雑誌「文藝春秋」の巻頭随筆を集めたものの第四集。
明治・大正と現代では、同じ国や社会とはいえ様相が異なる。しかし時代を越えて
変らぬものはないかという、不易の、あるいは本質に近いものをさぐりたいと
著者はこの本を書いている。そのような日本人の変らぬ本質を考察しつつも、
なぜ日本が唐突に無謀な戦争にかかわるはめに陥ったかをも追求する。
・・わたしは、二十二歳のとき、凄惨な戦況のなかで敗戦を迎えた。おろかな国に
生まれたものだ、とおもった。昭和初年から十数年、みずからを虎のように思い、
愛国を咆哮し、足もとを掘りくずして亡国の結果をみた。・・
昭和初年から敗戦までの日本の「異胎の時代」の真の原因が「統帥権」にあると
著者が気がついたのは「この国のかたち」を書いたおかげである。
第一巻にも統帥権について言及しているが、この第四巻には統帥権について
四章もあてて歴史的に詳しく検討している。
そのほかこの第四巻で、私にとってとくに為になったのは、
○ 米と松の関連。弥生式の稲作がひろがるにつれて日本は松の多い景色に変った。
松は日本にとって繁栄の象徴であり、江戸吉原は遊女にも階級を設け最高のものを
太夫と言い「松の位」と称した。
○ 江戸時代朝鮮通信使申維翰は日本人に対して「人」という文字を使わなかった。
○ 時宗の徒は自分の名に阿弥陀仏をつけた。世阿弥、観阿弥しかり。
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