16世紀末、朝鮮の役で、薩摩軍に日本に拉致
された数十人の朝鮮の民がいた。
初めて読んだ時はこの拉致の言葉が重くて
人間の所業は全て同じだな…と思った。
その頃に連れて来られた韓国人は李、林、朴、鄭、
陳、金、崔、魯、沈、白、何、朱など。
その中の申という名の老人は日本に連れて来られた
時、日本の役人がこれを"さる"と読むのを嫌って
人偏をつけて、"伸"としたそうな。
この老人に橘南渓が
『すでに貴下にありましては、この日本に渡り
たもうて、何代になり給います。』と聞くと
『すでに5代に相成り申し候』と答え、
さらに、ふるさと朝鮮のことなど思い出される
ことなどありますまい、ときくと、
ーさにあらず、
二百年近くも相成り、しかもこの国の厚恩を
うけてかように暮らして、何の不足もありませんが
ヒトのココロは不思議のものにて候。
故郷のことはうち忘れず…
故郷、忘れじ(ぼうじ)がたし。…と続くのです。
彼らの故郷南原城は交通の要衝という地であったそうで、
ここに日本軍が慶長2年8月1日に宇喜多秀家、小西行長
島津義弘らが攻め入って、逃げ遅れた沈姓以下70人ほどが
島津勢に捕まったそうです。
当時の日本は茶道の隆盛時代で、どうやら陶磁の工人を
連れて帰ってくることも考えていたのではないか…と
司馬さんは書いておられます。
しかし、司馬遼太郎さん独特の揶揄を込めて、
『茶器は特に渡来ものが珍重され、たとえば、
韓人が日常の飯盛茶碗にしている程度のものが
日本に入り、利休などの茶頭の折紙がつくことに
よって、千金の値がつく、南蛮人はちょうど、
ヨーロッパにおける宝石のような扱いをうけて
いる』と書いています。
彼ら韓人は捕えられはしたものの、日本では
秀吉が死に、島津義弘はいち早く博多に帰ったらしく、
想像だが、ボロふねに残されて、九州西岸の島を
伝って日本にやって来たのではないかと司馬遼太郎
さんは言います。
薩摩藩の苗代川には大規模な白磁工場が作られ、
コーヒー茶碗や洋食器を作って、長崎経由で輸出して
この藩は暴利を得、結果的には倒幕のための一財源に
なったそうです。
後、この一族は沈寿官という。現代の沈寿官が韓国に
いって、学生の前で講演をした時、若いヒトのだれもが
36年間の日本の圧制について語った。
『もっともであり、そのとおりであるが、それを言い過ぎる
ことは韓国にとって、どうであろう。
言うことは良くても、それを言い過ぎることは若い韓国
にとって、どうであろう。
言うことは良くても、言い過ぎるとなると、その時の
心情はすでに後ろ向きである。新しい国家は前へ前へ
と進まなければならぬのに、、この心情はどうであろう』
『あなたがたが、36年を言うなら,私は370年を言わねば
ならない』
司馬さんはこの辺の事情を旅をしながら、語っていきます。
調べて調べて語り尽くすこの作家の独特の司馬史観はやはり、
われわれ素人が最も信頼して良い歴史の見方の態度です。
しかし、真実はどこにあるかは誰も分かりません。
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故郷忘じがたく候 (文春文庫 し 1-21) 文庫 – 1976/7/25
司馬 遼太郎
(著)
慶長ノ役の時、薩摩島津軍に朝鮮より拉致された高麗貴族とその子孫がたどる、数奇な運命と望郷の念を詩情豊かにつづった表題作に「斬殺」「胡桃に酒」の二篇を収める
- 本の長さ206ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日1976/7/25
- ISBN-104167105217
- ISBN-13978-4167105211
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (1976/7/25)
- 発売日 : 1976/7/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 206ページ
- ISBN-10 : 4167105217
- ISBN-13 : 978-4167105211
- Amazon 売れ筋ランキング: - 337,852位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1923年大阪市生まれ。大阪外国語学校蒙古語部卒。「ペルシャの幻術師」で講談倶楽部賞、『梟の城』で直木賞を受賞。『竜馬がゆく』『国盗り物語』『坂 の上の雲』『空海の風景』『翔ぶが如く』など構想の雄大さ、自在で明晰な視座による作品を多数発表。この他『街道をゆく』『風塵抄』『この国のかたち』な どの紀行、エッセイも多数。’96年逝去(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 司馬遼太郎と寺社を歩く (ISBN-13: 978-4334747213)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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