戦後16年経った時代を描く長編。映画化、TVドラマ化が繰り返されてきた。
敗戦間近な緊迫した時期に発生した事件の種が、16年の間生き続けて殺人事件を引き起こしてゆく。
男たちの地球規模の葛藤と並行して、父と娘の絆が哀切に描かれてゆく。背景に京都の寺々が配されて情感を高める。
松本清張の脂の乗り切った時代の作品だ。
今現在読むと、通信手段など時代を感じさせる一方、今だからこそ見えてくる部分に気づく。
文中のセリフにある通り、タイトルの球形とは地球であり、荒野と化した地球を意味するのだが、今、東日本大震災と、福島原発事故を経てきた時点で読むと、なんとも新しい手触りを「球形の荒野」に感じる。
今が、まさに球形の荒野じゃないか、の思いが生まれた。
さらに、16年という長い年月の間、憎悪、怒り、疑惑、怨念を抱き続け、16年間を足踏みしてきた男たちの思いを、現在から改めて見ることができる。人の傷は、16年ぽっちでは癒されないということ。
また、国の作った書類によって生身の父と娘が引き裂かれたままに終わる姿を、生々しく感じないわけにいかない。
ストーリーを追う物語を楽しんだ後に、今現在に生きている問題とつき合わせて考えることができる、言い換えれば、生きている作品。
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新装版 球形の荒野 (下) (文春文庫) 文庫 – 2003/7/10
松本 清張
(著)
父はまだ生きている? 社会派ミステリーの傑作を新装版で
終戦工作をめぐって「生」を奪われた外交官。戦後十六年、彼の娘の恋人で真相を追う記者の前に、殺人事件が……。清張推理の代表作
終戦工作をめぐって「生」を奪われた外交官。戦後十六年、彼の娘の恋人で真相を追う記者の前に、殺人事件が……。清張推理の代表作
- 本の長さ334ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2003/7/10
- ISBN-104167106892
- ISBN-13978-4167106898
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2003/7/10)
- 発売日 : 2003/7/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 334ページ
- ISBN-10 : 4167106892
- ISBN-13 : 978-4167106898
- Amazon 売れ筋ランキング: - 917,105位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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(1909-1992)小倉市(現・北九州市小倉北区)生れ。給仕、印刷工など種々の職を経て朝日新聞西部本社に入社。41歳で懸賞小説に応募、入選した『西郷札』が直木賞候補となり、1953(昭和28)年、『或る「小倉日記」伝』で芥川賞受賞。1958年の『点と線』は推理小説界に“社会派”の新風を生む。生涯を通じて旺盛な創作活動を展開し、その守備範囲は古代から現代まで多岐に亘った。
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