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僧正の積木唄 (文春文庫) 文庫 – 2005/11/10
山田 正紀
(著)
僧正殺人事件は終わっていなかった! 反日感情高まる米国で無実の罪に問われた日系人。滞米中の金田一耕助が捜査に乗りだすが…
- 本の長さ480ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2005/11/10
- ISBN-104167284073
- ISBN-13978-4167284077
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2005/11/10)
- 発売日 : 2005/11/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 480ページ
- ISBN-10 : 4167284073
- ISBN-13 : 978-4167284077
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,044,692位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年4月6日に日本でレビュー済み
第一部「僧正殺人事件2」、第二部「日本棺の秘密」、第三部「「悪魔の積木唄」、第四部「Jの悲劇」の四部構成の作品なのだが、第一部はもちろんのこと、第二部はエラリー・クイーン『ギリシャ棺の秘密』の、第三部は横溝正史『悪魔の手鞠唄』、第四部はやはりエラリー・クイーン『Xの悲劇』『Xの悲劇』(あるいは『Yの悲劇』『Yの悲劇』)を踏まえた章題であるという、なかなかに凝った作品。凝っているのはそれだけではない。金田一耕助の探偵としてのデビュー作『本陣殺人事件』にも言及されるし、それとなくクイーン『オランダ靴の秘密』への言及もあるから、そのような「仕掛け」についてどれだけ気付くことができるのか、という楽しみもある点、推理マニアにはたまらない小説であることは確かだ。その上内容はヴァン・ダイン 『僧正殺人事件』に対する物語形式の評論と受け取れる内容で、実は名探偵ファイロ・ヴァンスは「僧正殺人事件」を解決していない、というのだから期待感は増すばかりではないか。本書で指摘されたことを踏まえれば、確かに事件は解決されたようには思えない。それをあらためて解決するのが金田一耕助だというのである。横溝正史による設定でも、金田一はアメリカに滞在していた、とされているのだからどこにも無理はない。無理はないどころか、読んでいるうちに横溝作品を読んでいるような気にさえなったものだ。それにとどまらず、僧正殺人事件の舞台で、また殺人事件が起こるところから出発する物語は、太平洋戦争前夜のアメリカ社会における日本人排斥運動を背景として重苦しく展開する。それもまた金田一耕助に相応しいもののように思われる。先行するテクストを素材として自身を構築した物語としては一級品。なお少なくとも『僧正殺人事件』だけは読んでおかねばならない。
2020年11月8日に日本でレビュー済み
若い頃に「僧正殺人事件」を読んでいて、しかも横溝正史ファンときては、この作品は絶対見逃せませんでした。こちらを読まれる方は、やはり先に「僧正殺人事件」と、金田一耕助を主人公とした横溝正史作品をひとつくらい読んでおいた方がいいと思います。
ただ、今回、この作品を読むに当たって本家のヴァン・ダイン作「僧正殺人事件」を読み返しましたが、あれ?こんな話だったっけ・・?と。すでに古典の領域に入った作品なので、古臭いところや現代の目から見ると無理があるのは仕方ないですが、探偵役のファイロ・ヴァンスってこんないやなやつだったか?とか、犯人の特定もおかしいと思い、特に最後の独断は、こんなことやっちゃいかんだろ、おかしいだろ、と怒りをおぼえてしまいました。
山田正紀氏がこの本で、犯人は別の人物だったのではと推理されていますが、私も同感です。
そして、この「僧正の積木唄」ですが、結論から言うと星3、5くらいでしょうか。
山田正紀氏は、落ち込んでいる時、横溝正史作品に救われたことがあるそうで、自分の作品で金田一耕助を活躍させられることが楽しくて仕方ない様子で、それがこちらにまで伝わってきます。小説の構成も、いろんな古典ミステリへのオマージュになっていてすごく凝っています。古典英米ミステリファンなら楽しくなると思います。
