逆境に置かれた平等、第4章:極右のフランス人
は、重要なことが記述されており2回読んでみましたが、まだ理解しづらいところがあります。
特に現政権の社会党、オランド大統領の微妙な立場に関する説明は、十分には理解できませんでした。
そのあたりを更にわかりやすく説明していただきたかった、
しかし複雑な国、フランスの一つの側面を冷徹に抉り出せている、見事です。