客観的事実よりもセンセーショナルなネタを好むのは、日本のマスコミの悪しき体質ですが、気が付くといつの間にかうやむやになって、本書の内容のように、「一体あれどうなったのか?」と思える事が多々あります。「買ってはいけない」の根拠なき煽動論調は、今になってはお笑い種です。しかし、私自身も大学の始めまで「ダイオキシン猛毒説」や「環境ホルモンで精子減少」を頭から信じ込み、本書で槍玉に挙げられている三好氏の著書を多数読んでいたので、あまり偉そうなことは言えないのですが。
「買ってはいけない」の論調は終始一貫、「化学物質は怖い」という類のアジテーションに尽きます。しかしいかなる化学物質であれ、100%安全でもなければ危険でもない。至極当前ですが、私自身もかつてはこの当前の認識ができませんでした。化学物質が安全かどうかは、量とバランスで決まることを本書は丁寧に教えてくれます。
例えば、フルーツインゼリーの危険性について、「誰がカラギーナンを15%も摂取するのか。フルーツインゼリーには0.2%しか含まれていない。75個も食べれば食べすぎで死んでしまう」という、目から鱗が何十枚も落ちる指摘が為されています。数字や客観的データを重視する本書は、環境論の暴走に警鐘を鳴らすものと言えます。
「買ってはいけない」に限らず、「ベストセラー」や「専門家」といった肩書きだけに踊らされる傾向が、私を含め多くの人にはあります。まして環境問題となると尚更です。しかし重要なのは、その主張は科学的・理論的に正しい根拠に基づいているかどうか、常に自分の頭で多角的に考えることでしょう。そうした認識をさせてくれる点で、「買ってはいけない」とほぼ同時期に出版された本書は、大いに示唆に富んでいると思います。環境問題に関心を持つ人にこそ、本書は是非熟読して頂きたい一冊です。
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それは違う (文春文庫 ひ 12-2) 文庫 – 2001/12/1
日垣 隆
(著)
ベストセラー「買ってはいけない」と真向から斬り結び環境ホルモン、人権論争など良識ある市民的世界の虚構を徹底的に論破する!
- 本の長さ248ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2001/12/1
- ISBN-104167655020
- ISBN-13978-4167655020
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2001/12/1)
- 発売日 : 2001/12/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 248ページ
- ISBN-10 : 4167655020
- ISBN-13 : 978-4167655020
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,465,326位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,832位ジャーナリズム (本)
- - 11,334位文春文庫
- カスタマーレビュー:
著者について
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作家・ジャーナリスト。1958年長野県生まれ。大学卒業後、書店員、トラック配送員、TVレポーター、編集者など数々の職を経て、87年から執筆活動に入る。世界取材85カ国。『そして殺人者は野に放たれる』で新潮ドキュメント賞受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『楽しく稼ぐ本』(ISBN-10:4479303006)が刊行された当時に掲載されていたものです)
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2005年10月10日に日本でレビュー済み
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2003年1月7日に日本でレビュー済み
本書はかつてのベストセラー「買ってはいけない」や、ダイオキシン問題などについての討論集である。「買ってはいけない」がベストセラーだった頃、単行本として発行された著作の文庫化。
一部の環境保護主義者に見られる、人の不安な心に付け込んで悪者作りに精を出しその背後で自らの利益のために蠢く人々とその言論を、明確な根拠と論理で文字通り切って捨てる文章は、本著者の真骨頂でありまことに小気味よい。わずか数年で「買ってはいけない」や「ダイオキシン問題」は人の口の端にも上らなくなってしまったが、これを冷静に捉え批判した言論は生き残っている。ウソとまことをかき混ぜて一時の流行となってしまったセンセーショナルな環境主義は、長い目で見れば短命である、ということを考えさせることができる好著です。
一部の環境保護主義者に見られる、人の不安な心に付け込んで悪者作りに精を出しその背後で自らの利益のために蠢く人々とその言論を、明確な根拠と論理で文字通り切って捨てる文章は、本著者の真骨頂でありまことに小気味よい。わずか数年で「買ってはいけない」や「ダイオキシン問題」は人の口の端にも上らなくなってしまったが、これを冷静に捉え批判した言論は生き残っている。ウソとまことをかき混ぜて一時の流行となってしまったセンセーショナルな環境主義は、長い目で見れば短命である、ということを考えさせることができる好著です。