この第2の「僧正」事件ですが、2次大戦前のアメリカ社会で、日系人に対する差別や排斥がひどくなった頃を背景にしていて、日本人が読むのは結構つらいものがあります。重苦しい気分になってしまって、途中で何度か中断してしまいました。
日本では、アメリカは友達だと好感を持っている人が多いようですが、過去にはジャップと呼んでひどい人種差別をしていた時代があり、戦争中も東京を焼き野原にして原爆を2つも落とし、いまだにそれらを省みることも謝罪することもありません。利害が変わればまたどうなるかわからないことはおぼえておいた方がいいと思います。
個人的には、まったく違う状況設定で書いていただけたら、もっと純粋にミステリとして楽しめたような気がします。
過去の事件の関係者では、マーカム検事、ヒース刑事、それにヴァンスも少しだけ登場します。他の登場人物は金田一とそのパトロンの久保、あとは日系人がメインです。金田一の推理は、そのほとんどが勘によるものなので、ちょっと納得いかない部分もありましたが、犯人は意外な人物でした。
「僧正」と金田一ファンは読んでおいても損はないと思います。
ただ、今回、この作品を読むに当たって本家のヴァン・ダイン作「僧正殺人事件」を読み返しましたが、あれ?こんな話だったっけ・・?と。すでに古典の領域に入った作品なので、古臭いところや現代の目から見ると無理があるのは仕方ないですが、探偵役のファイロ・ヴァンスってこんないやなやつだったか?とか、犯人の特定もおかしいと思い、特に最後の独断は、こんなことやっちゃいかんだろ、おかしいだろ、と怒りをおぼえてしまいました。
山田正紀氏がこの本で、犯人は別の人物だったのではと推理されていますが、私も同感です。
そして、この「僧正の積木唄」ですが、結論から言うと星3、5くらいでしょうか。
山田正紀氏は、落ち込んでいる時、横溝正史作品に救われたことがあるそうで、自分の作品で金田一耕助を活躍させられることが楽しくて仕方ない様子で、それがこちらにまで伝わってきます。小説の構成も、いろんな古典ミステリへのオマージュになっていてすごく凝っています。古典英米ミステリファンなら楽しくなると思います。
この第2の「僧正」事件ですが、2次大戦前のアメリカ社会で、日系人に対する差別や排斥がひどくなった頃を背景にしていて、日本人が読むのは結構つらいものがあります。重苦しい気分になってしまって、途中で何度か中断してしまいました。
日本では、アメリカは友達だと好感を持っている人が多いようですが、過去にはジャップと呼んでひどい人種差別をしていた時代があり、戦争中も東京を焼き野原にして原爆を2つも落とし、いまだにそれらを省みることも謝罪することもありません。利害が変わればまたどうなるかわからないことはおぼえておいた方がいいと思います。
個人的には、まったく違う状況設定で書いていただけたら、もっと純粋にミステリとして楽しめたような気がします。
過去の事件の関係者では、マーカム検事、ヒース刑事、それにヴァンスも少しだけ登場します。他の登場人物は金田一とそのパトロンの久保、あとは日系人がメインです。金田一の推理は、そのほとんどが勘によるものなので、ちょっと納得いかない部分もありましたが、犯人は意外な人物でした。
「僧正」と金田一ファンは読んでおいても損はないと思います。
2016年9月9日に日本でレビュー済み
まるでごった煮のコミックノベルを読んでるみたいで、どう評価していいのだろうか。それなりに面白くはあるし、登場人物も多彩で、それだけでも楽しくはある。ただ、僧正を誰かにするという点で、様々な要素を詰め込み過ぎたが故に、読み進むに連れ、ややこしくなり消化不良を起こす。ヴァンスをこき下ろしてる割には、何の説得力も見いだせない。『僧正殺人事件』に追い付こうとするが故に背伸びし過ぎた感じがする。
ただ、アメリカ社会において抑圧された日系人のもどかしさが無念さが非常に印象的だ。ネタ的には、リナ・ターナーを愛人にする比奈博士をそのまま生かし、アーネッソン殺害の共犯者にしたほうが展開としてはストレスなくスムーズだったと思う。青野宗月もルーシー・カーコットンも比奈兄弟もナオミも意味不明のメキシコ人も必要なかった。
あまりにも登場人物が多彩過ぎて、後半に進むに連れ、プロットが曖昧に、そしてややこしくなる。黄渦論が渦巻くアメリカ社会という格好の時代背景があるので、それを中心に据えて単純な展開にしても面白かった。肝心なのは、シンプル・イズ・ベストなのだ。悲しいかな日本人は何につけても、てんこ盛りを多機能を好む。そして決まったように器用貧乏に陥る。全く、日本文化の典型の負の連鎖である。レビューでは結構評価が高く、”僧正”というタイトルに期待した自分が馬鹿だった。
