当初の3人の女性は、どうしようもなく軽く描かれている。
政情不安定な地に、バカンスと買い物をしに来る時点で、既に軽過ぎる。
しかし、3人は軽いばかりではなかった。
その後に直面する場面場面での、3人の行動は頼もしい。
この村の文化は、日本とは天地程異なるが、生きるためとは言え、うまく順応しようとする。
3人のうち、一見最も思慮深い様で、実はその逆だと感じるのが医者の祝子だ。
村の一人の老人の臨終に際して、医療行為を強要して、人々の顰蹙を買うという下りがある。
この村では、病院でのいくつかのケースとは異なり、人が人らしく死ねる。
医療に対する、祝子の様な上辺だけの理想は、時に有害だ。
物語は、生きて日本に帰れるのか?というスリリングな綱渡りの連続だが、
3人は価値観の相違の狭間で悩み、順応しようとする。
このあたりに、読み応えを感じる。
著者の名著「弥勒」は非常に重いテーマを扱っているが、本書も根底では似た部分がある。
しかし、比べて本書は雰囲気が軽く、ずっしりとした重みはあまり感じない。
それはそれで、気軽に読めるという利点もある。
下巻での結末はある程度想像出来るが、
下巻でも、展開にスリルがあり、印象的な結びとなっている。
また、各章に付記された小タイトルは、なかなか魅力がある。
テーマは重いが「楽しめる」作品だ。
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コンタクト・ゾーン 上 (文春文庫 し 32-7) 文庫 – 2006/11/10
篠田 節子
(著)
- 本の長さ463ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2006/11/10
- ISBN-104167605074
- ISBN-13978-4167605070
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2006/11/10)
- 発売日 : 2006/11/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 463ページ
- ISBN-10 : 4167605074
- ISBN-13 : 978-4167605070
- Amazon 売れ筋ランキング: - 551,792位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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東京都生まれ。東京学芸大学卒。1990年『絹の変容』で第三回小説すばる新人賞を受賞。97年『ゴサイタン―神の座―』で第十回山本周五郎賞を、『女たちのジハード』で第百十七回直木賞を受賞。2009年『仮想儀礼』で第二十二回柴田錬三郎賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 スターバト・マーテル (ISBN-13: 978-4334926977)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2009年2月21日に日本でレビュー済み
猫も杓子も海外に行き、しかも主たる目的は買い物。
現地のディープな文化や政情になどそれほど興味なし。
今(2009年)は不況なので激減したかもしれませんが
景気のいい頃はそんな日本人女性が世界各地に溢れていました。
この作品の主人公もそういう範疇に入るのでしょうが
女性たちのそういう外側の部分はさておき
私には、どんな危機的状況でも生き抜く彼女たちのたくましさが
とても魅力的に感じられました。
ディープな海外ツアーに興味のあるかたは、この作品で仮想体験できるかも。
現地のディープな文化や政情になどそれほど興味なし。
今(2009年)は不況なので激減したかもしれませんが
景気のいい頃はそんな日本人女性が世界各地に溢れていました。
この作品の主人公もそういう範疇に入るのでしょうが
女性たちのそういう外側の部分はさておき
私には、どんな危機的状況でも生き抜く彼女たちのたくましさが
とても魅力的に感じられました。
ディープな海外ツアーに興味のあるかたは、この作品で仮想体験できるかも。
2010年5月26日に日本でレビュー済み
普段テレビで「戦争」という言葉を聞いても、「ああ、またやっているのか。」とあきれるだけでした。
しかしこの本は死が身近に迫る戦地に生きる人々の生活を、たまたまそこにたどり着いた観光客の視点から、生々しく見事に描いています。
「独身女性三人組」と2時間ドラマにでもありそうな設定ですが、2時間ドラマにはない「いつ誰が死ぬかもしれない」「誰が悪いのかもわからない」恐怖がひしひしと伝わってきます。
そして、最初は印象の悪かった主人公たちの感情の変化に、だんだんと同調できるようになりました。
日本の多くの地域は戦時でも空から攻撃されるだけでしたが、ゲリラ戦ってこんな感じなんだ、と恐ろしくなりました。
たまに、恐ろしい描写・難しい言葉も出てきますがスラスラと読めます。
