1999年に出た単行本の文庫化。
1990年代後半にアメリカに留学して、各地の動物園を調査した記録である。
漫然とした見物記ではなく、きちんとした意図と切り口から構成され、真剣に書かれた一冊だ。
ちょうどアメリカの動物園が大きく変わりつつある時期で、生態展示や行動展示、複数の園が協力しての繁殖計画、動物の福祉、再野生化など、多様な問題がとりあげられている。
なおかつ、アメリカの動物園を礼賛するだけではない。きちんと限界と批判も示されている。個々のテーマに対して設けられた視点も多彩で、いろいろ考えさせられる。大きな動物園にできることと小さな動物園の役割の差、先鋭的動物愛護団体から見た動物園の問題点なども。きわめてバランスのいい一冊だ。
いま読んでも充分に価値のある本だと思う。
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動物園にできること (文春文庫 か 28-3) 文庫 – 2006/3/10
川端 裕人
(著)
- 本の長さ346ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2006/3/10
- ISBN-104167662035
- ISBN-13978-4167662035
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2006/3/10)
- 発売日 : 2006/3/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 346ページ
- ISBN-10 : 4167662035
- ISBN-13 : 978-4167662035
- Amazon 売れ筋ランキング: - 312,237位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年2月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
動物園のあり方、人間と動物の共生、動物をどのように守っていくべきかを考えさせられました。これからますます動物園の果たす役割は大きくなっていくでしょう。絶滅に追い込まれている動物を何とか守っていきたいですね。しかも、人間のエゴとしての見せ物としての動物ではなく、動物本来の姿を維持しながら。10年後、20年後の動物園は一体どうなっているのか…?
2008年12月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
きっとこんな本を読まれる方は少なからず動物園が好きであったり、動物園について調べていたりする方が多いのではないかと思います。
私も同じような種類の本をいくつか読むのですが、この本は業界の専門書と言うわけでもなく、動物園を絶賛しているわけでもなく、著者の方が足を運んでお調べになったことを読みやすいレポート調で、淡々と書かれていることが気に入りました。
本文に書かれている著者の方の考え方も、その表現が自然体で、固まった意見を押し付けられるような印象が全くなかったので、読みながら本に書かれていることと自分の思うところをこうさせながら読むことができたので、とても楽しかったです。
私も同じような種類の本をいくつか読むのですが、この本は業界の専門書と言うわけでもなく、動物園を絶賛しているわけでもなく、著者の方が足を運んでお調べになったことを読みやすいレポート調で、淡々と書かれていることが気に入りました。
本文に書かれている著者の方の考え方も、その表現が自然体で、固まった意見を押し付けられるような印象が全くなかったので、読みながら本に書かれていることと自分の思うところをこうさせながら読むことができたので、とても楽しかったです。
2014年7月27日に日本でレビュー済み
動物園を通じて、人々の考え方や価値観、生体環境の将来像まで見えてくると感じました。
例えば、アメリカと日本とでは、動物園の展示が異なります。
要因は複数あることと思いますが、休日の娯楽施設の一つとして捉えているか、環境教育や保護活動の発信源と捉えているかが最大の要因でしょう。
本書では、複数の動物園の取り組みを紹介しながら、動物園、ひいては生体環境の将来像を模索しています。
様々な観点から考察していくと、絶対的な正解というものは存在しません。
多くの制約もあります。
その中で、少しでも動物園、ひいては環境保護の改善に努めようとしている現場の取り組みには心を打たれます。
「動物園にできること」は、動物園を訪れる私たちが求めていることによって大きく変わります。
動物園を訪れる前に一度は目を通すべき本だと思います。
例えば、アメリカと日本とでは、動物園の展示が異なります。
要因は複数あることと思いますが、休日の娯楽施設の一つとして捉えているか、環境教育や保護活動の発信源と捉えているかが最大の要因でしょう。
本書では、複数の動物園の取り組みを紹介しながら、動物園、ひいては生体環境の将来像を模索しています。
様々な観点から考察していくと、絶対的な正解というものは存在しません。
多くの制約もあります。
その中で、少しでも動物園、ひいては環境保護の改善に努めようとしている現場の取り組みには心を打たれます。