やはり、金田一耕助ではヴァンスには足元にも及ばないってか。結果論で『僧正殺人事件』のアラ探しをする日本人の貧相さが垣間見えた。でも、パロディーだと割り切ってしまえば、今の日本人には受けのいい一冊かもしれない。厳しいけが、星2つ。
ただ、アメリカ社会において抑圧された日系人のもどかしさが無念さが非常に印象的だ。ネタ的には、リナ・ターナーを愛人にする比奈博士をそのまま生かし、アーネッソン殺害の共犯者にしたほうが展開としてはストレスなくスムーズだったと思う。青野宗月もルーシー・カーコットンも比奈兄弟もナオミも意味不明のメキシコ人も必要なかった。
あまりにも登場人物が多彩過ぎて、後半に進むに連れ、プロットが曖昧に、そしてややこしくなる。黄渦論が渦巻くアメリカ社会という格好の時代背景があるので、それを中心に据えて単純な展開にしても面白かった。肝心なのは、シンプル・イズ・ベストなのだ。悲しいかな日本人は何につけても、てんこ盛りを多機能を好む。そして決まったように器用貧乏に陥る。全く、日本文化の典型の負の連鎖である。レビューでは結構評価が高く、”僧正”というタイトルに期待した自分が馬鹿だった。
やはり、金田一耕助ではヴァンスには足元にも及ばないってか。結果論で『僧正殺人事件』のアラ探しをする日本人の貧相さが垣間見えた。でも、パロディーだと割り切ってしまえば、今の日本人には受けのいい一冊かもしれない。厳しいけが、星2つ。
2018年10月18日に日本でレビュー済み
素直なミステリーで、そのまま話の展開にのめり込んで読み続けることが出来た。この時の山田正紀はまだ純粋なミステリーを志向していたんだろう。
ところで巻末に山田正紀スペシャルインタビューがある。ミステリーを中心にした内容であるが、今後書きたい小説として、「神狩り2を書いてから、弥勒戦争2みたいなものを書きたい」とあった。神狩り2は、刊行されたが、弥勒戦争2はいつ出るのか楽しみにしている。もう15年は経ったな〜。
ところで巻末に山田正紀スペシャルインタビューがある。ミステリーを中心にした内容であるが、今後書きたい小説として、「神狩り2を書いてから、弥勒戦争2みたいなものを書きたい」とあった。神狩り2は、刊行されたが、弥勒戦争2はいつ出るのか楽しみにしている。もう15年は経ったな〜。
2009年1月6日に日本でレビュー済み
ヴァン・ダインの「僧正殺人事件」の続編兼金田一耕助シリーズエピソード0!
ヘミングウェイの殺し屋もコンチネンタル・オプもハメット自身も出るw
もちろん、ファイロ・ヴァンスも出るが、
金田一耕助との絡みは少ない。
メインの探偵は金田一耕助の方です。
第二次世界大戦前のアメリカでの排日運動の書き込みが素晴しい
歴史ミステリーの大傑作。
有名な歴史人物の話題も語られます。
細かいトリックの80%は推理出来るが、
私は真犯人は判らずにアッ!と驚いた。
事件が解決した後のエピローグの最後の一行も素晴しい!
ミステリマニア必読の書。
英語で出版して、NMA賞CMA賞をとらせるべき作品。
ヘミングウェイの殺し屋もコンチネンタル・オプもハメット自身も出るw
もちろん、ファイロ・ヴァンスも出るが、
金田一耕助との絡みは少ない。
メインの探偵は金田一耕助の方です。
第二次世界大戦前のアメリカでの排日運動の書き込みが素晴しい
歴史ミステリーの大傑作。
有名な歴史人物の話題も語られます。
細かいトリックの80%は推理出来るが、
私は真犯人は判らずにアッ!と驚いた。
事件が解決した後のエピローグの最後の一行も素晴しい!
ミステリマニア必読の書。
英語で出版して、NMA賞CMA賞をとらせるべき作品。
2002年9月28日に日本でレビュー済み
マザーグースの童謡のとおりに殺人を繰り返し、世間を恐怖に陥れた世に言う「僧正殺人事件」は、ファイロ・ヴァンスの活躍で終焉を迎えたかに見えた。しかしその数年後、再び「僧正」の署名の手紙とともに、殺人事件が発生する。折りも折り、満州事変で日本に対する風当たりが強くなっているなか、容疑者として捕まったのは日系人。世論に後押しされ、ロクな捜査もしない警察に立ち向かうは、アメリカを放浪していた若き日の金田一耕助・・・、どうです、ミステリ好きならすぐにでも読んでみたくなりませんか?
