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世界は村上春樹をどう読むか (文春文庫 編 7-1) 文庫 – 2009/6/10
17カ国23人の翻訳家・作家・出版者が、村上春樹について多面的に語った。2006年に日本で行われたシンポジウムの全記録
- 本の長さ360ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2009/6/10
- ISBN-104167753898
- ISBN-13978-4167753894
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2009/6/10)
- 発売日 : 2009/6/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 360ページ
- ISBN-10 : 4167753898
- ISBN-13 : 978-4167753894
- Amazon 売れ筋ランキング: - 441,616位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 5,739位文春文庫
- - 78,467位ノンフィクション (本)
- - 120,597位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年10月2日に日本でレビュー済み
「ハルキはなぜウケる」のか、
というトピックをテーマに、
あつまった。ハルキ翻訳者たち
その全記録である。
ハルキの何がそんなにいいのか。
ときに笑いあり、涙あり、で語り合う翻訳者たち。
しかし、面白いことに、何か「これ!」といった「理由」は、どこを探しても見つからない。
ハルキの好きな理由? それは日本的でエキゾチックだからさ、と思えば、一方では、日本的でないところがいいよね、とか、もう錯綜しまくりである。藪の中である。
ただ、この本を読んでいて、ひとつだけわかるのは、ハルキが人気な理由。
それは「村上春樹がすごい」からではなく、「翻訳家たちがすごい」、ということ。
とにかく、翻訳家たちのセンスと、涙ぐましい努力が、すごいのだ。
スシが海外で、カリフォルニア巻になって、なんか外人向けに改良されるように、
ハルキもあらゆる国のお国柄にあわせて、翻訳家たちが苦労して文体のニュアンスをその国のお国柄に合わせて、考えている努力が、本を読むとわかるのである。
まぁそれだけ翻訳家たちを頑張らせる不思議な魅力をもっていた春樹文学ということになるが。
だから私が勝手に思った結論は「世界人気を獲得するには、まず翻訳家たちを味方にしないといけない」
村上春樹は人一倍、それができた、おそらく唯一の作家だったんだと思う。
「ハルキはなぜウケる」のか、
というトピックをテーマに、
あつまった。ハルキ翻訳者たち
その全記録である。
ハルキの何がそんなにいいのか。
ときに笑いあり、涙あり、で語り合う翻訳者たち。
しかし、面白いことに、何か「これ!」といった「理由」は、どこを探しても見つからない。
ハルキの好きな理由? それは日本的でエキゾチックだからさ、と思えば、一方では、日本的でないところがいいよね、とか、もう錯綜しまくりである。藪の中である。
ただ、この本を読んでいて、ひとつだけわかるのは、ハルキが人気な理由。
それは「村上春樹がすごい」からではなく、「翻訳家たちがすごい」、ということ。
とにかく、翻訳家たちのセンスと、涙ぐましい努力が、すごいのだ。
スシが海外で、カリフォルニア巻になって、なんか外人向けに改良されるように、
ハルキもあらゆる国のお国柄にあわせて、翻訳家たちが苦労して文体のニュアンスをその国のお国柄に合わせて、考えている努力が、本を読むとわかるのである。
まぁそれだけ翻訳家たちを頑張らせる不思議な魅力をもっていた春樹文学ということになるが。
だから私が勝手に思った結論は「世界人気を獲得するには、まず翻訳家たちを味方にしないといけない」
村上春樹は人一倍、それができた、おそらく唯一の作家だったんだと思う。
2007年5月12日に日本でレビュー済み
私はとくに村上春樹ファンではないが、
一人の存命の作家をめぐって、
各国の翻訳者たちが一堂に会してシンポジウムを行なうということ自体、