「動物園にできること」は、動物園を訪れる私たちが求めていることによって大きく変わります。
動物園を訪れる前に一度は目を通すべき本だと思います。
2012年11月19日に日本でレビュー済み
私は、本書は「動物園は必要か否か」というテーマを論じた本「ではない」と思っております。
タイトルから重たいテーマや堅苦しい話を想像した人はご安心ください。
「動物園にできること」というタイトルの軸がぶれるような内容ではありませんが、それでいて楽しく動物園や動物保護のあれこれを読むことができる本です。
「動物園はどうあるべきか」それは私たちに与えられたテーマであり、本書はそれについてまず興味を持たせ、考える材料を与えてくれるものです。
故に本書は結論を与えてはくれません。
はじめから「動物園は悪いもの」という凝り固まった偏った意識を持っている人には向きません。
きっと「動物園の悪徳が描かれていない」などと憤慨することでしょう。
良し悪しを語るにはまず材料が必要なのです。
本書は、海外の動物園関係者、動物の権利を主張する団体、動物保護に関わっている人など様々な立場の人にインタビューを行った上で書かれており、動物保護の様々なあり方、動物園の展示手法、種の保存のための動物園の働きなどを知ることができます。
イマージョン型展示、エンリッチメント、ヒクイドリの保護の話やチーターの繁殖など、動物園をよく知らない人が知っておくと良いであろう単語も解説されています。
※本書の本分はやや昔に書かれたものであり、現在の日本の動物園の多くはこの本に書かれている状態よりかは大分改善されています(ただし東京都某H動物園や阿蘇なんちゃらのように劣悪な環境の動物園が存在するのも事実です。)
タイトルから重たいテーマや堅苦しい話を想像した人はご安心ください。
「動物園にできること」というタイトルの軸がぶれるような内容ではありませんが、それでいて楽しく動物園や動物保護のあれこれを読むことができる本です。
「動物園はどうあるべきか」それは私たちに与えられたテーマであり、本書はそれについてまず興味を持たせ、考える材料を与えてくれるものです。
故に本書は結論を与えてはくれません。
はじめから「動物園は悪いもの」という凝り固まった偏った意識を持っている人には向きません。
きっと「動物園の悪徳が描かれていない」などと憤慨することでしょう。
良し悪しを語るにはまず材料が必要なのです。
本書は、海外の動物園関係者、動物の権利を主張する団体、動物保護に関わっている人など様々な立場の人にインタビューを行った上で書かれており、動物保護の様々なあり方、動物園の展示手法、種の保存のための動物園の働きなどを知ることができます。
イマージョン型展示、エンリッチメント、ヒクイドリの保護の話やチーターの繁殖など、動物園をよく知らない人が知っておくと良いであろう単語も解説されています。
※本書の本分はやや昔に書かれたものであり、現在の日本の動物園の多くはこの本に書かれている状態よりかは大分改善されています(ただし東京都某H動物園や阿蘇なんちゃらのように劣悪な環境の動物園が存在するのも事実です。)
2007年12月3日に日本でレビュー済み
絶滅の危機に陥った野生動物の飼育下繁殖と野生復帰の重要性をこんこんと説いていて、それはそれでとても説得力があるのですが、肝心の「じゃあなぜそれを動物園がやるのか」という疑問には一切答えていないのが不満です。
ゾウにせよゴリラにせよ、先進国の大都市にある大動物園で保護繁殖を行うよりも、原産国の生息地に隣接して保護飼育センターを作り、そこで保護や繁殖・野生復帰を行ったほうが効率がいいに決まっている。だが、そういう可能性には本書は一言も触れていない。
すでに先進国の大都市にある動物園という施設の持つ「原罪」には触れずに、保護も行っているんですという免罪符を与えている点では動物園内部の人間が書いた動物園肯定論の域を出ないものである。
保護の必要のない動物の飼育や展示についても曖昧な理論に終始しています。
ゾウにせよゴリラにせよ、先進国の大都市にある大動物園で保護繁殖を行うよりも、原産国の生息地に隣接して保護飼育センターを作り、そこで保護や繁殖・野生復帰を行ったほうが効率がいいに決まっている。だが、そういう可能性には本書は一言も触れていない。
すでに先進国の大都市にある動物園という施設の持つ「原罪」には触れずに、保護も行っているんですという免罪符を与えている点では動物園内部の人間が書いた動物園肯定論の域を出ないものである。
保護の必要のない動物の飼育や展示についても曖昧な理論に終始しています。
2006年12月18日に日本でレビュー済み
本書にでてくるいくつかの動物園に、私も行った事がある。 昨今日本でもなされてきた棲息地型展示が主流で、欧州(ドイツではなかったかと思う)ではゴリラにストレスを与えぬよう、観客とゴリラを隔てるガラスの人の身長以下の部分の殆どに、中からも外からも見えないようにシールが貼られ、客は縦数CM・横10CM程度に所々切り取られた部分から内部を覗き見るようになっている展示も見た。