名作と名高いヴァン・ダインの「僧正殺人事件」ですが、本書にあるとおりシックリこないところ・納得しがたいところがあるのは確か。「僧正の積木唄」では、その納得しがたいところもキレイに解明され、そればかりでなく新しく起きた「僧正殺人事件2」のほうもなかなかよくできたミステリ、さらにさらにファイロ・ヴァンスと金田一耕助の夢の共演と、もうおいしいところだらけ。間違いなく「買い」の一冊です。
満州事変勃発直後、アメリカに日系人排斥の嵐が吹き荒れている時代のことも、とても興味深く読めました。
できれば「僧正殺人事件」を読んでから、こちらに手を伸ばしてください。もちろんネタばらしはされていないので、こちらからでもかまいはしませんが、おもしろさが違いますよ。ヴァンスやマーカム検事に対する見方の違いとかね。
名作と名高いヴァン・ダインの「僧正殺人事件」ですが、本書にあるとおりシックリこないところ・納得しがたいところがあるのは確か。「僧正の積木唄」では、その納得しがたいところもキレイに解明され、そればかりでなく新しく起きた「僧正殺人事件2」のほうもなかなかよくできたミステリ、さらにさらにファイロ・ヴァンスと金田一耕助の夢の共演と、もうおいしいところだらけ。間違いなく「買い」の一冊です。
満州事変勃発直後、アメリカに日系人排斥の嵐が吹き荒れている時代のことも、とても興味深く読めました。
できれば「僧正殺人事件」を読んでから、こちらに手を伸ばしてください。もちろんネタばらしはされていないので、こちらからでもかまいはしませんが、おもしろさが違いますよ。ヴァンスやマーカム検事に対する見方の違いとかね。
2009年1月1日に日本でレビュー済み
金田一耕助は戦前アメリカにいてクスリ中毒だった、という話は、ファンなら基本中の基本ともいえる設定。そのモチーフと、偶然、ちょうど同じ時期にアメリカで起きた(という設定)の、ヴァン・ダインの古典的本格推理『僧正殺人事件』を結びつけ、『僧正殺人事件』の舞台となった場所で再び起きた事件に、金田一耕助が取り組んでいく話。
推理小説という性質上ストーリーの紹介は避けるが、全体としては当時のアメリカの排日運動についてかなり詳しく描かれており、本格推理というよりは、社会派小説のような重めの雰囲気が漂う。なので、横溝正史やヴァン・ダインばりの王道・本格推理を期待して読むと、多少裏切られた気がするかもしれない。(なので☆1つマイナス)
しかし、横溝正史によって語られなかった金田一耕助の過去に迫ったという意味では実に秀逸な意欲作で、推理小説ファン、金田一耕助ファンなら「外伝」として十分に楽しめると思う。
ただし要注意点として、ぼやかしてはあるものの、読んでいる内に『僧正殺人事件』の結末が、なんとなくわかってしまう可能性が有るように思う。なので『僧正殺人事件』未読の人には、読了後に本書を読むことを強くお勧めする。
また、金田一耕助の初期の状況を把握するために、できれば横溝正史『本陣殺人事件』も読んでおくと、より楽しめると思う。
推理小説という性質上ストーリーの紹介は避けるが、全体としては当時のアメリカの排日運動についてかなり詳しく描かれており、本格推理というよりは、社会派小説のような重めの雰囲気が漂う。なので、横溝正史やヴァン・ダインばりの王道・本格推理を期待して読むと、多少裏切られた気がするかもしれない。(なので☆1つマイナス)
しかし、横溝正史によって語られなかった金田一耕助の過去に迫ったという意味では実に秀逸な意欲作で、推理小説ファン、金田一耕助ファンなら「外伝」として十分に楽しめると思う。
ただし要注意点として、ぼやかしてはあるものの、読んでいる内に『僧正殺人事件』の結末が、なんとなくわかってしまう可能性が有るように思う。なので『僧正殺人事件』未読の人には、読了後に本書を読むことを強くお勧めする。
また、金田一耕助の初期の状況を把握するために、できれば横溝正史『本陣殺人事件』も読んでおくと、より楽しめると思う。
2002年9月10日に日本でレビュー済み
あの『僧正殺人事件』に金田一耕助が挑むという。横溝正史ファンならずとも涎が出そうな設定。また第二次世界大戦前のアメリカの空気を実に巧く活用し、力業を成功させている。ストーリー展開などにはやや粗さも見られるが、ミステリファンが思わずにやりとさせられるエピソードがちりばめられていて興味深い。これは買いであろう。