石原莞爾の名は以前から承知していたが、この人物について詳しく知りたいと思ったのは全訳パール判決書に石原莞爾の名を見つけてからのことであった。石原莞爾が実際のところ満州事変にどのようにかかわったのか、東京裁判にどのようにかかわったのかを詳しく知りたいと思った。石原莞爾に関する書は数多く、次々と入手して読んでみたが、いずれも隔靴掻痒の感があった。
本書を入手した時、そのボリュームの大きさに圧倒されたが、読み始めてどんどん引き込まれた。石原莞爾の伝記の記述を中心に、石原莞爾が身を置いていた当時の日本と世界の動きや世論・背景の詳述が添えられており、大いに参考になった。理解が立体的になる上に周辺知識も身につく。石原莞爾論の総まとめとしてはこの書籍に止めを刺すものと思う。
ただ、「満州国」のグランドデザインを描いたのは確かに板垣と石原莞爾のコンビなのだろうが、実際のきっかけとなった柳条湖事件そのものを指揮したのは石原莞爾ではないのではないだろうか。少なくともパール判決書は石原莞爾が柳条湖事件の首謀者であるなどとは述べていない。そのあたりは本書でも今一つはっきりしなかった。現に石原莞爾は後に東京裁判での証言として、柳条湖事件への関東軍の対応は本庄将軍による純然たる防衛対策であったとの趣旨を述べている。石原莞爾の性格から考えて、この点について虚偽の申し立てをしたとは考えにくい。また、些細なことだが、日米交渉のスタート台となった日米諒解案の中心的発案者たる岩畔豪雄大佐を井川忠雄と共に合衆国に送り込んだのは東條ではない。その前任の首相の近衛である。諒解案が成立した1941年4月の段階では、近衛が首相であった。
本書を読みながら、合衆国陸軍のアルバート・ウェーデマイヤー中将との類似点に気付いた。共にベルリン留学経験があること、現場の指揮官を希望しながら参謀畑を歩んだこと、時間軸と地球儀的な地理の知識を混ぜ合わせた壮大なビジョンを持っていたこと、祖国の置かれた状況の実際を正確に認識しながらもその意見が所属組織に採用されなかったこと、共に中将で退役したこと等、共通点が多い。両者ともに陸軍将校の職務に忠実であることを起点としながら、思想的・歴史学的観点をベースにした懐の深さを持つ。自国の存続を真剣に考え抜くと必然的に歴史的・思想的思考に行き着くものと思えた。
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石原莞爾と昭和の夢 地ひらく 上 (文春文庫 ふ 12-2) 文庫 – 2004/9/2
福田 和也
(著)
「陸軍史上最大の奇才」は昭和という時代を通して、未来の日本に何を見たのか。石原莞爾像と戦前史の見方に変革を迫る渾身の力作
- 本の長さ458ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2004/9/2
- ISBN-104167593025
- ISBN-13978-4167593025
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2004/9/2)
- 発売日 : 2004/9/2
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 458ページ
- ISBN-10 : 4167593025
- ISBN-13 : 978-4167593025
- Amazon 売れ筋ランキング: - 120,042位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1960(昭和35)年東京生まれ。文芸評論家。慶應義塾大学環境情報学部教授。慶應義塾大学文学部仏文科卒。同大学院修士課程修了。1993年『日本の家郷』で三島由紀夫賞、2002年『地ひらく』で山本七平賞受賞。著書に『日本の近代(上・下)』『昭和天皇』など多数。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年9月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書(上巻)は、石原莞爾の生涯のうち、幼少期から満州国建国までが描かれています。