文化イベントとしてきわめて珍しいことだし、
当日はかなりの盛会だったらしく、その熱気のようなものは、
ただ読んでいるだけでも何となく伝わってくるので、
ファンなら本書を読まない手はないと思う。
各国の翻訳者たちの発言からは、とくにアジア諸国において、
ひとまず近代化が達成され、相対的な停滞期に入った社会で、
村上春樹の作品を同時代を代弁する声として受け止め、
受容する動きが生ずるらしいことがわかるのだが、
そこまではまあ、普通に予想がつくことでもあって、
とくに驚くべき話ではない。
ひとつ面白く感じたのは、
「グローバリゼーションのなかで」と題されたシンポジウムの終りに、
司会の四方田犬彦が、「最後に素朴な問いを出したい」と前置きした上で、
「どうして春樹のアラビア語訳やウルドゥー語訳が存在しないのか。
これは言語をめぐる政治の問題だ。世界が春樹を読む。
大いに結構だが、その場合の「世界」とは何なのか。
端的にいって勝ち組の国家や言語だけではないのか。
ここに排除されているものは何なのか。誰なのか」
と述べていることだ。近年、旧ユーゴやパレスチナといった、
いわゆる「負け組」国家・地域への丹念な取材を続けている、
四方田ならではの冷静な問いの立て方を評価したい。
実を言えば、四方田はあとがきのなかで、
打ち上げの際、さる女性の翻訳者とたまたま二人っきりになり、
「あなた本当はハルキって、全然好きでも何でもないのじゃない?」
とズバリ訊かれ、黙ったままでいると、
「だいじょうぶ、他の人には黙っててあげるから」
と言われた、という挿話まで披露しているのだが(笑)、
これについてはむしろ、柴田元幸ら他の編者たちの
寛容さを評価すべきかもしれない。
一人の存命の作家をめぐって、
各国の翻訳者たちが一堂に会してシンポジウムを行なうということ自体、
文化イベントとしてきわめて珍しいことだし、
当日はかなりの盛会だったらしく、その熱気のようなものは、
ただ読んでいるだけでも何となく伝わってくるので、
ファンなら本書を読まない手はないと思う。
各国の翻訳者たちの発言からは、とくにアジア諸国において、
ひとまず近代化が達成され、相対的な停滞期に入った社会で、
村上春樹の作品を同時代を代弁する声として受け止め、
受容する動きが生ずるらしいことがわかるのだが、
そこまではまあ、普通に予想がつくことでもあって、
とくに驚くべき話ではない。
ひとつ面白く感じたのは、
「グローバリゼーションのなかで」と題されたシンポジウムの終りに、
司会の四方田犬彦が、「最後に素朴な問いを出したい」と前置きした上で、
「どうして春樹のアラビア語訳やウルドゥー語訳が存在しないのか。
これは言語をめぐる政治の問題だ。世界が春樹を読む。
大いに結構だが、その場合の「世界」とは何なのか。
端的にいって勝ち組の国家や言語だけではないのか。
ここに排除されているものは何なのか。誰なのか」
と述べていることだ。近年、旧ユーゴやパレスチナといった、
いわゆる「負け組」国家・地域への丹念な取材を続けている、
四方田ならではの冷静な問いの立て方を評価したい。
実を言えば、四方田はあとがきのなかで、
打ち上げの際、さる女性の翻訳者とたまたま二人っきりになり、
「あなた本当はハルキって、全然好きでも何でもないのじゃない?」
とズバリ訊かれ、黙ったままでいると、
「だいじょうぶ、他の人には黙っててあげるから」
と言われた、という挿話まで披露しているのだが(笑)、
これについてはむしろ、柴田元幸ら他の編者たちの
寛容さを評価すべきかもしれない。
2014年11月25日に日本でレビュー済み
「世界が? そんなのどうでもいい」
と思いホッテおいたが、
今日ブックオフで見かけ、
「おっ、柴田さん参加か」
ということで購入・読みかじり。
うーん、ハチャメチャに面白い。
春樹関連本では間違いなく一番オモロイ。
内田樹さんのがカスムくらい。
世界中の春樹翻訳家が全員集合である。
韓国の金さんとか、リチャードパワーズさん(この人は作家さん)とか、
「あんたらどんだけ頭ええんや」
ってくらい掘り下げてる。
掘りすぎて底をぶち破ってるくらい。
ってことで、永年ホッテおいたことを深く後悔している。
まあ、発売当時に読んでいても、何も変わらなかったろうけど。
と思いホッテおいたが、
今日ブックオフで見かけ、
「おっ、柴田さん参加か」
