司馬作品の中でも、最も長大な射程を持ったもののひとつ。
明治の時代精神の象徴である乃木希典という人間の内実が、
「フェイク」であったことを緻密に論証していく。
その白眉は、明治帝の乃木希典への寵愛は、
若かりし日の教育係であった山岡鉄舟との郎党的関係を、
乃木に投影していたという下りだろう。
この鎌倉武士の郎党的、あるいは古代万葉期の
大王(おおきみ)と兵の近親的な主従関係を憧憬する思想は、
二・二六事件を経て、戦後の三島由紀夫の割腹自殺にまで通底している。
司馬としては、大作『坂の上の雲』の前哨戦であり、
かつ「魔法の森の時代」(『「昭和」という国家』)の思想的源流を
掘り起こすべく選んだ題材であろうが、
司馬のどの著作よりも天皇主義の本質に肉薄している。
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殉死 (文春文庫) 文庫 – 1978/9/25
司馬 遼太郎
(著)
明治帝の崩御に殉じた、日露戦争の輝ける英雄、及木希典。幾多の栄誉を一身にになった彼が、何故死を選んだのか。"軍神"の内面に迫り、その人間像をさぐる問題作
- 本の長さ174ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日1978/9/25
- ISBN-104167105373
- ISBN-13978-4167105372
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (1978/9/25)
- 発売日 : 1978/9/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 174ページ
- ISBN-10 : 4167105373
- ISBN-13 : 978-4167105372
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,951,996位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1923年大阪市生まれ。大阪外国語学校蒙古語部卒。「ペルシャの幻術師」で講談倶楽部賞、『梟の城』で直木賞を受賞。『竜馬がゆく』『国盗り物語』『坂 の上の雲』『空海の風景』『翔ぶが如く』など構想の雄大さ、自在で明晰な視座による作品を多数発表。この他『街道をゆく』『風塵抄』『この国のかたち』な どの紀行、エッセイも多数。’96年逝去(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 司馬遼太郎と寺社を歩く (ISBN-13: 978-4334747213)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
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トップレビュー
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2017年10月25日に日本でレビュー済み
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2022年4月3日に日本でレビュー済み
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乃木神社の資料室で乃木夫妻の写真を観たとき、数時間後に死ぬ予定の人たちが滑稽な構図の写真に収まったということに強い違和感を抱いた。それがきっかけで乃木希典の人生に興味を持ち本書を手にしたのだが、静子夫人はこの写真を撮影した時点では夫と共に自刃するつもりはなかったと知り、構図には意味があったとのだと納得した。
2011年8月19日に日本でレビュー済み
第二部「腹を切ること」が優れている。
特に、きちんと「これは自分の想像だよ」と断って書き進める殉死前15分間の乃木夫妻のやり取りが出色である。もちろん事実そのままではありえないだろうが、「そうでもありえた」と思え、さらには「そうであって欲しい」と思えるところもある。この最後の8ページだけでも読む価値はある。
それに対し、第一部「要塞」はいただけない。愚将・乃木を印象付けることに力を入れすぎるあまり、不合理が多い。
乃木の無能を示すエピソードに、憶測によるものがあまりにも多すぎる。たとえば乃木の昇進は長州閥の力のみによるかのごとくに描かれる。23歳の少佐昇進まではさもあろうが、同年代の長州出身陸軍軍人が乃木一人でもあるまいに、有力者の子弟でもない乃木が、吉田松陰の弟弟子(しかも会ったことなし)という筋目のよさだけでいつまでも引き立てられはすまい。
それでもはっきり憶測と分かる書き方をしているうちは良いが、旅順攻略戦のクライマックスに向けて俄然、小説の度合いが強くなる。大山巌が児玉源太郎に託した指揮権委譲の密書は明らかに創作である。創作は創作と分かるように書かなければいけない。(密書という性格上、存在した可能性を否定できないが、現物のみならず、それに言及した一次資料もない以上、創作である。)その他にも首を傾げたくなるところは多いが、このあたりのことについては多くが語られているので、これ以上は書かない。
乃木の形へのこだわりの描写と内面の痛ましさの分析が見事であるだけに、無理にでも貶めようとする感情的な筆致を抑えていれば、人物像を一層くっきりと浮かび上がらせ、より深い読後感を残すものになったであろうと残念である。
特に、きちんと「これは自分の想像だよ」と断って書き進める殉死前15分間の乃木夫妻のやり取りが出色である。もちろん事実そのままではありえないだろうが、「そうでもありえた」と思え、さらには「そうであって欲しい」と思えるところもある。この最後の8ページだけでも読む価値はある。
それに対し、第一部「要塞」はいただけない。愚将・乃木を印象付けることに力を入れすぎるあまり、不合理が多い。