文体は歴史書というよりは、司馬遼太郎の歴史小説に近いと思います。
なので、小説は読むけど歴史書はちょっと、という人でも読みやすい本だと思います。
小説風の石原の描写が少々と、当時の状況が交互に描かれており、史実に関してはかなり突っ込んで解説されています。
例えば、戦時中の日本陸軍は、第一次世界大戦当時のドイツを模倣しており、そのために敗戦も必然性があったという洞察は、
歴史認識としてはうなずけるものになっており、著者の高い見識を感じることが出来ます。
著者自身が、石原莞爾に心酔しているようで、かなり好意的な書き方になっており、他のレビュアーの方の書いている通り、
筆者自身も違和感を感じることがありました。
逆に石原がしたことが正しいと全肯定することは、ある意味危険なことのような気がします。
また石原自身の法華思想への傾倒過程の描写が少なく、この辺も物足りません。
しかしながら、石原莞爾を軸に物語が展開されているため、逆にそこが新しい視点での近代史を描き出していると思います。
石原莞爾のことをしっかりと書きたい、という著者の情熱が、自虐史観とは違う冷静な目での歴史史観を作らせた気がします。
従って、解釈は読んだ人それぞれでしょうが、石原莞爾の評伝とともに、その視点にたった日本近代史とみれば、
本書の価値は大きなものと言えると思います。
文体は歴史書というよりは、司馬遼太郎の歴史小説に近いと思います。
なので、小説は読むけど歴史書はちょっと、という人でも読みやすい本だと思います。
小説風の石原の描写が少々と、当時の状況が交互に描かれており、史実に関してはかなり突っ込んで解説されています。
例えば、戦時中の日本陸軍は、第一次世界大戦当時のドイツを模倣しており、そのために敗戦も必然性があったという洞察は、
歴史認識としてはうなずけるものになっており、著者の高い見識を感じることが出来ます。
著者自身が、石原莞爾に心酔しているようで、かなり好意的な書き方になっており、他のレビュアーの方の書いている通り、
筆者自身も違和感を感じることがありました。
逆に石原がしたことが正しいと全肯定することは、ある意味危険なことのような気がします。
また石原自身の法華思想への傾倒過程の描写が少なく、この辺も物足りません。
しかしながら、石原莞爾を軸に物語が展開されているため、逆にそこが新しい視点での近代史を描き出していると思います。
石原莞爾のことをしっかりと書きたい、という著者の情熱が、自虐史観とは違う冷静な目での歴史史観を作らせた気がします。
従って、解釈は読んだ人それぞれでしょうが、石原莞爾の評伝とともに、その視点にたった日本近代史とみれば、
本書の価値は大きなものと言えると思います。
2017年9月7日に日本でレビュー済み
石原莞爾という、当時の日本の軍人の型枠に入らない、異端の存在をとおして満州という植民地の設立と滅亡まで描いた歴史小説なんですが・・・私が一番知りたかった彼の ””私生活””” や セクシャリティなど、直接彼がやりとげた仕事とは関係ないが、実はものすごく大事な事が書かれてなかった事に不満を生じます。所詮、ごくふつうの性的にもストレートな男性が書くと、単なる歴史小説になってしまうので、意図的に隠されている部分には目がいかないし、気がつかないのでしょうか?しかし感性が鋭い女性から 石原を見ると・・やはり感じ取る事、推測する事がたくさんあるのです。
大の甘党で、お酒やタバコ一切やらず、職場での宴会や交流で上役から飲酒をすすめられても、頑として受け付けずきっぱり断るなど、
組織人としては、あまりにも子供っぽいし世渡りがヘタな男です。
さらにスイーツ男子でお菓子を食べながら、討論するのが大好きという・・・女性的な趣向があります。
結婚について・・・初婚は親のすすめで強制結婚したけど・・半年で離婚 その後上役の紹介でなんとか再婚しますが・・・・・・
このご夫婦には子供がいません・・・・。はたして普通の夫婦関係があったのでしょうか??
鋭い女性ならもうおわかりかと思いますが・・・石原のセクシャリティーは、バイセクシャルではないでしょうか???