ということで購入・読みかじり。
うーん、ハチャメチャに面白い。
春樹関連本では間違いなく一番オモロイ。
内田樹さんのがカスムくらい。
世界中の春樹翻訳家が全員集合である。
韓国の金さんとか、リチャードパワーズさん(この人は作家さん)とか、
「あんたらどんだけ頭ええんや」
ってくらい掘り下げてる。
掘りすぎて底をぶち破ってるくらい。
ってことで、永年ホッテおいたことを深く後悔している。
まあ、発売当時に読んでいても、何も変わらなかったろうけど。
2011年4月29日に日本でレビュー済み
村上春樹の小説を海外に紹介する立場にある各国の翻訳家のシンポジウム等をまとめたものであるが、翻訳に際しての苦労話等が率直に語られていてとても面白い。
本書の冒頭部分に「村上春樹翻訳世界地図」が掲載されているが、これほど多くの国においてハルキ・ムラカミの作品が読まれているということなのだ。
ということは、各国の翻訳者も言っているように、ハルキ・ムラカミの作品を通じて、フジヤマ、ゲイシャ、ハラキリ等々といった昔からの日本あるいは日本人に対するイメージを覆すことになったということは、大いに称賛されてしかるべきことだ。
各国で出版された翻訳本の表紙カバーを比べる部分があるが、ここもなかなか面白い。日本でリリースされたものとは全く異なったイメージで作成されているものもあるのだ。
本書は村上春樹の作品に対して、好意的な見解を持っている者の集まりをまとめたものだが、世の中には、本書でも若干触れられているように、ドイツの某文芸評論家のように、村上作品に対して批判的な見解を持っている者も当然いるのだから、これらの意見も聞きたかった。
本書の冒頭部分に「村上春樹翻訳世界地図」が掲載されているが、これほど多くの国においてハルキ・ムラカミの作品が読まれているということなのだ。
ということは、各国の翻訳者も言っているように、ハルキ・ムラカミの作品を通じて、フジヤマ、ゲイシャ、ハラキリ等々といった昔からの日本あるいは日本人に対するイメージを覆すことになったということは、大いに称賛されてしかるべきことだ。
各国で出版された翻訳本の表紙カバーを比べる部分があるが、ここもなかなか面白い。日本でリリースされたものとは全く異なったイメージで作成されているものもあるのだ。
本書は村上春樹の作品に対して、好意的な見解を持っている者の集まりをまとめたものだが、世の中には、本書でも若干触れられているように、ドイツの某文芸評論家のように、村上作品に対して批判的な見解を持っている者も当然いるのだから、これらの意見も聞きたかった。
2007年1月15日に日本でレビュー済み
村上春樹の作品が、最近世界中で人気らしい、と聞いてはいたけれど、これは結構凄いことだと思いました。「羊をめぐる冒険」など5冊限定(5冊満点)で翻訳状況を表した世界地図を見ると一目瞭然。アジア・ヨーロッパを中心に34カ国で翻訳・出版されています。ということは、それだけ翻訳者がいる訳で、2006年3月に20人の翻訳者が日本に集いシンポジウムを開いたそうです。この20人の顔写真もなかなか壮観です(氏名だけでは英語圏以外の人は性別すら分からない。でも全員が日本語が堪能なことは確か)。この参加者達が自分の訳書を持ち寄って一言ずつコメントしただけで、セッションがひとつ成立してしまい、その表紙を一列に並べただけでこの本の表紙デザインが完成するという、なんというか・・・。
村上春樹の読まれ方を各国在住の翻訳者が紹介してくれるのだから、それは確かな話だろう、と興味津々で読みました。各国の社会情勢と村上春樹受容の関係という話題が多かったかな。他に一人一人のコメントは短いけれど他では絶対に聞けないようなレアな情報が満載です。例えばドイツで村上春樹ブームが始まったのは2000年6月30日夜のこと・・・。
もう一方で翻訳の際に苦労している点など、翻訳談義も柱のひとつだったようです。短編2編を参加者が実際に訳してみて討議するというワークショップの紹介もあります。独特の文体を活かすのが難しいらしい、ふむ。翻訳って大変だし、責任重大なんだな、と思いました。でも参加者がとても楽しそうに苦労を語り、誰もが村上春樹が大好きだ、という雰囲気がとても良く伝わってきました。