そんな動物園先進国が、どんな取り組みを行なっているのかを学べる本としては、近年いくつも発刊された旭山動物園関連の本より遥かに先を行く充実した中味であり、それは客を楽しませる為に動物の説明や餌付けを見せるということではなく、子どもや教育者に対する環境教育・種の保存・健康管理をしやすくする為の訓練・刺激を増やし、自然な環境に近付ける事で身体的・精神的健康に寄与するエンリッチメント・アジアやアフリカ等棲息地の繁殖計画やパプア=ニューギニア・中国へも出張して教育プログラムを広げるといった、国連1部門のような働きをも動物園は担っていけるのだという、先進国アメリカの例であった。
確かにヘンリー=ドーリー動物園の獣医の言うとおり、「野生のトラも今やちょっと大きな動物園に棲んでいるようなもの(であり、また)動物園には彼らを救う義務と能力があ」ろうし、その言葉には説得力もある。
日本の設置者の“市民の娯楽であればいい”という幼稚な考えと比較すべくもないが、米のように“積極的に動物を窓口とする地球環境悪化防止に関わろう”とする意思を持たずに見世物小屋として動物園を運営するのならば、そこに投入されている税金や入場料代わりの自然保護税を新設して、棲息地での密猟の取り締まりや環境保全に資金投入した方が良いのではないかとも思わせてしまう本です。
追記 読後、ここでも民度の低さに準じた施設しか持ちえないのか?と嘆いてしまいました…
そんな動物園先進国が、どんな取り組みを行なっているのかを学べる本としては、近年いくつも発刊された旭山動物園関連の本より遥かに先を行く充実した中味であり、それは客を楽しませる為に動物の説明や餌付けを見せるということではなく、子どもや教育者に対する環境教育・種の保存・健康管理をしやすくする為の訓練・刺激を増やし、自然な環境に近付ける事で身体的・精神的健康に寄与するエンリッチメント・アジアやアフリカ等棲息地の繁殖計画やパプア=ニューギニア・中国へも出張して教育プログラムを広げるといった、国連1部門のような働きをも動物園は担っていけるのだという、先進国アメリカの例であった。
確かにヘンリー=ドーリー動物園の獣医の言うとおり、「野生のトラも今やちょっと大きな動物園に棲んでいるようなもの(であり、また)動物園には彼らを救う義務と能力があ」ろうし、その言葉には説得力もある。
日本の設置者の“市民の娯楽であればいい”という幼稚な考えと比較すべくもないが、米のように“積極的に動物を窓口とする地球環境悪化防止に関わろう”とする意思を持たずに見世物小屋として動物園を運営するのならば、そこに投入されている税金や入場料代わりの自然保護税を新設して、棲息地での密猟の取り締まりや環境保全に資金投入した方が良いのではないかとも思わせてしまう本です。
追記 読後、ここでも民度の低さに準じた施設しか持ちえないのか?と嘆いてしまいました…
2006年3月30日に日本でレビュー済み
1999年に単行本が出版された後、動物園・水族館関係者の「バイブル」とまで言われ、古書店で8,000円の高値を付けられたこともあるらしい噂の名著が、2000年以降の日本国内の動物園の最新動向も盛り込んで文庫化。単に動物園のあり方を考えさせられるだけではなくて、広く環境保全や環境教育全般に関して、深く考えさせられる内容です。
米国の動物園における様々な新しい試みの実例が、35ヶ所の動物園、120人以上へのインタビューを通じて、豊富に紹介されていますが、野生動物や自然環境と人間との関わり方の問題は、国や地域の違いを超えて共通です。本書の中にも「メガ・ズーとしての世界」という小見出しの付けられた段落がありますが、今や人間の活動から完全に隔絶された野生の王国などというものはこの世界中に一箇所も存在しないのですから、つまりは我々現代人の全ては、地球という大きな動物園の中に住んでいるようなもの。となれば、その動物園のあり方を考える本書は、現代という時代にすむ全ての人間にとって、必読の教科書と言うべきでしょう。この本を読むことで我々はようやく、現在の地球生態系の中で自分自身が置かれているポジショニングを理解し、地球環境や生態系に対して負うべき責任を自覚することが出来るようになるのではないかと思います。
「動物園にできること」は、そのまま「人間たちにできること」。そう捉え直して読み進んで行くと、本書を「動物園・水族館関係者だけのバイブル」にしておいてはいけない。と、誰もが感じることと思います。
久々に感動しました。
米国の動物園における様々な新しい試みの実例が、35ヶ所の動物園、120人以上へのインタビューを通じて、豊富に紹介されていますが、野生動物や自然環境と人間との関わり方の問題は、国や地域の違いを超えて共通です。本書の中にも「メガ・ズーとしての世界」という小見出しの付けられた段落がありますが、今や人間の活動から完全に隔絶された野生の王国などというものはこの世界中に一箇所も存在しないのですから、つまりは我々現代人の全ては、地球という大きな動物園の中に住んでいるようなもの。となれば、その動物園のあり方を考える本書は、現代という時代にすむ全ての人間にとって、必読の教科書と言うべきでしょう。この本を読むことで我々はようやく、現在の地球生態系の中で自分自身が置かれているポジショニングを理解し、地球環境や生態系に対して負うべき責任を自覚することが出来るようになるのではないかと思います。
「動物園にできること」は、そのまま「人間たちにできること」。そう捉え直して読み進んで行くと、本書を「動物園・水族館関係者だけのバイブル」にしておいてはいけない。と、誰もが感じることと思います。
久々に感動しました。