細かい設定に疑問を抱くことも無きにしも非ずですが、エンターテイメントとしてはいい作品だと思います。
2時間ドラマをみるよりも、この本を読むことをお勧めします。
世界が平和になりますように。
しかしこの本は死が身近に迫る戦地に生きる人々の生活を、たまたまそこにたどり着いた観光客の視点から、生々しく見事に描いています。
「独身女性三人組」と2時間ドラマにでもありそうな設定ですが、2時間ドラマにはない「いつ誰が死ぬかもしれない」「誰が悪いのかもわからない」恐怖がひしひしと伝わってきます。
そして、最初は印象の悪かった主人公たちの感情の変化に、だんだんと同調できるようになりました。
日本の多くの地域は戦時でも空から攻撃されるだけでしたが、ゲリラ戦ってこんな感じなんだ、と恐ろしくなりました。
たまに、恐ろしい描写・難しい言葉も出てきますがスラスラと読めます。
細かい設定に疑問を抱くことも無きにしも非ずですが、エンターテイメントとしてはいい作品だと思います。
2時間ドラマをみるよりも、この本を読むことをお勧めします。
世界が平和になりますように。
2007年11月16日に日本でレビュー済み
バカンス先で内乱に巻き込まれる30代後半女性3人の話です。
物語の最初は、「何だこいつら!」と言う感じだった3人も、物語の後半には「がんばれ!」と応援したくなった。
同じ作者だから当たり前ですが、「女たちのジハード」と似た小説です。
ただ、戦闘シーンの描写に臨場感が足り無いと思います。
物語の最初は、「何だこいつら!」と言う感じだった3人も、物語の後半には「がんばれ!」と応援したくなった。
同じ作者だから当たり前ですが、「女たちのジハード」と似た小説です。
ただ、戦闘シーンの描写に臨場感が足り無いと思います。
2006年12月26日に日本でレビュー済み
筆者のコンプレックスや偏った思想が丸見えで、ところどころ読むのが苦痛だった。
折角お金を出して買ったのだから、一応読んでおこうと我慢しながら読んだのは初めての経験。
冒頭部分の「日本女は豚」「資本主義がなんちゃら」などのしつこい描写、はっきりいっていらない気がするんだけど。
折角お金を出して買ったのだから、一応読んでおこうと我慢しながら読んだのは初めての経験。
冒頭部分の「日本女は豚」「資本主義がなんちゃら」などのしつこい描写、はっきりいっていらない気がするんだけど。
2007年2月10日に日本でレビュー済み
リゾート地で買い物を楽しむ、これぞ日本のOL!!という3人組。
彼女たちが、情勢不安な地へ買い物旅行へ行く。
これまた、非常識極まりない旅行者。
世界各国を旅行した私も、こんな人をたくさん見て「はぁ!?」と思ったことがたくさんありましたが、この3人もまさしくそれでした。
最初はイライラしてしまいましたが、人間生きるためには変わるしかありません。
それぞれが、文化や習慣、考え方の違う地で生き延びなくてはならなくなると、驚くほどの順応性を発揮します。
それをうまく描けていると思いました。
祖国へ帰れるか分からない不安。
いつ殺されるか分からない不安。
そこで笑い合える幸せ。
そんなものを感じることができました。
冒険小説のようで、人間の成長を読みとることのできる作品です。
彼女たちが、情勢不安な地へ買い物旅行へ行く。
これまた、非常識極まりない旅行者。
世界各国を旅行した私も、こんな人をたくさん見て「はぁ!?」と思ったことがたくさんありましたが、この3人もまさしくそれでした。
最初はイライラしてしまいましたが、人間生きるためには変わるしかありません。
それぞれが、文化や習慣、考え方の違う地で生き延びなくてはならなくなると、驚くほどの順応性を発揮します。
それをうまく描けていると思いました。
祖国へ帰れるか分からない不安。
いつ殺されるか分からない不安。
そこで笑い合える幸せ。
そんなものを感じることができました。
冒険小説のようで、人間の成長を読みとることのできる作品です。
2012年6月9日に日本でレビュー済み
この本、情景が手に取るように目に浮かぶ。ストーリー展開が都合よい気も無きにしもあらずだったが、トピックがありそうでなかったモノだったので、新鮮だった。エンターテーメント物としても読めるが、いろいろと考えさせられることが多い作品。ありがとうございました。
2007年5月7日に日本でレビュー済み
カバーの粗筋を読む限りでは、浅田次郎氏『オー・マイ・ガーッ!』ばりのドタバタ道中記かと思いきや、そこは一筋縄ではいかないこの作家。一見おバカな時代遅れのバブリーOLと思わせながら、それほどお気楽ではない現実と意外にマジメな内面が描かれていて、溜飲が下がる。同世代の働く女性なら、主人公3人の言動や価値観のどこかに自分と共通する部分を感じるはず。最も傑作なのは、自分が理解あるいはコントロールできる(と信じている)ステロタイプな女性像に当てはめてしか他人を見ないオヤジでおマヌケな現地の日本人ガイド。よくいる今時30〜40代の典型的な日本人サラリーマン。読みながら何度、「そうそう!こういう奴いる」とツッコミたくなったか。解説を書いている大学教員の認識もその例外ではなく、もしや小説に悪ノリして露悪的に書いた?と疑りたくなるほど。解説までまるごと楽しめます。