村上春樹の読まれ方を各国在住の翻訳者が紹介してくれるのだから、それは確かな話だろう、と興味津々で読みました。各国の社会情勢と村上春樹受容の関係という話題が多かったかな。他に一人一人のコメントは短いけれど他では絶対に聞けないようなレアな情報が満載です。例えばドイツで村上春樹ブームが始まったのは2000年6月30日夜のこと・・・。
もう一方で翻訳の際に苦労している点など、翻訳談義も柱のひとつだったようです。短編2編を参加者が実際に訳してみて討議するというワークショップの紹介もあります。独特の文体を活かすのが難しいらしい、ふむ。翻訳って大変だし、責任重大なんだな、と思いました。でも参加者がとても楽しそうに苦労を語り、誰もが村上春樹が大好きだ、という雰囲気がとても良く伝わってきました。
2007年1月1日に日本でレビュー済み
村上春樹の作品は、世界40カ国くらいで翻訳されている。『ノルウェイの森』はドイツで10万部以上売れた。韓国には春樹世代っていう人たちがいる。ウォン・カーウァイの映画が村上春樹っぽいのは気のせいではない。
これって、何でなんだろう?という素朴な疑問からスタートして、世界中の村上春樹作品翻訳者、研究者が集められて日本でシンポジウムが開かれた(聴講したかった。。。)。本書は、主催者たちが編んだその記録である。
日本が村上春樹をどう読むかということもまだあまり固まっていないわけで、今後どうやって評価が固まっていくのか(あるいは揺れ動いていくのか)というのも、興味深い問いではあるが、ところで世界はどうなの、って考えてみるのは面白いし、新鮮である。それに、そもそもそういう問いが成立する現役作家というのは、世界でたぶん10人くらいしかいないのではないだろうか。売れている作家はたくさんいるけど。誰も「世界はダン・ブラウンをどう読むか」という問いは立てない。
村上春樹の作品というのはいろいろな読みに開かれている。不思議なことに、世界中の人が作品を読んで感動することができる。たとえば、モンゴル人は『羊をめぐる冒険』を読んで、自分たちだけがこの作品の真価を理解できる、と言ったらしい(羊が友達だからね)。
本書でも触れられているけれども、村上春樹の作品の主題のひとつは、他者を理解することの絶望的なまでの不可能性である。一緒に住んでいる妻が、猫が、またあるときは恋人が、親友が、急に失踪する。理由なんかはぜんぜんわからない。理解不能である。そして、ここがおもしろいと思うのだけど、他者を理解することが絶望的なまでに不可能である、というような主題を持つ作品群が、世界中で理解されているのである。
みんな隣にいる人のことが実はよく分からない。けど知りたい。そういう人たちでこの世界はできていて、そういう世界だから、冒頭に書いたような現象が起こっているのかもしれない。
これって、何でなんだろう?という素朴な疑問からスタートして、世界中の村上春樹作品翻訳者、研究者が集められて日本でシンポジウムが開かれた(聴講したかった。。。)。本書は、主催者たちが編んだその記録である。
日本が村上春樹をどう読むかということもまだあまり固まっていないわけで、今後どうやって評価が固まっていくのか(あるいは揺れ動いていくのか)というのも、興味深い問いではあるが、ところで世界はどうなの、って考えてみるのは面白いし、新鮮である。それに、そもそもそういう問いが成立する現役作家というのは、世界でたぶん10人くらいしかいないのではないだろうか。売れている作家はたくさんいるけど。誰も「世界はダン・ブラウンをどう読むか」という問いは立てない。
村上春樹の作品というのはいろいろな読みに開かれている。不思議なことに、世界中の人が作品を読んで感動することができる。たとえば、モンゴル人は『羊をめぐる冒険』を読んで、自分たちだけがこの作品の真価を理解できる、と言ったらしい(羊が友達だからね)。
本書でも触れられているけれども、村上春樹の作品の主題のひとつは、他者を理解することの絶望的なまでの不可能性である。一緒に住んでいる妻が、猫が、またあるときは恋人が、親友が、急に失踪する。理由なんかはぜんぜんわからない。理解不能である。そして、ここがおもしろいと思うのだけど、他者を理解することが絶望的なまでに不可能である、というような主題を持つ作品群が、世界中で理解されているのである。
みんな隣にいる人のことが実はよく分からない。けど知りたい。そういう人たちでこの世界はできていて、そういう世界だから、冒頭に書いたような現象が起こっているのかもしれない。