でも、別にこの時代の軍人達には珍しくないことです。男女の関わり合いが自由でなかったし、お見合いで結婚するのが当たりまえの時代なのですから。
それが、石原がやりとげた歴史的な偉業となんの関係があるの???と言われそうですけど・・・・。
まさに、普通のストレートの男じゃないからこそ、異端の存在として、人とちがう事ができたのではないでしょうか。
蛇足ですが・・・あのアナーキスト 大江栄 と石原は同じ仙台陸軍幼年学校に入っています。
おそらくお互いに顔見知りだった可能性もあります。さらに彼の3つ年下には、あの甘粕大尉が入ってます。
この大江栄という男は、仙台の陸軍幼年学校でかなりの問題児でした。結局は度重なる下級生に対するセクシャルハラスメントで退学になっているんです。
そんな事は、彼の成し遂げた仕事とは関係ないじゃないかーと言われそうですが、
大の甘党で、お酒やタバコ一切やらず、職場での宴会や交流で上役から飲酒をすすめられても、頑として受け付けずきっぱり断るなど、
組織人としては、あまりにも子供っぽいし世渡りがヘタな男です。
さらにスイーツ男子でお菓子を食べながら、討論するのが大好きという・・・女性的な趣向があります。
結婚について・・・初婚は親のすすめで強制結婚したけど・・半年で離婚 その後上役の紹介でなんとか再婚しますが・・・・・・
このご夫婦には子供がいません・・・・。はたして普通の夫婦関係があったのでしょうか??
鋭い女性ならもうおわかりかと思いますが・・・石原のセクシャリティーは、バイセクシャルではないでしょうか???
でも、別にこの時代の軍人達には珍しくないことです。男女の関わり合いが自由でなかったし、お見合いで結婚するのが当たりまえの時代なのですから。
それが、石原がやりとげた歴史的な偉業となんの関係があるの???と言われそうですけど・・・・。
まさに、普通のストレートの男じゃないからこそ、異端の存在として、人とちがう事ができたのではないでしょうか。
蛇足ですが・・・あのアナーキスト 大江栄 と石原は同じ仙台陸軍幼年学校に入っています。
おそらくお互いに顔見知りだった可能性もあります。さらに彼の3つ年下には、あの甘粕大尉が入ってます。
この大江栄という男は、仙台の陸軍幼年学校でかなりの問題児でした。結局は度重なる下級生に対するセクシャルハラスメントで退学になっているんです。
そんな事は、彼の成し遂げた仕事とは関係ないじゃないかーと言われそうですが、
2011年12月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
石原莞爾というフィルタを通して、昭和初期の社会、経済、文化、政治状況についての小説。
石原莞爾の伝記、、と軽い気持ちで読んだが、内容、スケールとも5本の指に入る大作だった。
筆者が下巻最後の部分で「地ひらく」について語った部分は深く心に残る。副題である、「昭和の夢」とはまさに、現在の日本人が忘れているものではないだろうか。
西洋の列強に対して、独立の保持と日本の近代化を押し進める中で、石原莞爾は満州事変、満州国の建国を実施したわけであるが、その意図は、単純な領土拡大というよりも、新たな理想郷の構築だった。
その証拠に、石原は米国の英からの独立戦争なように満州国の日本からの独立の可能性も考え、満州に生きる人は日本の査証を捨て満州のそれを保持することも考えていた。
日本人の夢、昭和の夢は石原の軍中央部からの退却、東条英機の台頭から最終的に敗戦という形で散ってしまうのであるが、「夢」を持つ難しさを感じる現代人とって、「夢」を持つのみならず、その達成の為に邁進した石原莞爾、そして昭和初期からの日本人は逆に幸せだったのかもしれない。
石原莞爾の伝記、、と軽い気持ちで読んだが、内容、スケールとも5本の指に入る大作だった。
筆者が下巻最後の部分で「地ひらく」について語った部分は深く心に残る。副題である、「昭和の夢」とはまさに、現在の日本人が忘れているものではないだろうか。
西洋の列強に対して、独立の保持と日本の近代化を押し進める中で、石原莞爾は満州事変、満州国の建国を実施したわけであるが、その意図は、単純な領土拡大というよりも、新たな理想郷の構築だった。
その証拠に、石原は米国の英からの独立戦争なように満州国の日本からの独立の可能性も考え、満州に生きる人は日本の査証を捨て満州のそれを保持することも考えていた。
