坪内祐三『文庫本福袋』を読む。
坪内は文庫連山への名シェルパである。
『週刊文春』の連載コラム「文庫本を狙え!」では、
僕はこれまで幾多の鉱脈を教わった。
古典の碩学、小西甚一の復刊名著『古文の読解』。
函館らしき街を舞台にした佐藤泰志の
透明感あふれる短編集『海炭市叙景』。
毛沢東の影で共産党暗黒史を創り上げた男・康生を描いた
ノンフィクション『龍のかぎ爪 康生』。
どれもこれも面白く、
自分ひとりで本屋を探していたら巡り会えたかどうか。
本書は連載「文庫本を狙え!」の
第172回から第365回を集めた一冊。
年代で言えば2000年から2004年までに当たる。
時差で眠れぬ夜などに頁を繰っていると、
明治大正昭和の町並みや人の気配が近づくような気がしてくる。
あれも読みたい、これも読みたい。
孤独な文庫の散歩道を僕もひとりで歩いている。
とうに目的地のことなど忘れ、
道に迷うこと自体を愉しんでいる。
本は人を賢くなどはしない。
しかし、いまここにしばられる我が身に
束の間、想像力の翼を与える。
巻末に添えられた中野翠の解説文「ぴったりの靴」が、
この連載の仕事に巡り会えた坪内の幸運を的確に表現していて素敵だ。
(文中敬称略)
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文庫本福袋 (文春文庫 つ 14-2) 文庫 – 2007/12/6
坪内 祐三
(著)
話題作、古典の中の古典、懐かしい作家……。文庫には出会いがあふれている。当代随一の本読みによる、知的好奇心満載の読書案内
- 本の長さ491ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2007/12/6
- ISBN-104167717573
- ISBN-13978-4167717575
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2007/12/6)
- 発売日 : 2007/12/6
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 491ページ
- ISBN-10 : 4167717573
- ISBN-13 : 978-4167717575
- Amazon 売れ筋ランキング: - 366,625位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年7月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2005年5月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私好みの本が書評されていた。もうすでに読んだ本も数冊、これから購入しようかどうか迷っていた本も多数あった。多読の坪内祐三が一般読者向けにやわらかめの本をリストしたと言える。リストされた本の総数194冊。山田風太郎、三島由紀夫、田中小実昌、平井呈一、野坂昭如、荒俣宏、川本三郎、殿山泰司、泉麻人、赤瀬川源平、生田耕作、色川武大、村松友視、岡崎武志、横尾忠則、滝田ゆう、小林信彦、ナンシ関、庄野潤三、安藤鶴夫、木村荘八、長谷川町子、嵐山光三郎、青山二郎、吉行淳之介、安岡章太郎、小沼丹、内田百閒、小沢昭一、片岡義男、東海林さだお、村上春樹、澁澤龍彦、岡本太郎、山本夏彦、谷崎潤一郎、ジェームス・ジョイス、トールマン・カポーティ、リチャード・プローティガン、・・・・著作。現在、ほとんどが入手可の文庫である。
2008年8月28日に日本でレビュー済み
坪内に『古くさいぞ私は』(00)という著書があって、確か浅田彰がどこかで、「分かってるよ、そんなこと」みたいに揶揄していたのを読んだ記憶がある。そりゃ、浅田の世界とは全然違うしね。
この本で1冊、坪内は嫌っている本を取り上げていて、それは三島由紀夫・東大全共闘の対話の記録である『美と共同体と東大闘争』で、「不快。そう、今回初めてこの本を通読してみて、まず私がいだいた気持ちは、不快感だ」(p49)とまで言っている。坪内からしたら浅田は、東大全共闘の若者たちのように「観念的で小利口で、しかもズル」い人間に見えたかもしれない。
で、今は浅田よりは坪内が読まれる時期で、私はそれは要するに不景気なんだと思ってる。坪内がフリーになったのが90年で、まさにバブル崩壊の始まりの年っていうのも、意味深じゃない? ま、こういう閉塞感の漂う時代の空気を吸いながら坪内を読むのは、けっこう気持ちいい。あんまり前向きな気持ちにはなれないけど…坪内は木村荘八の「米国人は『岩』を作ることに『得手』だが、それにつく『苔』は了解しない」という言葉を引用して(p327)、自分は「『苔』を見分ける力のない人間」の単純さが嫌いだと述べている。
ただ、樋口一葉「たけくらべ」の一節を引いて「つまり公立の小学校の方が私立より格が上なわけである。現代と比べると逆な感じがする」(p78)と言っているけど、これって実は都会の感性なんですね。その辺、坪内って良くも悪くも東京地方人なんだなって思うんですけど、東京の「苔」には敏感でも、もう少し広いスケールで「苔」に気づくのは、案外苦手なのかも。
この本で1冊、坪内は嫌っている本を取り上げていて、それは三島由紀夫・東大全共闘の対話の記録である『美と共同体と東大闘争』で、「不快。そう、今回初めてこの本を通読してみて、まず私がいだいた気持ちは、不快感だ」(p49)とまで言っている。坪内からしたら浅田は、東大全共闘の若者たちのように「観念的で小利口で、しかもズル」い人間に見えたかもしれない。
で、今は浅田よりは坪内が読まれる時期で、私はそれは要するに不景気なんだと思ってる。坪内がフリーになったのが90年で、まさにバブル崩壊の始まりの年っていうのも、意味深じゃない? ま、こういう閉塞感の漂う時代の空気を吸いながら坪内を読むのは、けっこう気持ちいい。あんまり前向きな気持ちにはなれないけど…坪内は木村荘八の「米国人は『岩』を作ることに『得手』だが、それにつく『苔』は了解しない」という言葉を引用して(p327)、自分は「『苔』を見分ける力のない人間」の単純さが嫌いだと述べている。
ただ、樋口一葉「たけくらべ」の一節を引いて「つまり公立の小学校の方が私立より格が上なわけである。現代と比べると逆な感じがする」(p78)と言っているけど、これって実は都会の感性なんですね。その辺、坪内って良くも悪くも東京地方人なんだなって思うんですけど、東京の「苔」には敏感でも、もう少し広いスケールで「苔」に気づくのは、案外苦手なのかも。
2004年12月28日に日本でレビュー済み
某雑誌の連載を読むたびに「こんなに呑んでばかりいて坪内さんの肝臓は大丈夫だろうか・・・」と心配になる著者の新刊です。さすがの読書家、大変参考になりました。ジャンルにかたよりがなく、守備範囲が広いのが雑読の自分向きです。このところ、坪内さんの本は見かけると買うようにしていますがハズレがありません。
2016年3月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
文庫本に関するよもやま話を
大変に興味深く読みました
とてもよい本でした
大変に興味深く読みました
とてもよい本でした