貫井徳郎氏の代表作(と思われる)2作品『微笑む人』『乱反射』を読んでみましたが、いづれも凡作で通常であれば、期待できない作家として他の作品を読むことを諦めていたでしょう。 しかし、本作のテーマが「神」「信教」という大変興深いものであり、何よりも既に早まって買ってしまっていた為にとりあえず読んでみることにしました。
(他の作家さんとの比較ではなく)あくまでも『微笑む人』『乱反射』との比較ですが、本作には最後まで読んでみたいと思わせるだけの筆圧が備わっているように感じました。 3部構成になっているのですが、退屈な第一部を読み終えることができれば、第二部・第三部を楽しむことができるのではないでしょうか。
ただ残念なことに、テーマであるはずの「神」「信教」については、信仰を持たない人々が<論理的な>観点から抱く疑問が並べられているだけで、それ以上の考察や掘り下げた筆者独自の見解が示されているわけではありません。 少々極論かもしれませんが、巻き起こる出来事(“悲劇”)の数々は、全て主人公(その息子、あるいはその血流)の“特異性”に起因するような印象を読者に与えるのみです。
仮に<初期の馳星周氏>が本作と同じ人物構成・場面設定で物語を紡いだとすると、途轍もなく陰惨な暴力の描写と絶望的な心象が描かれ、大変な名作になったのではないかと想像されます。
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※ 本作では疑問としてのみ取り上げられた「神」「信教」についてですが、そもそも信仰とは「神」に全てを委ね、盲目的に<=非論理的に>信じること。 <非論理性>にまで辿り着かなければ、確固たる信仰を持っているとは言えないでしょう。
信仰を持たない人々と信仰を持つ人々との対話・議論が一切噛み合わず、なんら生産性のないものとなってしまう光景は珍しくありません。 それは、<非論理性>に身を委ねている信仰を持つ人々に対し、信仰を持たない人々は<論理的な>疑問を投げかけるからです。
信仰を持たない側の人々が対話を成立させたいと欲するならば、まず<非論理性>を単純に“愚”としてしまうのではなく、何故彼らは<非論理性>を必要としているのかという地点から自らの思考を再構成していく必要がありそうです。
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''He truly believes he's on a mission from God. Absolute faith like that overwhelms a need for analysis. The whole thing about faith is to believe things for which there is no empirical evidence.''
- Bruce Bartlett (a domestic policy adviser to Ronald Reagan and a treasury official for the first President Bush)
“信仰とは経験的裏付けのないものを信じることである。”
- ブルース・バートレット
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神のふたつの貌 (文春文庫 ぬ 1-1) 文庫 – 2004/5/11
貫井 徳郎
(著)
教会に生まれた少年は、ただ一途に神の愛を求めた。それが恐るべき悲劇を招くとは。無垢な魂の彷徨を描く二十一世紀の「罪と罰」
- 本の長さ439ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2004/5/11
- ISBN-10416768201X
- ISBN-13978-4167682019
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2004/5/11)
- 発売日 : 2004/5/11
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 439ページ
- ISBN-10 : 416768201X
- ISBN-13 : 978-4167682019
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,075,464位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2016年10月3日に日本でレビュー済み
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2023年10月1日に日本でレビュー済み
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私も子供の頃から神様はいると
信じていました。
キリスト教関連の本もたくさん読んだし教会にも行った事がありますが結局は見えない神様を信じられるかた達の場であり書籍なんだろうなぁ…という言葉にならない想いを早乙女輝の言葉として語ってくれました。
『折り目』つけた箇所を書き出そうと思っていますがなかなか時間が取れずにいます。
信じていました。
キリスト教関連の本もたくさん読んだし教会にも行った事がありますが結局は見えない神様を信じられるかた達の場であり書籍なんだろうなぁ…という言葉にならない想いを早乙女輝の言葉として語ってくれました。
『折り目』つけた箇所を書き出そうと思っていますがなかなか時間が取れずにいます。
2019年1月13日に日本でレビュー済み
途中で物語に着いていけなくなった。最後まで読んでも、わからなかった。わからなくて正解。読後に調べて、理解が出来るという物語。
2016年5月14日に日本でレビュー済み
「キリスト教」「神」「神の沈黙」などに最近興味を感じて遠藤周作の『沈黙』『深い河』『死海のほとり』『白い人・黄色い人』などを読み,その延長でこの本を読んだのだが,遠藤周作の方が真面目に真剣にこれらのテーマに向き合っているように思う。
この本を読んでもうちょっとキリスト教ものを,と思われている方には,遠藤周作はお勧めです。皆さんの方で,キリスト教ものでお勧めの本がありましたら,是非教えてください。
この本を読んでもうちょっとキリスト教ものを,と思われている方には,遠藤周作はお勧めです。皆さんの方で,キリスト教ものでお勧めの本がありましたら,是非教えてください。
2023年4月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「沈黙」を書いた遠藤周作の爪の垢でも煎じて飲め!!
ミステリーの書き方のマニュアルでも読め!!
ミステリーの書き方のマニュアルでも読め!!
2021年4月29日に日本でレビュー済み
一部と、二部の話がつながらないので、連作短編化とおもったが、三部で見事につながる、ty社お得意のいち冊、「慟哭」ほどではないが、ぐいぐい読み込ませるのは、さすが。
2013年7月20日に日本でレビュー済み
良くも悪くも暗く救いのない貫井的作品だが、救い=殺すと宗教物としては
ネタがベタなうえ、伏線を隠す気がないような書き方をしていてばればれなので、
ミステリとしても面白くない
もう少し宗教要素を生かしたような作品にしてくれていれば楽しめたかもしれないが、
何となくキリスト教を題材にしました程度の内容なので神学的な見所はない
貫井的な暗い作品を求める人以外にはいまいちな作品だろう
ネタがベタなうえ、伏線を隠す気がないような書き方をしていてばればれなので、
ミステリとしても面白くない
もう少し宗教要素を生かしたような作品にしてくれていれば楽しめたかもしれないが、
何となくキリスト教を題材にしました程度の内容なので神学的な見所はない
貫井的な暗い作品を求める人以外にはいまいちな作品だろう
2015年5月4日に日本でレビュー済み
宗教的な視点から把握するのは私には難しかったが、ただ家族というテーマは変わらず描いてくるなと思った。表からは正常だが、不自然な重たい父子関係や母娘の関係など、描き方は丁寧で読み応えあるし、厳格な父とそれゆえ寡黙な子とのよそよそしさは痛ましい。一方、トリックのほうには解説を読むまで気付かなかったので、あっと言わされてしまった。ただ、その衝撃は「慟哭」ほどではない。家族の暗く重たいものを抱えている人にはひっかかるのでは。