日本人の夢、昭和の夢は石原の軍中央部からの退却、東条英機の台頭から最終的に敗戦という形で散ってしまうのであるが、「夢」を持つ難しさを感じる現代人とって、「夢」を持つのみならず、その達成の為に邁進した石原莞爾、そして昭和初期からの日本人は逆に幸せだったのかもしれない。
2018年4月1日に日本でレビュー済み
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私(評者)は「(セミ)クローズドエコノミー」がどのように成功/失敗するのかには興味があって,「西山農場」の項を楽しみにして,ここまで長い不興を押して読み進んだ。
この西山農場の建設・運営こそ石原莞爾の,少なくとも彼個人の人生の,集大成というべきものであり,「建設三原則」という長々しい「運営の基本理念・基本姿勢・方針」を建てている。著者もこの試みを,「ポスト工業化社会の問題意識」「壮大な実験」「人間のあり方自体を変えてしまう」などと興奮気味に記している。
この時の運営上の諸条件は,
・人(信奉者・共鳴者・支援者)は多く,
・土地の提供を受けていて,(利子返済の要は無かったのだろう)
・石原莞爾は,部隊にて類似の実験を重ねており知見経験を持っていた。
というほぼ理想的な状態であった。
それでありながら,この試みは短期間で「失敗」となってしまうが,著者は,経過をほとんど記さず,原因を「(その)土地は農作に適さず」とのみ記している。土地や気候の性質は,始めから判っていた筈である。石原莞爾はこの顛末について何も記さなかったのだろうか,有益な失敗事例であったはずなのに。
下巻前半部p163の記載にもあるように,石原莞爾はやはり,「人」とか「社会」について正しい認識を持っていない不出来な秀才だったのだろう。司馬遼太郎の「歳月(江藤新平を書いたもの)」を思い出した。
著者はこの書の中で,
・満州事変の成功は当時の日本にとって,必要不可欠であった。
・石原莞爾は「命令無視してやったもん勝ち」の悪しき風習を作ってしまった。
・その悔恨を責任感に変えて,その後,「不戦」「不拡大」に尽力したが,大勢を変えられなかった。
ということを繰り返し書いている。
それを読んで
・満州事変が無かったら(≒石原莞爾がそこにいなかったら),日本はどうなっていたと,作者は考えていたのか,知りたい。列強の植民地になってしまったのだろうか。
・石原莞爾が満州事変の成功後に,「もうこのような事はやってはいけない」との遺書を遺して割腹自殺か何かをしたら,あるいは大戦は避けられのか。
などを思った。
「歴史上の人物」を書くのに,著者があまりに心酔していると,「その解釈はおかしいだろう」という箇所が多くなって,読み物としては不出来なものとなる。この本も,秀でたところはあるものの,その類の一冊になってしまっている。
この西山農場の建設・運営こそ石原莞爾の,少なくとも彼個人の人生の,集大成というべきものであり,「建設三原則」という長々しい「運営の基本理念・基本姿勢・方針」を建てている。著者もこの試みを,「ポスト工業化社会の問題意識」「壮大な実験」「人間のあり方自体を変えてしまう」などと興奮気味に記している。
この時の運営上の諸条件は,
・人(信奉者・共鳴者・支援者)は多く,
・土地の提供を受けていて,(利子返済の要は無かったのだろう)
・石原莞爾は,部隊にて類似の実験を重ねており知見経験を持っていた。
というほぼ理想的な状態であった。
それでありながら,この試みは短期間で「失敗」となってしまうが,著者は,経過をほとんど記さず,原因を「(その)土地は農作に適さず」とのみ記している。土地や気候の性質は,始めから判っていた筈である。石原莞爾はこの顛末について何も記さなかったのだろうか,有益な失敗事例であったはずなのに。
下巻前半部p163の記載にもあるように,石原莞爾はやはり,「人」とか「社会」について正しい認識を持っていない不出来な秀才だったのだろう。司馬遼太郎の「歳月(江藤新平を書いたもの)」を思い出した。
著者はこの書の中で,
・満州事変の成功は当時の日本にとって,必要不可欠であった。
・石原莞爾は「命令無視してやったもん勝ち」の悪しき風習を作ってしまった。
・その悔恨を責任感に変えて,その後,「不戦」「不拡大」に尽力したが,大勢を変えられなかった。
