藤沢周平の作品をどのくらい読んでいるか、巻末の全６５冊リストを見て自分の記憶と照合してみると、わたしは５１冊読んでいた。まあ、多いほうだろう。けれども私も知らなかった非常にたくさんの発見がある本であった。この本を読んで改めて、藤沢周平は、自分に厳しく、凛として品があり、誠実でそして思っている以上に才能がある人なのだと再認識させてもらった。 特に、良かったのは、井上ひさしの弔辞、一人娘展子さんの手記、教え子たちと藤沢周平との交流、サナトリウム時代のエピソード、実に１３人の評論家の質問をもとに構成したインタビュー記事、小菅留冶全俳句などである。
たとえばこういう発言「何かそういう不幸、不仕合わせみたいな動機がなければ、作家なんていう正道を外れた職業にはいかないんじゃないでしょうか。」当代きっての国民的作家のいう言葉ではない。けれども『やはり藤沢さんだ…』と思うのである。 作家という職業を「正道を外れた」という意識。 それは常に弱者の立場から作品を作っていった藤沢氏ならではの言葉である。
教え子たち（たった２年の教師生活にもかかわらず）との温かい交流もよかった。そして彼らと話すときには小菅留治として接するためか、山形弁になるという。そしてなんと毎年同窓会に参加していたという。教え子たちはどんなに嬉しかっただろう。
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