乃木の無能を示すエピソードに、憶測によるものがあまりにも多すぎる。たとえば乃木の昇進は長州閥の力のみによるかのごとくに描かれる。23歳の少佐昇進まではさもあろうが、同年代の長州出身陸軍軍人が乃木一人でもあるまいに、有力者の子弟でもない乃木が、吉田松陰の弟弟子(しかも会ったことなし)という筋目のよさだけでいつまでも引き立てられはすまい。
それでもはっきり憶測と分かる書き方をしているうちは良いが、旅順攻略戦のクライマックスに向けて俄然、小説の度合いが強くなる。大山巌が児玉源太郎に託した指揮権委譲の密書は明らかに創作である。創作は創作と分かるように書かなければいけない。(密書という性格上、存在した可能性を否定できないが、現物のみならず、それに言及した一次資料もない以上、創作である。)その他にも首を傾げたくなるところは多いが、このあたりのことについては多くが語られているので、これ以上は書かない。
乃木の形へのこだわりの描写と内面の痛ましさの分析が見事であるだけに、無理にでも貶めようとする感情的な筆致を抑えていれば、人物像を一層くっきりと浮かび上がらせ、より深い読後感を残すものになったであろうと残念である。
2018年3月19日に日本でレビュー済み
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とても綺麗な状態の商品が届きました。ありがとうございました。
2021年10月25日に日本でレビュー済み
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司馬ファンなのでかなり多くの作品を読みましたが、他のものと違い、これは文章がドキュメンタリーのようです。
全体に金属的な冷たい雰囲気が漂っています。乃木希典に対する司馬先生の考えが、文体や作品の雰囲気に表れているのか、と、思いました。
前半は、おばさん的な悪口を沈着冷静かつ豊かに表現しています。(私自身もおばさんです)
後半を読み、殉死に至る過程を納得しました。静子夫人の死に対しては、気持ちのやり場がないですが…。
全体に金属的な冷たい雰囲気が漂っています。乃木希典に対する司馬先生の考えが、文体や作品の雰囲気に表れているのか、と、思いました。
前半は、おばさん的な悪口を沈着冷静かつ豊かに表現しています。(私自身もおばさんです)
後半を読み、殉死に至る過程を納得しました。静子夫人の死に対しては、気持ちのやり場がないですが…。
2015年11月16日に日本でレビュー済み
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司馬史観全開で楽しく読めます。
乃木大将には辛辣な本でございます。
乃木大将には辛辣な本でございます。
2019年8月17日に日本でレビュー済み
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この小説が執筆されたのは昭和42年、左翼全盛の時代で旧日本軍に対する批難が激しかった時代だ。
日露戦争で東郷元帥と並んで世界的に名を馳せた乃木希典。
詩人としては優れていたが軍人、教育者としては不適格だったと指摘する司馬遼太郎の筆致は厳しい。
司馬自身、士官として従軍していた経験があるだけに神格化された乃木将軍への怒りは強かったのではないか。
先述の通りこの小説が書かれた昭和40年代は左翼全盛で旧軍批難が社会的にも大きく歓迎された時代。
そう考えると司馬遼太郎の私怨が前面に出ているのを感じこの評価です。
日露戦争で東郷元帥と並んで世界的に名を馳せた乃木希典。
詩人としては優れていたが軍人、教育者としては不適格だったと指摘する司馬遼太郎の筆致は厳しい。
司馬自身、士官として従軍していた経験があるだけに神格化された乃木将軍への怒りは強かったのではないか。
先述の通りこの小説が書かれた昭和40年代は左翼全盛で旧軍批難が社会的にも大きく歓迎された時代。
そう考えると司馬遼太郎の私怨が前面に出ているのを感じこの評価です。
2011年9月17日に日本でレビュー済み
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乃木将軍という人は英雄であるという風に聞いてきたことも多かったので、そういう人なんだと思っていました。
その印象が司馬氏の「坂の上の雲」で全く転換させられたこともあり、さらに乃木将軍のことが知りたくなって手に取りました。
坂の上の雲では、読んでいて気の毒になるくらい戦術的活躍機会に〜たぶんに資質的にも〜恵まれない乃木将軍ですが、この作品ではその生活ぶりなどから軍事的才能以外の人間性が明らかにされます。明治帝に対する滑稽なほどの、でも決して軽侮する気になれない忠誠心、それをすべての基軸とした彼の日常、そしてその結果としての殉死。当時ですらもはや前時代的であったその結末ですが、司馬氏が緻密に考究し明らかにする乃木将軍の日常の心の有り様を前にすれば、現代人の自分たちでも彼の殉死を共感的に理解できるから不思議です。
日本人の、というよりアメリカ人であろうが何人であろうが、「対象に対する畏敬」という人間のもつ不思議な心性について考えさせ、思い出させてくれる歴史上の人物の伝記といってもいいかもしれません。
司馬氏の作品の中でもあまり目立たないものの一つだと思いますが、好著だと思います。
その印象が司馬氏の「坂の上の雲」で全く転換させられたこともあり、さらに乃木将軍のことが知りたくなって手に取りました。
坂の上の雲では、読んでいて気の毒になるくらい戦術的活躍機会に〜たぶんに資質的にも〜恵まれない乃木将軍ですが、この作品ではその生活ぶりなどから軍事的才能以外の人間性が明らかにされます。明治帝に対する滑稽なほどの、でも決して軽侮する気になれない忠誠心、それをすべての基軸とした彼の日常、そしてその結果としての殉死。当時ですらもはや前時代的であったその結末ですが、司馬氏が緻密に考究し明らかにする乃木将軍の日常の心の有り様を前にすれば、現代人の自分たちでも彼の殉死を共感的に理解できるから不思議です。
日本人の、というよりアメリカ人であろうが何人であろうが、「対象に対する畏敬」という人間のもつ不思議な心性について考えさせ、思い出させてくれる歴史上の人物の伝記といってもいいかもしれません。
司馬氏の作品の中でもあまり目立たないものの一つだと思いますが、好著だと思います。