この第7巻に収められている「寒月六間堀」の冒頭近くに、忘れがたい一節が出てくる。
(つまりは、人間(ひと)というもの、生きて行くにもっとも大事のことは ------ たとえば、今朝の飯のうまさはどうだったとか、今日はひとつ、なんとか暇を見つけて、半刻か一刻を、ぶらりとおのれの好きな場所に出かけ、好きな食物(もの)でも食べ、ぼんやりと酒など酌みながら ------ さて、今日の夕餉(ゆうげ)には何を食おうかなどと、そのようなことを考え、夜は一合の寝酒をのんびりとのみ、疲れた躰(からだ)を床に伸ばして、無心にねむりこける。このことにつきるな)
実にこれは鬼平犯科帳だけではなく、池波先生の小説世界の芯を言い尽くした一節ではないかと思う。この一節を読んだ時の心の軽みと幸福感。小説を読む楽しさにもいろいろあるが、こんな一節に出会うこと。「このことにつきるな」と私は思う。ありがとうございました。池波先生。
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新装版 鬼平犯科帳 (7) (文春文庫) (文春文庫 い 4-58) 文庫 – 2000/6/9
池波 正太郎
(著)
悪い事をしながら善い事をし、善い事をしながら悪事を働く。心を許し合う友を欺して、その心を傷つけまいとする。全く人間とは奇妙な生きものよ……とは鬼の平蔵の心の底からの述懐である。盗賊でも市井の者でもみな普遍の業を心にしまいこみ、矛盾を抱えながら生きてゆく。その虚実を突きながら、情を持って応える人生の達人・鬼平の魅力いやますシリーズ第八巻。「用心棒」「あきれた奴」「明神の次郎吉」「流星」「白と黒」「あきらめきれずに」の六篇を収録。
- 本の長さ313ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2000/6/9
- ISBN-104167142597
- ISBN-13978-4167142599
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2000/6/9)
- 発売日 : 2000/6/9
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 313ページ
- ISBN-10 : 4167142597
- ISBN-13 : 978-4167142599
- Amazon 売れ筋ランキング: - 946,644位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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大正12年(1923)、東京・浅草生まれ。下谷・西町小学校を卒業後、株式仲買店に勤める。戦後、下谷区役所に勤務して長谷川伸の門下に入り新国劇の脚 本を書いて演出の腕も磨く。昭和35年(1960)、「錯乱」で直木賞を受賞。52年(1977)、吉川英治文学賞受賞。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕 掛人・藤枝梅安」の三大シリーズが人気絶頂のさなか、急性白血病で逝去する(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 池波正太郎が書いたもうひとつの「鬼平」「剣客」「梅安」 (ISBN-13: 978-4270005859 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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