〇 生前マスメディアに登場することが多かった開高さんは、純粋な文学者ではないように思われて読む気にならなかったのだが、山崎正和さんによる表題作の書評に出会ったので、念のためにという軽い気持ちで読んでみた。
〇 読んでおどろいた。色彩、密度、重量、強さ、手応え、そんなものがみっしりと詰まった文体で、この重量級の文章にすっかり魅せられた。退廃を描いてもシニカルにならない熱量がある。ひとことで言ってしまえば充実している。
〇 収録されている6篇の短篇はそれぞれ独立した作品だが、各篇とも中心となる物語にもうひとつのエピソードが絡む凝った作りになっていて、この対位法が単純なストーリーに複雑で精妙な味わいを生んでいる。
〇 美点をあげればまずは文章。そのほかにも読者を退屈させない物語の展開の速さ、洒落た会話の使い方、念入りな人物の描写があげられる。読者にたいするサービス精神もたっぷりで、ポンと放り出すように物語を閉じて読者に宙ぶらりんの居心地のわるさを味合わせる身勝手などはしない。
〇 この作家は当たり前のものではないものを描くところで力を発揮するようで、登場人物では作者によく似た異形の怪人がとても魅力的だ。だから東京でのサラリーマン生活をえがく「黄昏の力」よりは、北海道の釣りをえがく「渚にて」のほうがおもしろいし、それよりもベトナムや香港やパリを舞台にした「玉、砕ける」「飽満の種子」「貝塚をつくる」や表題作のほうがさらにおもしろい。
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ロマネ・コンティ・一九三五年 六つの短篇小説 (文春文庫) 文庫 – 1981/7/25
開高 健
(著)
酒、食、阿片、釣、支那風呂など、この作家長年の旅と探求がもたらした深沈たる一滴また一滴。快楽の諸相、その豊饒から悲惨まで隈なく描く名品集。川端賞受賞作『玉、砕ける』を収録。
- 本の長さ197ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日1981/7/25
- ISBN-104167127040
- ISBN-13978-4167127046
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (1981/7/25)
- 発売日 : 1981/7/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 197ページ
- ISBN-10 : 4167127040
- ISBN-13 : 978-4167127046
- Amazon 売れ筋ランキング: - 33,512位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1930年大阪に生まれる。大阪市立大を卒業後、洋酒会社宣伝部で時代の動向を的確にとらえた数々のコピーをつくる。かたわら創作を始め、「パニック」で注目を浴び、「裸の王様」で芥川賞受賞。ベトナムの戦場や、中国、東欧を精力的にルポ、行動する作家として知られた。1989年逝去。(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 饒舌の思想 (ISBN-13: 978-4480426635 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2008年10月11日に日本でレビュー済み
1978年に出た単行本の文庫化。
「玉、砕ける」、「飽満の種子」、「貝塚をつくる」、「黄昏の力」、「渚にて」、「ロマネ・コンティ・一九三五年」の6つの短編小説が収められている。
テーマとしては、酒、食、アヘン、釣り。著者が実生活やノンフィクションで追い続けたものばかりだ。あれが昇華されると、こうなるのかという意味で興味深く読ませてもらった。
小説としての評価はどうなのだろうか。雰囲気と余韻はある。しかし、味わうべきは文章そのもの。内容よりも、一文一文をたどっていくことに価値のある本だろう。
「玉、砕ける」、「飽満の種子」、「貝塚をつくる」、「黄昏の力」、「渚にて」、「ロマネ・コンティ・一九三五年」の6つの短編小説が収められている。
テーマとしては、酒、食、アヘン、釣り。著者が実生活やノンフィクションで追い続けたものばかりだ。あれが昇華されると、こうなるのかという意味で興味深く読ませてもらった。
小説としての評価はどうなのだろうか。雰囲気と余韻はある。しかし、味わうべきは文章そのもの。内容よりも、一文一文をたどっていくことに価値のある本だろう。
2024年3月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
言うまでもなく、開高氏の作品の中でも大変面白い作品だと思います。3度目となる読破です。
2019年7月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大人の本です。濃厚で、何度も読みたくなります。特に女の描写が独特
それはそうですよね。有名コピーライターでもあるのですから。
それはそうですよね。有名コピーライターでもあるのですから。
2023年6月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
開高健氏の最も円熟した時に書かれた短編集。中の「玉、砕ける」を再読したくて、購入。何気ない描写のうちに、世界の不穏な状況が浮かび上がる。見事だなと、唸る。神は細部に宿ると言ったのは、開高健氏なのかな?その言葉を見事に実践していると感じました。
2014年7月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
熟成された文章に唸らされる。
憧れの開高ワールドを堪能したいなら、この本と『裸の王様』『地球はグラスのふちを回る』がオススメ!
偉人だったよなあ。
会って話をしてみたかった。
井伏鱒二との対談はNHKで見たことがあるけれど
いろいろ話を聞いてみたかったな…
憧れの開高ワールドを堪能したいなら、この本と『裸の王様』『地球はグラスのふちを回る』がオススメ!
偉人だったよなあ。
会って話をしてみたかった。
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いろいろ話を聞いてみたかったな…