ということを繰り返し書いている。
それを読んで
・満州事変が無かったら(≒石原莞爾がそこにいなかったら),日本はどうなっていたと,作者は考えていたのか,知りたい。列強の植民地になってしまったのだろうか。
・石原莞爾が満州事変の成功後に,「もうこのような事はやってはいけない」との遺書を遺して割腹自殺か何かをしたら,あるいは大戦は避けられのか。
などを思った。
「歴史上の人物」を書くのに,著者があまりに心酔していると,「その解釈はおかしいだろう」という箇所が多くなって,読み物としては不出来なものとなる。この本も,秀でたところはあるものの,その類の一冊になってしまっている。
2012年2月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
このレビューを書いている、2012年2月に、石原莞爾の世界最終戦争が刊行されている。しかし、石原を語る上で、このような先
を見る目が有ったという話よりは(P447の預言者)、この福田和也著の「地ひらく・石原莞爾と昭和の夢」をまず読むべきであろう。
いまだ、歴史的にあの戦争の総括を行わず、ずるずると生き延びてきたわれわれに、改めて福田氏は、石原莞爾のえがいた、また日本人 に初めて訪れた、フロンティアの夢について具体的に説明している。
戦後、その精神に憧れ、朝鮮の人も西山農場に集ったこともほほえましい。
これに対し、あくまで自分の派閥の人間のみに優しかった東条はおぞましい。
このての官僚は戦後も脈々と生きつずけ、日本人とこの国に害毒を今もを流している。
ドイツの軍事顧問団が蒋介石に指導した「焦土作戦」。このことも若い人は知らないのではないか。結果、南京での虐殺行為に結びついて いることを、歴史として知っておくべきであろう。
では何故、三国同盟なのか。合理的に考えられない人、あたら人材を登用できなかった日本、今も通じているのでは。
を見る目が有ったという話よりは(P447の預言者)、この福田和也著の「地ひらく・石原莞爾と昭和の夢」をまず読むべきであろう。
いまだ、歴史的にあの戦争の総括を行わず、ずるずると生き延びてきたわれわれに、改めて福田氏は、石原莞爾のえがいた、また日本人 に初めて訪れた、フロンティアの夢について具体的に説明している。
戦後、その精神に憧れ、朝鮮の人も西山農場に集ったこともほほえましい。
これに対し、あくまで自分の派閥の人間のみに優しかった東条はおぞましい。
このての官僚は戦後も脈々と生きつずけ、日本人とこの国に害毒を今もを流している。
ドイツの軍事顧問団が蒋介石に指導した「焦土作戦」。このことも若い人は知らないのではないか。結果、南京での虐殺行為に結びついて いることを、歴史として知っておくべきであろう。
では何故、三国同盟なのか。合理的に考えられない人、あたら人材を登用できなかった日本、今も通じているのでは。
2010年10月3日に日本でレビュー済み
主人公への思い入れが強烈です。そこまでの思い入れが無ければこれだけのものは書けないと言うことかもしれませんが。
とてつもなく高い評価を著者は石原に与えていますが、日本を大陸の泥沼に引き込んだ責任者の一人であり、その独断専行によって国家の在り方をも歪めたことからするととても感情移入出来ません。法華の信仰で日本を動かそうとしていた点についてなど、言葉もありません。
しかし、この本は戦前の状況を詳細に描いていて、その見方は中立的でかつ現在の高所から上から目線で見ているものでなく、謙虚にその時点の眼で見ています。この点で本書は読むに値すると思いました。
また、難しいという評価もありますが、少なくとも文系の人間には全く問題ないレベルです。寧ろ硬質の文体に好感を持ちました。
とてつもなく高い評価を著者は石原に与えていますが、日本を大陸の泥沼に引き込んだ責任者の一人であり、その独断専行によって国家の在り方をも歪めたことからするととても感情移入出来ません。法華の信仰で日本を動かそうとしていた点についてなど、言葉もありません。
しかし、この本は戦前の状況を詳細に描いていて、その見方は中立的でかつ現在の高所から上から目線で見ているものでなく、謙虚にその時点の眼で見ています。この点で本書は読むに値すると思いました。
また、難しいという評価もありますが、少なくとも文系の人間には全く問題ないレベルです。寧ろ硬質の文体に好感を持ちました。